私がマリアとシシリーの二人を誘うと……
「「行く!すぐ行く絶対行く!」」
凄い食いつきだった。多分、爺さんと婆さん目当てなんだろうなぁ……と思うと微笑ましくなる。
「では私も行くか。どうせ父上もシーナの家に行くだろうしな」
「ほっへぇ……そこの二人は?」
オーグが来るのも予想の範疇だったからそのまま流して、オーグの後ろにいた護衛の二人に話しかけた。
「勿論自分達も御一緒します」
「了解了解。というか久しぶりだね、トール、ユリウス。というかユリウスSクラスだったんだね。正直もっと下だと思ってた」
「酷いで御座るよシーナ殿!」
「シーナさんも、ユリウスを揶揄うのはやめて下さい」
というか懐かしい顔ぶれだな。相変わらずな感じだ。二人でフュージョンしたらむさ苦しさとモヤシが半々の健康的な人物になりそうだ。いや、この表現だと気持ち悪いな、やめとこ。
妄想もそこそこに二人には軽く笑って返すと呆れた目をされた。
で、この武士みてぇな野郎とヒョロガリモヤシは先述の通り
名前はユリウス=フォン=リッテンハイムとトール=フォン=フレーゲル。この二人とは大体2年ぶりの再会になる。
「じゃあ、無用な混乱が起きても困るし来賓室に行こうか。丁度おじいちゃんとおばあちゃんもそこにいるから」
「ちょ、ちょっと待って!親に連絡してくるから!」
「じゃあ先に行って待ってるね」
あ、そっか。軽く見送ったけど親御さんにも伝えておく必要があるのか。少し考えが浅かったな……
結局、マリアは来賓室に私達が着く前に追いついてきた。
今は、私の後ろで彫刻みたく固まってるみたいだ。
シシリー達も大なり小なりそんな感じか。
普段通りは既に爺さん達と面識のあるオーグのみ。
「遅かったのぉ……少し心配しとったぞ」
「シーナなら大丈夫さね。若い頃のアンタじゃあるまいし」
「んぐっ!」
見事な(元)夫婦漫才を見せられた。まぁ、元気なのはいい事なんじゃなかろうか。
「おじいちゃん。おばあちゃん。紹介しとくね。この二人はクラスメイトのマリアとシシリー」
「ははは初めまして!シーナと同じクラスのマ マ マリア=フォン=メッシーナです!」
「あの、その、は 初めまして!シシリー=フォン=クロードです!」
おおぅ、2人とも慌ててんねぇ……
これが英雄視ってやつなのかな。文字通りの。今も昔もよく分からないけど。
「でね、おばあちゃん。少しこの二人の事で相談したい事があって……」
すると、婆さんの目が鋭くなる。
「ここでするつもりかい?その話」
「いや、勿論私達の家でするつもりだよ。ここには合流のために来ただけだから」
「ならいいさね。移動するよ」
「合点承知」
馬車で家まで戻ってきた私達は、客間で式のあとにあった事を爺さんと婆さん、そしてオーグの親父のディセウムさんにも伝えた。
「成程。式のあとにそんな事があったのかい……」
「ディセウム。この国の貴族にはまだそんなのがいるのか?」
「一部選民思想の強い者はまだおりますが……この国の意識改革は順調に進んでいるはずです」
それに、とディセウムさんは言葉を続けた。
「財務局のリッツバーグ事務次官と言えば公正明大で有名……その息子がそんな事になっているとは……正直、驚いています」
そう、だからこそ初めてカートに会った時も違和感を感じた。私はリッツバーグ事務次官とは直接話した事だってある。カートの言うような卑劣な真似に手を貸すとは思えない。
この違和感が拭えない感じ、嫌だな。
「それで、シーナ」
「うん?」
「先程、何を思いついた?まさか家に呼びたかっただけな訳ないだろう」
オーグが聞いてくれたので私は沈んでいた意識を戻せた。
「うん。そこが本題だよね。……はい」
私は魔法で作った異空間から1つのアクセサリーを取り出した。
「それは……ブローチ?」
「その通り。それは私が荒れてた頃に作った品でね。かなり強めに防護魔法を付与してある。それで……「少し待ちな」」
ここで婆さんから、いや、私の師匠、『導師』メリダから声が掛かった。これは、私も少し早計だったかもしれない。
「シシリー、と言ったね。」
「は、はい!」
「そのブローチは凄まじい代物だよ。受け取ればアンタに絶対の守りをもたらす……それだけこの子がアンタを守るのに本気って事さ。
……それを受け取る“資格”が自分にあると思うかい?」
「資格……」
部屋が沈黙で満たされる。それを破ったのはディセウムさんだった。
「……それほどなのですか?メリダ師」
「そのブローチに付与された魔法は私の魔道具より数段強固だからね。隣のジジイが全盛期でも魔力の続く限りは突破されないよ。価値にしたら一体幾らの値になるかも分からない」
そう言って婆さんは手首を捻って親指で爺さんを指差した。
婆さんの言葉と手振りに、皆静かに驚愕したのがわかった。
「その上で、もう一度聞くよ。そのブローチを受け取る資格は、覚悟はあるのかい?」
ややあって、シシリーは口を開いた。
「私に……私には、その資格は……ありません」
シシリーは、泣いていた。ボロボロと、涙を流して。
「……どういう事だい?」
「私、は……シーナの優しさにつけ込みました。シーナに事情を話せば、同情してくれる、助けてくれるんじゃないかって……そう、期待して事情を話しました」
咄嗟に否定してシシリーを庇うマリアを、「自分が決めた事だから」と突き放すシシリー。
「まぁ、この子は強いからね……頼りたくなるのは、分からんでもないさね」
「でも……でも……!シーナは関係ないのにやっぱり助けてくれて、絶対守る……って言ってくれて……!全部勝手な私の都合なのに!」
まだですか、もういいでしょう……!このままじゃ……!
「メリダ様!お孫さんを利用しようとして申し訳ありませんでした。このあとの事は自分でなんとかします!」
シシリーはそう言って立ち去ろうとした。
「お待ち!」
『導師』メリダは鋭い声でシシリーを呼び止めた。
「シシリー、よく正直に話したね。シーナを利用しようって魂胆なのはすぐに分かったよ。もしそのままブローチを受け取ろうとしたら叩き出してるとこさね」
でもね、と続けた。
「でもアンタは正直に話した。魔道具としての価値を知った後に……だ。それを手にするチャンスを放棄する事は誰にでもできる事じゃない」
婆さんは立ち上がって、シシリーの頭に優しく手を乗せた。
「でも……っ!私……シーナを、騙して……」
「気づいてたよ。分かってた。」
「えっ?」
シシリーは驚いてこちらを見た。その表情は私が今口を開いた事にか、それとも言葉にか……多分。両方かな。
「これでも振り回されるのは慣れっこだから……何となく分かってはいたんだ。それでも助けたかったのは……多分、シシリーの事を友達だと思ったから……かな」
「友……達。私が、私がシーナの友達でいいのかな……?」
「大丈夫だよ。だからシシリー、私を頼って。困った時は助け合いだよ。」
「私、まだ……シーナに助けてもらった事しかないよ……」
「じゃあ私が困った時、私を助けて欲しいな。それでお相子、でしょ?」
「シーナ……」
婆さんがシシリーを軽く抱きしめた。
「試すような事をして悪かったね……でも、シーナの魔道具を受け取るならどうしても確認しなきゃいけなかった。……悪かったね」
限界だったのか、シシリーは決壊したダムのように泣いていた。
「ブローチに付与された魔法は魔力を込めるとそのまま発動するから、普通の魔道具とそんなに変わらない。シシリーが危ないと思ったら躊躇なく使ってね」
「うん!」
でもな……これでもまだ少し怖い。魔法と暴力は完璧に防ぐブローチだけど、不意打ちはどうしようもないし、何より精神的な負担は防げない。だったらここは……
「倍プッシュだ。」
「へ?」
「明日の朝、マリアと私でシシリーの家まで迎えに行くよ。」
「そ、そこまでは……!」
「いいのいいの。それに、友達と一緒に登校なんて今しか出来ない事だし、やったことないからね。私を助けると思って、ね?」
「シーナ、ありがとう……」
「うん。どういたしまして」
私はこの後、シシリーの家まで一緒に行って場所を確認、マリアとも待ち合わせ場所を決めたのだった。
こんにちは、こんばんは、檜山俊英です。
更新が遅れて申し訳ないです。正直見切り発車だったので、設定もあやふやだったのですが、大体固めて戻ってきました。
第6話、どうだったでしょうか。
今回スキップされた原作の激ヤバポイントは、付与剥がし、絶対魔法防御とかいうインチキ、ゲート開帳でした。
特に後ろ2つは作者としても納得の行かない事が多く、また設定に詰まる原因でもあったので、バッサリカットしました。