「ゲッターはしばらく私が預かる。なに、少し改造をしたいからね」
その一言と共にリョウマにとって、その日の休日は暇でしかなかった。
ガンプラバトル以外は、ほとんど寝て過ごしていたリョウマにとっては、退屈しかなかった。
ハヤトもベンケイも、彼らは各々の用事があり、一緒に過ごしていない。
「さて、どうしたもんか」
そう悩みながら、歩いていた。
そう、彼が歩いて、辿り着いたのは。
「プラモ屋?」
それは、リョウマにとっては、最近になって大きく関わるようになったガンプラが置かれている店。
以前までの彼だったら、特に興味もなかったが、今のリョウマにとっては、ガンプラは惹かれているコンテンツ。
だからこそ、自然とその足は模型店へと足を運んだ。
だが、足を運んだまでは良かったが。
「何が、どう違うのか、全然分からん」
頭に?マークを大量に出しながら、目の前にあるプラモを見つめていると。
「何か、探しているんですか?」
「んっ?」
聞こえた声、それと共に振り返れば、そこには眼鏡をかけた少年と、その少年を引っ張っている少女がいた。
「まぁ、ガンプラを。と言っても、作り方も何も分からんがな」
「だったら、私達が手伝いますよ」
「えっフミちゃん!?」
リョウマの悩みに対して、少女、フミちゃんと呼ばれた少女は元気良く答える。それに対して眼鏡をかけた少年は何やら戸惑っている様子だった。
「良いのか?」
「えぇ、だって、普段はここのお店、あんまりお客さんが来ていないから!」
「ズバッと言うなぁ」
確かにリョウマが見る限りでも、あまり客は少ない様子。
だからこそ、客はあまり逃さないようにしているらしい。
「それで、それで!何か気になるガンプラはありますか!!」
「ガンプラと言ってもねぇ」
そう言って、リョウマは改めて、ガンプラコーナーを見ていく。
その中で、ふと眼に向けたのは、一つのプラモだった。
それを見ると、少年の目は輝く。
「メッサーを選んだんですね!」
「メッサー?」
「はい、メッサー!閃光のハサウェイに登場した機体で、アナハイム・エレクトロニクスが開発したギラ・ドーガを再設計した重量機」
「???」
「ユウ君、少し興奮し過ぎ」
そこから少年が語った閃光のハサウェイというのが、どのような内容なのか分からず、リョウマは首を傾げる。
「まぁ、とりあえず、これで良いか」
「良いんですか!」「おぉ!」
メッサーを選んだ事で、リョウマのガンプラ選びはあっさりと終わりを告げる。
そのまま、制作スペースに入ると共に、そこにあるニッパーや、様々な道具で、制作を行っていく。
初めてのガンプラという事もあるが、リョウマにとっても、子供達が自分に勧めてくれている事もあり、それを楽しんでいた。
「ここに来たのは久し振りだが、どうやらお客さんがいるようだねぇ」
「誰?」
そうして、店に入ってきた声と共に見つめると、そこには1人の青年がいた。
一応、リョウマよりも年上だと思われるが。
「君は、もしかしてお客さんかい?それも、ガンプラを作ったばかりの?」
「それがなんだ?」
「いや、なに、せっかくの初心者だからねぇ。君にガンプラバトルの指導をしようと思ってねぇ」
「ふぅん、まぁ良いけど」
「「えっ」」
その言葉に対して、リョウマは特に気にしなかった。
「だっ駄目ですよ、あの人と戦っちゃ?」
「なんで?」
「あの人は、サザキ・ススムと言って、地元のガンプラバトル界隈ではそこそこ名の知れたファイターなんです」
「・・・つまり、強いのか」
「えっえぇ」
その言葉を聞いて、リョウマはふむと首を縦に振る。
「せっかくだしな」
「ふふっ、では始めようか」
その言葉と共にリョウマとサザキは、バトルフィールドに向かう。
同時に、バトルの開始準備を行う。
リョウマの機体であるメッサーは、先程作ったばかりであり、素組み同然。おまけ程度にヒートアックスを2本、持っている程度。
対して、ススムの機体はギャンをベースとした改造を加えたギャンバルカン。
明らかな機体性能の差があった。
「サザキ・ススム!ギャンバルカン、出る!」
「ナガレ・リョウマ、メッサー、行くぜ」
その言葉と共にバトルフィールドに出る。
バトルフィールドは、砂漠であり、地上へと降り立つと同時に互いの機体の重さに反応するように砂が舞い上がる。
「さぁ、教えてあげるよ、戦場の厳しさをね!」
その、サザキの叫びと共にギャンバルカンの両肩にあるガトリングガンの火花が散らす。
まさしく、眼にも止まらない速さで放たれる弾丸の嵐。
それに対して、メッサーは、最低限の動きで避けた。
「えっ?」
メッサーのその動きに対して、驚きを隠せないサザキ。
だが、メッサーは背面にある上昇用のブースターを利用し、避ける。
空へと逃げるのではなく、地上での移動に。
そのまま滑るように、真っ直ぐと走らせる。
「そんな攻撃……当たるわけないじゃないか!」
そう叫ぶと同時にサザキもマシンガンを撃ちながら接近してくる。
しかし、その弾幕を物ともせずに、まっすぐに突っ込むメッサー。
それに対し、サザキも二つのビームサーベルを構える。
「なめるなよ!」
「遅いっ!トマホークブーメラン!!」
サザキよりも先に動いたメッサーは、腰にあるヒートアックスを投げる。
それは、まさしくブーメランのように回転し、真っ直ぐとギャンバルカンに向かって行く。
その、一瞬の動きに対応できず、サザキはその斧を受けることになる。
「嘘だろっ!」
それに対して、サザキはすぐに体制を整える。
既に、その両手には愛用の盾を装備し、構える。
先程の、メッサーの攻撃に対応する為に。
だが、目の前には、既にメッサーの姿はなかった。
「なっどこにっ!」
「上だよ」
その言葉、それと共に、メッサーは、既にサザキの目の前まで迫っていた。
そのまま盾を踏み台にしたメッサーは、その手に持ったビームライフルの銃口を真っ直ぐとギャンバルカンのモノアイに突きつけると共に、引き金を引く。
放たれたビームに対して、防ぐ事も、避ける事もできずに、ギャンバルカンは地面に倒れる。
『BATTLEEND』
一瞬、その戦いが終わった。
それに対して、サザキは眼を見開いていた。
「ふむ(ゲッターよりも動きが遅い。ココが言っていた通り、ゲッターというのはとんでもない性能のようだな)」
そんなサザキを無視しながら、そのままメッサーを手に取る。
「すっ凄い!本当に初心者なの!」
「まるで、セイさんとコンビを組んだレイジさんのようだ」
「セイ?レイジ?」
聞いた事のない名前に、リョウマは首を傾げる。
「はい、数年前に行われた世界大会で優勝したコンビです!この店にもセイさんはいるんですが」
「今は丁度いなくて」
「そうなのか」
少し残念に思うリョウマ。
だが、同時に笑みを浮かべる。
(ゲッターで戦っていれば、そんな強い奴と戦えるかもしれない。
熱くなってきたじゃないか!)
そう、凶悪な笑みを浮かべる。
「うぅ」
「んっ」
「こわい」
「怖いのか、俺の顔」
それに対して、2人は頷く。
「・・・少し、笑顔の練習をしておいた方が良いのかな」
その日から、リョウマはなるべく凶悪な笑みを浮かべないように努力した。