FEマケドニアから始まる転生物語   作:乾燥海藻類

13 / 14
第13話 最終決戦

メディウスが竜化した姿を見た者はいない。

これはメディウスの復活が不完全だったことを意味している。だからガーネフはマケドニア・グルニア・グラを同盟に引き込んだのだろう。

もしメディウスが完全に復活していれば、自分が先頭に立ってパレスを焼いたはずだ。

それを証明するように、同盟軍が目前に迫っても、ドルーアが攻めてくる様子はない。

メディウスが竜化できるのは復活した場所、つまりドルーア城内のみだと思われる。

 

「と俺は推察するが、どう思うチェイニー」

「ああ、まあ辻褄は合うな」

 

チェイニーが焼き菓子をボリボリ齧りながら答える。

 

「じいさんはどう思うよ?」

「そうじゃな。合っておると思うよ。メディウスの凶暴さはお主も分かっておるだろう」

「まあ、な」

 

ズズッと紅茶をすする。チェイニーはバヌトゥと面識があった。その正体はナーガやチキと同じ神竜族だ。だが今の姿を見ても分かる通り、若い竜らしい。

ちなみに、チェイニーは自分から神竜族とは名乗っていない。だがチキに構ったり、バヌトゥと旧知のように接したりと、察しの良い人間なら竜族だと気づくだろう。

変身能力も隠していないみたいだしな。いや、あれは竜族にしてもかなり珍しい能力な気もするが。

そんな俺たちの会話を、副長は無表情で聞いている。

 

「俺に言わせれば、メディウスもガトー様も極端だと思うけどな。人間にだって良いヤツもいれば、悪いヤツもいる。人類全体がどうのとか、人間がどうのとか、勝手に期待して勝手に失望して、そんなことで大陸を何度も騒乱させるなら、いっそ昔の戦争で人類を見捨てておけばよかったんだ」

 

俺がそう言うと、バヌトゥとチェイニーだけではなく、副長までもが呆気に取られていた。

 

「過激じゃのぉ」

「なんだおまえ、破滅主義者か?」

「終わりは来るってことだよ。森羅万象、諸行無常、全てに終わりがある。栄華を極めた竜族にさえ終わりの時は来た。人間が絶滅していないのは偶然の重なりにすぎない。この戦争だって最初にメディウスがニーナ姫をキッチリ仕留めていればここまでこじれることはなかった」

 

まあそれでも最終的にはメディウスvs人間になったと思うが。

 

「達観した考えじゃの」

「興奮しすぎだ。ちょっと落ち着けよ」

「チキを眠らせたのだって勝手な理屈だろ。理性を失って人間を襲うかもしれないから眠らせる。ナーガは自分の娘より人間を優先したんだ。だがそれを知らない人間は感謝なんかしやしない。ガトーだって同じことをするかもしれんぞ。またチキを眠らせるかもしれない」

 

やべ、ガトーに様つけるの忘れたわ。まあいいか。チキは自分の名前が出てきたことに驚いたのか、ハッとしてこちらを向いた。

 

「チキはもう長い間眠るのは嫌だよな?」

「イヤ! だってずっと長い間ひとりで眠ってたんだよ。おじいちゃまが連れ出してくれるまで、何度も何度もこわい夢を見たの。もう眠るのはイヤ! みんなと一緒に暮らしたい。眠りたくないよ」

 

涙を浮かべるチキの髪を優しく撫でる。

 

「大丈夫だ。俺がおまえを護る。バヌトゥ殿も護ってくれる」

「うむ。今度は誰にも渡したりはせぬ」

「ほんと? 約束だよ」

 

チキと約束の指切りを交わす。何故か副長も泣いていた。チェイニーは何故かムッとしている。

 

「なんかスゲー疎外感。つかおまえ、じいさんに比べて俺の扱いが雑じゃねぇか?」

「目上の者には敬意を払うさ」

「俺もおまえより年上だよ。気づいてんだろ、俺も竜族だって。チキだっておまえより年上だ」

 

いきなりカミングアウトしたな。まあいまさらだが。

 

「眠ってた期間はノーカンだろ。おまえの場合は、出会いが出会いだからな。自業自得だ」

「ノーカン? ちっ、あれは余興みたいなモンだろ、ったく」

 

チェイニーは不貞腐れたように焼き菓子を口に放り込んだ。

 

「ガトー様は人間に期待しすぎなんだよ。理想を押し付けすぎるんだ。人類全体が正しくなることなんてあり得ない。人間には欲があるからだ。そして欲があるから技術が発展した。競争という争いは歴史の必然なんだ。それとな、アカネイアの秘宝、マルス王子の持つ紋章の盾が封印の盾だと、ガトー様に教えてやれ」

 

ガトーは変化を嫌っているような感じがするんだよな。魔法があるなら世界はもっと変わっているはずなんだ。攻撃に限定せずとも、炎・雷・風なんていくらでも利用方法がある。

考え方が古いというか、頭が固いというか、だから"先"を見ているガーネフの考えを理解できなかったんじゃないかな。

ガーネフは真っ当に魔導を発展させたかったんだと思う。だが闇のオーブの影響で狂った。嫉妬と妄執に囚われ、進歩の名の下に狂気の夢を追った愚か者に成り下がった。

 

むしろこの世界の技術発展の速度が遅いのは、魔法があるせいだと思ったくらいだ。魔法なんて中途半端に便利で、中途半端に使える人間が限定されるモンがあるから、技術革新が起こりにくいのだ。

いくら天才が生まれても、何の下地もなしにヒラメキが降ってくることはない。一を知って十を知る天才でも、一を知らないならその才も埋もれたままになる。

だから識字率の向上や教育の普及が必要なのだが、一部の貴族たちがそれを良しとしない。なんせ奴隷がいるような世界だからな。

こういった根幹の部分をどうにかしないかぎり、この世界では千年経っても大規模な技術革新は起こらないだろう。

 

「……ホントに、何モンなんだよおまえは……」

 

おっと、思考の渦に沈んでチェイニーのことを忘れていた。チェイニーは半眼で俺を睨みながら、小さくため息を零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルスがテーベより帰還して七日が経った。遠征の疲労も抜け、陣容を整えた同盟軍はついにドルーアの地に足を踏み入れた。

そこには数多くの魔竜が戦闘態勢で待ち構えていた。

怯える兵士たちにマルスの檄が飛ぶ。

 

「アカネイア同盟軍の勇敢なる兵士たちよ! 臆してはならない! 大陸に平和を取り戻すために! 我らと我らの子孫のために! 我々は負けるわけにいかない!」

 

マルスの声が戦場に響き渡る。兵士たちから歓声が上がった。

 

「偉大なるアドラ一世よ照覧あれ! 勇者アンリよ(みな)に勇気を与えたまえ!」

 

右手に持つ神剣ファルシオンを掲げる。日の光を受けたファルシオンは神の威光のように光輝いていた。

歓声がさらに強まる。士気が絶頂に達した時、マルスの剣が振り下ろされた。

 

「我に続けぇーーー!!」

 

マルスの合図で戦闘は始まった。

 

「では俺たちも行くか」

『ハッ!』

 

三人の声が重なる。バヌトゥは本陣に配置されていた。チキはメディウス戦を想定しての温存である。竜を相手にするのは初めてだが、なかなかの威圧感だ。だが臆するわけにはいかない。

 

「ロートとグリューンは後方から援護してくれ。副長は距離を取りつつ撹乱。ブレスの兆候を見逃すなよ。切り込み役は俺がやる」

『了解です』

 

一体の魔竜に標的を定め、距離を詰める。こちらに気付いた魔竜が鎌首をもたげた。あれはブレスは吐く時の予備動作だ。

 

「副長、横だ!」

 

副長が素早く横に飛ぶ。標的が分かれたことで、魔竜に一瞬の隙が生まれた。前方に突っ込んだ俺の頭上を闇のブレスが過ぎ去っていく。

懐に飛び込んだ俺は、手にしたドラゴンキラーを魔竜の下腹部に潜り込ませた。

 

「くらえッ!!」

 

斬り上げたドラゴンキラーが魔竜の腹部を切り裂く。溢れ出た臓物がビチャビチャと大地を濡らした。

力なく斃れてくる魔竜の首を両断し、第一戦は終了した。

 

「さぁ、次だ!」

 

苦戦している兵士たちの助太刀に向かう。少しずつ、しかし確実に、メディウスの待つドルーア城に近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多くの犠牲を払い、俺たちはついにドルーア城の最奥へと辿り着いた。

 

「みんな、行こう! 地の底からよみがえった暗黒竜メディウスを、永遠の闇に葬り去るために! そして、失われた光をこの世界に取り戻すために!!」

 

マルスが荘厳な扉を押し開く。その瞬間、暗黒の瘴気のようなものが全軍を包んだ。空気の重さが増したような、重力が倍化したような錯覚を覚える。

 

「ここから先は、選ばれし者しか進めぬようじゃ」

 

いつの間にかマルスの隣にいたガトーがマルスに向けて呟く。

 

「アルヴァお兄ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫……と言いたいところだが、こう身体が重くては、いつものようには動けんな」

 

まとわりつくような空気が身体の自由を奪っている。ゲーム的に言うなら、ステータスが半減しているような感じだ。

 

「アルヴァお兄ちゃんはここで待ってて! わたし頑張るから!」

 

ふんすとチキが拳を握る。

 

「わかった。任せるよ」

「まかされた!」

 

チキと拳を打ち合わせる。

 

「チキちゃん。無理しないでね」

「俺たちの分も頼むぜ!」

「メディウスをぶっ倒してきな!」

 

三人とも拳を交わし、チキはマルスのもとへと走って行った。

マルスを先頭に、伝説の武器を持つ勇者たちがメディウスへと挑んでいく。

最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 





【悲報】主人公、最終決戦で戦力外通告!
まあ神器もないのにメディウスをバッサバッサやるのは、なんか違うよね。
デビルソードでワンチャン? マリアが泣いてとめそうだけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。