FEマケドニアから始まる転生物語   作:乾燥海藻類

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第14話 流されてタリス島

宝剣メリクルソードを振るうアカネイアの勇者、アストリア。

聖弓パルティアを下賜された炎の射手、ジョルジュ。

神槍グラディウスを手足のように操るオレルアンの王弟、ハーディン。

 

光の大魔法オーラの継承者リンダ。

風の大魔法エクスカリバーを駆るマリク。

そして神竜族の末裔たるチキ。

 

強靭な竜鱗を持つメディウスに傷をつけられる者は少数だった。マルスは精鋭を選出してメディウスとの決戦に臨んだ。

勇者アンリの七日七晩ほどではないが、激闘は数時間に渡った。

そしてついに、決着の時は訪れた。

 

勇者アンリの末裔、マルス王子の振るう神剣ファルシオンの一撃が、メディウスを葬り去ったのだ。

ここに、長きに渡って続いた暗黒戦争は終結した。

 

アカネイア同盟軍大勝利! 希望の未来へレディ、ゴー!!

と、ゲームなら画面が暗転して、大きく~FIN~と表示されていることだろう。

それぞれのキャラの後日談が語られて、スタッフロールが流れて行くのかもしれない。

 

だが現実にはそんなことはなく、むしろ国にとってはこれからが始まりである。

まずは賠償金の支払い。これはまあ奪ったものを返せという当然の理屈なのだが、ふっかけてきたなぁ。

ニーナも目を通しているはずだが、多いのか少ないのか判断できなかったのだろう。貴族たちに、これだけの財が奪われたのです、とか、復興にはこれだけの額が必要なのです、とか、これは正当な権利なのです、とか言われたら、ニーナには判断材料がないから反論できない。

やっぱアカネイア貴族はクソだな。

 

つうかこれ、ミネルバの功績とか考慮されてるのか? まあ奪った財の量なんて俺にも分からんが。

リュッケ将軍の隠し財産がなければ即死だった。

マケドニアでこれなんだから、占領統治していたグルニアはもっとひどいだろうな。

 

グルニアは降伏した際に、ルイ王の首をアカネイアに差し出した。双子も無事帰って来たし、元々病気で伏せっていたルイ王は、ここが命の使いどころだと思ったのだろう。介錯はロレンスが行ったようだ。その首を持ってロレンスはニーナに謁見した。

ニーナは痛ましい表情を浮かべていたらしいが、おそらくアカネイア貴族は笑いをこらえるのに必死だっただろう。容易に想像できるわ。

それで多少はマシになってたらいいけどな。

 

さて、マケドニアに話を戻そう。

問題のある貴族や将軍は軒並み粛清したし、軍縮は緩やかでいい。そういった諸々の作業を半年かけて終わらせた。いや、実際には終わってなどいないのだが、ひと段落はついた。

そして、頃合いを見計らっていたんだろう。おとなしくしていた貴族たちが俺に反旗を翻した。

 

国ではなく、ミネルバでもなく、俺を排除しようと動いたのだ。彼らは俺が侯爵一派や将軍たちを粛清したのを覚えている。気まぐれで気分屋で傲慢。能力はあるが危険。いつ自分に牙が向くか分からない。そんな感じのことをミネルバに聞かされた。

 

彼らは武力で俺を追い落とそうとするのではなく、権威によって俺を除こうとしたのだ。今のマケドニアで最も権威を持つのはミネルバである。

王位を継ぐことに躊躇いを持っていた彼女だったが、アカネイアが統治者として認めたことと、俺とマリアの説得もあって、しぶしぶといった感じだったが王位を継いだ。

だから貴族たちはミネルバに泣きついたのだ。

 

 

 

――貴公は、本当にそれで良いのか?

 

――ええ、ほとんどのことは終わらせましたし、諸侯の目も私個人に向いてますからね

 

――わかった。二人をよろしく頼む

 

 

 

そしてある朝の玉座の間。諸侯たちの集う場所で、俺はマケドニアからの追放を言い渡された。

ああ、最後に捨て台詞でも残しておくか。

 

「かしこまりました、ミネルバ王女殿下。しかし諸侯たちよ、覚えておくといい。諸君らが私欲に溺れ、この国が乱れた時、私は必ず帰って来るぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、というわけでね、タリス王国にやってきました。よく言えば風光明媚で自然豊かな国。悪く言えば何にもない辺境の地。

まあこれは聡明なモスティン王の戦略だろう。何もない土地だから誰も攻めてこない。もし石油とかが出たらアカネイアが黙っていないだろう。

 

海賊がいるだろって? あいつらはどこにでもいるだろ。まああいつらが残ってたおかげで俺は金に苦労しなくて済んだから、もっけの幸いというやつだな。

回収した財宝の半分は元のところに戻して、半分は頂いた。手間賃だよ。そのくらいは大目に見てくれ。

 

つうかあいつら全然話聞かねぇのな。マケドニア・バイキングは最初にガツンとかまして、後は交渉でどうにかなったが、ここの海賊は話を聞かないモンだから全滅させるしかなくなった。

まあ逃げたヤツもいるので、全滅というわけではないが。

 

たぶん天敵がいなかったせいだな。マケドニア・バイキングはやりすぎると竜騎士隊が飛んでくると分かっていたから、それなりに節度があった。

だがここにはやってくる軍隊なんていない。タリスは軍を持っていないし、アカネイアがこんな辺境までやってくるわけがない。

 

「アルヴァお兄ちゃ~ん! ロートおじちゃんとグリューンおじちゃんがね、こんなおっきいお魚獲ったんだよ! いまマリアが焼いてくれてるの!」

 

チキが手を振りながら砂浜を駆けて来る。

そういえば追放された宰相と昵懇(じっこん)の仲であった末妹の姫はショックで寝込み、その後、王位を返上して田舎の修道院に入ったことになったらしい。

戦後に結婚をせっつかれてはいたんだが、追放される時に色々と面倒が起こると思って引き伸ばしていたのだ。それについて来てくれるという保証もなかったしな。

 

「アルヴァ様、見回り終了しました。鼠は入り込んでいないようです」

 

当たり前だ。こんな辺境まで来るものかよ。警戒しすぎなんだよなぁ。いや、俺が気を抜きすぎてるのか。いかんな。もっと引き締めんと。

 

「ご苦労、レシア。その野菜は?」

「村の方からいただきました」

「そうか。なら後で礼を言わねばならんな」

 

子供の玩具とか遊具でも作ってやるか。

ああ、一応ハーディンには忠告してやったぞ。

 

アカネイアの貴族は信用できんぞ。

ボア司祭を味方だと思うな。

ニーナ姫はカミュへの想いを捨てきれてない。

 

とまあ総じてアカネイアの王なんてロクなモンじゃないぞ、と切々に語ったのだが、原作通り戦後三ヵ月あたりでハーディンはアカネイア王になった。

ストレスでハゲなきゃいいけどねぇ。

 

「えぇーー、お魚を生で食べるのぉ?」

 

そんなことを考えていると、突然マリアの素っ頓狂な声が聞こえてきた。

マケドニア城って意外と海から遠いんだよ。だから生の海魚を届けるのはハードルが高い。川魚の刺身は寄生虫が怖いからな。

監禁生活でそんなモンが出てきたとは思えないし、耐性がないんだろう。

 

まあ本人に聞くかぎりそこまで酷い扱いではなかったようだが。

基本は部屋から出られないが、天気の良い日には庭を散歩するくらいはできた。欲しいものは、武器以外であれば大抵調達してくれた。見張られているという鬱屈さはあったが、待遇はそれほど悪いものではなかったらしい。

 

「焼いたのも美味いが、生も意外といけるな。塩より魚醤で食う方が美味い」

「わしは塩じゃな。魚醤はちと濃いわい」

 

何故かチェイニーもついてきていた。コイツ人間が嫌いじゃなかったのか?

俺の見張りと……チキの変化を見逃さないためか? 分からん。

つうか神竜族の生き残り三人のうち二人が辺境の島国にいるってどういう状況だよ。

 

さて、遅まきながらタリスという国について語っておこう。建国前のタリス島は多数の部族が割拠する島であったが、アカネイア暦五七九年、一部族の長であったモスティンが諸部族を統一して建国した。

つまりメチャクチャ歴史の浅い国なのだ。そりゃマルスが二年も隠れ潜めるわけだよ。だってペラティが流刑地なんだもの。流刑地のさらに奥地なんて未知の領域だよ。そんなところに逃げ込むなんて、普通は思わない。

 

建国に関わったロレンスあたりは予想できたかもしれないが、確信もないのに進言はしないだろう。モスティンやシーダとは親交があるし、間違いでしたでメディウスの勘気を買って、タリスが焼かれでもしたら目も当てられない。

 

モスティンは国王というより、多数の部族をまとめ上げる代表と言った方が正しいのかもしれない。

そんな部族たちが、外から来た俺たちを快く迎え入れるかといえばそうでもない。亡国の王子という肩書きもないし、モスティン王から優遇されているわけでもない。一応話は通してあるが、肩書きのない俺は国民として認められただけにすぎないのだ。

これだってミネルバ経由で手に入れたシーダからの紹介状があったからだし。

 

だから海賊を狩ったわけだな。力の誇示とともに、あなたたちにも協力的ですよという姿勢を見せたわけだ。これで大半の部族は認めてくれたが、そうでない部族もいる。彼らに認められるためには、彼らのルールに従わなければならない。

 

崖から海に飛び降りる度胸試しだったり、部族一番の戦士と素手で殴り合ったり。

うむ。やっぱタリスって辺境の蛮土かもしれない。

だが一度認められれば、彼らは気の良い者たちだった。何かにかけて俺たちに気を配ってくれる。仲間と認められたのだ。

 

「おいしいね、兄さま」

「ああ、そうだな」

 

マリアとミシェイルが仲睦まじく舌鼓を打っている。よくよく調べてみて分かったのだが、ミシェイルは領地召し上げは許可したが、両親の処刑は聞いてなかったらしい。つまりあの侯爵の独断だったわけだ。

 

最初は殺す気マンマンだったのだが、一度冷静になって考えてみたら、ミシェイルを殺すとマリアが悲しむと思ったのだ。マリアがいなければ、俺は真実を知らぬまま殺意の波動に呑まれてミシェイルを殺していただろう。あるいは怒りに我を見失って殺されたか。

……なんかそっちの方が可能性高そうだな。

 

まあともかく、保険をかけておいた。元マケドニア・バイキングの者たちに依頼を出したのだ。

ミシェイルが海上決戦を挑んでくるのは予想できたからな。ゲームじゃあるまいし、簡単に本土上陸を許すとは思えなかったのだ。

 

元海賊だけあって、彼らは泳ぎの達人で、あの場所は庭のようなものである。それでも同盟軍に気づかれずにミシェイルを救出するのは、なかなかに骨が折れたようだったが、無事に任務を果たしてくれた。

治療したシスター曰く、指二本分ズレていたら助からなかったらしい。ミシェイルが咄嗟に急所をズラしたのか、ミネルバが意図的に外したのか。

どちらにせよ、助かったのならまあそれが運命なのだろう。後は俺の存在を隠してミネルバに任せたのだ。

 

ミシェイルのことはもう許している。本人からの謝罪ももらったしな。

いやぁ、あの時はマジでビックリした。ゲームのイメージが強かったから、素直に頭を下げるとは思わなかったのだ。おかげで何も言えなくなったわ。

 

元々こいつは親父と交渉するつもりだったらしい。侯爵の顔を立て、親父に恩を売る腹積もりだったのだとか。それを侯爵が暴走したモンだから、ミシェイルの計画は破綻した。

カミュと共闘してメディウスを倒す件といい、おまえの計画ガバガバじゃねぇか。

段取り八分って言葉を知らねぇのかな。まあ日本も忍者を冷遇してた時代が長かったし、親父に諜報部隊作りたいっつったら冗談だと思われたし。

 

貴族の矜持に反するとか言ってたけど、認識の違いかな。ヘクトルにはマシューとかいたはずだけど、あれは王族だからか? まあそもそも大陸が違うけど。

ミシェイルも子飼いの諜報員とか持ってりゃいいのに、いねぇんだよな。

やっぱ本質は武人なんだよ、ミシェイルも。

 

その後はマリアの説得で国外に出ることになった。マリアも分かっていたのだろう。マケドニアでミシェイルの顔を知らないやつはいない。置いておくのは色々とマズいのだ。もしアカネイア貴族にバレれば処刑を要求してくるだろうし、政治的にも隙を作ることになる。

ミシェイルは戦時中に比べれば、かなりおとなしくなった。憑き物が落ちたような顔をしている。

 

「しかし魔導学院の件は残念でしたね。ようやくカダインから許可が下りて、これからだというところだったというのに……」

「そこはまあ、ウェンデル司祭が上手くやってくれるだろう」

 

魔導学院の分院計画は男爵時代からあった。当時計画していたのは、カダインから司祭を招致して子供たちに学ばせるといったもので、そこまで大規模なものではない。だが、カダインは首を縦には振らなかった。ただでさえ強国になりつつあるマケドニアの軍備を増強させることを恐れたのだろう。

それに普通は留学だからな。だがそれは経済的に余裕のある家の子供しか無理な相談だ。まあカダインの重要な収入源のひとつだろうから、前例を作りたくなかったのだ。単純に俺の考えが甘かった。

 

野良の魔導士を雇うことも考えたのだが、これが意外といないんだ。腕の良い魔導士は大抵王宮務めか、貴族に囲われているか、あるいは軍人となっている。(うち)にも老魔導士が一人いたが、下級の魔導書を使うのが精々だった。

それでも戦力としては十分で、海賊討伐では活躍してくれた。俺の先生の一人でもある。ちなみに、彼の雇い主は親父なので、彼を主軸に魔導学院を開くのはちょっと無理だった。そもそも契約外だしな。

 

今になってカダインの許可が下りたのは、ウェンデル司祭が協力してくれたことが大きい。また荒らされたカダインを援助すると言ったことも理由の一つだろう。

正直マケドニアもカツカツなんだが、十年後を考えるとカダインとの繋がりは持っておいた方が良いと思ったのだ。

 

あそこもあそこで、結構な選民主義なんだ。魔導は資格ある人間にしか学ばせない、みたいな。たぶんガトーの影響だな。それでガーネフが選ばれたんだから笑い話にもならない。

まあガーネフも若かりし頃は正義感に溢れていたようだが、人間どう変わるか分からんな。

 

司祭の招致は認められたが、完全な分院が認められたわけではなく、初等教育と魔導の基礎を学ぶといった簡易的なものだ。言ってみれば小学校みたいなものだな。本格的に魔導を学びたければカダインに来いというわけだ。これで魔導都市カダインの"格"は守られる。

 

自領でやってた農法やらなんやらもまとめておいたし、引き継ぎも終わらせてある。それでも何か問題があれば、カチュアかジュリアンが知らせてくるんじゃないかな。ああ、ジュリアンは戦後に密偵としてスカウトした。あいつは元盗賊ってとこに負い目があって、レナに対して一歩引いてるとこがあったからな。

密偵になれば国に雇われていることになる。つまりは公務員。安定した職業だ。ミネルバの後押しももらえれば、レナと一緒になることも難しくないぞ、といったら飛びついてきた。

リカードにも声をかけたんだが断られた。良い条件だと思うんだがなぁ。まああいつにはあいつの事情があるんだろう。マケドニアでやらかしたら知り合いだろうがキッチリ処すぞ、と言ったら青い顔していたので、マケドニアで悪さはせんはずだ。

 

話をタリスに戻そうか。俺はタリスを発展させるつもりはない。それはモスティン王の望むところではないからだ。タリスは他国にとっては侵略するほどの価値もない、貧しく遅れた国でなければならないのだ。

 

また貴族たちがタリスを忌避する理由として、娯楽がないというのもある。劇場、闘技場、社交場(サロン)といったところだな。うん、全部興味ないな。

庶民用の娯楽として賭場はあるが、博打するくらいなら俺が賭場を開場するわ。胴元が儲かるのは分かり切ってんだから。まあそれも利権の問題で色々面倒なんだがな。

 

そんなわけで俺は不動産をやることにした。

だから顔を売るために、俺は全ての部族を回ったわけだ。まあそれでなくともアイサツは大事だ。田舎でここを疎かにすると、最悪の場合ムラハチにされてしまう。

それに彼らがどんな試練を出してくるのかも興味あったしな。

木材は木こりのサジマジから買い付けている。ロートとグリューンもサジマジに弟子入りして、今は木こりを本職にしている。

とりあえず生活の基盤はできた。基本は不動産業で、たまに海賊退治をやる。

第二部に繋がりそうなフラグは、思い当たるところは折っておいた。

 

だが肝心のハーディンは殺れなかった。まああいつを殺すくらいならニーナを殺ってアカネイア王家の命脈を断つ方が良い気がする。だがバレた時のリスクがハンパないんだよね。俺の首一つじゃ終わらないだろうし。

それにニーナの場合は、オームの杖で復活させられる可能性がある。

やっぱオームの杖ってチートアイテムだな。

そもそもなんで俺がそこまでのリスクを背負ってアサシンまがいのことをせにゃならんのだ。俺は世界の守護神じゃねぇ。

 

この平和が束の間で終わるのか、あるいは俺の命が尽きるまでは持つのか。

それはハーディン次第だろう。

俺はタリスでのんびりさせてもらうさ。海を友とし、星を愛でる。そんな生活も悪くはない。

 

 

 





というわけで、追放エンドでフィニッシュです。
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総合評価:53701/評価:8.93/連載:57話/更新日時:2026年06月13日(土) 20:01 小説情報


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