機動戦士ガンダムSEED~片翼の再生~   作:ASNE

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PHASE.13 戦争の残火(後編)

キラと共に呼び出されたノレアがブリッジに入ると、そこには主要クルーが集められていた。

 

「「失礼します」」

「来たわね。では、状況を説明します。敵ナスカ級は撤退、ローラシア級もノレアさんがバスター、デュエルを戦闘不能な状態に追い込んだため私たちのレーダーで観測できる距離から消えたわ。戦闘はしばらく、避けられると思っていい。……だけど、弾薬は兎も角、生活に必要な物資があまりにも不足しています。……私たちが今向かっているのはデブリベルトです。言いたいことが、分かるわね」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。まさか……」

「デブリベルトには、宇宙空間を漂う様々なものが集まっています。そこには無論、戦闘で破壊された戦艦も含まれます」

「まさか、そこから補給しようって……」

「仕方ないだろ。そうでもしないと、こっちも持たないんだから」

 

トールが躊躇いがちに言ったことを、有無を言わさず遮ったフラガ大尉。その表情は厳しく、今彼らが置かれている状況を強く意識させた。

 

「あなたたちにはその際、ポッドで作業を手伝ってほしいの」

『!!』

 

学生組に動揺が広がる。ナタルは諭すように、次のように告げた。

 

「気が進まないのは分かる。だが今、我々には他に方法が無いのだ。我々が生き延びるためには」

「何も、漁りまわろうというわけじゃないの。必要な物を分けてもらうのよ。生きるために……」

 

ラミアス艦長が続けて言った言葉に、考え込む一同。その中でフレイがまず、一歩踏み出した。

 

「やります。私に出来ることなら……」

「フレイ……」

「生きるためには、何だってやらなくちゃ。でしょ?」

 

そう言い切ったフレイと目が合ったノレアは、一瞬驚いた後静かに微笑んだ。出会った時と顔つきがまるで違う。……変わろうとしているのだ。かつてこの世界に来たばかりの自分のように。

 

「私も、やります」

「僕も……!」

「私も!」

 

ノレアの後に続いて全員が賛同を示し、そのまま準備に向かった。

 

 

 

 

先の戦闘と同様に、キラの乗る一号機と共に作業用のミストラルの護衛として出撃したノレアのストライクダッシュ。彼らの目の前に飛び込んできたのは……。

 

『大陸……?こんな所に……』

(いや、違う。これは……)

『「ユニウスセブン……!」』

 

奇しくもキラと声が重なったが、皆動揺していた。まさか、今の戦争の発端となったコロニーの残骸に行き当たるとは思わなかったのだ。

確認のためにノレアはサイやフレイと共に機体から降り、付近を捜索した。見つけた扉を開くと、三人共息を呑んだ。当時は一家団欒中だったと思われる家族。両親が息子と娘を庇い、さらにそれを祖父母が庇う。そのまま息絶えた死体が、宙を漂っていた。

 

「こんなのって……」

「これは……」

「……」

 

フレイはバイザー越しに両手で口を覆い、サイはあまりの悲惨さに呆然と立ち尽くす。ノレアは目の前に光景を見て、かつて自分がアスティカシアで行った蛮行を思い出し、強く両手を握りしめた。

(これが、大きな武器で破壊をもたらした結果……。私は、私は……)

すぐその場を離れ、別で調査を行っていたナタル、キラ、トール、ミリアリアと合流したが皆一様に顔色が悪い。全員無言で機体に乗り込むと、一旦アークエンジェルに帰還した。

 

 

 

「本気なんですか!?あそこでは大勢の人が亡くなったんですよ!?」

「あそこには一億トン近い水が凍りついているんだ。……私だって、何も思わない訳ではない」

 

告げられたことにキラは思わず食ってかかった。それに応じるナタルの顔も、平静を装っているがいつもより冴えない。他の補給物資は別に見つかったが、水だけはユニウスセブンの残骸にしか見つからなかったのだ。

 

「何も、大喜びしている訳じゃない。『水が見つかった!』ってよ」

「フラガ大尉……」

 

 

フラガ大尉は諭すように続けて言った。

 

「誰だって、あそこに好き好んで踏み込みたい訳じゃない。けど、しょうがねえだろう。俺たちは生きてるんだ。ってことは、生きなきゃなんねえってことだよ。何としてでもな」

 

 

、と。ノレアはその言葉にはっとさせられた。私たちは、死んだ者たちのためにも生き延びなければならない。それが、死者への手向けだろう、と。

 

 

「……なら、死んだ人たちのために出来ることをしませんか?」

「出来ることか……」

 

ノレアの提案に、その場に居た面々は顔を見合わせて考え込む。しばらく考え込む中、フレイがふと閃いた。

 

「なら、紙で花を作るのはどう?本物は無理だけど……」

「確かに!それなら、今の私たちでも出来るわ」

 

ミリアリアが同意し、他のクルーも同意した。その後、乗客の手を借りて出来る限り花を作り、物資の補給作業の前に宇宙空間にばらまいて祈る。ノレアもストライクダッシュのコクピットの中で、両目をつぶり、静かに祈りを捧げた。

(どうか、静かにお眠り下さい……)

 

そして物資の搬出作業が始まり、モビルスーツ隊総出で哨戒を行っていたのだが……。

 

『……強行偵察複座型ジン!?』

「え!?」

 

ノレアも一号機の見ている方向を見ると、沈んだ民間船の付近を捜索する黒いジンの姿があった。

 

「この距離だと見つかる……!キラ、合図したらライフルを撃って下さい。私が動きを止めます」

『りょ、了解……!』

 

撃たないのも不味いが、こちらに仕掛けられることも困る。そして、キラに無用な殺生をさせたくないと思いノレアは強行偵察複座型ジンを捕獲することに決めた。

 

「3,2,1……今!」

『……っ!』

 

ノレアの合図と同時にキラがジンのライフルを狙い撃ち、爆散した。ライフルを破壊されたジンがこちらに気づいたが、ノレアはストライクダッシュを急速接近させてビームサーベルを機体の首元に突きつけ、オープンの通信回線を開いた。

 

「聞こえますか、ジンのパイロット。無駄な抵抗をせず、投降してください」

『だ、誰がナチュラル何かに……!』

『お、おいよせ!』

「……」

 

ジンのパイロットはメインが男性、サブが女性で、女性のパイロットはこちらに敵意むき出しで男性がそれを抑えている。ノレアは女性の言動に若干苛立ちつつ、会話を続行した。

 

「こちらにこれ以上戦闘の意思はありません。あれを見て下さい。私たちは今、やむを得ずこちらから補給を行っている状況です」

『知るか!ここは私たちの墓標なんだ!それを汚すな、ナチュラルども!』

「……私たちだって、死者を冒涜するような真似をしたくありません!でも、私たちの母艦には民間人が多数居るんです!まだ幼い子供も」

 

ノレアは思わず声を荒げてしまったが、その言葉でさらに罵ろうとしていた女性パイロットの動きが止まる。代わって男性パイロットがノレアに尋ねた。

 

『理由を、聞いてもいいか』

「……ザフトが攻撃してきて、結果としてジンのミサイルとこちらの艦の主砲でコロニーが崩壊しました。民間人だった私も、やむを得ずパイロットに」

『……そうか。……仕方ない、投降しよう』

『アレン!?』

『仕方ないだろう、この状況じゃ!……だが、一つその前に頼みたい』

「何でしょう?」

『我々は、とある方の捜索任務でやってきた。あの艦に乗られていたんだが……』

 

ノレアはその言葉で、目の前にある沈んだ民間船に乗っていた人物は要人だと悟った。と、すると……

 

「……脱出ポッドを探せばいいんですね?」

『!そ、そうだ!』

 

ノレアはストライクダッシュのビームサーベルをマウントし、ジンを連れてポッドの捜索に当たった。すると、付近に一人用の救命ポッドが漂っているのを発見する。ストライクダッシュの片手でそっと抱え上げる。

 

『ノレア!』

「キラ、良い所に。このポッドをアークエンジェルまで運んで下さい。このジンはこの中の人物を探しに来たようです」

『わ、分かった!』

 

そこに心配して寄ってきたキラの一号機が来たので、一旦敵機と通信を切り、ポッドの移送を頼む。一号機にポッドを受け渡し、一号機の後に続いてストライクダッシュはジンを連行しながらアークエンジェルに帰還した。

 

 

 

 

思いがけずプラントの人間と出会うアークエンジェルの一行。

そして、味方との合流が迫る中、再び戦場に巡り合う。

彼らは、ある決断を迫られるが……。

次回、機動戦士ガンダムSEED~片翼の再生~

”再会の戦場”

―この出会いは、何を生むのか。

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