暗闇で覆われている空間において、そのガンプラは起動しようとしていた。
「起動、成功しました」「特に異常はありません」
起動したガンプラを包み込むように、粒子が纏う。
それが、動くはずのないガンプラに命を吹き込むプラフスキー粒子が纏う。
「全ての機能、問題ありません」
そう、起動までの様子を見ていた研究員が、1人の女性を見る。
研究員の、その言葉と共に笑みを浮かべながら、マイクに口を近づける。
「それじゃ、始めようか、ゲッター、発進」
それを合図に、粒子を身に纏ったガンプラ、ゲッターの眼に光が灯ると同時に、発進する。
宇宙空間へと飛び出すと、ゲッターロボはそのまま、宇宙を飛ぶ。
そのスピードはかなり速く、他の機体では追いつく事すらできない。
「……っ! 速いな、流石だね」
そんな感想を言いながらも、女性は手には汗が滲む。
しかし、それは緊張ではなく、興奮から来るもの。
この場にいる誰もが、目の前にある未知なる力に対して、期待を抱いているのだ。
「さて、まずは軽く動こうかな」
同時に、女性の言葉と共にフィールドに次々と罠が起動し、ゲッターに向かって、襲い掛かる。だが、それでも、ゲッターは止まらない。
襲いかかってくる罠を物ともせず、ただ真っ直ぐ突き進む。
そして、ゲッターは罠を全て回避すると、斧で反撃を行う。
放たれた光弾は、正確に狙いを定め、罠を破壊する。
破壊しながら、次の攻撃に移るため、ゲッターは再び動き出す。
だが、ゲッターは、そのまま真っ直ぐと飛ぶ。
「おい、何をしているんだ、ゲッター!」
それに対して、女性は思わずゲッターの操縦者に向けて、叫ぶ。
「無理だっ、こいつっ早すぎて、制御がっ」
そんな女性に対して、ゲッターの操縦者は、完全にゲッターのコントロールを行う事ができず、そのままゲッターはフィールドから飛び出る。
「ちっ、またか」
それを見ながら、女性は、そのままフィールドから出たゲッターの元に近付き、拾う。
「まったく、これが天下のガンプラ学園のファイターか」
「そう、荒れるな、ココ」
そう言いながら、アラン・アダムスは少女、ココを止めるように言う。
「悪いが、アラン。私は、この学園にゲッターを使いこなせるだけのファイターがいると期待していた。だが、とんだ無駄足だったようだな」
「なんだと、この女っ!」
そう、先程までゲッターを操縦していたファイターが、ココに近づく。
だが、そんなファイターを無視し、ココは、そのまま部屋から出て行く。
「……イオリ・セイの再来と言われる程のビルダーとして腕を持ちながらの問題児。彼女が作りだしたゲッターを果たして、乗りこなすファイターは存在するのか」
ファイターとココとの言い争いに対して、アランは呆れたように言いながらも、その才能を惜しむように言う。
だが、そんな心配を余所に、既にココは、その場から出て行っていた。
「どうしますか?」
「連れ戻してくれないか?」
「分かりました」
その言葉と共にアランの命令を受けたファイターがすぐに向かった。
その時、ココは既に街へと歩いていた。
今の彼女は非常に不機嫌であった。
「まったく、ゲッターを使いこなすファイターはいないのかっと」
ココは、そのまま、街を歩いていると、彼女の前にぶつかった。
機嫌の悪い彼女はすぐに怒鳴ろうとしたが。
「寝ているだと」
ぶつかった相手は、どこかの制服を身に纏っている。
一瞬、寝ているかと思った。
「あぁ、すまん、眠っていた」
「歩きながら寝るとは、器用な事をするもんだな」
「なんというか、いつもそうなんだ」
男から出る眠気なのか、先程まで怒っていたココは呆れていた。
だが、男は気にせずに立ち上がる。
「なんか、悪い事をした。
何か奢ろうか」
「いいや、構わない、今は「見つけたぞ!」ちっ」
すると、後ろを見る。
そこにはココを追ってきた者達がいた。
「さぁ、戻りますよ、ココ」
「断る。あそこには私が求めている人材はいなかった。それは既にあそこにいる理由にはならない」
「そうは言わずに」
そう、男達の言葉に耳を貸さないココ。
そこで、ふと目の前にいる彼に眼を向ける。
「さっき、何か奢ろうと言ったね」
「あぁ」
「ならば、君。彼らをガンプラバトルで倒してくれないか?」
「がんぷらばとる?」
それに対して、彼は首を傾げた。
「ココさん、何を言っているんですか」
「別に、ただの性能テストだよ、私のゲッターのね」
それだけ言うとココはゲッターを取りだしながら、彼に渡す。
「俺、ガンプラバトル、やった事ないけど?」
「あぁ、良いよ、良いよ」(その間に、策を考える。その時間をくれるだけでも十分だから)
ココの企みとは裏腹に笑みを浮かべる。
「それで、納得するならば」
「まぁ、私のゲッターが相手だ。ハンデとして、君達、全員で良いよ」
「素人相手に、そこまで「別に良いよ」なに?」
それと共に彼はゲッターを見つめていた。
同時に、その目をココもまた見つめる。
「えっ」
見つめた先、彼の目。
それは、ゲッターに眼を奪われていた。
ガンプラバトルに興味はなさそうな少年。
だが、ゲッターに囚われている。
その目に、ココは運命を感じた。
そうしている間にも、ガンプラバトルを行う為の場所へと向かう。
ガンプラ学園の精鋭達は使用するGN-Xを、セットする。
同時にゲッターを持った少年もまた、セットする。
それと同時だった。
これまで、眠気で閉じかけていた目が大きく開く。
「なぁ、あんた、確かココだったな」
「そうだよ、少年。そう言えば、君の名前をまだ聞いていなかったね」
その目を見たココは笑みを浮かべる。
それは自分と同じ何かに囚われている少年に対して問いかける。
「俺は、ナガレ。ナガレ・リョウマだ」
その叫びと同時に、ゲッターが動き出す。
「あいつ、本当にゲッターを使っている」
そう言いながら、GN-Xを操縦する一人が、眼前にいるゲッターを見ながら、呟く。
「だが、どんなに優れた性能を、いや、化物染みた性能故に誰も操る事ができないゲッターを素人が操れる訳はない!」
その言葉と共にGN-X部隊は、そのまま銃口をゲッターに向ける。
「撃てぇぇ」
その合図と共にGNビームが真っ直ぐ、ゲッターに向けて、襲いかかる。その瞬間、ゲッターもまた動き出した。ビームの嵐の中、ゲッターはまるで赤い流星のようにビームの中を掻い潜る。
「なっ、馬鹿っ」
「ゲッターが、飛んでいる! しかも、自分の手足のように!!」
そう、GN-Xの一体が言い終える前に、ゲッターによって、斧で真っ二つに切り裂かれる。
「くそっ、奴の動きを止めるんだ! 足を狙え」
そう言うとGN-X部隊は散開し、脚部を狙いにかかる。それに対してゲッターもまた、回避する。しかし、そこにビームが襲いかかり、今度は回避できなかった。直撃を食らったゲッターは地上へと落下していく。
「これでどうだ?」
その様子を確認する前に、煙の中から斧がブーメランのように飛び、一機のGN-Xに命中した。そしてそのまま機体は地上へ落ちる。
「何だあの武器……いや、それよりも今の攻撃はまさか」
「そのまさかだぜ!」
突如として声が響き渡る。それは、地上に落ちたはずのゲッターだった。既に落下地点には機体はなく、いつの間にか上空に佇んでいた。
「馬鹿な、何故」
「まだ、眠気が取れなかったからな。けど、丁度良い目覚ましで、ようやく起きれたぜ」
そう、ゲッターのパイロットは狂気的な笑みを浮かべた。
本来ならば、表情のないゲッターにまで、まるで瞳があるように、はっきりとした感情が現れる。その様子に周囲の人間は動揺しながらも、ビームライフルを撃ってくる。
ビームを回避しながら、ゲッターは、両手に持っている斧で、ビームを弾いていく。弾かれたビームはそのまま何処かに飛んでいき、そして爆発する。
「何なんだこいつ!?」
「落ち着け、ビームを集中させるんだ!」
ゲッターに対して、GN-X部隊が連携して、一斉にビームを放つ。ビームが降り注ぐ中、それを掻い潜りながらゲッターが迫る。
「オラァッ!!」
そのまま一閃で二体の機体の胴体を切り落とす。
「うわぁああああっ!!」
切り落とされたGN-Xは悲鳴を上げながら爆散する。そんな状況でもなお、残った機体は攻撃を続けようとする。だが、その時にはもう、ゲッターの姿はなかった。
「消えた!?」
驚愕する間もなく、背中に強い衝撃を受け、機体は地面に激突する。慌てて振り返るとそこには斧を振り切った状態のゲッターがいた。
「なっ……」
目の前の光景が信じられず呆然としていると、ゲッターはその隙に近づき、コクピットに向かって斧を振るう。
「グワァアアッ!!」
断末魔のような叫び声をあげながら、機体は切り裂かれ、撃破された。
「これがゲッターの力」
目の前の光景を見て、ココは満面な笑みを浮かべる。
「終わっちまったか」
それと同時にリョウマもまた、再び眠そうな目へと戻る。
「リョウマ、君、面白いね! 君、どこの学校出身?」
「今日はこっちに用事があって、来ていたけど、聖鳳学園だけど」
「なるほどねぇ、分かった」
それだけ聞くとココはそのまま振り返る。
「という事で、私、今日からガンプラ学園を止めて、私立聖鳳学園へと転入して来ます