機動戦士ガンダムSEED~片翼の再生~   作:ASNE

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PHASE.06 再びの戦場(前編)

「誰、だ……」

ノレアが呆然と『ガンダム』らしきモビルスーツを見上げていると、突然コクピットから人が乗り出してきた。腹の辺りが血まみれになった作業服を着た男性が上半身を出し、口から血を溢れさせながら震える手で銃を持っている。……明らかに致命傷だ。

ノレアは、撃たれるのは御免だと両手を挙げて見える位置まで前に飛び出し、声を張り上げる。

「すみません、迷い込んだ民間人です!友達とはぐれてしまって……」

「ザフトじゃ、ないのか……」

男性の手から銃が零れ落ち、ガタリと音を立てた。ノレアは慌てて右側の階段を駆け上がり、コクピットまで辿り着くと男性の背中を力いっぱい支える。男性は茶髪の二十代後半から三十代前半のまだ若い顔立ちをしていた。彼の眼の焦点はもう合っておらず、命が尽きようとしているのが分かる。ノレアの脳内に、ソフィの死に際が蘇る。

(なんで、またッ……!)

男性は左手に持っていたIDカードとデータの入っているメモリーチップを、力の入らない腕を持ち上げ、ノレアの右手に乗せた。

「頼む、この機体を、アークエンジェルに、フラガ、たいいに……」

そう言い終わらない内に彼の手から力が抜け、瞳から光が抜ける。―彼は、逝ってしまったのだ。

「……お疲れ様でした」

ノレアは、力が足りないため半ば引きずるようにしながら鉄骨の床に降ろすと、開いたままの瞼をそっと閉じると優しく労わるように声をかける。……きっと彼は、致命傷を負いながらもこの機体を敵に渡すまいと力を振り絞ってここまで辿り着いたのだろう。……ノレアは、彼の想いを無駄にはしたくなかった。

ノレアは立ち上がると、右手の中のIDカードを見つめる。彼の名前は、『デレク・オルセン』だった。

ノレアは両目をぎゅっと閉じる。彼女の脳裏に蘇ったのは、『フォルドの夜明け』に派遣されていた頃に自身が行ったテロ行為と、アスティカシア高等専門学園で行った虐殺行為。

(私がやってきたのは、間違いだった。銃で人を撃つよりも、もっと酷い。モビルスーツで、GUND-ARMで、人をアリを踏み潰すように大勢殺した……)

目の前で命が尽きる光景を見て、己の間違いと罪深さを思い知らされたノレア。―だが、そこでは終わらない。ノレアの脳裏に、今まで関わってきた大切な人たちの姿が次々浮かぶ。

オルコットやナジ達フォルドの夜明けの面々。難民キャンプの人々。―ソフィ。……『エラン』。ミリアリア。キラ。トール。サイ。カズィ。

(―だけど、もう、誰も失いたくない。目の前で、皆が散っていくのは、嫌だッ……!)

目を開け、再びIDカードを見つめる。

「……貴方の想いは、私が果たします。必ず……」

ノレアはIDカードとチップをショートパンツのポケットに仕舞うと、着ていた緑のコートを勢い良く脱いで横たえたデレクの遺体の上にそっと被せた。銃を拾って立ちあがると体の向きを変え、目の前のモビルスーツを見上げた後コクピットに入った。シートに座ると、上部に張り付けられていた紙を剥がして内容を確認する。そこには乗っている機体のスペックの概要が書かれており、ざっと目を通すとめくってコクピットのレイアウトを確認した。

(いくつか知らない用語はあるし、武装も全く違うけど、動かせる!)

ノレアは紙を畳んで邪魔にならないところに挟むと、銃を構えて外の正面の壁のスイッチに向けて何発か乱射し、無理矢理機体の発進シークエンスをスタートさせた。アラーム音が鳴り響き、サイドウォークが動いていくのを尻目に銃をしまって体をシートに固定すると、コクピットのハッチを閉める。閉じていく間、デレクの遺体に向かって右手で敬礼した。

(さようなら、行ってきます)

閉じるとコクピットのスイッチを次々押して機体を起動する。すると、中央の画面に文字が次々映し出される。

【Welcome to M・O・S】

MOBILE SUIT OPERATION SYSTEM

 General

 Unilateral

 Neuro - link

 Dispersive

 Autonomic

 Maneuver

 (Synthesis System)

(やっぱり、これは『ガンダム』……)

OSの頭文字からGUNDAMの名前を読み取ったノレアは、表情を硬くして両手で操縦桿を強く握った。

機体の上部のハッチが次々開き、最後まで開くとそこには戦闘真っ只中の宇宙が見える。―そして、機体の射出タイミングと同時にノレアは叫んだ。

「―ノレア・デュノク。ストライクダッシュ。―行きます!」

 

 

 

To Be Continued......

 

 

 




ここからノレアの戦いが始まります。彼女がどのように成長して変化していくのか、見守って下さい。
そして、ついに明らかになったノレアの愛機。その詳細は、次回お楽しみに。
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