やさぐれ四天王   作:先バレプレミア当たらない

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8000発出したけど気がついたら無くなってたので初投稿です


仕事

「はい、それじゃー次のライブのセトリも決まったんで、解散」

 

 この前4万タコ負けした友人……田中の号令で、俺達は席を立つ。大学の講義が終わった後、俺達は空き教室を使って次のライブに関する作戦会議を行っていた。

 

「今週末のダービーの指定席取ったんだけど、誰か一緒に来る?」

「行かねーよ。んなことより誰かライター持ってる? どっか落としたわ」

「お前以外タバコ吸わないじゃん。……ってヤバッ、今日女の子と約束あるんだった!」

 

 ここで俺の所属するバンドのイカれたメンバーを紹介しよう。

 

「タスティエーラに10万ツッパ! これで勝つる!」

 

 スマホでネット競馬を覗いているのはドラムの佐藤。競馬場に直接赴き、負け犬共の遠吠えを録音するのが趣味らしい。ちなみにこいつの予想は結構当たる。ウチのバンドの資金面を支える重要人物だ。

 

「……あー、ヤニ吸いてー」

 

 今にも死にそうな声を出しているのはギターボーカルの田中。勉強嫌いである俺の面倒を見てくれる良い奴だ。ちなみにタバコを吸い始めた理由はモテると思ったかららしい。無駄に肝臓を汚して可哀想な奴だと思う。

 

「……あれ、結衣ちゃんってどんな子だっけな。まいっか! 抱けば皆一緒だし!」

 

 スマホを見ながら下品なことを言っているのはシンセの鈴木。見た目こそ爽やかなイケメンだが、中身は糞を下水で煮込んだ様なゴミである。現在10股中らしい。一人ぐらい田中に分けてあげたらどうだろうか。

 

「……今日割と出てるな。行くか」

 

 そしてベースボーカルの俺。

 馬カス、ヤニカス、屋根ゴミ、パチカスというキセキの世代が徒党を組んだ結果、巷で人気のミクスチャーロックバンド『Force Kind』が生まれてしまった。一応動画サイトにも動画投稿とかしてるんで、チャンネル登録と高評価よろしく。しなきゃ呪う。

 行きつけのパチ屋のデータを確認し、いざ向かおうとしたその時、スマホに着信が入った。画面には、『星歌さん』の文字。通話ボタンをタップし、耳にスマホを当てる。

 

「もしもし」

《ジュン、今暇?》

「暇じゃないです」

《それじゃ、今すぐ店まで来い。1時間以内な》

 

 こちらの話をまともに聞かず、彼女は電話を切った。

 星歌さんは虹夏の姉で年齢は29、シスコンツンデレ属性持ちという中々の強者だ。

 一体何の用だろうか。少なくとも俺にとってはろくでもない事に違いない。しかしここで従わなかった場合、後から酷い目に合わされそうだ。

 やはりここは……。

 

「……無視してパチ屋直行で」

 

 たとえどんなに怖かろうが、良いデータには代えられない。

 俺は星歌さんの呼び出しを無視して、パチ屋へと足を進める。その足取りはとても軽かった。

 

 

 ◇

 

 

「ったく、手間掛けさせやがって」

「……痛い」

 

 俺の目の前に座る星歌さんは子供用のりんごジュースを飲みながら悪態をつく。

 ここは星歌さんが経営しているライブハウス『STARRY』。

 パチ屋に向かったはずの俺が何故こんな所にいるのか。それは目の前の鬼神が、何故かパチ屋の前で待ち構えており、ゲンコツを食らった後首根っこを掴まれ、ここまで拉致されたからである。

 姉妹揃って俺に暴力を振るうことを厭わないとは。国宝級の顔面が傷つくのは世界の損失だというのに。

 

「それで、俺の仕事を邪魔してまで呼びつけたんですから、さぞかし崇高な理由があるんですよね? もし無かったら……」

「無かったら?」

「ここのレビューを荒らす」

「よし、本題に入ろう」

 

 星歌さんは俺の言葉を遮り、咳払いをする。既に口コミサイトのページは開いた。いつでも低評価爆撃が出来る。

 

「お前、やってたバイトブッチしたんだって?」

「まぁ、はい」

「何で?」

「店長のキモさにいい加減耐えられなくて」

「ふーん。ホントは?」

「ゾロ目の日にシフト入ってたから、キレちゃって」

「キレたいのは店長の方だろ」

 

 星歌さんは呆れた様にため息を吐いた。

 バイトが無くなったので収入は減るが、その分パチ屋に行けるということ。遊んでるだけでお金が手に入るなんてこれ以上の仕事は無い。これが最も賢い生き方だ。

 

「でも、それが何か? まさか説教するために呼んだんですか?」

「お前に何言っても無駄なのは知ってるよ」

「……虹夏と喧嘩したとか?」

「そんなこと態々お前に相談するわけないだろ」

「じゃあ特に理由は無いってことですね。爆撃します」

「待て待て待て待て」

 

 星歌さんはスマホを取り出そうとする俺の手を押さえつけ必死に止める。

 現在の時刻は午後6時。今ならまだ充分に打てる時間が確保出来るのだ。早く話をつけたい。

 

「……お前、ウチでバイトしろ」

「店員の態度が悪く、バンドの質も悪かった。文はこんな感じでいいですよね」

「ダメに決まってんだろ、聞け」

 

 嫌です(本田圭佑)

 

「俺忙しいんで無理です」

「お前虹夏から金借りてるらしいな」

「もう返しましたが?」

「お前のことだ、どうせまた借りるに決まってる。しかも5ヶ月も滞納したって聞いたぞ」

「一体誰がそんなこと」

「お前の妹。時給を10円上げてやったら簡単に吐いた」

 

 あの野郎、自分のことは棚に上げて俺のことを売りやがったのか。次会った時は問答無用で血祭りにあげてくれる。……デコピンとか。

 

「借りた分お前の給料から天引きすれば、ちゃんと返済出来るだろ?」

「まぁそうかもしれませんが」

「お前に拒否権はない」

「じゃあ時給100万円くらいにしてください」

「ふざけんな」

 

 星歌さんは再び俺に拳骨を落とす。俺の頭蓋骨が悲鳴を上げた。

 

「痛った……。そうやってすぐ暴力に訴えるの、良くないと思います」

 

 涙目になりながら俺は抗議するが、星歌さんは鼻で笑う。全く聞く耳を持ってくれないようだ。

 この人絶対希望休突っぱねるだろうし、やっぱりここは嫌だな。

 

「……星歌さん、やっぱり俺は」

「リョウも、お前が入るならもっと頑張るって言ってたのになー」

「貴店の成長と発展に貢献させていただきます」

 

 即答だった。兄という生き物は妹のことになると途端に馬鹿になるものだ。

 星歌さんの思惑通りに動かされるのは少々不服ではあるが、背に腹は変えられない。

 

「……そういえば、そのリョウからこんな写真貰ったんですが」

 

 俺はリョウとのロインの履歴から一枚の写真を引っ張り出す。新しくリョウ達のバンドに入ったという子が、メイド服を着てここで働いている姿が写っていた。

 

「このメイド服、星歌さんが持ってたらしいですね。私物ですか?」

「そ、それはあれだ! ライブハウスの落とし物で、保管してただけだ!」

 

 すると、星歌さんは露骨に目を逸らす。頬には冷や汗らしきものも流れていた。

 その反応に俺はニタリと笑みを浮かべる。

 

「落とし物勝手に使っちゃったんですねぇ。それって遺失物横領なんじゃないですかぁ?」

「ぐっ……」

 

 そう言うと、星歌さんは悔しそうな顔をして俯く。

 彼女は昔から何かを隠したり誤魔化したりするのが下手くそなのだ。だからこうして問い詰めればすぐにボロが出る。何この可愛すぎる29歳児。

 

「これ、星歌さんが着たら凄く似合うだろうなぁ……。PAさんもそう思いますよね?」

「そうですねぇ。店長スタイル良いですし」

「なっ、お前いつの間に!?」

 

 突如として背後に現れた女性に、星歌さんは驚いて声を上げる。

 彼女はこのライブハウスの音響担当エンジニアの人だ。ちなみに彼女の名前は星歌さん以外誰も知らないので、 音響さんの業界用語である「PAさん」と呼ぶしかないのが現状である。

 

「さ、店長。お着替えしましょっか」

「おい待て! 私は絶対にやらんぞ!」

 

 そう言いつつも、PAさんは半ば強引に、星歌さんを更衣室へと連れていってしまった。

 フヒヒ……俺の仕事を邪魔した報いは受けてもらいますよ。

 

 こうして、俺は星歌さんの弱みを握ることに成功した。

 だが、撮影会中に予期せぬ出来事が起きた。虹夏の乱入だ。

 

「……ど、どういうプレイ?」

「に、虹夏、違うっ、これは!」

「おっ、その慌てた表情良いですね〜」

「へ、変態……」

 

 俺達は彼女にあらぬ誤解を受ける羽目になってしまったのだった。

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