機動戦士ガンダムSEED~片翼の再生~   作:ASNE

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PHASE.08 旅立ち(前編)

ノレアはヘリオポリス内に着底したアークエンジェル、その解放された左カタパルトにストライクダッシュを膝立ちで着艦させると、ほっと大きく一息吐いた。彼女の額から、大粒の汗がいくつも伝う。……流石に未完成のOSでモビルスーツ、しかも『ガンダム』をぶっつけ本番で駆り、ザフトのモビルスーツとの戦闘を休みなしで連続でおこなっては消耗も激しく、少しの間コクピットのシートに体を横たえる。

その間に一号機も隣に着艦し、手から友人たちが降りてきた。そこにキラの姿は無かったが、ノレアは既にキラがどこに居るのか見当がついていた。

「お疲れ、キラ」

シートに体を横たえたまま横目で一号機を見やり、ノレアは微笑んだ。キラの機械工学の才能を間近で見てきたノレアは、キラが一号機のパイロットなのだと半ば確信していた。事実、一号機のコクピットからキラが出てきたので、その予想は的中していた。

 

「よいしょっと……」

ノレアはキラの姿を見て体を起こすと、固定を解いてコクピットを解放し、拳銃を掴んでケーブルを伝って続いて降りていく。その姿を見て、アークエンジェルのクルーがどよめいた。

「おいおい、まだ子供じゃねえか。って、そっちはあんな小さいガキが動かしてたのかよ!」

一緒に降りていたキラの硬い表情が少し緩んで安堵した表情を浮かべ、ミリアリアたちもノレアの無事を喜んだ。

「ノレア、良かった……あなたが無事で」

「ミリアリア、苦しい……」

二人が降りるとそれぞれに友人たちが駆け寄り、ノレアはミリアリアに抱きしめられた。少し力が強く、ノレアはミリアリアより身長が低いので抱きしめられてむぎゅっとなった。

「ラミアス大尉、これは……」

「ああ……」

地球軍の制服を着た女性士官―ナタル・バジル―ルが肩を負傷した作業服の女性―マリュー・ラミアスに困惑の表情をして尋ねる。マリューは辛そうな表情をして六人を見やった。

「へえー。こいつは驚いたな」

と、そこに闖入者が現れる。紫色のパイロットスーツの男性。そのカスタマイズされたパイロットスーツはエースのそれで、おそらくあのモビルアーマーのパイロットなのだろう。その男性パイロットはマリューの前で立ち止まると、自身の所属を名乗って敬礼をした。女性士官二人もそれに返して敬礼をした。

「地球軍、第七艦隊所属ムウ・ラ・フラガ大尉。よろしく」

「第二宙域、第五特務師団所属マリュー・ラミアス大尉です」

「同じく、ナタル・バジル―ル少尉であります」

「乗艦許可を貰いたいんだがね……この艦の責任者は?」

ナタルがその発言を受けて表情を曇らせた後、フラガ大尉に返答した。

「艦長以下、艦の主だった士官は戦死されました。よってラミアス大尉が、今はその任にあると思いますが」

「え……?」

戸惑うマリューを他所に、ナタルはフラガ大尉に現状を続けて伝えた。

「無事だったのは、艦に居た下士官等、十数名のみです。私はシャフトで運良く難を……」

「艦長が、そんな……」

 

ノレアはミリアリアに抱きしめられたままこの会話を聞き、表情を曇らせた。

(現状は最悪、か。元はと言えば原因はこの人たちだけど、彼らだってこんなところで死にたかった訳じゃない)

ノレアは実は、この戦闘を招いていた地球連合軍に怒りを覚えていた。オーブのコロニーで開発されていたということは、オーブが関わっていたということ。……だが上層部の事情は一般市民には関係なく、大事なのは『中立のコロニーがザフトに攻撃された』ということ。全く無縁だと思っていた戦争に巻き込まれ、多くの死傷者を出したのだ。平和な日常をなんの前触れもなく破壊され、ノレアは憤りを覚えていた。……が、三人の会話を聞いて怒りをぶつける訳にもいかなくなったのだ。唐突に同僚の大半が命を落としたのだから。

 

フラガ大尉はナタルからの報告を聞いてやるせない表情を浮かべた。母艦を失い、行きついたアークエンジェルも大半の士官を失ってしまったとあっては仕方ないだろう。

「……やれやれ、なんてこった。あー、ともかく許可をくれよラミアス大尉。俺の乗ってた(ふね)も落とされちまってね」

「あ……はい、許可いたします」

戸惑った様子でマリューはフラガ大尉に許可を出し、それを受けた後ムウはノレアたちの方を向いた。

「で、あれは?」

「御覧の通り、民間人の少年です。襲撃を受けた何故か工場区に居たため……」

「何故かって、聞くまでもないんじゃないんですか?」

話の流れから何か嫌な予感がよぎったノレアは、ミリアリアから離れて五人を庇うように前に出た。

「……そういえば、貴方は?」

「ノレア・デュノク。ナチュラルです。民間人でしたが、襲撃のせいで戦闘に巻き込まれ、成り行きであれを託されて仕方なくパイロットに」

ノレアはそう言ってストライクダッシュを指さした。ムウはヒュー、と口笛を鳴らした。

「君が乗ってたのか……助かったよ。君のおかげで命拾いした」

「え……?」

「ほら、オレンジのモビルアーマー。あれに乗ってたのが俺だよ。……ありがとう、君のお陰で俺は助かった」

「ど、どういたしまして……」

フラガ大尉はノレアに向かって頭を下げた。ノレアの介入が無ければ、フラガ大尉はクルーゼに撃たれて命を落とした可能性が高かったからだ。ノレアは威勢を削がれ、困惑して礼を受け取った。フラガ大尉は頭を上げた後、本題に入る。

「で、ジンの銃を持たせてたってことはジンを一機落としたのか?」

「……機体の性能のおかげですよ。OSが未完成でまともに動かせなくて……装甲が無ければそれで私はあの世行きでした」

「それでも大したもんだ「え、貴方もジンを!?」……貴方もってことは、この坊主もか?」

フラガ大尉を遮るようにマリューが驚愕の声を上げ、周りの士官も同様の反応だ。ムウはマリューの言葉を聞いて、確認を取った。

「え、ええ。彼のおかげで先にもジンを一機撃退しています。名をキラ・ヤマトと」

「俺はあれらに乗るはずのヒヨッコたちの護衛で来たんだがね、連中は……」

「ちょうど、司令ブースで艦長へ着任の挨拶をしている時に爆破されましたので、共に……」

「そうか……」

フラガ大尉は気落ちした後、ノレアたちに歩み寄ってきた。マリューやナタルたちもそれに続く。フラガ大尉はノレアの後ろのキラに目線を向けると―決定的な一言を告げた。

「―君、コーディネイターだろ?」

マリューたちは驚愕し、まずいと思ったノレアは更に前に出る。……キラは観念して、肯定した。

「……はい」

保安員たちがキラに向けて銃を構え、トールたちもキラを庇うように前に出た。

 

―そこからの流れは、ノレアにとって苦いものに終わった。トールが凄い剣幕で保安員たちにまくしたて、マリューがキラを庇ってくれたのだ。フラガ大尉は謝罪して正規パイロットたちの醜態を教えた後、襲撃してきたザフトの部隊がクルーゼ隊だと告げて去っていった。その後マリューはノレアたち六人に士官用の一室を貸してそこで休むよう告げ、キラ達六人は銃を構えた保安員たちとは別の気のよさそうな保安員に案内されてその場を去ろうとしたが、最後尾に居たノレアは託されたもののことを思い出して、マリューの前に引き返した。

「これ、お願いします」

「これは……!」

ノレアはポケットの中に仕舞っていたIDカードとデータの入ったチップを取り出し、マリューに手渡した。マリューは受け取ったものを見て驚き、はっとして顔を上げた。

「どうして、あなたが……」

「託されたので、渡すべき人に渡しました。それでは」

「ちょ、ちょっと待って……」

ノレアは用は済んだとばかりにキラ達に追いつこうと身を翻した。マリューは慌てて呼び止める。ノレアは数歩歩いて立ち止まると、背を向けたままマリューに告げた。

「……次、キラに何かあったら許しません。では」

ノレアは返事を待たず、キラ達に追いつこうとかけていった。その背中を見送ったマリューの顔は、罪悪感で悲しげであった。

 

 

 

To Be Continued...

 




お待たせしました。暑さのせいでなかなか執筆が進まず……次はもっと早く出せると思います。
さて、今後のことを改めて。DESTINY時代の続編も執筆しますが、予め断っておきますとアークエンジェル組をアンチにする風潮は未だありますが、本小説では絶対にありません。ダーダネルス、クレタへの介入は流石に悪手だとは思いますが、デュランダル議長のやり方は『正義』ではないと思っています。シンやレイたちを駒として扱い、遺伝子で人々の自由を奪い、反発する者たちを武力で壊滅させるのは正しいとは言えないでしょう。

私はノレアという一人の人間が一滴の雫のようにCE世界に投じられ、多くの人々と関わることで波紋が広がり、その結果変わらない運命もあれば変わる運命もあるということを書いていけばいいなと思っています。SEED時代もDESTINY時代もその影響を受けて展開が変わっていきますので、お楽しみに。
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