ノーカオス・ノーブレイク   作:零崎哀識

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クラミー

130サイド

 

夕刻 エルキア王城・大広間

 

最後の国王選定戦が終わったと思われるテーブルのイスの片方には黒いベールと黒い服を身に纏った少女

が腰掛けている。

 

なんか偉そうな爺さんが言う。

 

「さて、この者、クラミー・ツェルが国王選定の戦いを最後まで勝ち抜いた訳であるが、彼女に挑む者はおらぬかね?」

 

誰も彼女に挑もうとする者は居ない。

 

話に聞く限り、全戦全勝しているんだから無理もない。

 

俺もそんなのに挑もうとはしない。

 

「では、前国王の遺言に従いクラミー様をエルキア新国王として戴冠する。異議のあるものは申し立てよ。さもなくば沈黙をもって之w「異議あり!!」……え、あるの?」

 

おい、口調乱れてんぞ。

 

挑戦なんかよりこっちの方が絶対面白い。

 

ほら、周りを見てみろよ。広間にいる奴等はざわついてこっちへ振り返り、あともうちょっとで次期国王だったクラミーは目を見開いてこっち見てるぜ。

 

あーみんな間抜け顔。

 

これ見れただけでわざわざ昨日泊まった宿に荷物を取りに行って時間潰した甲斐があったってもんだよね。

 

「……誰?」

 

クラミーは問うがすぐに俺の後ろにいる人物を見て勝手に納得する。

 

「ステファニー・ドーラに雇われたのね。自分が負けて資格が無くなったからって使用人あたりでも送り込んできたの?全く未練がましい上に見苦しいこと」

 

クラミーは軽蔑の目でステフを見る。

 

「それ、お前が言っちゃう?」

 

クラミーのテーブルに近づきながら言う。

 

「どういう意味かしら?」

 

「別に国王の座なんてものに興味ないし、誰がなろうと基本的にどうでもいいんだけどよー」

 

「じゃあ、消えてくれる?ここは馬の骨がひやかしにきていい場所じゃないのよ」

 

「他国の力借りてるイカサマ野郎が玉座に座るところでもじゃねえだろう」

 

その一言に広間はざわつく。

 

そして近くにいた女のローブを引っぺがす。

 

「例えばエルフの力に借りて魔法でイカサマしてたのが王になったらこの国はエルフの物だろうな」

 

ローブを剥がされて慌てて耳を隠したが遅い。尖がった耳を何人もが見ている。

 

異議の少し前には来てエルフを発見してクラミーとの直線上にこのエルフがいるように立ち位置調整しときました。

 

広間は一瞬でクラミーのアウェーになる。

 

「さっき言ったように国王なんかこれっぽっちも興味はねえが、宿が無くなるのは困るんだよねー」

 

エルフが逃げるが別に止めはしない。

 

「……なるほど、適当なエルフと結託して私を人類の敵に陥れようってことね」

 

「指摘する部分いくつかあるが言い訳としては及第点じゃねえの。まあ、ポーカーなんて運要素ほとんどのゲームであれだけ無双してたんだからその言葉誰が信じるかしらねえけど」

 

「ふん。異議があるならゲームをしましょう。あなたが言うエルフの協力者もいなくなったのだしこれで勝てば問題無いわよね?」

 

「確かにそれが身の潔白を署名する一番簡単な手段だ。この場合、異議を申し立てた俺が挑戦者ってことになるのか?なんだお得意のポーカーでもすんのか?」

 

そう言って須磨歩のカメラでクラミーを撮影し、画面を見せる。

 

「ただし魔法でイカサマなんてしたらその時点でゲーム終わるぞ」

 

クラミーは一瞬うろたえ、すぐに余裕を装う。

 

「じゃあ、イカサマなんて介入の余地のないゲームしましょう。準備出来たら迎えに行くから待っていなさい」

 

「了解。ポーカーじゃなくていいのかとは聞かないでやるよ。それと一つアドバイス。写真写り悪いから少しくらい笑ったらどうだ?そっちの方が可愛いと思うぜ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「私達は魔法でイカサマされてたということですの!?」

 

「周りに人が居ないことを確認したのはいいが、そんなにデカい声で叫ぶなよ。クラミーに聞かれたら一発アウトだぞ」

 

クラミーは家で準備しているらしい。

 

「つーか、てめーらが間抜け過ぎる。感知出来なくともそれくらい察しろ。数は多いんだから」

 

「そのようなこと言いましたってレイだってその板で魔法を感知したのでしょう?」

 

「んな訳あるか。酒場であいつの手札の揃い方が不自然だから気付いただけだ」

 

ステフはそれを聞いてポカンと口を開ける。

 

「それじゃあ、イカサマの内容は?どうやってやったのかなどは?」

 

「知るか。全く分からん。どうやってやったんだろうな?さっき言っただろうがイカサマ使ったらその時点でゲームが終わるって。記憶改竄なんてされたらその時点でこっちの負けで終わりだ」

 

「あれってそういう意味でしたの!?」

 

「はあ、だからそんなことにならないようにしたんじゃねえか」

 

叫ぶステフに説明する。

 

「いいか?簡単に説明するがこのギャンブルの総当たり戦は優勝した奴がイマニティ代表だ。だが、この総当たり戦は穴だらけだ。なんたって他国の介入が簡単に出来ちまうんだからな」

 

他国が誰かを優勝させれば傀儡政府の出来上がりという訳だ。

 

その時点で滅びる全く持って愚作としかいいようが無い。

 

(……ただ少ない可能性だがもし前国王はそれを認知しており、あえて見逃し、他国の傀儡の選手を妥当する者をイマニティから探す為のものだったら?その場合、良作ではないが愚作でもない。そんなの策というよりただの大博打だ。)

 

「まあ、これはつまり個人戦だはなく国家戦だ。理解出来るか?」

 

「え、ええ」

 

「で、現状ぎりぎりのところまで成功してんのがエルフなんだが、そのエルフは傀儡の王作ろうとしているのが自分達だけだと思うか?答えはNOだ。他国も同じように誰か適当に見繕ってくると思っている」

 

「た、確かにそうですわね」

 

「なら逆手にとって俺が他国の傀儡に見せればいい」

 

スマホを取り出しステフの写真を撮る。

 

「イマニティが持っていない技術を見せてやり、それが魔法を見破ったかのように見せてやれば分かりやすい魔法、例えば記憶改竄や視覚誤認のような俺に直接関わるようなイカサマはしてこないはずだ。なんたってバレたらその時点で敗北なんだからな」

 

「じゃあ、イカサマ無しの対等な勝負に持ち込めるわけですわね!」

 

ステフは笑顔になるが、俺は呆れる。

 

「お前アホの子過ぎるだろ」

 

「ア、アホの子じゃありませんわ!」

 

「さっき言っただろうが、他国の介入は想定の範囲内って。つまり、俺みたいのが出てきたらどうするか決めてるに決まってんだろうが。じゃなきゃゲームの内容をこっちが決めるまで持っていったわ」

 

「あ」

 

「敵さんが用意してるバレないようにイカサマ出きるゲームにしねえとさっき言ったバレるの覚悟の駄目もとで直接こっちにかける魔法使ってくるかもしんねえだろ?」

 

「でも、イカサマされるのは変わらないじゃないですの!」

 

「大いに違う。魔法に気付かねえ俺等の最大の天敵はさっきから言ってくるこっちに直接かける魔法だ。そんなのに比べたら複雑な魔法で表面上は対等なイカサマありのゲームの方が断然マシだ。こっちが勝てる可能性が少しでも残ってるんだからな」

 

さっきから的外れなことを言っていたステフはここでまとまなことを言う。

 

「……でも、こっちが圧倒的不利なのは変わらないじゃないですの」

 

「ああ。確かにそうだが?」

 

平然に皇帝する。

 

「敵さんには悪いけど俺イカサマ、チート使う相手にはやらなければ良かったと思うほど徹底的に後悔してもらうことにしてんのよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

クラミーの連れてきた馬車に乗って移動する。

 

他の観客は歩きで移動してるそうだ。

 

現在その馬車内

 

「単刀直入に聞くわ。あなた達は何処の間者?」

 

「実は某国のって答えると思った?もしそうならバカだろ」

 

「この国は渡さないわよ」

 

「エルフに渡すんだろう。うん、レイ知ってる」

 

「……違うわ。誰にも渡さない。イマニティの国はイマニティの物よ」

 

「ほう?」

 

予想とは違う答えに話の先を促がす。

 

「あなたが想像もつかないような複雑な契約、交渉を行って最低限必要な領土を確保出来る事になっているわ。エルフの力を借りるのはそこまでよ」

 

「マジで言っちゃってるの?何処の間者か分からない奴に?バカなの?死ぬの?」

 

「あなたが何処の間者だろうと関係ない。勝つのは私だから。世界最大国と真正面からやりあって勝てる国なんてないわ」

 

「第七位が何言ってるんだか」

 

「その言い分だと第六位以上の間者?……それでもいいわ。あんたにイマニティとしてこの国を思う気も気持ちが残っているのなら間者なんて辞めて降りて欲しい。決してエルフの傀儡にさせないと誓うわ」

 

こちらが無言で返答してもなお懇願してくるクラミー。

 

「魔法が感知すら出来ない私達が生き残るには大国の庇護下で生存権利を確保して一切の勝負をせず国を閉ざすしかないのよ」

 

現在問題となっている領土を確保し、鎖国する。

 

確か武力行為が禁止されたこの世界では滅ぶことはないだろう。

 

「なるほどね……あんたみたいな美人から、人類の為の誘いを受けるってのはすっげー格好いいことだよな、こりゃ」

 

「そう。それじゃあ勝負を降りてくれるのね」

 

嬉しそうにクラミーは笑う。

 

「しかしあれだな。あんたみたいな美人から、人類の為の誘いを断るってのは、更に格好いいことだとは思わないか?」

 

「……はぁ、時間の無駄だったわね。ご希望通り、力で捻じ伏せてあげるわ」

 

「他人にケツを振って手に入れた力見せてもらうよ」

 

丁度、目的地についたらしくクラミーはさっさと降りて先へ行く。

 

「いいんですの?あの人の言うこと、一理ありましたけど」

 

クラミーが見えなくなってから馬車から降りた。それと同時にステフが聞いてきた。

 

「お前、いい加減他人の言葉を鵜呑みにしちゃ駄目って理解したら?」

 

指を立てながら言う。

 

「一、あれの言葉が事実かどうかの根拠がねえ」

 

「あ……」

 

「二、本当に必勝ならこっちに勝負を降りろなんて岩ねえだろうが」

 

「あっ!?」

 

「三、全て事実だとしても他の間者に話す間抜けに任せられるか。四、こっちの手ばれたらその時点で終わりだ」

 

「そ、そこまで考えてたんですわね」

 

「最後にあいつもお前も人間(俺)を過小評価すんな。てめえら程度のものさしで計れてると思ってんじゃねえよ」

 

 

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