『転生』……それは仏教、そしてその元となったヒンズー教に由来する概念だ。
ユダヤ、キリスト教的な『蘇生・復活』ではなく異なる生命として生まれ変わること。
まぁ、現代の創作では良いように改変され、専ら物語の舞台背景では説明のつかない概念を出す理由付けとして使われたりもする。
そんな『転生』という概念であるが…
如何なる因果か、俺は、それを体験してしまった。
しかも、面倒なオマケ付きで……
「高等魔法学院……?」
天気も良く、洗濯物を干した私は、爺さんと居間で話していた。そんな時、ふと思い出したかのように爺さんが言い出したのは、『進学』の話だった。
爺さん達が勧める進学先はこの国、アールスハイド王国の『高等魔法学院』。爺さんの母校でもある、由緒正しい魔道士養成機関……
「うむ……ディセウムとも話したんじゃが、シーナには同年代の友達がおらんじゃろう?トムの商会で商談する時も基本は歳上とじゃ……」
「それで、高等魔法学院への入学を。という事になったの?」
友達ねぇ……同年代と言っても『転生』のせいで自認としてはもう大人の年齢だしね。それこそ商談の方がやり易いんだけど……
「シーナに魔法学院で学ぶことは無いかもしれん。じゃが高等学院の頃に育んだ友情は長く続く。わしとディセウムとの仲だってそうじゃ。
こういう理由で、この話にはメリダも乗り気なんじゃ」
大国の国王と親交がある、というのも凄い話だけど……
まぁ爺さんは世間的には英雄だから、当然と言えば当然かな。
「別に嫌とかじゃないけど…」
精神年齢が一回りも下の子達と上手く付き合えるかどうか、不安なんだよなぁ……
「シーナ!この通りじゃ!頼む!」
遂には頭を下げてきた爺さんに、俺は「しょうがないな」と進学の話を受け入れる事にした。
そんな俺は【シーナ=ウォルフォード】、15歳。
大陸で英雄と呼ばれる祖父母を持つ、魔道士だ。
…
……
………
なーんで転生時に女の子になってんですかねぇ!?
「ふぅ……」
二週間後、私と爺さん。そして合流した婆さんと一緒に、ディセウムのおっさんが治める【アールスハイド王国】の王都へと馬車を使って向かう事になった。要は引越しだ。
王都までは中々時間が掛かる。爺さんが山奥に住んでいたせいだけど、私としては田舎の方が正直気楽だった。
なーんて言ってもしょうがないな。
今は王都での新たな出会いを楽しみにしよう。
なんて考えるていると、婆さんから声が掛かった。
「シーナ」
「どしたの。おばあちゃん」
「今更ながら言うけど、アンタは規格外の魔道士だ」
「うん。知ってる」
魔法の研鑽は楽しかったし、やりたい事もあった。
その結果として俺はかなり強くなった。
10歳の頃にはディセウムのおっさんの護衛に無傷で勝てるぐらいになったし、今なら…多分アールスハイドを正面から
要人を警護する魔道士、騎士の実力は国内屈指だ。
しかもアールスハイド王国は大国の部類。
俺の存在は、各国のパワーバランスを崩壊させかねない。
この世界の魔法は万人に開かれている。正しい研鑽を積めば、余程素質に恵まれない限り誰でも数に勝る戦力になれる。こういうのはファンタジーの実に怖いところだ。
でも、婆さんは分かりきった事を繰り返すような性格じゃないけど…どうしたんだろう?
「アタシは、アンタに幸せになってもらいたい。友達を作って欲しいというのもその一つさね」
……?
「私は今でも十分に幸せだけど……」
爺さんと婆さん。そして俺は、血が繋がっている訳では無い。爺さんが隠遁していた山で事故に遭った馬車の唯一の生き残り…それが俺だったらしい。つまり、養子…養孫だ。
それでも育ての親の爺さんと、偶に来る婆さんとの暮らしはそれだけで十分な程満たされていた。
でも婆さんは首をゆっくりと横に振って、「そうじゃないのさ」と呟いた。
「アタシにゃ今のアンタは雁字搦めに自分を縛ってるように見える。教えた知識もそうだし、環境が特殊だったからかは分からないけどね……アンタはもっとはしゃいでいいし、楽しんで良いんだよ」
婆さんの言いたい事が何となく分かる気がする。オマケの影響もあって、俺は本音で話した事は殆どない。
魔法の研鑽も全ては“やりたいこと”のためだった。
婆さんの言う通り、楽しかったり熱中したりという記憶はない。そういう記憶を作っていけ、ということか。
「分かったよ。おばあちゃん」
確かに、学生生活はそこんとこうってつけだな。
頑張るとしますか。
さて、もう王都に着く。門も見えてきた。
王都に入った。んだけどさぁ……
婆さんと爺さんが王国の身分証を衛兵に見せた時が大変だった。賢者『マーリン=ウォルフォード』、導師『メリダ=ボーウェン』。大陸で名を知らぬ者無き大魔道士にして、救国の英雄。
その帰還に気づいた衛兵が声を大きくして言ってしまった。結果として人が多く集まる事態になり、さりとて入国審査をすっぽかせば不法入国者になるため、穏便に対応しつつ、審査終了後はすぐにその場を去った。
馬車で王都を進む事そこそこの時間。貴族街にほど近い場所にある『英雄』宅はかなりの豪邸だった。
「おぉ……すっごいね。」
「元々はこの爺さんと夫婦だった頃の貰い物だけどね。」
「なるほど。そりゃあ確かにデカくもなるね……」
門では門番に迎え入れられ、しかも孫である俺まで尊敬されている始末だ。
まぁ、『英雄』の孫とはそういう意味と価値を持つという事だろう。“あいつ”があんな偏屈な性格になるのも何となくわかる気がする。
なんて事を考えながら、大きな玄関扉を開いた。
「「「「「「お帰りなさいませ」」」」」」
ほう…これまた凄い歓迎だな…扉を抜けた先のホールには執事さんやらメイドさんやらがズラリ。
「ほっほ……ディセウムが派遣してくれたようじゃの」
「これがあるからここは嫌なんさね……」
とは爺さんと婆さんの弁だが…なるほど、ディセウムのおっさんの仕業か。
流石大国の国王。行動が早い。
「メイド長のマリーカにございます」
「執事のスティーブと申します」
「料理長のコレルです」
俺は内心の動揺を悟られないよう柔和に微笑む。
いやだって、人の数に圧倒されるのは分かるけど、それでみっともなく大声を出すのは……ねぇ……
「はじめまして。シーナ=ウォルフォードです。よろしくお願いしますね。」
しっかし、料理人までいるんじゃあ、だらけないようにしないとあっという間に“落ちてく”んだろうな…
こりゃ、頑張らないとな。
『賢者の孫』として。
こんにちは、こんばんは、檜山俊英です。
私は凝りもせず、新たな作品を初めてしまいました。
『賢者の孫』のリベンジです。
ここ一年、文を書く事から逃げていましたが、久しぶりに書きたくなってしまい、こうして投稿させて頂いております。
今作『広がる灰を数えて』は、原作主人公シンとは別人がTS転生してマーリン、メリダの孫として生きていく…
というコンセプトです。
私自身見切り発車な所はありますが、何とか書き続けて行きたいと思っています。