「結局居なかったね、オールマイト」
「まあスピード解決したんだろ。早過ぎるし」
俺は自宅に向かってねじれと一緒に走っている。多古場競技場に着いたのは良いが周囲にオールマイトの存在は居なかった。元々オールマイトのヴィラン退治は早過ぎるし、見れないのも仕方ない。
そんな風に話しながら自宅に到着したので中に入ると靴が普段よりも2つ多く、今に入ると……
「親父にお袋?2人が揃って帰ってくるなんて珍しいな。というかそれ何だ?」
No.12ヒーロー『空番長、ノドン』である親父にNo.20ヒーロー『焔ヒーロー、アポロニウム』である母親が椅子に座っているが、2人の間にあるテーブルには奇妙な装置がある。
全身に巻きつけるほどの長いベルトに、ガスボンベのような物、吸盤付きのワイヤーが少し見える金属装置、近未来的なデザインのゴーグル、明らかに頑丈そうなナイフ、金属装置に繋がってブレーキのような物がついている柄ががある。
「っと、タイミングが悪かったな」
「これはね、一足早いけど龍牙の誕生日プレゼントなの。どんな物か確認していたら貴方とねじれちゃんが帰ってきたのよ」
確かに俺の誕生日までまだ2週間くらいあるけど、そう考えると早いな。
「そうなのか?で?これは何だ?」
「これは高い場所や向かい側のビルに行きたい時に行けるように開発されたサポートアイテムだ。龍牙は森や岩場、一軒家ぐらいならサポート道具無しでも移動できるけど高層ビルなど高い場所に移動する際に備えて、お前がパルクールを始めた頃に開発を頼んだ」
それが本当ならありがたい。俺は並のヒーローより機動力はあるが、移動を得意とするのヒーローには絶対勝てないので、ヒーロー科に使ったら機動力を補ってくれるサポートアイテムを頼む予定だったし。
「何度もトライアンドエラーを繰り返したけど、ヒーロー科に入る前に実用品が作れて良かったわ。バレちゃった以上、もう渡すけど受験の気分転換や受験後の自由登校日の2ヶ月弱の間にサポート会社に行って練習してみなさい。はいこれ、マニュアルとDVDもあるから後で見てみなさい」
そう言ってサポートアイテムやマニュアルやDVDを渡してくる。
「わかった。後で見てみる。それと昔から開発してくれてありがとう」
親父は俺がパルクールを始めてから開発を頼んだと言ったが、つまり4年くらい前だ。そのくらいから俺の為にサポートアイテムの開発を頼むなんて感謝しかない。
「気にするな。息子の将来をサポートするのが親の務めだ」
「後ろめたい気持ちがあるなら将来ヒーローになってお金を稼いで母さん達をヨーロッパ旅行にでも連れてっておくれよ」
「……ああ、ヨーロッパどころか世界一周旅行に連れてってやる」
無個性の俺を愛して目標に向かうのをサポートしてくれるのだ。世界一周旅行でもお礼としては足りないくらいだ。必ずこの恩は返してみせる。
「うーむ。確かに使えれば便利だが使い方が難しそうだな」
「人によって吐いちゃうかも」
自室にて俺は先程両親からもらったDVDを見ながらそう呟くとねじれも頷く。画面ではサポート会社の社員が例の装置を装備している。
両腰についている装置の内、右腰についた装置から吸盤付きのワイヤーが射出されて高さ20メートルくらいのビルの壁にくっつく。
そしてナイフに付属された柄についたグリップを握ると、腰の装置から白い煙……ガスが放たれて吸盤の所に向かって猛スピードで突き進み、社員は赤いビルの壁に足をつける。
そして左腰の装置から吸盤が放たれて、高さ30メートルくらいの向かいの青いビルの壁にくっつく。同時に赤いビルの壁に付いてある吸盤が外れて、腰の装置からガスが噴き出て、社員は今度は青いビルの壁に突き進みやがて足をつける。
マニュアルによれば吸盤は特殊な接着剤を塗りこんでいて、どんな場所でも張り付くらしい。その吸盤を射出してどこかに張り付けたら、ガスの勢いを利用してワイヤーを巻き取って吸盤の元に高速移動する装置のようだ。
で、柄についたボタンを押すとワイヤーを通して、電磁波を流して、吸盤を剥がす。ボタンを押してる間は吸盤は何にもくっつかないらしい。
それを繰り返していけば動画のように高い場所だろうが自由に行けるらしい。
しかしこのアイテム、リスクは多い。あんな立体的な移動が出来るなら身体にかかる負荷も大きいし、ねじれの言ったように吐いてしまうかもしれない。
加えてワイヤーを掴まれたら主導権を奪われてしまう。一応ある程度の長さを残して切断出来るようだが、移動距離が落ちてしまうのは否めない。
後、ガスについてだ。ゴーグルにはガスの残量が表示されるらしいので、空中移動中にガス切れになることはないが、ガスが切れたら装置そのものは間違いなく邪魔になるだろう。継戦能力がどのくらいかはわからないが、長期戦になれば邪魔になるのは明白だ。
以上の事から、トレーニングはしておくが実戦で使うのは合格してからで、入試では使わない。ぶっつけ本番でハイリスクハイリターンの道具を使うのは愚策だから、これまでに培ってきたものを使おう。
「そういやねじれはコスチュームにどんな要望をしたんだ?」
「ん?可愛さ重視にしたよ。職場見学の後にちょっとずつ個性による負担の軽減とか色々付け加えた感じ」
らしい要望だな。しかし俺の場合、コスチュームについては無個性だからパワーアシストや身体にかかる負荷の軽減とかが重要になるだろう。要望を出し過ぎだらコスチュームそのものが大きくなってかさばる可能性もあるし、その辺りも考慮しないといけない。
「龍牙君のコスチュームについても考えとこっか?」
「自分の身を守る装備は自分で用意したいから気持ちだけ受け取っておく」
そう返しながらDVDを見るが、左右の吸盤の抜くタイミングと射出タイミングがキモだな。上手くいけば変幻自在な動きも可能だろう。
(とりあえず土曜日はコイツの訓練を含めて、合格してから練習の優先度を変えるか。今の鍛錬時間を減らすのは出来ない。勉強の方も疎かに出来ないからな)
「じゃあ装備じゃなくてデザインについては考えて良い?」
「……まあそれなら。言っとくがお前の格好みたいなのは勘弁してくれ」
「大丈夫大丈夫。ちゃんとカッコいいの考えるから」
俺とカッコいいとねじれのカッコいいの価値観は全然違うからなぁ。まあ考えるのは自由だし、任せよう。
どうせ止めたところで止まらないのだから。
俺は苦笑しながら色々考え始めるねじれを見ながら息を吐くのだった。
今回も読んで頂きありがとうございました。
はい、主人公の使用するサポートアイテムが先行で登場しました。まあ実戦で使うのは大分先になりますが。モチーフは皆さんわかると思いますが、アレです。まあ多少改善していますけど。
龍牙の両親は今回出しましたが、父親の個性が名前の通り「プテラノドン」で恐竜の見た目だから子供から人気です。
母親の個性は「マジカルファイア」で炎を自由な形にして放ちます。火力はエンデヴァーに遠く及びませんが、身体に熱が溜まりにくく制御能力は良い勝負です。ボランティアで動物の形の炎を動かして子供からの人気が高いです。
もしも龍牙が2人の個性を引き継いだら、ONEPIECEのキングから頑丈さを抜いた感じになっていました。
ではまた次回も宜しくお願いします