FEマケドニアから始まる転生物語   作:乾燥海藻類

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第01話 草原の狼退治

マケドニア王国って知ってるかい?

アカネイア大陸の南西部、ドルーア帝国の南に位置する王国さ。元々はドルーア領の一部だったんだけど、奴隷出身の若者アイオテが反乱を起こし、建国したのが始まりだ。

 

しかし国を興したものの、周辺諸国の評価は低かった。奴隷が興した国だと見下される。そもそもマケドニア王国の前身であるドルーアも、未開の蛮族と蔑まれていた。

数少ない文献には「彼らは自らの武器も作れない未熟な種族であったが人語を話す事ができ、自分達の長はメディウスであり自分達の国はドルーアであると語った」と記されている。

 

でもさぁ、自らの武器も作れない未熟な種族であったっていうけど、それって必要がなかっただけだろ。竜族には強靭な身体があり、爪や牙がある。種族によっては強力なブレスを吐くこともできる。

そりゃあ武器なんて必要ないだろう。たぶん自分たちの都合が良いように記録したんだろうな。

 

そしてマケドニアで外せないものといえば、飛竜(ドラゴン)天馬(ペガサス)だ。アイオテの反乱で用いられたゲリラ戦術を祖としているのが竜騎士団であり、天馬騎士団と併せて強大な武力を誇っている。

この飛竜であるが、代々交配を繰り返してきたもので、野生のそれと違い火を吐く能力は失われているが、人間に従順であり、軍用としてしっかりと訓練されている。戦闘では高い機動力を活かして、奇襲戦に用いられた。

 

国土も山岳から土砂を運ぶ肥沃な平原があり、生産性も非常に高いのだが、国の成り立ち上アカネイア貴族達には属国扱いされている。

また先代王のオズモントが卑屈な男であり、アカネイアの貴族たちにヘコヘコしていたのだ。

ある時、大陸規模で大飢饉が起こった事がある。そんな事態であるにもかかわらず、オズモントはアカネイアの言うがままに従い、食料を差し出していたのだ。

たぶんそれが、ミシェイルの中で父王への期待がゼロになったのだと思う。

 

決定打となったのが、ドルーア帝国の再興だ。メディウスが蘇り、マケドニア領内にドルーア帝国を復活させた。

この時オズモントはアカネイアに援軍を要請し、共闘してドルーアを倒すつもりだった。だがミシェイルはアカネイアが援軍を派遣するとは思えず、尖兵としてマケドニアがすり潰されると思った。

 

だから父王オズモントを謀殺したのだろう。オズモントの死は、ドルーアとの同盟を決意した王を抹殺するために、アカネイアから刺客が送り込まれたのだと発表された。

真相はミシェイルがガーネフの奸計に嵌まって気が逸ったんだけど。まあそれがなくとも遠からずあの二人は決裂したと思う。

その後、ミシェイルはドルーアと同盟し、アカネイアの城砦を次々と落としていった。

 

さて、前置きが長くなったが、マケドニア貴族の俺は今、オレルアンにいる。

貴族に生まれたと知った時は、楽して生きられると思ったものだが、世の中そんなに甘くなかったぜ。

オレルアン占領軍に派遣された俺は、残党軍との戦いに明け暮れていた。主な相手は王弟ハーディン率いる狼騎士団である。

やっぱ占領政策が上手くいってないのが大きいよな。ミシェイルも忙しいのは分かるが、もうちょいこっちに興味持ってくれてもいいんじゃないかな。

あいつの目が届かないからマリオネスはやりたい放題だよ。そりゃハーディンも暴れるっての。

 

「よう、しけた(ツラ)してどうした。悩み事か?」

「ああ、マチス殿。なに、少々人生の不条理に嘆いていただけですよ」

「ああ、そりゃあこんな前線に送り込まれちゃあな。それよりな、そんな畏まった口調じゃなくていいぜ。俺たちは轡を並べて戦ってる仲間じゃないか」

 

そう言ってマチスはにへらっと笑った。相変わらず無茶言ってくれるぜ。俺もマチスも貴族の出なんだが、家格は全然違う。俺はしがない男爵家の息子だが、マチスは伯爵家の出だ。男爵ってのは爵位の中でも一番下、下っ端なのだ。

そんなヤツが伯爵の息子にタメ口で話したらどうなるか。マチスは気にしなくても、周囲が気にするのだ。それで余計ないざこざが生まれるのは勘弁である。

 

「いやいや、拙者しがない男爵家の出でござれば。そのようなこと、とてもとても」

「拙者っておまえ……。まあいいや。俺もなぁ、レナがミシェイル様の求婚を断ったりしなけりゃ、実家で居られたのになぁ」

 

マチスがしみじみとつぶやく。どうも勘違いしているようだな。

 

「マチス殿。妹御の件がなくとも、私たちは前線送りにされていましたよ」

「……どういうことだ?」

 

マチスはミシェイルの勘気に触れて軍に入れられて前線送りにされたと思っているようだが、俺たちは人質なのだ。つまり俺たちの親がミシェイルを裏切ったり歯向かったりすれば、俺たちは簡単に"戦死"するというわけだな。

マチスはポカンとした表情で俺の説明を聞いていた。

 

もしかしてマチスが簡単にアリティア軍に寝返ったのって、ここら辺の事情を理解してなかったからなのかな?

さすがに自分のせいで家族が殺されるかもしれないと考えたら、逃げるならともかく、寝返りはしないと思うんだよね。

 

「……そうだったのか。やっぱりミシェイル様はおっかないお方だな」

 

貴族の息子が多いから気づきそうなモンだがな。

どうやらマチスはかなりの箱入りっぽいし、世俗に疎いのも仕方ないのかもしれない。

レナもレナだよな。王族からの求婚を断るって相当だぞ。ミシェイルの面子とか実家の事とか考えなかったのだろうか。

やっぱこの兄妹って色々と自由だわ。

 

まあマチスのことはいいや。

この戦場で俺がやるべきことは、ハーディンを仕留めることだわな。オレルアンの残党はハーディンで持っているといっても過言ではない。

あいつを仕留めればさすがに折れるだろう。後の第二部もなくなるだろうし。

メディウスはまぁ、マルスがなんとかするんじゃないかな。なるようになるだろ。

よし、悪いがハーディンくん。キミには死んでもらおうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやぁ~、無理でした。

やっぱ強ぇわあいつ。個の力もそうだが、統率力がハンパない。オレルアン四天王を巧みに使い、常に有利な状況で戦っているのだ。

つうかさぁ、火力が足りねぇんだよ! 火力が!

なんで小隊長の俺が鋼の槍なんだよ。ナイトキラーよこせ。どうせ司令官のおまえは砦でふんぞり返ってるだけのくせによぉ!

 

って言えたらなぁ。せめて相手と同等の銀の槍が欲しい。それならなんとかなる……かもしれない。

てかハーディンの初期装備って鋼の剣じゃなかったか? 俺の記憶違いかなぁ。まあゲームじゃないんだから、普通に考えて銀の槍くらい持ってるよな。王族なんだし。

 

そろそろゲーム脳で考えるのはやめよう。マルスだって二年もタリスで雌伏の時を過ごして、それでレベル1スタートは現実的にあり得ないよ。

遊んでたのかよってツッコミが入るところだ。ハーディンもパラディンくらいの力を持っている。自慢じゃないけど俺もそこらのパラディンよりは強い。受勲はしてないから当然聖騎士(パラディン)ではないんだけど。

 

そもそもなんでミシェイルは最後までやり切らなかったんだろうか。現在マケドニア軍はオレルアンの大半を手中に収めている。

そう、大半である。全土ではないのだ。しかも王族を取り逃がしている。にもかかわらずミシェイルは討伐軍を編成せず、オレルアン城の防備に務めよという軍令を出しているのだ。

ああ、ちなみに俺たちが守っているのはオレルアン城の南にある砦である。この砦を無視してオレルアン城を攻めると、後背から襲われる危険があるため、ハーディンたちはまずこの砦を落とそうとしているのだ。

 

まあ、たぶんドルーアの横槍じゃないかな。マケドニアが力を持ち過ぎるのを危険視しているのだ。ミシェイルもまだドルーアと敵対するのは早いと判断して、この条件を受け入れたのだろう。

 

なんかもう、閉塞感があるよな。ミシェイルも自分の考えをさらけ出すタイプじゃないし、心から信頼できる臣下もいない。

だから他の貴族たちからは独善的な王に見える。ドルーアに妹のマリアを人質に差し出したのだって、他の人間に相談なんかしてないはずだ。

 

原作だとマチスは普通に寝返ったし、ミネルバも天馬騎士団を連れて裏切ったし、マリアも間接的に裏切ったし、やっぱダメだわあいつ。

何考えてるか分からないもの。夢や野望を語るわけでもないし、マケドニアのことを考えてるってのは分かるんだけど、言ってみればそれだけ。

最終的な絵図が見えてこないのだ。ドルーアもなんか不気味だし。それが臣下の総意だと思う。

 

このミシェイルと対照的に語られるのが、マルスである。ミシェイルが個の英雄だとすれば、マルスは群の英雄だ。

人を惹きつけ、人を使いこなす才を持つ英雄。たぶんミシェイルはそれが認められなかったんだろうな。だから膝を折ることができず、最後まで抗い続けたんだと思う。

孤高の王。それが俺のミシェイルに対する印象だ。

 

さて、それを踏まえた上でどうするか。

心情的にはミシェイルに同情するが、アリティア軍に降るのが一番な気がする。投降なら家もギリ許される気がするんだよな。希望的観測かもしれんけど。

う~ん。やっぱギリギリまで足掻いてみるか。

ハーディンくん。やはりキミには犠牲になってもらう。

 

 

 





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