「えー、この家…屋敷?てか城?には図書室とか書斎とかある?」
翌日、ステフに連れられてステフの家に来たのだが、もう城と表現した方が正しい規模と形である。
もう遊園地でもあんじゃね?ってレベルの城度である。
「ええ、ありますけど……何するんですの?」
「本があるところ行くんだから本を読みに行くに決まってんだろうが」
「そ、それは分かっていますわよ!何の為に本を読むのかを聞いてるんですのよ!」
「あ、そっか。でもこれって伝えても平気なんかね?最悪頭痛い人に見られるだけか……ナニソレステフニサレンノイヤスギル」
「全く何をブツブツ言ってるんですのよ?」
はぁ、と溜息をつき諦めて言う。
「実は俺ってこの世界の住人じゃないのよねー。いわゆる異世界人って奴なんでこの世界の知識を知りたいんだよ」
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「うわあ、マジかー。文化の違いを来た時からずっと心配していたが一日ほど過ごして全然違いねえじゃんと思ったところでピンポイントでここだけ違うって……」
高校の図書室レベルの大きさを誇るステフの個人的書斎にて大きな障害にぶち当たっている。
「どうかしましたの?」
「なあステフ。今口に出してる言葉は日本語じゃねえのか?」
「ニホンゴ?良く分かりませんがイマニティの公用語は『人類語』に決まってますわ」
「うわ、まんまじゃねえか……つーか、なんで文字だけ文化違うんだよ?言葉は同じだって言うのによ」
あれか?俺の元いた世界ではバベルの塔の時に神様が怒って奪った統一言語がこのイマニティ後ってことなのか?いや、その場合会話が通じることはねえか。
「……レイは本当に異世界から来たんですのね」
「そうだよー別に信じなくていいよー後ろ指差して笑いやがっていいよー」
「いえ、信じますし、笑ったりしませんわ」
「へ?何故に?」
信じてもらえるとさらさら思っていなかった俺はキョトンとする。
「何故と言われましても。エルフが使う高等魔術には異世界からの召喚魔法もありますし、信じられない話でもありませんし。それにイマキティにしか見えないのに服に顔立ちはこの国の人じゃありませんもの」
後半の根拠はこの国しか残っていないという崖っぷちの状況が前提となっているのですね。分かります。はい。
「ファンタジー世界ってなんでもありだな。コンチクショウ」
なんか色々悩んでいたのが馬鹿らしくなってきた。
だが悩まなくてはいけないことが新しく出てきちまった。
この世界については盗賊の付添い人に教えて貰っていたから補強のつもりで読み漁ろうと思っていたのだが、言語が読めねえとなると。
「はあ、やっぱり覚えるしかねえか」
本に目を通す。
「そういや『十六種族(イクシード)』って具体的にどんなのいるんだ?」
「えーと、唯一神に敗れた一位神霊種(オールドデウス)、二位幻想種(ファンタズマ)、三位精霊種(エレメンタル)とか、あとは龍精種(ドラゴニア)や巨人種(ギガント)、森精種(エルフ)、獣人種(ワービースト)などですわ」
「なるほど。王道ファンタジーRPGでも思い出せばいいってわけな。そんでさっき言っていた順位ってどう決まってるわけ?」
「私もその辺り詳しくは分かりませんが位階序列のことらしいですわ」
「位階序列?」
「ええ、簡単に言うと魔法適正の高さと聞いていますわ」
「はあ、らしいとか聞いてるとか随分と曖昧だな。ちゃんと勉強してるのか?」
「言っておきますけど私はちゃんとアカデミーを卒業してますわよ!位階序列については人類がそもそも研究が進んでいないんですの。イマニティは第十六位。一番低いとか以前に魔法適正0。研究しようがないんですのよ」
「0……つまり魔法が使えないってことか?」
「ええ。それどころか魔法の感知すら出来ませんわ」
「魔法を使える道具とかは?」
「魔法で作られたゲームを使えますけどそれは魔法で動いてるだけで人間が魔法を使えることは出来ませんわ。そもsも『精霊回廊』という魔法の源に接続する回路がイマニティは持っていませんもの」
なにその魔術回路の少ない某正義の味方より悲惨な状況。
「だから国盗りギャンブルでも負けるんじゃないですの?」
「はあ、じゃあ、上手く使う奴が一位か?」
「いえ、。一位までいくと神霊種は存在がそもそも魔法で、一番上手く使うのはエルフですわね」
「エルフって耳尖がっていて色白のか?」
「ええ。現在、世界最大の国『エルヴン・ガルド』も魔法で上り詰めた訳ですし、魔法と言えばエルフの代名詞ですわね」
「でも、さっき出てきたワービーストっての方がよっぽど人間より魔法使えなさそうだけどな」
FSO2でもそうだし。ちなみに俺はゲームキューブのが一番好き。ビースト居ないけど。
「確かに十四位のワービーストは使えませんけど大国ですわ。その代わりに桁外れた五感で魔法の気配や人との感情を読み取るそうですわ。東南の大海洋の島々を併合して作られた『東部連合』は世界第三位の大国ですわ」
魔法の代わりに五感ねぇ。
「……魔法を使えなくても『エルヴン・ガルド』と拮抗する種族、国はありますけど家極イマニティから見たら『超能力』や『超感覚』を使ってのことですわ」
「ふーん、そう」
一方的に見破れないイカサマされてるのも同然。そんなんじゃ勝てるわけ無い。
なんて思ってるんじゃ負けるのも当然だ。
「まあ、大体のことは分かった。後のことは自分で調べるからいいよ」
「え、ああ、はい。……ってどうやって自分で調べるつもりですの?」
「そんなの普通にここにある本を使ってだが?」
俺は周りの本棚を指差し言う。
「本を使ってって字、読めないんですわよね?」
「いんや、読めるよ。覚えた」
ステフが驚愕した顔でこちらわ見ている。
「あの……聞き間違いですの?言語を一つ覚えたって言ったんですの?」
声を裏返してそう質問した。
「ああ、そうだぞ」
「この短時間にしかも会話しながら?冗談ですわよね?」
顔を引きつらせもう一度ステフが聞いてくる。
「別に驚くことじゃない。会話が問題ない程度に文法も単語も同じなんだ。なら文字さえ覚えれば問題ない。……この程度のこととっくの昔にやり終えた感がある」
遠く昔にこれより難しい言語を当たり前のように使っていた感じ。
そう言う俺を信じられないものを見る目でステフは見ている。
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ステフサイド
文字を覚えるだけ。確かに簡単そうに聞こえますけど、一つ見落としていることにレイは気づいているんですの?
それを誰にも教わらずやるのは学習ではなく解読ですわ。
それを短時間でやってのけて、誇るわけでもない。
レイの世界ではこれが普通なんですの?
この人なら国を変えてくれるかもしれない。
「ちょっとお茶を入れてきますわね」
「おう。ありがとよ」
そう返事を背に部屋わ出た。
キッチンで茶葉を蒸らし、昨日作ったパンケーキを茶菓子として準備した。
砂糖が乏しくあまりパンケーキに使えなかったが香料を使った自信作。
「これでいいですわね」
「あのお嬢様」
メイド一人が声をかけてきた。
「あらなんですの?」
「いえ、申し付けて頂ければ私ども、メイドがお茶もお茶菓子もご用意いたしますのに、無言で始めて、集中しているものですから……どうかされました?」
……?
なんで私はこんなことしているんですの?
………ああ、レイに喜んで欲しかったからですわ。
「あああああああああああああああああああもう!!昨日あれだけのことしてしまったから今日は気をつけようと思っていましたのにいいい!!」
昨晩と同じように壁に頭突きを連打する。
「お、お嬢様が沖を触れに!」
「お嬢様を止めなければ!」
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ノーサイド
ステフが自分で作ったお茶と茶菓子を銀のトレイに乗せ、書斎に戻るとベランダへの扉が開いていた。
ベランダの手すりに不安定に腰掛け、先程と同じように本をんでいる零。
「街、賑やかだな」
「ええ、まだ国王選定ギャンブル大会が続いてますもの」
そう答えてベランダのテーブルにトレイを置いた。
「お茶ですわ」
「悪いな」
本を閉じて、お茶と茶菓子を摘み、街を見下ろす。
「戦争が技術を進める。実際に戦争が奪われたこの状況を見るにそれは正しい」
蒸気機関が無い。農法も古い。本も書き写しで印刷技術もない。
「でも、神話では数千年も前には大戦があった。数千年かけてイマニティがこれなら魔法なんて技術のある他種族の文明はどうなってんのかね?」
これはステフへの問いかけではないのだろう。
「なあ、ステフ。何故王になりたかった?」
だからなのか零はステフに尋ねた。
「はい?」
「確かに王族でなくなったら全てを失うかもしれない。でもそれは何もしなかった場合だ。資産を移したら何不自由無いとは言わないが下級貴族くらいの暮らしは出来たはずだ」
ステフは手摺りに身を乗り出し、街を見下ろす。
「この国エルキアもそこそこ大きな国だったんですのよ?」
その目に映っているのは街ではなく過去なのかもしれない。
「昔、イマニティの国は世界にいくつかあって、その中で一番大きな国でしたの」
皮肉気に笑い続ける。
「『十の盟約』以降、負け続けのイマニティの最後の国になれるていどには」
レイは無言で聞く。
「盛り上がってるように見えまして?でも……エルキアはもうとっくに破綻してますの」
領土を失っていき、結果残るのは人。
資源、食料は不足。
領土が無ければ資源も食料も増やせない。
「私のお爺様は国盗りギャンブルで負けて首都を残すのみになったのは事実ですけど、イマニティはとっくにジリ貧でしたの」
手摺りを握り締め、唇をかみ締めて言う。
「愚王と罵られたお爺様はこれでも国を救おうとした。間違ってる筈が無いですわ」
領土を取り戻さないと先は無かった。
「私はこの国を救いたかった。そしてお爺様が間違っていなかったと証明したかった。このままだと本当に滅びてしまう」
これが零の質問に対する答え。
「残念。その願いはこのままだと次期国王が決まった瞬間に潰える」
零が放つのは希望ではなく絶望の一言。
「どうして……ですの?……滅びない為の時期国王決定戦なのに!」
ヒステリー気味にステフは叫ぶ。
「お前の爺さんは最後の最後に愚王だったよ」
疑問に答えず続けた。
そして今にも殴りかかりそうな。いや、十の盟約が無かったら殴っていたであろうステフに聞く。
「ギャンブル大会はいつまで続く?」
回答を貰えていないことに不満だったがステフは答えた。
「……今日が最終日ですわ」
言いながら太陽を見る。
「夕刻、王の広間で最後の大戦が行われ、勝ち残った人に誰も意義を唱えなければ、その方が次期王ですわ」
カカッと零は笑う。
「そこで異議を唱えてゲームに勝ったら格好良いな」
「へ?」
驚くステフの横を通り過ぎ、書斎を出ようとする。
「王城にお前の爺さんが正しかったと証明に行くんだが……お前も来るか?」