やさぐれ四天王 作:先バレプレミア当たらない
「えっ、合コン?」
「そそっ、お前の顔面で何とかメンツ集めたいんだよね」
「それ俺目的しか集まんないんじゃ?」
「話してみたら意外とってこともあるじゃん!」
講義が終わり、帰り支度をしていると同じ講義を受けていた男から声を掛けられる。彼はグループワークで同じ班だった男だ。ノリは良いが顔は普通寄り、という印象だった。
「合コンか……俺経験無いんだよね」
「えっ、マジ? 引く手数多だと思ってたわ」
「そりゃ誘われることもあるけど、毎回忘れるかドタキャンしてる」
「ひでぇなおい」
「仕方ないだろ。そういう日に限ってラッシュ続くんだから」
合コンと言えば、男女が出会って仲を深めて、最終的にはお持ち帰りして……みたいなイメージがある。度々トイレで作戦会議するとか。
しかし、流石に俺と並んで見劣りしない女は出てこないだろうな。そういう奴は大体彼氏がいるか一人でいるのが好きとかでこのような場に出てきたりはしない。
それに俺が全員虜にしてしまうから、男共にチャンスが巡ってくることもない。かといってブス共の相手をするのも面倒だ。
やはり、丁重にお断りさせてもらうか。
「やっぱり、俺は行かない方が」
「参加料出すし何なら報酬金もやるから」
「いくら?」
「二万」
「客寄せパンダは俺に任せろ」
金が出るなら話は別である。
というわけで、合コンに行くことになった。
◇
「おかえり〜」
「……ただいま」
くそ、いて欲しくないタイミングでいるなお前は。
合コンに誘われた翌週、大学から帰ってくると部屋には虹夏が上がり込んでいた。リビングを掃除したのか、部屋のフローリングがピカピカになっている。
「今日は肉じゃがにしようと思うんだけど、どうかな?」
「うん。でも今日は飲み会あるから、あんまり食べれないかも」
「えぇ〜、そうなの? 先に言っといてよ〜」
「ごめん」
服を着替え、髪をセットし直し、香水をシュッと一吹き。金を貰う以上、舐めた仕事は出来ない。全力で合コンに臨ませてもらう。
「誰と飲むの?」
「普通に田中とか、いつものメンツ」
「ふーん」
……なんだ。何か言いたげな目をしてるな。
「いつメンの飲み会なのに随分気合い入れていくんだね」
「何言ってんだ。俺はいつでも全力だぞ」
「ふーん。……ま、いいけどね!」
虹夏はそう吐き捨てるとプイッとそっぽを向いてしまった。
「え、なに」
「……知らない」
何なんだ一体。俺は首を傾げつつ、合コン会場へと足を進める。
道中パチ屋の中を覗いていたら時間ギリギリになってしまった。
「ごめん、遅くなった」
「おっ、ちゃんと来たな」
店の前には誘った奴とその他メンズ、計四人が揃っていた。今回の合コンは五対五の形式だそうだ。
店に入り、予約していた個室へと案内される。男五人が並んで座り、俺は壁際を陣取る。寄りかかれるしね。
メニューを眺めて時間を潰していると、個室の襖が開いた。女性陣のお出ましだ。
メンズ共が目を輝かせて座る様に促す。一方俺は壁際で縮こまってメニューで顔を隠していた。……いや、いざこうして相対すると怖くなってきたというか。元々俺こういうウェイ系じゃないし。
全員が揃い、飲み物が来るまでの間順番に自己紹介を始める。男子から自己紹介し、女子が終わった後に何故か大トリとして俺の番が回ってきた。
「……山田ジュンです。バンドでベースやってます。好きな食べ物はポテトです。……よろしくお願いします」
一礼して顔を上げると、女性陣のどこか微妙な視線。……何なんだ一体。俺は自己紹介をしただけだろうが。何が気に入らんのだ女共め。簡潔かつ分かりやすくて良いだろうが。
内心イラついていると、飲み物とつまみが運ばれてくる。酒への耐性があまり高くは無いため、俺は梅酒ソーダにした。
主催者の音頭で乾杯し、合コンが始まる。
「はい山田君、ポテト好きなんでしょ?」
「ん、ありがとう」
正面の女子がこちらにポテトの皿を差し出してきた。俺はそれを遠慮なく取って口の中に放り込む。……うん、こういうスカスカのポテト大好きだ。ありがとう、えっと……自己紹介聞いてなかったわ。ごめん、いかにも清楚って感じの子。
「私、山田君達のライブ行ったことあるんだ。ほら、ついこの前やったやつ」
「そうなんだ、ありがとう。これからも来てくれると嬉しい」
「うん、絶対行く!」
ライブに来てくれていたという女性との会話。ファンは大事にするものだ。その調子で金を落としてくれたまえ。
「ねぇ、ぶっちゃけ山田君って彼女とかいるの?」
「いたら合コンなんて来ないよ」
ホントはいなくても来たくないけどな。
「えー、じゃあどんな子がタイプ?」
パチンコに寛容で金貸してくれて家事出来て適度にほっといてくれて浮気しなくて顔と声が可愛い人。
「うーん、一緒にいて楽しい人かな。あと声が好みだと嬉しい」
「じゃあ今日は山田君をいっぱい楽しませちゃおうかな」
「はは、それは期待しちゃうな」
残念ながら君のその声は嫌いじゃないけど好きでもないんだよ。顔も可愛めだけど……あっ、胸デカイのは加点ですねぇ!
「山田君ってお酒強い?」
「恥ずかしながら、あんまり……」
「そうなの? あんまり無理しないでね」
「うん、ありがとう」
清楚ちゃんは見た目に反してハイボールのジョッキを一気に煽った。そんなの飲んだら一気に潰れるぞ俺は。
「山田君って普段何してるの?」
パチンコ。
「バンド練習と作曲と……あと映画鑑賞かな」
「えー! 私も結構映画見るよ! 最近だと『奇妙な家』とか」
「あれ面白いよね。俺が一番好きなのは……」
話が弾み、酒とつまみも進む。クジで席替えも行い、隣は清楚ちゃんが豪運でキープ。思いの外、他のメンズ共も頑張って女子を楽しませている様子だ。
そして、二杯目のグラスが空になる頃には、俺の顔は真っ赤になっていた。
「山田君、顔真っ赤っか〜」
「……まだ、飲める……」
「もう、ほら無理しないで」
頭がふわふわする。えっと、さっきまで何話してたんだっけ。……あっ、人の意識は死んだらどこに行くのかだった。
「天国とか地獄とかあるけど、実際天国に行ける奴なんていないと思うんだよなぁ。皆等しく何かを犠牲にして生きてるわけだし、環境をめちゃくちゃにしてる分全人類地獄行きで当然でしょ」
「山田君酔ってるね〜」
「酔ってる酔ってないじゃなくて、俺は人間という最悪の生命体の愚かさを語ってるんだよぉ」
「それじゃあ山田君も愚かだってことになっちゃうよ?」
「……そうだよ。俺は本当に、愚かでクズでアホでゴミ虫で……他人に迷惑かけてばっかりのダメ人間なんだ……」
そう言って、俺はテーブルに突っ伏した。眠たくなってきたのだ。
周りに男も女もいるが構わない。どうせこいつらは俺の顔面にしか興味ないんだ。中身がどうこうとか綺麗事言っても、結局は顔なんだよ。
「そんなこと無いよ。山田君優しいし、面白いし、何よりベース弾いてる時とか凄くカッコイイもん」
「……ほんと? 俺のベースかっこいい?」
「うん、カッコイイ!」
「はは……そっかぁ……」
その言葉で俺は満足し、睡魔に身を任せた。おやすみ世界……今日も良い子に寝るんだぞ……。
◇
「……寝ちゃった」
テーブルに突っ伏したまま寝てしまった山田君を見て、私はそっと胸を撫で下ろす。
途中から山田君の梅酒サワーにこっそり焼酎を追加で混ぜておいたのだ。一杯目の時点で既にかなり酔っていたので、気づきもせず簡単に酔い潰すことが出来た。……可愛い子。
「ごめん、ちょっと抜けるね」
友達にそう言ってから、寝ている山田君の方を揺らす。
「山田君、ちょっと外の風に当たった方がいいよ」
「……ん、んー……そうする……」
山田君は眠い目を擦ると、私の肩を借りて共に個室を後にする。
「ちょっと休める所行こっか」
「んー……」
タクシーは手配済み。店の前に停車しているそれに山田君を押し込めば、後はお楽しみの時間というわけだ。
「あっ、やっと出てきたー」
「遅い」
外で私達を待っていたのは、高校生らしき二人の女の子。そのうち一人は山田君にとても似ている。妹か何かだろうか。
「うちのジュンがごめんなさーい。……もう、お酒弱いんだから程々にしなっていつも言ってるのに」
金髪の子が手馴れた様子で私の肩から山田君を引き取り、おんぶする。山田君似の子はこちらを睨むように見つめている。
「……お持ち帰り中だった?」
「えっ!? こんな奴やめといた方がいいですよ! パチンコばっかりしてるし、借りたお金も全然返さないし!」
「あはは……酷い言いようだね……」
金髪の子も一見友好的に見えるが、目が笑っていない。
「じゃあ、山田君のことは任せちゃうね」
「迷惑おかけしました、失礼します!」
「……さよなら」
山田君似の子の塩対応に苦笑しつつ、私はタクシーに乗り込んだ。発進し、振り返ると金髪の子と目が合う。
ざまあみろ。
そう言っている様な気がした。
「……ガード固いなぁ」
ふぅ、と深い溜息をついてスマホを取り出す。ロインの連絡先には山田ジュンの文字がしっかりとあった。
合コンなんてホントに実在するんですか?