「よっ、ほっ、はっ」
岩から岩に飛び移り岩場を降りながら背後を見れば、ねじれも岩から岩に飛び移っているが、差はある程度あるし制限時間まで逃げ切れる「えぇい!」っと、勝負に出たかようで、ねじれは大ジャンプして俺の前方に着地してすぐさま俺の方を向いて突き出してくるが……
「甘い!」
岩を思い切り蹴り、宙で一回転してから背後の高い岩場に着地……
ブワッッッッッッッッッッッ
「っ!」
……しようと思ったが、突如物凄い風圧が舞い上がりバランスを崩してしまう。
(完璧な着地は無理だし何とか受け身を「やぁっ!」取る必要はないな)
その前にねじれが個性の波動を使って空中を飛んで俺をキャッチする。
「大丈夫?」
「助かった。お前が居なかったら完璧な着地はできなかった」
「どういたしまして。それにしても今の急な風圧……」
ねじれが空を見ると雨が降り始める。先程の風圧によって上昇気流が起こったが、そんな馬鹿げたことが出来るヒーローなんか1人しかいない。
「十中八九オールマイトだろうな。彼の担当区は東京の六本木である事を考えるとオフの日にヴィラン退治した感じだろう」
あんた出鱈目な現象を起こせるヒーローはオールマイトだ。昔、大災害の中で沢山の人を救った最強のヒーロー。俺が6歳まで憧れていたヒーローだ。
しかしオールマイトがわざわざ動くほどのヴィランか。後でニュースを見てみよう。
「あ、龍牙君、約束通り触れたから一緒にお風呂ね」
「……あ」
「なるほどね。流動体のヴィランを風圧で行動不能……出鱈目だな」
夕食を食べながらニュースを見るが、どのチャンネルでもオールマイト関係のニュースだらけだ。流石国民栄誉賞の受賞の話が出ただけはあるな。
「私の波動もそのくらいのパワーになるように頑張るようにしたいな」
まあねじれの個性も割とパワータイプだからな。
というかニュースを見る限り、オールマイトが助けたのは爆豪と緑谷だが、何故2人が一緒にいたんだ?一緒に帰る仲じゃないし、街中で爆豪が緑谷を嬲るとは思えないし、意味がわからない。
まあどうでも良いか。明日緑谷がオールマイトに助けられてハイテンションになって爆豪がブチ切れるだろう。
そう思いながら俺はニュースを見つつチャンネルを変えると……
『もう大丈夫!何故って!?私が来た!』
オールマイトが災害場所で救助活動をしている動画が流れ、直ぐに画面が直ぐ切り替わり『ヒーロー名場面集DVD、発売中!』って宣伝が流れる。
昔、大災害が起こった際にたった1人で何百人も救助した伝説……オールマイトのデビュー動画はネットでも超有名だ。
俺も幼稚園児の時も何百回も見て、ヒーローになりたいと思った。俺だけじゃない、大半の幼稚園児はオールマイトの動画を見て同じ気持ちを抱いた。
……が、運命は残酷で、弱い個性持ちは個性発言の瞬間から諦め、俺に至っては完全な無個性で嘲笑われる存在だった。
それでも折れずにヒーローを目指しているが、俺はもうオールマイトに憧れていない。凄いヒーローとは未だに思ってはいるが、憧れてはいけないと思っている。
無個性である以上、オールマイトのような存在にはなれない。憧れをモチベーションに繋げる人もいるが、なれないとわかっているのに憧れても無意味だ。寧ろ精神的にキツいだけだ。
初めは憧れを捨て切れなかったが、時間が経つにつれて直ぐに捨てれた。
今の俺の目標はオールマイトのように万人を救えるヒーローになることじゃない。
両親が俺を作った事は間違いではないと証明する事、数少ない無個性や戦闘向きでない個性持ちでも、ヒーローを目指せると証明することだ。
「龍牙君、大丈夫?昔を思い出したの?」
ねじれが不安そうに見てくる。
「否定はしないが問題ない。既に乗り越えてる」
仮に乗り越えていなくてもコイツの前では絶対に弱気な態度を見せるつもりはない。これについては馬鹿な意地だけどな、
「そっか。なら大丈夫だね。それにしてもオールマイトってどんな個性なんだろ?」
ねじれがテレビに映るオールマイトを見ながらそう呟くが、実際オールマイトの個性は謎に包まれている。
十中八九身体強化系の個性だと思うが、バラエティなどでオールマイトに出演者が個性について質問するとさり気なく話題を逸らしているのが腑に落ちない。
普通ヒーローの個性って広まってるのにオールマイトの個性は詳細不明だし、もしかしたら強い反面メリットがあるのかもしれない。
「さあ。けど他所は他所、ウチはウチだ」
僻んだりしても個性が手に入るわけじゃないし……
ーーー諦めるの?不思議、最初の無個性ヒーローになれば良いだけよーーー
目の前にいる彼女は個性なんかより遥かに素晴らしい言葉を俺に送ってくれたのだから。
「?どうしたのじっと見て」
まあ当の本人はキョトンとした表情を浮かべているけど。当時も俺を慰めるのではなく、素でそんなアドバイスをしたのかもしれないな。
「何でもない。それより食べ終わったんだし、流しに皿を持ってけ」
「はーい。ちょっと休んだらお風呂入ろうね?」
「……はいはい」
忘れてくれなかった……
「ねぇねぇ?何で昔に比べて一緒にお風呂に入ってくれなくなったの?何で?」
風呂場にて俺の横で浸かっているねじれが不思議そうに聞いてくるが、お前の身体がエロくなったからだ。つか高2にもなって彼氏でもない男子の前で堂々と裸になって浸かるな。
「昔は「ねじれお姉ちゃんと入りたい!」っていつも訓練後に私を引っ張ったのに、不思議」
「待て。言ったのは事実だが蒸し返さないでくれ。歳をとるにつれて考え方が変わったんだよ」
あの時の俺は幼稚園児や小学校低学年で、ねじれも小学生だったからだ。あの時は俺も性知識について疎かったから誘えたが、思春期の今は女性らしさが出てきてるねじれを誘うのは恥ずかしい
「そんな事ないよ。最初に右腕から身体を洗ったり、お風呂に浸かる際は足を思い切り伸ばしてる所は昔から変わらないよ?」
「……よく見てるな」
「ずっと見てるからね。それに大きくなっても頑張ってる事は全く変わってないよ」
ねじれはそう優しく笑いながら言ってくるが、それはお前のおかげでもある。お前が居なかったら俺はヒーローになる事を諦めていたのだから、ねじれには感謝しかない。
しかし感謝の言葉はまだ言わない。感謝を告げるのは俺が世界初の無個性ヒーローになってからだ。
まだヒーロー科に入ってすらおらず、道は長いが諦めるつもりはない。この願いについては捨ててはいけないものだから。
「ねじれ」
「ん?」
「雄英に入ったら頼りにしてるから」
「ふふっ、任せて。先輩として色々教えてあげるからね」
俺の決意表明にねじれは小さく笑って胸を張ってくる。
仕草は可愛らしいが裸で胸を張るのはやめてください、ハイ。
結局俺はねじれから目を逸らすしか選択はないのだった。
今回も読んでいただきありがとうございます。
この作品の執筆の為、原作を読み直していますが葉隠については謎過ぎませんかね?
透明人間の個性でヒーロー科をやっていけるのかと思ってしまいます。
入試については道具の持ち込みやレスキューポイントがあるのでまだしも、体力テストでは個性を活かせる種目がないのに20人中18位なのがイマイチ納得出来ないです。
20位の緑谷は怪我をしつつも大記録を出して、19位の峰田は反復横跳びで大記録を出していますが、透明人間の葉隠が2人を超える姿が想像できません。
素の身体能力が高いのかと思えば体育祭の障害物競争ではビリ近くでしたし、謎過ぎて気になります。
まあそんな風に疑問を抱きながら読み返して、執筆していくので次回も宜しくお願いします。