ノーカオス・ノーブレイク   作:零崎哀識

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マスター

130サイド

 

「あれ、何が起こったんですの?」

 

ゲームが終了して世界は元に戻り、大した時間ではないが、えらく久しぶりに感じる図書館に転がるステフは途中で消された為、何がなんだか分からない状態のようだ。

 

「目標通り天翼種ゲットしたぞ」

 

タブレットに書いてあった『フリューゲルゲットだぜ』の上に赤字でCLEARとデカデカと書き加え、ステフに見せる。

 

「……勝ったんですの?」

 

「だからそう言ってんだろうが。ステフはやっぱりステフだな」

 

そうからかおうとすると連れてきたもう一人のイマニティが声をあげる。

 

「ふぁああああ……後、五分」

 

「こいつ、途中で化物に丸呑みされたのに寝続けたのかよ」

 

もう呆れを尊敬に値するレベルの引きニートっぷりである。

 

「……あなた様は本当に何者なのでございます?」

 

ここで問いかけてきたのは今回のゲームの敗者のジブリール。

 

「人間だよ……ってそんなことを聞きたい訳じゃないんだよな」

 

「………」

 

そんなことは先程身体を調べられた時にイマニティに近い何かだと言われてしまている。

 

「……そうだな。

   お前等フリューゲルより生まれてから時間が経っていないのに

   お前等フリューゲルより世界が既知で溢れかえっていたから

   お前等フリューゲルより好奇心という病気が重症の欠陥品だよ」

 

そう言ってやるとジブリールは盛大に笑い始めた。

 

「おたく、どうしたの?」

 

そう聞くとジブリールは可笑しそうに言う。

 

「ふふっ…だって、神を殺す為に作られた私を最弱のイマニティ。しかも、欠陥品に敗北したのでございます。これが可笑しくないはずないでございます」

 

確かに俺には能力はあった。

だが、フリューゲルの足元には及ばないだろう人間(最弱)だ。

 

確かに俺は人間の中では優れているのだろう。

 

だが、人間として好奇心を含め大切な何か欠けた欠陥品だ。

 

確かにそんなものに負けたジブリールは喜劇のピエロに違いない。

 

「では、最後に1つだけ質問しても宜しいでしょうか?」

 

「質問による」

 

「レイ様は未知を恐れますか?」

 

先程のゲームでジブリールは知ったのだろう。自分が天翼種が求める未知の恐怖を。

 

その恐怖を自分の同類だと言った俺は感じながら、認知しながら生きてるのかと問うてきた。

 

「ああ、恐いよ」

 

「でしたら、何故?」

 

「質問は1つじゃなかったのか?」

 

何故?

 

その後に続く問いは聞かなくても分かる。

 

「確かに未知は恐い。でも、知りたいと思う。

目前にしたらガタガタ震えて逃げ出したくなるだろうよ。しかし、この目で見て全身全霊を持って相対したい。

パニクって呼吸もまともに出来ないかもしれない。だが、貪欲に強欲に骨の随まで喰らい尽くしたい。

ただ、恐怖よりも好奇心が勝っただけだ」

 

「……正気ではございませんね」

 

「正気で神をてっぺんから引きずり降ろせるかよ」

 

ジブリールは呆然とする。当然だ。俺は唯一神を打倒すると言ったのだら。

 

「本気……なのでございますか?」

 

そして、ジブリールは確認するそれが真なのかと。

 

その問いには嘘だと言って欲しくはないという熱を帯びていた。

 

それならば、嘘だと嘘付く理由は何処にも無い。

 

「本気だよ。そういや、さっき異世界から人を喚び出すのは不可能つってたが、それは、唯一神にも無理なのか?」

 

答え、証明するように続ける。

 

「テトにゲームでプライドを完膚無く潰してやったらこの世界に引きずり込みやがって今度はこっちのルールでやろうってさ。つーか、テトがやりたがってるんだから、挑戦すんのあっちのはずなじゃね?」

 

なんかそう考えると段々ムカついてきた。

 

「嗚呼、この時をどれだけ待ち望んだことか!!」

 

俺がムカついているのを余所にジブリールの奴のテンションがマックスになって舞い上がっている。

 

そして、俺の前に跪いた彼女は宣言した。

 

「位階序列第六位天翼種、十八翼議会が一対、ジブリール。我が全てはあなたの物。我が思考我が身体我が魂一片までもがあなたの物です。今は亡き主、我らを創造せしアシュルトからあなたに主として最大限活用し、主の礎となることを悦びとします」

 

「了解。あ、こっちの賭け皿に乗せた異世界の知識。お前おびき寄せる餌だから自由に見てもいいぞ」

 

「マジでございますか!?」

 

ジブリールは宣言した際の畏まった姿を一変させて出したタブレットに突っ込んだ。

 

「その勢いは構わんが、その前に東部連合に関する本一通り集めてきてもらえる」

 

「イエス・マイ・マスター!」

 

俺の指示に従い、タブレットを床に置き飛び上がった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一日かけてワービーストと東部連合について読み漁ったが、東部連合については統一性が無く、内戦を繰り返していたが、巫女とやらがたった半世紀で纏め上げ、世界第三位の大国になったらしい。

ワービーストについては以前あった身体能力ぱないと第六感で心読んでくるに加え、『血解』物理法則無視出来る『血解』とやらがあるらしいってことのみ。

 

「おい、ジブリール。ここにある情報には俺が一番知りたい情報が無いんだが。東部連合はどのようなゲームをするんだ?」

 

俺の問いにジブリールはタブレットから顔を上げ、問いで返してきた。

 

「マスターは東部連合にゲームを挑むつもりですか?」

 

「ああ。俺はどうすれば東部連合に勝てる?」

 

「それは不可能でございます。いくらマスターでも東部連合には勝てないかと」

 

「それはdon'tじゃなくてcan'tということか?」

 

「これまた今は無き言語を。でしたら私はYesとお答えしましょう。実は私も東部連合に挑み負けております」

 

これまたどえらい爆弾落としてくれましたは。

 

「そいつはしりとりでか?」

 

「おそらく相手の指定したゲームでしょう」

 

……今、『おそらく』と言ったか?

 

「付け加えますと、世界第一位の大国エルヴン・ガルドのエルフも過去50年で4回公式に『対国家戦』を挑み、全て敗北しております」

 

公式というのならば、それも『対国家戦』なんて大勝負というのなら、俺の読んだ本にゲーム内容が載っていないのはおかしい。

 

その矛盾の答えをジブリールは教えてくれた。

 

「東部連合は『ゲーム内容の記憶消失』を対価として要求します」

 

マジか。心読むなんてチートでこっちの情報筒抜けの上にあっちは記憶消去の情報隠匿とかやってられねえ。

 

「つーか、エルヴン・ガルドが四回全敗って……エルフよりスペック高いのがバックにいる可能性があるか」

 

エルフの庇護下にとか言っていたクラミーを見るとステフの作った菓子に夢中になっていた。

 

こんなのが王様になるところだったんだぜ。この国。

 

「はい。私もその可能性を考え、その背後を知りたいという好奇心を抑えられず挑んで敗北しました」

 

ジブリールが不可能と断ずる理由は分かったが、ここで1つ分からないことが出てくる。

 

「記憶まで取ったら誰も攻めてこなくなる。何故だ。国を守ることに重きを置いてるってことか?いや、つい最近まで内戦やってた輩が大国になるまで急成長したならそれだけ土地は必要だったはずだから守りに徹する意味が分からん」

 

「そうですよね。あ、東部連合に対し、国家戦を仕掛けていた国が一カ国だけありました」

 

思い出したようにジブリールは立ち上がると、丁度追加の菓子を持ってきたステフと目が合う。

 

「丁度いいところに。ドラちゃんもご一緒に」

 

「へっ!?いきなりなんですの?嫌な展開しか待っていないような」

 

一瞬でステフの背後に回り捕獲したジブリール。

 

「どうぞマスター、私にお掴まり下さい」

 

俺はクラミーを担ぎ、ジブリールの服を掴む。

 

「どうか手をお放しにならないように。落としてしまうかもしれませんので」

 

その忠告の後に上条さんの幻想殺しと同じようにガラスが割れる音と共に視界がこの世界に来た時と似たような景色を映し出す。

 

上下は逆で落下はしてねえが。

 

「今日は晴れで雨に濡れずに助かります」

 

「おい、今、何、した?」

 

少し発音が変になっちまったが出来るだけ冷静にジブリールに聞くと。

 

キョトンとした顔で

 

「何、と問われましても空間転移(シフト)としかお答えできませんが」

 

成るほど上条さん(イマジンブレイカー)じゃなくて白井黒子(テレポーター)の方だったんですね。

 

「そのシフトとやらはどれ位出来るわけ?」

 

「視界内でしたらどこへでも。視界外ならば一度訪れた場所へ無制限に」

 

レベル4じゃなくてレベル5いや、レベル6も過言じゃねえな。

 

「なあ、ステフ、クラミー。古の大戦でどうやってお前等のご先祖さん生き残ったわけ?」

 

物理法則無視の身体能力に魔法で好き勝手する奴にテレポートするビームぶっぱする飛行生物の戦争でしょ?

 

通用するかも分からない近代兵器すらないこの世界の住人は答える。

 

「それ、人類史上最大の謎よ」

 

クラミーはため息つき。

 

「イマニティなんて誰の眼中にも無かったのでございましょう」

 

ジブリールはサムズアップ。

 

「それでもイマニティは国をいくつも所有していたんですのよ」

 

少しでも弁解しようとステフ。

 

「ちなみに私共は龍精種や巨人種、神霊種を相手にしていました。天翼種50人で狩れた龍や、神に200人で挑んで返り討ちにされた昔が今も鮮明に記憶しております」

 

「この星、なんで原型留めてんの?」

 

「それこそ、不戦勝で唯一神が決まった理由にございます」

 

「……原型留めなかったわけ」

 

「それより、あちらに御座いますのが東部連合の『在エルキア大使館』でございます」

 

イマニティの技術で作れないサイズ、言ってしまえば王であるはずの俺の住んでいる城よりデカイ高層ビルがジブリールの指す方向にあった。

 

「せ、正確には元王宮跡地ですわね」

 

顔を反らしたステフを無理矢理こちらに戻し、聞く。

 

「なんで城取られた訳?」

 

「正確にはあの向こうの全て取られたでございますね」

 

「はい?」

 

俺が目を丸くしてるとクラミーが追い討ちをかけてくる。

 

「エルキアはこの十年で先王が8回東部連合に負けてるわ」

 

「8回?東部連合が鉄が欲しいからって攻めてくるのは分かるんだが、なんで先王は応じたんだよ?」

 

それだけ美味そうな餌ぶら下げられたのか?

 

……まさかね。……まさかステフの爺さんそんなことしてねえよな?

 

「先程も申しましたが、東部連合に国家戦仕掛けた国が一カ国ございます」

 

「聞きたくない聞きたくない聞きたくない」

 

笑顔のジブリールに背を向け、耳を塞ぐ。

 

「仕掛けたのはエルキアでございます」

 

「聞きたくないって言ったのに!」

 

「最初に山。次に平原と続けていくうち、最終的には当時国の中心にあった王城を賭け、現在のような状況になっております」

 

「おい、今『国の中心にあった』とか聞こえたんだが幻聴だよね?」

 

ジブリールは首を横に振る。

 

「……つまり、エルキアって今の倍あったってこと?」

 

今度は首を縦に振った。

 

「馬鹿じゃねえの?馬鹿じゃねえの?大馬鹿じゃねえの!?」

 

重要なことだから3回叫んだ。

 

……空が青いや

 

 

 

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