ちょっと八月中は更新出来なさそう
元王族のステフは雇った。
仕事は俺の代わりに内政するだけの単純なお仕事。ブラックじゃないよ。
なんたって最初に俺が各大臣に元いた世界の出来る範囲の技術を片っ端から教えて政策に革命を起こしといたから。今のところは問題が無いか見るだけだし。
ちゃんと大臣達には嘘の情報を送ることと情報の恣意的な伝達を盟約によって禁止してあるから俺の脚を引っ張ることは無いだろう。
そんで、俺は王室で印刷技術によって手に入りやすくなった本を読んでいる。
「つーか、クラミーもただ飯食ってないで働けよ」
俺と同じように本を読んでいるぷー太郎ことクラミーに言う。
「この部屋の掃除してるじゃない」
「他にもやれよー」
「はあ、あなたと一緒の空間にいないといけないんだから使用人の真似事も出来ないじゃない」
「ま、そうだよなー。エルフの間者に国政関わらせるわけにいかねえしなー」
コンコンと部屋の扉が叩かれる。
「レイじゃない陛下、お客様ですわ」
入ってきたのはステフだった。
「通していいよ。あと別に名前でいいから。陛下とか固っ苦しい仲じゃねえだろ」
「は、はい!分かりましたわ」
はて?なんか嬉しそうにステフは客を呼びに行く。
「あなたわざとやってるの?」
クラミーがジト目でこっちを見ているがこちらもはて?
「やあ、一週間ぶりだね」
ステフが連れてきた客の少年。
「なんだ自称神様か。なんかよう?」
「全く、自称じゃなくて正真正銘神様なんだけどなあ」
笑いながら頭の帽子を神さんは直した。
「そう言えば名乗ってなかったね。『テト』……それが僕の名前。よろしくね『130』さん」
瞬間、空間の雰囲気が変わる。
ステフ、クラミーの毛穴は開き、冷や汗をかく。
二人を置いてきぼりにして俺とテトの話は続く。
「どう僕の世界は気に入った?」
「まあ、ここは元いた世界と違って未体験に溢れている」
「それは何より。どうやらとりあえずのところはイマニティ存命の危機は回避したみたいだね」
「まあ、あんたの要望通りにな」
ステフとクラミーはえ?という顔をする。
「たまたま近くにあった街がたまたま人類最後の国でたまたま国王決定戦?出来すぎだろうが」
「僕もやり過ぎたと思ったんだけど今回は特別だよ。いつもなら特定な種族に肩入れなんてしないし」
テトはふてくされたように、退屈そうに言う。
「全てがゲームで決まる世界って言ったの覚えてる?」
「まあな、安心しろよ。俺は唯一神の座さえゲームで決まることを理解してっから」
「「なっ!?」」
ステフとクラミーが絶句する。
「正解。『十六種(イクシード)』をわざわざ設定したのに誰も気づいてくれないんだもん」
チェスの駒の総数は32個。地平線にある盤上に並ぶ駒は黒く16個ある。
では残りの駒は?俺は懐から『種の駒』を取り出した。
「前種族の駒の確保が挑戦権ってところか」
「うんうん。その頭の回転いいねー。ホントに初めて異世界来たと思えない順応性」
「……ノーコメント」
「せっかくそんな馬鹿デカいもの賭けようって言ってるのに誰も来なくてここ何千年暇なんだよね。その暇潰しに異世界ぶらついていたら『130』の噂を聞いてね」
「俺って別にトップ目指すタイプじゃないぞ」
忠告するとテトは笑って言う。
「確かにあっちの世界、君が言う退屈な暇潰しならそうかもしれない。でも、唯一神の座を賭けて戦うゲーム。君の琴線に触れると思うんだけど、違った?」
「カカッ!!確かにその通りだな!でも、笑っていいか?」
肯定し、そして、問う。
「何をだい?」
「お前、あんだけ弄ばれたのに懲りねえのか?」
ステフとクラミーはもう一度耳を疑う。
神がただの人間に弄ばれた?
「ふふ、確かに僕は『普通のチェス』で君にこてんぱんにされた。だからこそ君を呼んだ」
「正直に言えよ。悔しかったって」
親しみを篭めて、不適にテトに笑いかける。
「遊戯の神様はあの危機的状況から残されたキングとポーンで逆転しようと全力でガンガン頭を回したんだろ?自分の策が上手くいくか楽しみにドキドキと胸を鳴らしたんだろ?」
テトはまだ笑顔だが目を細める。
「でも、それを台無しにされた。策も掴めたかもしれない勝利もあの状況に対する興奮を俺の一手で台無しにされた。まるで『もう勝負ついてんだし俺の勝ちで良くね?』とでも言われてるかのように」
「どうしてそう思うんだい?」
「だって悔しがると思ってやったもん」
悪びれなくそう言う。
「うん、その通り。あのゲームは負けるより悔しくて悔しくて世界に八つ当たりで壊しちゃおうかなって思うほどだったよ」
ただの人間一人のせいで世界一つが終わるところだったのだ。
「だから、絶対に君を負かして泣かす。ただの仕返しの為にこの世界に呼んだ。ガッカリした?」
「別に、あそこまでやられて俺に向かってくる奴なんて未体験だ」
俺は楽しそうに笑う。
「それとは別にして情報をあげるよ。この退屈な世界に熱を取り戻してくれたお礼としてね」
「ありがとさん」
「うん。感謝するといいよ。まず東部連合は君のスマホに気になるみたいでどこの間者か気になって夜も眠れないみたいだね。なんでだろう?好奇心の塊のアヴァトンヘイズも魔法を破った技術に興味津々。そこの黒髪の子が所属してるエルヴン・ガルドも自分達を負かした技術を作った国を血眼になって探してるよ。もしイカサマなしってバレたら解剖されるんじゃない?」
最後の言葉でクラミーのレイのイカサマをしていないことを納得したが、有り得ない者を見る目で見てくる。
「それじゃあお暇しようかな」
「なあ」
帰ろうとするテトを呼び止める。
「この世界に生まれ直させてくれてありがとな。退屈せずにすみそうだ」
「「また、近い内にチェス盤で」」
そして目の前からテトが消えた。
今起こったことが信じられないと呆然に立ち尽くす二人に言う。
「最終目標が決まったぞ。『僕は新世界の神になる』で」