FEマケドニアから始まる転生物語   作:乾燥海藻類

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第12話 マルスの帰還

「ガーネフの霊圧が消えた?」

 

ような気がする。

そろそろマルス一行も帰って来るんじゃないかな。やっぱ移動時間がゼロってのは大きいね。

性格やスタンスは好きになれないが、能力は一級だよな、ガトー。

 

「アルヴァお兄ちゃん。このお菓子おいしいね」

 

チキがにぱっと笑う。チキはマケドニアに残っていた。その代わりに、バヌトゥがマルスに同行している。

その後ろでは副長が直立不動で目を光らせていた

 

彼女の立場は宰相付き補佐官。要するに俺の秘書兼護衛なのだが、専らチキの世話を頼んでいる。

だがそんなに緊張しなくても暗殺者なんてもう来ないよ。

 

最初に襲われたのは、侯爵をギロチンにかけてすぐだった。返り討ちにして侯爵の隣に並べてやった。俺は自分の肉親を殺されて黙っていられるほど人間ができちゃいない。相手が侯爵だという理由だけでそれを諦めたりもしない。

あいつは俺が戦死したと思って油断していたからな。簡単に捕らえることができた。

いやぁ、まさか戦死がここで役立つとは。素直に同盟軍に降っていたり、行方不明とかなら侯爵も警戒したり各所に手を回したり……したかな? だいぶ無能に見えたけど……護衛やアサシンのレベルも低かったし。

いや、やめよう。この理屈だと無能に親父が殺されたことになる。侯爵は手強い相手だった。

 

ミネルバが俺に宰相という地位を与えたのも、存分にヤレということなんだろう。自分の運命に決着をつけろと。

さすがだぜミネルバ。俺はあんたを少々見くびっていたようだ。やはりこの国の王はあんたしかいない。そのための道は俺が作る。まずはゴミ掃除だ。

掃除は大事だ。精神を安定させ、何事もなく静かに日々を過ごす秘訣は掃除です、と偉い人も言っている。

 

侯爵のあと、何人かの貴族も掃除して、掃除するまでもない貴族とは融和を図った。領内に修道院の設置を約束させたが、たぶん意味は分かってない。

建設費用も人員もこちらが用意すると言ったので、彼らは適当な土地を明け渡すだけで済む。つまり懐は痛まない。

名目は孤児の保護と教育だ。ミネルバの承諾も得ている。

 

ゆくゆくはシスターを育て上げ、大陸を行脚させて困っている人たちの治療を行う予定だ。そんな構想を語ると、レナは諸手を上げて賛成した。

彼女の家が協力者となるのはとても大きい。だがその裏に隠された真実には気づいてないんだろうな。

 

しばらくして、マリアが姿を現した。

レナの引いた椅子に座り、ほほをプクっと膨らませてこちらを睨んでいる。

 

「久しぶりね、アルヴァ」

 

声には刺々しさがあった。最近かまってやれなかったからな。

 

「はい。四日ぶりでございますね」

「……そんなに忙しかったの? 無理しちゃダメよ」

 

マリアの表情がふっと緩む。心配をかけたかな。

 

「いえ、掃除が佳境に入っていたもので」

「お掃除?」

「はい。長く(いえ)を空けていたもので、帰って来たら鼠やら虫やらがおりまして、大変でした」

「……それはイヤね」

 

マリアが眉根を寄せる。お茶の席でするような話ではなかったな。レナも笑顔を引きつらせていた。彼女も虫が苦手なのだろう。

ミネルバはリュッケ将軍を助けたかったらしいが、あいつマリオネスと結託して相当貯め込んでたからな。確実に隠し財産とかもあるだろうし、放っておいたらロクなことにならんよ。その金の大半は国庫に納めて、戦後のインフラ整備に使わせていただきます。

ありがとう、リュッケ将軍。

 

それに、ミネルバはリュッケ将軍の武をかなり評価していたように感じられたが、たぶん子供の頃のイメージが強いんだろう。

十年前ならリュッケ将軍は今より強く、ミネルバは今より弱い。さぞや強く、頼りがいのある将軍に見えたことだろう。

だが今のマケドニア軍にはリュッケ将軍よりも腕の立つ者は結構な数見受けられた。むしろリュッケ将軍らがいるせいで、そいつらが上がってこれないのだ。

そういう意味でも、彼らにはいなくなってもらった方が良い。アカネイアも、将軍を五人も首にしたとなれば、それなりに納得するだろう。

 

「マリア。これおいしいよ」

 

チキがマリアにジャムの乗った焼き菓子を勧める。

 

「うん。おいしい」

「ねぇ~、レナお姉ちゃんも、はい!」

「ありがとうございます。いただきますね」

 

レナはチキから手渡された菓子を笑顔で受け取った。マリアの付き人であるレナがこういったことをするのは良くないのだが、彼女は空気を読んで菓子を口に運んだ。

とそこで、マリアがレナのシスター服をクイクイと引っ張り始めた。

 

「んっ、アルヴァ様。姫様との婚姻が進められていると伺っておりますが、挙式はいつ頃をお考えでしょうか」

 

知らんがな。そんなことはミネルバに訊いてくれ。いや、これは俺の意思を確認するための問いかけか。

 

「そうですね。やはり戦後になるでしょう。マルス王子がガーネフを打倒すれば、残すところはメディウスとの決戦だけになります」

 

まあそれが一番の難関なのだが。とはいえ俺の出番はないだろう。メリクルソードかグラディウスを預けてくれるなら突っ込んでもいいけど、それはアカネイア貴族が絶対に了承しない。

残念だなー、俺もなー、神器があればなー、相手がメディウスだろうと戦ったのになー。

そんなわけで、やるとしても露払い程度だろう。

 

いやぁ、グラディウスはマジで興味あったんだけどな。あれ絶対脳波コントロール(サイコミュ)の一種だろ。ゲームだと射程2マスだったけど、もっとありそうな気がする。13kmとか。

 

「ねぇねぇレシアお姉ちゃん。こんいんってなに?」

「婚姻とは結婚を約束することよ」

「じゃあけっこんって?」

「結婚とは……ずっと一緒にいると約束すること、かな」

 

レシアがそう教えると、チキの目が輝きだした。

 

「じゃあわたしもアルヴァお兄ちゃんとけっこんする。ずっと一緒!」

「ダ、ダメ~!」

「え~、なんで~。あ、分かった! マリアともけっこんするよ。レシアお姉ちゃんもレナお姉ちゃんも。みんなずっと一緒だよ」

「ええ、もちろんいいわよ」

「ふふっ、それもいいかもしれませんね」

 

チキの提案に、副長とレナは笑顔で答えた。マリアはなんか、むぐぐって表情を浮かべている。

 

「レ、レシア! あなたチキを認めさせて三人目を狙ってるわね!」

「さて、何のことでしょう」

「レナも! ジュリアンはどうなったの!」

「姫様。私はチキさんと結婚するだけで、アルヴァ様と結婚するわけではありませんよ」

 

まあ今の話だとそうなるよな。レナは一言も俺と結婚するとは言ってないわけだし。

とそこで、一人の兵士が近づいてきた。和やかな時間は終わりのようだ。

マルス一行がテーベから帰還したと、伝令の兵から報告された。

闇の司祭ガーネフを打倒し、無事に姉エリス王女を救出したとのことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、アルヴァのお兄ちゃん!」

 

中庭を歩いていた俺を見つけて、チキが笑顔で駆け寄ってくる。

 

「ねぇねぇチキと一緒に……どぇっ!? 何するんだっ! こ、怖いよ、お兄ちゃん」

 

首筋に剣を添えられても演技をやめないとは。胆力はあるのかな。

 

「神竜族の末裔たる少女に化けるとは、とんだ不届き者だな。このまま首を刎ねてやっても良いが、弁明があるのなら聞いてやろう」

「――くっ、何で分かったんだ?」

 

両手を上げた偽チキが、逆にこちらに問いかける。質問を質問で返すなと親に教わらなかったのかな。

 

「チキは俺のことを"アルヴァのお兄ちゃん"ではなく"アルヴァお兄ちゃん"と呼ぶ。そして一人称は"名前"ではなく"わたし"だ。さらに言うなら、あいつが一緒ではない。それで気づかないのはよほどのマヌケだ」

「ちっ、分かった分かった。降参だよ」

 

偽チキはため息を一つ落とし、本来の姿へと戻った。

 

「俺はチェイニーってんだ。よろしくな」

「アルヴァだ」

 

チェイニーはここで加入か。ゲームではアリティア城に囚われていたはずだが、俺が調べた限りではチェイニーはいなかった。リーザ王妃救出の際、地下牢は真っ先に調べたからな。

まあカミュがカシミア大橋で出てきたし、いまさらか。

 

こいつの能力って戦闘よりも策謀向きなんだよな。極端な話、マルスに化けてニーナを殺すだけで同盟軍は瓦解する。

そりゃメディウスも味方に引き入れたいわけだよ。

 

「まったく、ガトーも面倒な仕事押し付けやがって……」

 

チェイニーがブツブツと文句を零している。なるほどな、ガトーはチェイニーを使って俺を探りに来たのか。相変わらず自分で動かないヤツだな。

 

「ところでチェイニー。ガーネフは仕留めたんだよな」

「ん? ああ、間違いねぇよ。ヤツが消滅するのはこの目で見たぜ」

「復活したりはしないだろうな」

「……ねぇよ。死んだ人間が生き返るわけないだろ」

 

そういう意味で言ったんじゃないんだが、やっぱオームの杖は秘匿されている感じか。まあ死者復活って最大の禁忌っつーか、トラブルの種になるのは目に見えてるからな。

ちなみに、オームの杖が使えるのはアリティア王女エリスだけである。王家の血を引く女性なら使えるというパターンもあるが、正直懐疑的だ。というのも、王家の血というのが曖昧すぎるからだ。

 

アカネイアの祖であるアドラ一世は盗賊だし、マケドニアの祖であるアイオテは奴隷だ。アリティアのアンリは村人、タリスのモスティンも村人、オレルアンとグルニアは、おそらく騎士階級だったはず。

まあそんなわけで、エリス専用と言われた方がしっくりくるのだ。ガーネフがエリスを攫った理由にも納得できる。

王家の血を引く女性でOKなら、人質として差し出されたマリアかユミナの方が簡単に手に入るだろうし。

 

少し話が逸れたが、ゲームをやってて思ったのは、なぜカミュを蘇生させなかったのかということだ。ゲーム的に言うならカミュは「味方ユニット」じゃないからと理由付けできるが、現実にはそんなの関係ないよな。色々と問題があるのは分かるけど、ニーナが強権を発動すれば叶いそうな気もするんだ。

まあマルスがニーナにまで隠している可能性もあるが。

とはいえ、ゲームではカミュは死んでいなかったから、どの道復活はできなかったがな。

 

この世界でも、カミュはたぶん死んでない。遺体が上がってないんだ。カシミア大橋の戦いの後、アカネイア貴族たちは投降したグルニア兵たちにカミュの遺体を捜索し、引き上げるように命じた。同盟軍の兵を使うと進軍が遅れるからだ。

これもバカだよなぁと思う。仮に見つけたとして、引き渡すと思うか? 間違いなく隠すだろ。辱められるのが分かってるんだから。何でも自分の思い通りになると思ってるんだろうな。

やっぱアカネイア貴族ってクソだわ。

 

マルスとしては、父コーネリアスを復活させたいという想いもあるんじゃないかな。といっても彼の性格からして、戦場で散っていった仲間たちを慮って、私的な理由で使用するのは躊躇うかもしれないが。

 

「そうだな。だがガーネフの持っていた闇のオーブは精神エネルギーを増幅させる効果があるんだろ。精神だけが復活する可能性はないのか?」

 

チェイニーの表情が苦いものへと変わる。即座に否定しないあたり、あり得るかもと思っているのだろう。

 

「闇のオーブはどうなった?」

「ガトーが回収した……はずだ」

 

そこは断言してくれよ。大事なとこだぞ。

 

「だったら、今度は盗まれないようにちゃんと管理しておくように伝えてくれ。大賢者ガトー様にな」

「……ああ、分かったよ」

 

チェイニーは苦虫を嚙み潰したような顔で頷いた。

 

「ホントに、何なんだよおまえは……」

 

チェイニーの零した呟きは聞かなかったことにした。

 

 

 





チェイニーの変身ってどこまでコピーできるんでしょうね。ステータス(能力)だけで記憶は無理なのかな。でも技や経験も記憶だし、身体能力だけ上がっても本人と同じような戦闘はできないだろうしなぁ。
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