広がる灰を数えて   作:檜山俊彦

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どうやら散策は災難が付き物らしい

 

 

 

「正にVIP待遇……そういう立場になった事を自覚させられるなぁ……」

 

 

 

部屋の確認やら今後の予定確認を済ませた俺は、爺さんに貰った小遣いを数えつつ、屋敷から出た。

 

 

串肉の屋台、魔道具店。その他色々な店を見て回った俺の姿はさながら田舎からやってきたお上りさんか。

 

 

しかしまぁ、周りの視線が辛い。自分で言うのもアレだが、俺は美少女の類だ。様々な国を回り、本人も美女と呼ばれた『導師』メリダのお墨付き。

 

 

その美貌故、俺はたくさんの視線を集めてしまっている。

男の不躾な視線や女の嫉妬混じりな視線。

 

 

相変わらずやりにくいったらありゃしない。

俺は、逃げるように早足で歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、歩き過ぎたかな……?」

 

 

 

帰り道は分かるんだけど、王都を散策する内にかなり屋敷から離れてしまった。そろそろ戻ろうか、と思って引き返すと、劇場に並ぶ列を見つけた。

 

 

あ、これは……

 

 

 

「“賢者マーリンと導師メリダの物語”……流石伝説の魔法使い。その舞台は盛況だね……」

 

 

 

少し顔が引き攣るのを感じた。

爺さんが隠遁した一因には、この信仰とも取れる熱狂ぶりにあるのではと思ってしまう。

 

 

まぁ、本当の理由は教えてもらってないしな…

今は推測することしかできない。

まぁ、いつか教えてくれる……かな。

 

 

平民街は半分ぐらい見て回ったし、帰るか……

 

 

 

「イヤ!やめてください!」

 

「アンタ達いい加減にしなさいよ!」

 

 

 

「おぉ怖…そんな怒んなよぉ。一緒に遊ぼうって言ってるだけじゃん」

 

 

「イイ事教えてやっからさぁ〜気持ちい〜い事をよ」

 

 

 

ナンパ…しかも悪質だな。2対3…数の有利に漬け込んでやがる。

周りが気づいてるのに手を出さないのは…巻き込まれたくないからか…

 

 

くっだらないなぁ。

 

 

 

「そこのお二方。お困りですか?」

 

 

 

「はい!超お困りです!」

 

 

 

うおぉ、すっごい返事…

 

 

 

「へぇ〜こっちも上玉じゃねぇか!」

 

 

 

うへぇ…気持ち悪…見境無しかよ。こいつら見るからに魔物ハンターなんだけど、品がない。実力もあるようには見えない。どうせ弱い魔物を狩って威張ってるのが“眼”を使わなくても分かる。

 

 

さて、と。

気持ち悪い笑みを浮かべたナンパ男の一人が俺の腕に触れた。

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

瞬間、男は叫び声を上げて飛び退く。

 

 

 

「お、おい!どうした!」

 

 

 

触れた男は声にならない叫びを何度か繰り返して、気絶した。それを見た他の二人は、倒れた男を引き摺って逃げていく。「覚えとけよ!」という捨て台詞は三下のソレだ。

 

 

王都内で攻撃魔法を使うのは禁止されているけど……そもそも魔法じゃないなら問題ないよね。

 

 

 

「大丈夫?怪我はしてない?」

 

 

 

「う、うん。平気。それにしても、凄いわね…何したのか全く分からなかった。」

 

 

そう答えた活発そうな女の子に、「酷いよね。折角触らせてあげたのに。」と返しておいた。

すると苦笑して、

 

 

 

「凄い胆力ですね……」

 

 

 

と返してきたのはお淑やかそうな女の子。まぁ、実力はたかが知れてるしね……

それにしても二人共可愛いな…こりゃナンパされるのも分かる美貌だ。

 

 

 

「あのくらいなら何とでもなるけど…取り敢えず移動しよっか。この近くなら……」

 

 

 

「あ、近くにカフェがありますよ!」

 

 

 

「じゃあそこにしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は二人に案内されて、近くのカフェにやってきた。座るのはテラス席。偶々空いてたし、眺めも良いからな。

 

 

 

「改めてお礼を言うわね。助けてくれてありがとう」

 

 

「あ……ありがとうございました……」

 

 

 

二人に続けて礼を言われた。他の人が対処出来なさそうだったり、躊躇ってたから動いただけなんだけどね……

 

 

 

「いいっていいって、にしても、あぁいうの厄介だよね……」

 

 

 

「ほんっと……魔法さえ使えればあんな連中簡単にやっつけられたのに!」

 

 

 

「ダメだよマリア。街中で攻撃魔法を使うのは禁止されてるんだよ?」

 

 

 

「それはそうだけど…あ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私はマリア、こっちはシシリー」

 

 

 

「あ、シシリー…です」

 

 

 

二人の自己紹介に私も応えた。

 

 

 

「私はシーナ。ところで、魔法を使うらしいけど…マリアは高等魔法学院の生徒なの?」

 

 

 

「来月の入試に合格出来ればね……」

 

 

 

へぇ……

 

 

 

「マリアも受けるんだね」

 

 

 

「うん、シシリーと一緒にね。“も”って事はシーナも受けるんだ」

 

 

 

「そう。私も受けるよ。…ということは試験に受かったら同じ学院生か…お互い頑張ろうね」

 

 

 

「私、首席目指してるから…負けないわよ?」

 

 

 

ほう…大きく出たな…いいね、受けて立つ。

 

 

 

「じゃあ首席の座を掛けて勝負だね。私だって負けるつもりはないよ。マリア」

 

 

 

俺達はお互いの健闘を祈りつつ、握手した。

直ぐにシシリーとも握手しておく。

 

 

 

「そういえば、シーナってどこの中等学院?同い年の割りに見た事ないけど」

 

 

 

「実は私、今日王都に来たばかりだから……今まではド田舎で暮らしてたし」

 

 

 

「へーそうなんだ…あ、そういえば…」

 

 

 

「どしたの。マリア」

 

 

 

あれこの感じ……

 

 

 

「王都に来たと言えば知ってる?賢者様と導師様も王都にお戻りになられたらしいわよ!!」

 

 

 

うん。そんな気はしてた。しかし言わせて欲しい。

ブルータス(マリア)、お前もか。

 

 

 

「おぉう盛り上がってるね」

 

 

「何よシーナ興味無いの!?

 

稀代の魔法使い勇猛果敢な賢者マーリン様!魔道具を操り苛烈に魔物を狩る美しき導師メリダ様!

この国…いえ、この世界に生きる限り最高の憧れ、生ける伝説よ!?」

 

 

 

俺はマリアのテンションにタジタジになってしまう。

毎度の事だがこういうのは慣れないなぁ……

 

 

しかし私は商談も熟すビジネスパーソン。

この程度で揺らぐ愛想笑いでは無いのさ!

 

 

 

「マリアは賢者様と導師様の事が大好きなんだね」

 

 

「当然よ!それに、そのお二人のお孫さんが今度魔法学院の入試を受験するらしいのよ!」

 

 

 

え、そこまでバレてんの?凄まじいな…ファンの執念は。

トリップしているマリアを引き戻しつつ、長居しすぎた事に気づいた俺はマリア達の分も払って別れた。

 

 

 

願わくば彼女らと同じ学び舎に通える事を祈ろう。

 

 





こんにちは、こんばんは。檜山俊英です。
少し遅れましたが、第2話となります。

昨日書き上がっていたのに予約投稿する前に寝落ちした事に気づいた時は軽く絶望しました。


早く戦闘シーンを書きたいので序盤は駆け足で行きたいと思っています。
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