広がる灰を数えて   作:檜山俊彦

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どうやら入学式は色々と苦労するらしい

 

 

 

「マーリン様、メリダ様、シーナ様。王宮から馬車の迎えが来ております。出立の準備はよろしいでしょうか」

 

 

 

「制服も着たし……準備は出来たから……おじいちゃん。おばあちゃん。行こう」

 

 

 

俺、爺さん、婆さんの3人で馬車に乗り込んで学院へと向かう。今日は学院の入学式の日だ。

 

 

そのまま何事もなく学院に到着した。

ところまでは良かったんだが……

 

 

学院の校舎に向けて3人で歩き出した辺りで嫌な予感はしていた。

 

 

 

「あれは国から勲一等と共に送られるマント……二人共それを纏っている……という事は!あれは!」

 

 

 

そのヒソヒソ声が聞こえた時点で爺さん達から離れる事にした。すまん。スケープゴートになってくれ……入学式に遅れるのはマズいんや……

 

 

 

「「「賢者マーリン様!導師メリダ様!」」」

 

 

 

予想通りに周りの新入生、挙句の果てはその親までもが殺到していた。南無三。

 

 

 

俺はそのまま校舎へと入り、既に集まっていた新入生達に合流した。お、知った顔がいるな。

 

 

 

「やぁ。オーグ。元気?」

 

 

 

「あぁ、シーナか。体調は万全だ。そちらこそ、緊張していないだろうな」

 

 

 

「このぐらいではまだ緊張しないよ。あぁ後先日は茶化した話だけれど、エリーにも近いうちに会いに行くよ」

 

 

 

「あぁ、楽しみにしている」

 

 

 

さてと、周りを見ると……お、更に知った顔発見。

 

 

 

「マリア。おはよう。シシリーも」

 

 

 

「シーナ!あぁ…顔見ると少し悔しくなってきたわね…首席合格持ってかれたわ」

 

 

 

「それはまぁ、真剣勝負だからね。だけど、ここに居るって事は……」

 

 

 

「えぇ、私達も“Sクラス”よ。首席さん。」

 

 

 

Sクラス…学院の最優秀者が集められたクラスであり、下にA、B、Cと続く。ちなみにSクラスの定員は10名だ。

 

 

 

「よろしくお願いしますね」

 

 

 

シシリーの挨拶にも返事を返していると置いていったオーグがこちらに来ていた。

 

 

 

「シーナが話していた二人は彼女達か。ん……君たちは……」

 

 

 

「ご無沙汰しております。アウグスト殿下。メッシーナ伯爵家のマリアでございます」

 

 

 

「クロード子爵家のシシリーでございます」

 

 

 

俺は二人の綺麗なカーテシーを横目に物思いにふける。

 

 

二人は貴族らしい、言われてみれば所作が貴族のものだった。まだまだ精進が必要だな。こんな体たらくではトムさんに怒られかねん。

 

 

 

「言わなかったのは、ゴマすりを避けるため?」

 

 

 

「そうね…そういうの結構厄介なのよ。」

 

 

 

「なるほどね…」

 

 

 

俺も商人の名義では結構ゴマすりを受ける事がある。

その時は変装までしているから“シーナ=ウォルフォード”との繋がりを勘づく人は殆ど居ない筈だから安心できるけどな。

 

 

 

「静かにしろ!入場だぞ!」

 

 

 

さて、頑張りますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場への扉が開いた。

来賓と新入生の親族からの拍手に包まれて入場していく。

爺さんと婆さん、ディセウムのおっさんの姿も確認できた。

 

 

……“彼”は居ないか。俺が関知する問題では無いのかもしれないが、関わったのだし、気になるものは気になる。

 

 

っと、思考が脱線したな。

続々と入場が進み、どうやら全員が座ったらしい。

 

 

開式の言葉。そして……新入生代表挨拶。

 

 

 

「それでは続きまして新入生代表挨拶です。今年度入学試験首席合格者。シーナ=ウォルフォードさん」

 

 

 

「はい」

 

 

 

「ウォルフォード……?」

 

「という事は彼女が……!」

 

 

「賢者マーリン様の……!」

 

 

 

マリアとシシリーだけでなく、周りが一様に驚愕している。これはこの名前(シーナ=ウォルフォード)でもゴマすりを受けるのか……億劫だな……

 

 

まぁ、今はやるべきことをやるだけか。

 

 

 

「ご紹介に与りました。新入生代表、シーナ=ウォルフォードです」

 

「今日、この良き日に皆様に見守られ、このアールスハイド高等魔法学院に入学できた事を大変嬉しく思います」

 

「私は首席に相応しい魔法の技量があると自負していますが、その反面、人付き合いは苦手です。お爺様に田舎で育てられからかもしれません」

 

「ですが友人の大切さは良く知っています。その絆の強さも。だからこそ皆と親交を深め、素晴らしい学院生活にして行きたいと思っています」

 

「さて、最後に……人間が、一人で出来ることには限界があります。学べる事にも勿論限界があります。それは“賢者の孫”と言えども変わりません。故に、これからの三年間、保護者及びご来賓の皆様、そして在校生、教師の皆様。ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致します」

 

「新入生代表、シーナ=ウォルフォード」

 

 

 

最後に一礼する。

 

 

するとそこかしこから拍手が降り注ぐ。

こういうのを万雷の拍手とか言うのだろう。

少しむず痒いな……

 

 

 

席に戻るとオーグに軽く笑われた。

いや、笑うなよ。結構真剣に考えたんだぞ。

 

 

 

「で!なんでマーリン様とメリダ様の孫だって教えてくれなかったのよ!」

 

 

 

話をぶった切ってくれてありがとうマリア。

 

 

 

「入学早々目立ちたくなかったんだよね……」

 

 

 

「ま、シーナがマーリン様の孫っていうのは言われてみれば納得だけどさ。」

 

 

 

マリアの言葉に安心しつつも、会は進行していく。

 

 

すると、ディセウムのおっさんの挨拶に軽い冗談が挟まった。先日言っておいたのが良く効いているな。

 

 

さて入学式は終わりか…しかし、これからの学院生活……何事もなくとは行かないらしい。

 

 

こちらを睨み続けるカートを見て、そう思った。

 

 





頑張って連投してみました。檜山俊英です。
シーナの性格的に冗談をぶっ込むのは避けましたが、完全に跡形もないのは嫌だったので行間で陛下にやってもらいました。

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