もちっとした猫好きさん、誤字報告ありがとうございます。
とんでもない間違いをやらかしていました。指摘いただきありがとうございます。
「おはよう。マリア」
「おはよう。シーナ」
シシリーにブローチを渡した次の日の朝、私は貴族街の噴水前でマリアと合流した。クロード子爵家の別邸はこの近くにある。
挨拶もそこそこに私達はシシリーの元へ向かう事にした。
「それにしても、シーナが着いてきてくれるなら一安心ね」
「うん、どんな相手にだって攻撃をさせるつもりはないよ」
「ホント、シーナ様々ね。それにしても、アンタとんでもない魔道具師だったのね……まさか『導師』様に『賢者』様を引き合いに出させるなんて……」
「一応、別名義で魔道具を売り出してるんだよ?偶然ハーグ商会にツテがあったし」
「別名義?でもアンタが作るような魔道具が有名にならないわけ……」
「私の別名義、知ったらマリアも驚くんじゃないかな。……っと、ここだね」
目の前には昨日も見たクロード子爵家の別邸があった。
私は門衛に要件を伝えると、すぐにシシリーがやってきた。
「ごめん、待たせちゃってたかな……」
「ううん、大丈夫だよシーナ、私もさっき準備ができたところだから……マリア、シーナ、ありがとう」
「いいっていいって、私達友達でしょ?ね、シーナ」
「そうそう。……んじゃ、行こうか」
私達は門前までシシリーと一緒にやってきたシシリーのご両親に挨拶をしてから、学院へと出発した。
「それで、アンタの別名義って?」
「別名義……ですか?」
「そうよシシリー。シーナはハーグ商会で別名義を使って魔道具を売り出してるらしいのよ。」
「そうなんですね……あ、もしかして」
これは……気づいたかな?シシリーには実物を渡したからわかりやすいかもしれない。
「え、シシリー分かったの?」
「昨日部屋でブローチの付与魔法を使ってみたんだけど……減る魔力がとっても少なくてびっくりしたの。それに、使い心地がどこか“メイルゥ=ハゥフニス”さん作の魔道具に似てるなぁ……って」
「おぉ……シシリー。大正解だよ」
「え?マジで?」
「そうそう……私が“メイルゥ=ハゥフニス”だよ」
「はえー新進気鋭の魔道具師がまさか同い年だったなんて……」
まぁ、私の魔道具は同種の既製品と比べてデフォルトで消費魔力3割減、魔法効果2割増ぐらいの性能差があるから……『新進気鋭の魔道具師』なんて二つ名で呼ばれてる。
「二人には今度魔道具制作のコツを教えるよ」
「え?私達に教えてしまって大丈夫なんですか?」
「あくまでも“コツ”だからね。企業秘密はもちろん内緒」
「ならいいわ。全力でアンタから学び取ってやるわよ、シーナ」
「その意気だね」
この後も友達と登校する楽しさを噛み締めながら、私は二人と一緒に登校した。
学院に着いたけど……特に何もなし。探知魔法も敵性反応はなし……平和そのものだな。ちょっと肩透かしを食らった気分だけど……まぁ何かあるよりはいいかな。
「おはようシーナ。両手に華だな」
「はぁ……おはよう、オーグ。あのねぇ……」
教室に着くと早速オーグから揶揄う言葉が飛んできた。
護衛の二人からも挨拶を受けると、他のクラスメイトにも話し掛けに行ってみたりもした。
すると、始業時間ギリギリになって小柄な生徒が一人教室に入ってきた。
「だぁ!間に合った!?大丈夫だよね?」
「おはようアリスさん」
彼女はアリス=コーナー。王侯貴族や英雄の孫みたいな特殊な生まれ抜きだとこのクラスでは彼女が最も成績がいい。
「アリスでいいよ。私もシーナって呼ぶから」
「了解。で、ギリギリだね。どうしたの?」
「いやぁ今日の授業が楽しみで寝付けなくってさぁ……寝坊しちゃった!」
遠足前日特有のアレに近しい感じか。気分は分からんでもない。
と、ここで担任のアルフレッド先生が教室に到着した。
そのままホームルームに入って、今日の予定が説明された。
午前は学校施設の見学。午後は実際に魔法実習との事だ。
他に伝えることも無いようで、そのまま学校施設の見学が始まった。
教室の外に出て校舎を歩いていく。
「校舎は大きく分けて2つだ。各クラスの教室があり座学に用いる“教室棟”、生徒会室、実験室、研究室等がある“特別棟”がある」
ふんふん。
「研究室は研究会に所属する生徒達が放課後使用している。……色々あるぞ。放出系魔法を研鑽する『攻撃魔法研究会』、付与魔法での魔道具制作を目的とする『生活向上研究会』。あとは……身体強化魔法を極める『肉体言語研究会』なんてものもある」
おい最後ォ……というかユリウスは『肉体言語研究会』と聞いて恍惚そうな表情をするんじゃない。それはもうヤバい奴だぞ。
「だが……シーナにとってはどこも物足りないんじゃないか?いっその事自分で研究会を立ち上げてみたらどうだ?」
研究会、ねぇ……
「ウォルフォードの作る研究会か、興味深い」
おっと、アルフレッド先生も乗り気か……
「確かに興味深い」
そう言って後ろからズイっと身を乗り出してきたのは一人の生徒、名前は確か……リン=ヒューズさん。お父上が宮廷魔道士団の所属だって言ってたな。
「もし作るならあたしも入りたい!」
「私も入りたいかもぉ」
アリスに追随したおっとりした感じの生徒は確かユーリ=カールトンさん。一般家庭の出身だってさっき聞いた。
「僕も入りたいね。そこに入ればずっとSクラスにいられそうだ」
彼はトニー=フレイド。家名は騎士家系のフレイド家だけど、魔法学院にやってきた変わり者だ。言動を聞く限りSクラスに拘りがあるのかもしれない。
「先生、研究会を立ち上げるにはどうすれば?」
「5名以上の会員と顧問の教師を揃えて、申請書が受理されれば立ち上げが完了する」
「研究会の名前も必要ですね」
ほうほう、当人を差し置いて勝手に話が進んでるけど、まぁ楽しそうではある。
「シーナが研究会を作るなら私も入りたいな。送り迎えしてもらうのもあるし、楽しそうです」
シシリーの言葉にマリアも乗っかった。
これで私を除いても最低7人の初期メンバーがいることになる。顧問はアルフレッド先生にやってもらえば多分解決するから……
やるならブラックな職務にならないようにしないとな。
「じゃあ、作っちゃうかな。研究会。研究内容は放課後に決めようか。では、アルフレッド先生。顧問をお願いします」
「あぁ。よろしく頼む」
研究会の話題に一段落着いたあとは入試の実技試験にも使われた訓練場や、食堂を見て回った。丁度昼頃なのもあってそのまま昼食をいただいた。
美味しかったです。
さて、午後になって、魔法実習のお時間になった。
アルフレッド先生の指示でユリウスから自慢の魔法をぶっぱなすことになった。なった……ユリウスから?
「それでは行くで御座る!」
ユリウスは上裸になって魔力を纏った。身体強化魔法なのは分かる。しかし何故上裸?
ユリウスはそのまま突進して、的を殴って壊した。
それでいいのかSクラス。
オーグが私の肩に手を置いて爆笑している。君さぁ……
「さぁ、どんどん行け!」
先生の言葉に従って、皆が自らの魔法を放っていく。
そして、私の番だ。
指を鳴らした。
直後、爆音と共に全ての的を巻き込むように空気が爆ぜる。
「流石にすごいな……」
「これが英雄の孫……」
「これ程とは……」
どうやら、概ね満足して貰えたらしい。
「いいの思いついた。研究会の名前」
リンさん……リンがどうやら良いのを思いついたみたいだから聞いてみる事にした。
「どんな名前?」
「『究極魔法研究会』」
「……ククク。いいねそれ!採用!」
この後Sクラス全員の参加が決まった。
だけど……このまま立ち上げるのはマズい気がする……
なんだろうか。
私は首を傾げて少し考えたが、答えは分からなかった。
こんにちは、こんばんは檜山俊英です。
第7話、どうだったでしょうか。
次回でカート戦に入れたらいいなぁ……と思っています。