C.E.71.1.25。
ノレアがヘリオポリスに流れ着いてから二ヶ月が経過しようとしていた。ようやくヘリオポリスでの生活にも慣れて絵を嗜む余裕も出てきており、今もキャンパス内の屋根のある休憩スペースで、何かパソコンで作業をしているキラの真向かいに座り、彼の様子を新調した小型のスケッチブックに描いている。
キラはタイピングして課題をやっている最中にながら見をしているらしく、ニュースの音声が漏れ聞こえる。
『……では次に、激戦が伝えられますカオシュン戦線のその後の模様です。新たに届きました情報によりますと、カオシュンの……』
二人が集中して各々の作業をしていると、キラのペットロボットのトリィが飛んできてノレアの肩にとまり、何を描いているのか覗き込んだ後、今度は主人のパソコンの上にとまって首を傾げた。
「トリィ?」
そのすぐ後、二人の所にトールとミリアリアがやってきた。
「おーい、キラ。ノレアも!」
「あ……」
「……もう来たんですね」
トールが要件を言いにキラに寄る一方、ミリアリアはノレアの右隣に座ってスケッチブックの中身を覗き込んだ。
「キラを描いてたの?やっぱり上手いね」
「……まだまだですよ。ブランクあるから勘取り戻さないと」
ノレアはまだ敬語は外せないが、それでも一緒に居ることを許すようになっていた。
一方キラはトールにカトウ教授からの追加の頼み事をされたらしくぶつくさ言っていたが、話題はニュースの方に映っていた。
「なんか新しいニュースか?」
「ああ、カオシュンだって」
『こちらカオシュンから7キロの地点です。依然激しい戦闘の音が続いています!』
「へー……先週でこれじゃあ、もう落ちちゃってんじゃないの、カオシュン」
キラはパソコンの画面の映像を切ると、そのまま閉じた。ノレアと話しながらニュースを聞いていたミリアリアが、心配そうに呟く。
「カオシュンなんて、結構近いじゃない。大丈夫かな、本土」
「ああ、それは心配ないでしょ。だってうちは中立だぜ?」
「……それはどうですかね」
それまでカオシュンの話題に対しては沈黙していたノレアが、楽観的なトールの言葉を否定するように言った。
「「「え?」」」
「連合は農業用のコロニーに核ミサイルを撃ち込み、ザフトは地球にニュートロンジャマ―を撃ち込んで大勢の人を死に追いやった。……脅すわけじゃないですけど、あんまり楽観視するのは良くないかと」
戦場を知るノレアは、『中立だから』という理由だけで安心することは出来ない。そんな彼女の警告に、流石に軽率すぎたと思ったトールは頭を掻いた。
「……ごめん、ノレア。頭に置いとく」
「……そうした方が賢明かと」
キラもノレアの言葉でアスランのことを思い出したのか少し考え込んでいたが、声をかけられて一緒にゼミに向かった。
ノレアも意図して上記の発言をした訳ではなかったが、実際クルーゼ隊が潜んでおり、数刻後ノレアは再び『ガンダム』に乗り込むことになる。
―そのガンダムは他の『G』とは別の区画で調整されており、バックパックには特徴的な四つの『ガンバレル』が装備されていた。
―後編に続く