宣言通り、次はカオGの方を更新します。
年内のうちには更新したいと思います。
ゲーム開始早々更地となった図書館跡地。数時間経った現在異界と化していた。
海と山が隣合わせに存在し、山の上にはピラミッドが見え、海の中に東京タワーが逆さに突き刺さっている。
零はというと高床式倉庫の上でマンガ肉を齧っており、ジブリールは未だ拘束衣を身に纏った状態で地面に転がっている。ステフは行方不明だが悲鳴がちょくちょく聞こえるので生きているのだろう。クラミーは2、3時間前に化物に食われたとだけ言っておこう。その食われる瞬間まで寝ていたことは賞賛に値する。
「なぁフリューゲルって腹減らねえの?[デザート]」
「お構いなく、フリューゲルは無力なイマニティと違って食事が必要ありませんので[トカゲ]」
「食事必要無いってさっき出た繁殖もそうだが生物の三大欲求としてどうなのよ?[経験値]」
「三大欲求の睡眠欲もありませんよ。休養も必要ないので[チャクラム]」
ジブリールの発言を聞いてこいついよいよ生物か?という疑問の視線を向ける。
「そもそも第六位以上は生物ではなく生命なのでその三大欲求が無いのは不思議ではありません。休養が取りたければわざと負けても宜しいのですよ?今回は中々楽しませてもらえましたし」
「冗談言うな[無線機]」
「冗談じゃありませんよ。脆弱なイマニティとのゲームでは随分もったほうですが、私の言葉のストックは無限ですのでそもそも勝ち目無いですし、もしレイ様のストックが無限だとしても一月も持たないでしょう[キュウリ]」
「無力に脆弱ねえ、ま、第六位の生命体から見れば蟻かもしれねえけど蟻が意思疎通して結託すれば70億人の人類超えられんだぜ[利益]」
「それは人類が弱いと自慢しているのですよね?[金メダル]」
「この例えでそう思うんだったらおつむが弱いんじゃねえか?頑丈で寿命が誇りのクマムシさん」
ジブリールにとって好奇心の対象であるが、敬意を向ける対象ではない零よりも劣ると言われ、零を見る視線に怒りが混じる。
「我々が人類如きに劣るとでも?」
「ドンパチやってた時代ならともかく、ドンパチやり過ぎて暴力きんじられちゃった何処かの間抜けな種族よりはマシじゃね?[ルーツ]」
視線に混ざった怒りが殺意へと変わる。
「少し口を慎んだ方がいいんではないですか?生かされているという立場なのですから[粒]」
「確かにな。ここから言おうと思っていたことは自分にも当てはまることだからな。同属嫌悪とは反省反省[フリューゲル]」
ジブリールの周りに天翼種の集団が現れる。
零は天翼種の集団を思い浮かべて言っただけなのでジブリールの補助が入り、現れた集団はジブリールの既知の者たちである。
「今の単語を出した意味も気になりますがその前に発した言葉はどのような意味ですかね?[ルビー]」
ジブリールにとっては下等生物と同類と言われたことのほうが問題のようだ。
「他の天翼種は知らないが、未知に対し、好奇心しか沸かないというのは俺にも当て嵌まることでな。それはそもそも生物として欠点なんだよ[人]」
ついさっきまで聞こえていたステフの悲鳴がピタリと止んだ。
「ですから、天翼種は生物ではなく生命体です。無能な人類はそのようなことも記憶出来ないのですか?[鳥]」
「生命体にとっても同じなんだよ。生きてるってことに関しては同じなんだからな。生命を脅かすかもしれない。そんな可能性を孕んだ未知に対しては好奇心だけではなく、恐れを感じなければならない[リミッター]」
「ご心配無く。天翼種は人類と違って弱くありませんので生命を脅かすす存在なんてとてもとても[焚き火]」
「そうかい。じゃあ、こんな未知にも恐れを感じないと?[病気]」
「ぐっ」
「な、なんで?前が見えない……」
そう零が言って直ぐにジブリールを除く天翼種が苦しみ始める。ジブリールは知己である彼女達の姿を見て精神を乱す。
それが零の狙いである。敗北を認めさせるのに圧倒的実力差を見せる必要は無い。相手にとって続けることを苦痛にしてやればいい。
その為に仲間を消し、仲間を与えた。
ジブリールを苦しめる為に。
「……そういうことですか」
焦りながらも直ぐにそのことを理解する。
一つ分からないのは仲間達のかかっている病気である。病を無理やり植えつけられたのだから発祥するのは仕方ない。しかし、知識にある病なら直ぐにでも感知させるはずだ。だが、仲間達は出来ていない。何故なのか?
それは、零のある単語から生じたイメージを病気に篭めた。これはこの世界ではお目にかかれるものではないものである。
何故なら原爆による二次被害によって引き起こされる病なのだから。
普通ならば病気の王道と言えば風邪である。普通の状態で言ったのならば風邪にかかっていただろう。しかし、零の最初の[原爆]によってこの場には放射性物質が溢れかえっている。そのことを理解している零にとって病気と真っ先にイコールとなるのは被爆症。
癌に視力の低下、息切れ、ふしぶしの痛み。数々の害悪を齎す人の作った業。
それが、天翼種に牙を振るっている。
「[キュア]!!」
ジブリールにはどのようにすればこの症状が治るのかは分からない。天翼種にも分からないだろう。
もしこの場で分かる者がいるとしたら零一人。
ジブリールは零にそのイメージの補助を頼ったのだ。
「……痛みが治まった?」
「見える!見えるわ!」
直ぐに知己の症状が回復したのを見て安堵の息を吐いた。ジブリールは賭けに勝ったのだ。
「なんだ。もう治しちまったのか?お前の生きる源であった未知だったのに」
「なっ!?」
零に言われ気付く。自分が好奇心よりも仲間達の安否を優先したことに。それもこの仲間達は本物ではない。ゲーム装置が作った紛い物だというのに。
「そう残念そうな顔するなよ[アンコール]」
追加演奏の希望を意味する言葉だが、今コンサートをしているわけではない。
零はもちろん終わってしまったことをもう一度という意味で使った。
今現在この場で終わったのはキュアによって幕引きとなった病気。
つまり、天翼種は再発した。
「……[ルーオオシ蛾]」
病気と一切関係無い単語をジブリールは俯きながら呟く。
彼女の後ろでは苦痛の声をあげ、混乱し、吐血する者までいる状態の同胞。
「もっとよく見なくていいのか?知らないことを知った時の快感といったら無いもんな?ほら、調べなきゃ[角括弧」
零は追い討ちをかけるようにジブリールに勧める。
そう言われたらジブリールは振り返るしかない。
彼女達は本物ではないから大丈夫。零がこのような状態にしたのだから仕方ない。好奇心を満たすのはみんなしてるから悪いことではない。
そんな言い訳を自分に対し、しながら見る。診る。観る。
「……未知に感じるのはやはり興味ですね。考査」
ジブリールが搾り出すように口から出たのは強がりの言葉。
「うんうん。ここまでされて興味とはやっぱりお前は俺と同類だ」
「ッ!?」
先程、ジブリールは同じこと言われ怒りを殺意を覚えたが今は嫌悪を感じる。
「じゃあ、お次の道をくれてやる。SAN値」
「きゃぁぁぁぁぁっぁぁあああ!!」
「助けて助けてよ!」
天翼種の苦痛の声が発狂へと変わった。
ある者は奇声を上げ、ある者は首を掻き毟る。泡を吹いてる者もいれば目の焦点があってない者もいる。
「あなたは一体何を!?」
ジブリールは驚き、なりふり構わず零に問う。
「SAN値ってのはあるゲームのステータスなんだが何を示すかというと正気をどれだけ保っていられるかという数値だ。病気のせいでいくらか下がってはいたが0じゃない。つまり、あるってことだ。『あるものは無くなる』ってのがこのゲームのルールだったよな?」
つまり、彼女達のSAN値は0。SAN値ピンチなんてレベルじゃない。
「0なんて状態ゲームじゃ絶対にありえない。ふとした拍子に死ぬよ」
その言葉を聴いてジブリールは即座に言う。
「治療」
ふとした拍子に死ぬ。未知の病はその拍子になる確率は限りなく高い。この治療という単語を出すまでの間に死者が出ていないことが奇跡というレベルである。
「お見事。未知を保有する彼女達を生きたまま観る為の迅速な判断。賞賛に値する」
「黙れ!私をお前と一緒にするな!」
今まで使っていた敬語が崩れ、拒絶の言を叫んだ。
キャラ崩壊もいいところであるが、崩壊しない方がおかしい状況にジブリールは追い詰められている。
「……悪かった。調子に乗って追い込み過ぎた」
零から出たのは謝罪の言葉。ゲームとはいえ、演技とはいえ、やり過ぎたと反省しているみたいである。
「まぁ、だがこうかいしただろ?自分がどれだけ愚かな価値観を持っていたのだと」
「………」
ジブリールは会話したくないのか言葉を発さない。
だが、無音とは行かず、発狂は続いている。
「でも、このゲームはもう直に終わる。俺の次の一手がお前を殺すからな」
零はいきなり勝利宣言した。
演技を解いたのも勝ちを確信したからなのかもしれない。
「……次の一手で私を殺す?後ろにいる彼女達ならともかく寝言は言ってください」
無理やりに取り作った敬語で、どうにか立て直したキャラで言う。
「話はちょっと変わるが、今日、いや昨日か?ステフにこの世界の殺傷行為がどう定められているかについた聞いたんだよ」
零はいきなりこれまでの話と関係ないことを話し始めた。
「医療などの場合、譲渡という形で殺傷行為という枠から外れるんだってな。譲渡かどうかは脳内を閲覧されて判断されるという所に俺は思ったことがある。やられる側が脳内見られて判断されるならやる側も脳内閲覧によって殺傷行為か判断するんじゃないか?と。でなければ裁判で過失という判断が出てくるわけない」
「……一体何を……はッ!?」
言いたいのですか?と続けようとしたところでジブリールは気付く。
もし脳内が滅茶苦茶になっている状態での殺傷行為を本人は殺傷行為と認識しないのではないかという点。
そして、もう一つ。治療と言ってからもう30秒経過しているということ。
辺りを見回す。見たくない物があったから見たくない者があったから見ないようにしていた回りを見渡すと先程と違う点がある。
鵜の首にロープをかけた人間が一人。
[鵜飼]→[うかい]→こ [うかい]
零は治療の語尾から始まる言葉をもう言っていたのである。
角括弧が消された為に気づかれなかったのだ。
そして、ジブリールは『い』から始まる単語をもう発している一手と。
零が次に発するのは『て』から始まる単語。
『て』から始まり、脳内が滅茶苦茶になった天翼種が成せるジブリールを殺す一手。
ジブリール自信その存在を知っている。
「有言実行だ。天撃」
天翼種の神を殺す一撃。
ならば天撃を放つのは天翼種だ。
そして、この場に天翼種は集まっている。
「あがかまかがごがが!」
「くあやo3ra5p.w8lm」
狂った彼女達は精霊回廊が無いこの世界で放つ為により一層狂う。
本来なら精霊回廊が無い状態でいくら狂おうとも天撃を発動出来ない。
だが、この世界は精霊回廊だけでなく、リミッターも存在しない。
限界なんて存在しない。超えた先ただで済むはずはないが。
「あ、あなたっ!気は確かですかっ!?確かにこんな状況あなた御自身も助からない」
発狂と絶叫がやむ。
しかし、天撃の発動を止めた訳じゃない。
気が消えたのだ。
狂気も正気もありとあらゆる感情が思考が停止した彼女達はもう天撃を放つ為の装置。
「距」
「ッ!?」
零はタイミングを見計らい単語となるように待つ。
ジブリールは単語が言い終わる前に何へと繋がるか察して駆ける。
精霊回廊を封じられた彼女は身を守りきれず、飛ぶことも出来ない。
零に勝つ手段はこれしかない。
だが、遅かった。
魔力の塊である自分自身の体をコストに狙いを定めず、爆ぜるように体をぶち破った天撃が零の右腕を消し飛ばす。
消し飛ばす。つまり、現在進行形で接しているということであり、零距離ということである。
「離」
つまり、距離が、無い。
零は跳んだ先を確認することも出来ず勝利した。