ノーカオス・ノーブレイク   作:零崎哀識

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図書

全戦全勝を飾った俺はステフに言う。

 

「本気で勝ちたいのなら運で勝負すんなよ。偶然なんてものは情報でいくらでも操作できるんだから」

 

「……どういうことですわん?」

 

「ルール、賭け金、スペック、精神状況、調子etc腐る程この世の中には見えねえ変数ってものが転がってる。もし全て手に入れられたらはじめる前に結果を手に入れられるだろうな」

 

流石に俺も全て知ることは出来ねえし、したくもない。ただでさえ未知より既知の方が多いんだ。未知で知識となったら俺は何を楽しめばいいんだか。

 

「例えばABC三つの電球がある部屋とその電球に明かりを灯すABCのスイッチがある部屋があるが電球三つの内二つは壊れていて明かりがつかない。二つの部屋は隣同士だが扉で遮られており、スイッチを入れた状態で扉を開けられるのは一度だけ。ABCどれが壊れていないでしょう。ただし一度に入れられるスイッチは一つする。……この問題が解ける確率は?」

 

「えっと……三つの内一つは確認出来るわけですから確認した電球が正解の確率は三分の一ということになりますわん。違った場合は他の二つのどちらかということになりますから六分の一、二つの確率を足せば二分の一なので50%ですわん!」

 

ステフは自身満々に計算の結果を言う。

 

「はぁ、あなた計算間違ってるわよ。扉を開けた状態で着けた電球が壊れている確率は三分の二。さらに残り二つ間違える場合は二分の一。二つの結果を掛け合わせると三分の一になるからそれ以外が正解する確率になるわ。つまり三分の二ね」

 

クラミーはステフの計算間違いを指摘して答えを言う。

 

「残念。二人とも不正解。答えは100%でした」

 

「「えっ!?」」

 

俺の言葉に二人は目を見開いて声を上げた。

 

「何トチ狂ったこと言ってるの?」

 

「100%なんてあるわけですないわん」

 

おいおい特にクラミーひでえな。

 

「ぶっちゃけると実はこの問題一度も電球つけた状態で扉開ける必要ねえんだよ。凄く単純だがスイッチを入れ、切って扉を開ける。そして電球を触って温かければそれが正解だ」

 

「「あ」」

 

二人は言われてみればという顔になる。

 

「問題文に情報があった。電球が熱を持ちやすいという情報さえあれば偶然が必然へと昇華された。結局は情報なんだ。ステフが負けた理由であり、イマニティが負けまくった理由であり…………俺が何処にも手を出せねえ理由でもある」

 

またもや二人の顔が驚きの顔へと戻る。

 

「国中の本という本を読み漁ってみたが、他種族、他国の情報少なすぎる。つーか、そもそもこの国の蔵書量がありえねえくらい無い。国の運営する図書館が無いくらいにな。何?手前等は口伝式で知識継承してんの?頭おかしいんじゃねえの?」

 

「えっと、どういうことですわん?」

 

「今目標としている東部連合を攻めるとする。でも、ワービーストに分かってるのは身体能力がパない。第六感とやらで心を読んでくるの二つ」

 

「え、ええ」

 

「心読まれちゃブラフっつう手札無しで戦うということだ。知能戦オンリーでもかつのが厳しくなてくる。しかもゲーム決めるのは攻め込まれたあっち側。身体能力抜きって考えることは出来ない。最低でもどんなゲームかめぼし付けねえと攻められねえ」

 

ゲームのジャンルくらい分かれば作戦の立てようがあんだけどな。

 

「だから一ヶ月も本を読むしかやること無かったんだよ」

 

「で、でも、何もしなければ始まらないじゃないですわん!」

 

「バカ。確実な何かじゃなきゃ何かした時点でこの国終わるぞ」

 

ステフに戒めるように言う。

 

「イマニティはそんだけの所まで来ちまってるんだ。忘れんな」

 

別に俺個人として負けることが絶対にいけないと思ってはいない。

 

敗北という手段ならば一向に構わない。

 

だが、今の状況の敗北は次の手を一切打てなくなるもの。

 

とその辺りまで考えていたら辺りがいきなり暗くなる。

 

「はい?何これ?この状況は皆既日食見た時くらいしか体験したことないぞ」

 

慌てて太陽を見ようとしたがそれは叶わなかった。

 

何故なら太陽は巨大な岩盤に遮られていたのだから。

 

「何を言っているか分からないと思うけど……うん。俺も分からん」

 

へーこっちのラピュタは龍の目にあるってわけじゃないのかー。

 

「そういえばレイは初めて見たというわけね」

 

ラピュタもとい空に浮かぶ島を見ていたらクラミーがそう言った。

 

「あれは『アヴァトン・ヘイム』ファンタズマの一体よ」

 

そう言われるとヒレっぽいものがラピュタもどきについているように見える。

 

「……あれ……知的生命体?……つまりあれとゲームしろと?つーか、意思疎通可能なの?ラピュタはあったなら分かるがラピュタが喋ったとかほざいたら流石にパズーも親父を病院連れてくぞ!!」

 

「……後半はよく分からなかったけれどあれに挑む気だったの?」

 

呆れた目でこちらを見てくる。

 

「だいたい上に住むフリューゲルにも勝ち目がないでしょう」

 

あれの上に住んでるってことは……成る程、あれが『天空都市』か。

 

「勝ち目が無いかは俺が決める。でも、まあクラミーの言う通りか。なんたって会えなければ挑戦すら出来ねえんだからな」

 

そう呟くとステフがポツンと言う。

 

「フリューゲルと会うなら近くに居ますよ」

 

「……あんだって?」

 

「先程レイが問題にしていた国の図書館を奪って彼女そこに住んでますからわん」

 

……眩暈してきた。

 

「なんでそんな重要な情報を報告しなかったかは置いておく。詳しくその話聞かせてくれ」

 

「えっと……五年前、国内最大の図書館だった『国立エルキア大図書館』にフリューゲルが一体現れて図書館ごと全蔵書を巻き上げたんですわん」

 

通りでいくら俺が読むの早いからって一ヶ月弱で国にあるめぼしい本読み終えられたわけだ。

 

「お前等……知識賭けるとかいよいよ頭ん中平気か!?唯一の武器だぞ!?」

 

「か、賭けたのはお爺様ですから何か深い考えが……」

 

「あっちは何を賭けさせたなだ!?」

 

「え、ええと、か、勝てばそのフリューゲルが味方になるだった筈ですわん!」

 

「……確かに条件は悪くない」

 

「そ、そうですわよねわん!」

 

「それで負けて知識奪われちゃ訳ねえだろうが!!つーか、写本残すとか手があっただろうが!」

 

「そ、それは予算の都合で……」

 

そういや印刷技術、俺が言い出すまでありませんしたね……

 

「最低でも写本が出来るまで挑むなよ……」

 

頭押さえて言うがどうしようもない。

 

「はあ、確かフリューゲルのゲームは伝統的に一つだったな?」

 

確認だけなのでステフはうなずくだけで返す。

 

「ステフ、馬車用意して」

 

「え、はいですわん」

 

「本日の目標『フリューゲルゲットだぜ』で……」

 

 

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