雄英高等学校ヒーロー科
プロに必須な資格取得を目的とする養成校で、全国同科中最も人気で最も難しく、倍率は毎年300を超える程だ。
オールマイトを始めとした名だたるヒーローは雄英の卒業生で、有名なヒーローになるには雄英卒業は絶対条件とも言われる程である。
そして遂に雄英高等学校の一般入試実技試験を迎える。
「相変わらず馬鹿でかいな……」
地下鉄を使って雄英に到着してそう呟く。体育祭や文化祭を見る為に何回か入ったが、何度見てもデカい。
そのまま校門をくぐり、指定された会場に入ると既に沢山の人が入っていた。雄英のヒーロー科の一般入試の合格枠は36人で倍率は毎年300倍以上だ。
つまりヒーロー科の受験生は10000人以上いるが、改めて見ると圧巻である。
俺は指定された場所に座ると……
「ケッ!」
「あっ……お、おはよう」
同中の爆豪と緑谷が近くにいる。爆豪の隣とか最悪だ。
(しかし緑谷はどんな策を練ってきたのやら……)
緑谷が例のゴミ掃除をしているのは偶に見かけていて、フィジカルも3年進級時に比べて凄く強くなっているのがわかる。
とはいえ見た感じまだ俺や爆豪よりは弱いだろう。しかしわざわざ身体を鍛えて受験するって事は他に何らかの勝算がある可能性が高い。記念受験なら鍛える必要はないし。
と、ここで人が壇上に上がる。
『今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』
―――シーン
ヴォイスヒーロー、プレゼント・マイクがハイテンションで叫ぶも、受験生は沈黙を保っている。
誰か1人くらい『Yeah!』って叫ぶかと思ったわ。
『こいつはシヴィーー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?』
ーーーシーン
「ボイスヒーロー「プレゼント・マイク」だ凄い……!ラジオ毎週聞いてるよ感激だなぁ。雄英の講師は皆プロのヒーローなんだ」
「うるせぇ」
また沈黙が生まれる中、隣から緑谷のブツブツが聞こえて爆豪が毒づくが、説明の際にブツブツ呟くのは気が散るな。
『入試要項通り!リスナーにはこの後10分間の模擬市街地演習を行って貰うぜ!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!OK?!』
ーーーシーン
確認の際にも沈黙のままだ。持ってきているのは超硬ナイフ8本だ。サポートアイテムはまだ使いこなせてないので持ってきていない。というかサポートアイテムを使いこなせて合格しても無個性ってことを理由に落とされるかもしれないし。
「同校同士で協力させねぇって事か」
爆豪がそう呟くので横をチラ見すれば俺はA会場で爆豪がD会場、緑谷がE会場となっている。
「受験番号連番なのに会場違うんだ」
「見んな殺すぞ。テメェを潰せねえじゃねぇか」
やっぱコイツはヒーローよりヴィラン向きだろう。ヒーロー科の受験で他の受験を潰せないことを残念そうにしているし。
『演習場には仮想敵ヴィランをを三種多数配置してあり、それぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けてある!!各々なりの“個性”で仮想敵ヴィランを行動不能にし、ポイントを稼ぐのがリスナーの目的だ!!勿論、他人への攻撃等アンチヒーローな行為は御法度だぜ!?』
そう口にするがプリントには4種の敵が乗っているが、0ポイントのコイツを倒したら合格になるのだろうか?
「質問よろしいでしょうか!?」
と、前方から挙手する男子が出てくる。
「プリントには四種の敵ヴィランが記載されております!誤載であれば、日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めて、この場に座しているのです!!」
アイツは堅物だな。これから説明されるかもしれないんだから黙って聞いて良いのに質問するなんて……
「ついでにそこの縮毛の君!」
眼鏡男子は俺達を見るが、縮毛という事は緑谷だな。
「先程からボソボソと…気が散る!!物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」
「すみません…」
まああのブツブツは近くの人からしたら気が散るわな。堂々と注意するのもどうかと思うけど。
『オーケーオーケー、受験番号7111番くん、ナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0ポイント!そいつは言わばお邪魔虫!スーパーマリオブラザーズやった事あるか!?レトロゲーの!」
また随分と懐かしいゲームだな。
「アレのドッスンみたいなもんさ!各会場に一体、所狭しと大暴れしている『ギミック』よ!」
なるほどね。つまり倒しても意味がないという訳か。
「ありがとうございます!失礼致しました!」
プレゼント・マイクの説明に眼鏡男子が直角にお辞儀をしてから席に座る。アイツは絶対に良いとこの坊ちゃんだな。
『俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう!かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えて行く者」と!!“Puls Ultra”!!それでは皆!よい受難を!』
その言葉を最後に俺達は移動の準備を始める。
「ケッ!」
その際に爆豪が肩をぶつけてくるが、ぶつかった瞬間に力を込めて押し返し、爆豪をよろめかせて、背後から怒号を聞きながら講堂を出る。
そして指定されたバスに乗って試験会場に向かうが……
(どんだけ金がかかってんだ?)
試験会場は街一つ分の大きさだった。しかも他にも同じ会場があるのだから金の入れようは別次元だ。しかも国立だから税金も使われてるだろうが、国民が雄英内部を全て知ったら一部は怒るかもしれない。
そんな事を考えながらも俺は6本のナイフをポーチに入れて、2本を両手に持ってスタート地点で待つ。
暫くすると……
『はい、スタートー!』
軽い調子のプレゼント・マイクの掛け声が高台の上から聴こえてきたので、全力で走る。機動力のある個性持ちには負けるだろうが、それについては割り切って……アレ?誰も来ない?
チラッと後ろを見れば俺以外はスタートラインを越えてない。もしかしてまだ始まってないと思ってんのか?
ならチャンスだ。少しでも先に進もう。
『おいおいどうしたあ!?動いたのはナイフボーイ1人か?!実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?』
足を速めるとプレゼント・マイクのアナウンスが流れる。余計な事をしなくて良いのに……
内心残念に思う中、背後から足音が聞こえてくる。しかしスタートダッシュは切れたので、機動力が低い受験生には良いリードを作れたな。
と、ここで早速前方からロボットが猛スピードでやってくる。腕に1の数字があるから1Pロボットだな。
『標的捕捉!ブッ殺ス!』
物騒な言葉と共に腕を振り下ろしてくるが、移動力は高いが攻撃速度はそうでもないので横に跳んで避けてから腕に飛び乗り、そのまま頭部のレンズ部にナイフを突き刺す。
するとロボットはガクリと膝をついて動く気配を見せないので、次のロボットに向かう。
それから寄ってくる1Pロボットと2Pポイントを中心に攻撃を交わして、レンズ部や関節部を破壊していくが……
(ちっ……これももうダメだな)
ロボットを破壊する分には問題ないが、攻撃を受け止めたり受け流したり、狙いを外して硬い装甲部に当たると直ぐに刃毀れしてしまう。刃毀れしたナイフだと破壊出来ないかもしれないので直ぐに捨てて、新しいナイフを出す為にポーチのチャックを開ける。
(残り3分ちょいでナイフ4本、ポイントは35……合格基準がわからないから何とも言えないな)
ねじれは聞くところ76で主席だったが、このペースだと試験終了時には50ポイントだ。正直ギリギリかもしれない。
と、その時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴ……
突如轟音が鳴り響き、10メートル以上の巨大なロボットが現れる。アレが例のギミックか。
ドゴッ……
と、ここで巨大ロボが近くの建物を叩き潰して、それに伴い瓦礫が降ってくるので大きくジャンプするが、その際に一部の瓦礫がポーチに当たり、ポーチが腰から外れ、残りのナイフもばら撒かれてしまう。
(しまった……!これで10秒はロスした)
内心舌打ちしながらも急いで拾おうとすると次の瞬間、ポーチとナイフが4本浮遊して、ナイフが全てポーチの中に入り、ポーチが俺の手元に戻ってくる。
誰かの個性かと周りを見れば、左目を灰色の髪で隠した女子が小さく会釈する。どうやら彼女が個性で拾ってくれたようだ。
俺が彼女に礼をすると物陰から1Pロボットが現れて、いきなりの不意打ちの衝撃に彼女は前に倒れてしまう。
それを見た俺はポーチからナイフを1本出して、残りが入ったポーチをそのまま投げ捨てて、彼女に詰め寄るロボットに向かって走り出す。
合格は大切だが、助けてくれた人が困っているのを放置するほど腐っちゃいないし、教わってもない。
俺はそのままジャンプして腕の脆い関節部をナイフで破壊して無力化する。
「借りは返した。さっさと離脱するぞ」
「そうする……ありがとう」
「こっちもな」
そう返して俺は彼女に礼をしてから、ポーチを拾い直してロボットが多い場所に向かう。
そして暫くロボットの関節部やレンズ部を破壊していき……
『終了〜!』
7本目のナイフが破壊されると同時に終了のアナウンスが流れる。
ポイントは多分46ポイントだが、大丈夫だろうか?