やさぐれ四天王 作:先バレプレミア当たらない
少しnzkの過去の捏造が入ります
『お〜待たせダ〜リン、キ、レ、た、の〜?』
「1G連!? ……夢か」
幸せな夢から覚め、一昨日見せつけられた現実を思い返す。
クソ、チバ○ヨ2め。あんなに荒い台だとは思ってもみなかったぞ。全然連チャンしないじゃないか。
「……なんか、頭痛いな。昨日の記憶も飛んでるし、一体何が」
ふと感じた違和感。……何だ、この温もりは。
チラリと右隣を見やる。虹夏が穏やかな寝息を立てていた。
……ちょっと待ってくれ。理解が追いつかない。
「……なんで?」
声にならない声でそう呟く。肌に霜が降りる様な心地がした。まさか一線を越えてしまったなんてことはないよな?
慌ててパンツの中をガサゴソと漁る。
「……ん、お兄ちゃん何してるの」
「うわぁぁぁぁぁ!!??」
左隣からリョウの声が聞こえた瞬間、俺は叫び声と共にベッドから跳ね起きていた。毛布から素早く足を引き抜き、そのまま後ろに転がる要領でタメを作り、思い切り蹴る。生まれ持ったしなやかな肉体で成す荒業だった。
「一線二線どころの話じゃない……もはやこれは水平線越えたんじゃ……!?」
「何言ってんの?」
頭を搔きむしって混乱していると、虹夏も騒ぎに気づき目を覚ましたようで眠そうに目を擦っている。
「もう……なんの騒ぎ?」
「な、なぁ虹夏! 俺、昨日の記憶無いんだけど……まさか」
俺が青ざめた顔でそう尋ねると、何故か逆に虹夏の顔色がほんのり赤くなった。
床に頭を打ち付ける勢いで土下座をする。
完ッッッ全にやってしまった。これが世間に露見してしまえば俺の人生、そしてForce Kindの未来は確実に終わる。俺は今、人生最大の危機に直面していた。
◇
「……全くもう、怪しいと思ったら合コン行ってたなんて」
「こういうの興味無いと思ってたのに、意外」
「どうせお金やるから〜とかで釣られたんでしょ」
怪しげな女の人からジュンを救出した私達は、その足でジュンの家まで来ていた。私の家には廣井さんが来ているかもしれず、そこで酔っ払い同士の化学反応を起こさせるわけにもいかなかった。
合鍵で中に入り、爆睡状態のジュンをソファに寝かせる。
「虹夏、お腹減った」
「もー、じゃあ簡単におにぎり作っちゃうから待ってて」
そう言ってキッチンの方へと向かう。今日は珍しくリョウが傍で私が料理するのを見ていた。
「……ジュン、ああいう人がタイプなのかな」
冷蔵庫の具材を漁っていると、後ろでリョウがそんなことを言った。
見た感じだと、清楚でお淑やかな印象だった。私達とは違う大人の雰囲気を醸し出していたと思う。……特に胸とか。
自分の絶壁を見下ろし、敗北感をひしひしと感じてしまった。
「……どうだろう、私そういう話特にしたことないから」
「私も無い。そもそもジュンはそういう話しないから」
「……確かに、モテ具合は自慢してくるくせに浮いた話ってほとんど無いよね」
長年一緒に過ごしていて、そういう気配を感じたことは一度も無い。隠しているというのも信じ難いことだ。何せあれだけ分かりやすい男なのだから。
でも、そう考えるとあれ程モテるというのに彼女がいないという事実が不思議に思えてくる。
「いっその事、虹夏がもらってくれた方が安心出来るのに」
「ははは、そうだね〜。……って、ええっ!?」
リョウの爆弾発言に、私は思わず握っていたおにぎりを落としそうになってしまった。
「……どうしたの? 顔が赤いけど」
「きゅ、急に変なこと言うからでしょ!?」
「別に変じゃない。虹夏はジュンのこと好きでしょ?」
「そ、それは……」
リョウの指摘に、私は上手く言葉を返せない。
ずっと同じ時を過ごしてきたのだ。兄妹も同然だと言っても過言ではないだろう。でも、この感情に名前を付けるとなると……。
「……分かんないよ。好き……なんだろうけど、それが恋かどうかなんて」
「むぅ……長く一緒に居すぎた弊害か」
「そうなのかもね〜」
そんなことを話しているうちに、おにぎりが出来上がった。
それをお盆に載せてテーブルまで持っていく。
「じゃあジュンの好きなところを挙げてみよう。山手線ゲーム〜」
「わ〜」
手を叩いて独特のリズムを刻むリョウ。
こんなに騒いでたら起きちゃうんじゃないかな……。いや、でも案外起きないかも。
「顔が良い」
「ベースが上手い」
「泣きぼくろ」
「ラップが上手い」
「モデル体型」
「声がカッコいい」
その後も次々にジュンの好きなところを言い合っていく。リョウに関してはジュンと自分の共通点しか言わず、最早自画自賛に近いものだった。
「カレーが好き」
「……私のご飯を美味しそうに食べてくれる」
「映画が好き」
「いつも家まで送ってくれる」
「結構繊細」
「……寂しかった時に、会いに来てくれた……!」
お母さんが亡くなった時、お姉ちゃんがバンドで忙しかった時、リョウが気を使って会いに来なかった時。
『お母さんがいるジュンには分かんないよ!』
『……それでも虹夏は独りじゃないよ。おじさんも、星歌さんも、リョウもいる。勿論俺もだ』
隣に来て頭を撫でてくれた。私を抱き締めてくれた。私の涙を拭ってくれた。
そんな存在……私にとって彼は、代わりのきかない唯一無二だ。
「……やだ……やだよぉ……っ。ジュンが……他の人のとこ行っちゃうなんて……やだぁ……」
涙が止まらない。視界が滲んで、何も見えない。でも、それでも、私の喉は嗚咽と共に言葉を紡ぎ出すのを止めなかった。
「私を置いてかないで、ずっと側にいてよ……っ」
「虹夏……」
リョウが抱き締めてくれた。その温もりに、段々と心が落ち着いていく。
「……あの時は力になれなかったけど、今は大丈夫。私がついてる。だから泣かないで、虹夏」
「ぐすっ……うん……」
「……ふふっ、私が虹夏を甘やかすの、何だか新鮮」
私はリョウの腕の中で泣き続けた。その間も、リョウは私を抱き締めて頭を撫で続けてくれた。
◇
「……なんか、泣いたらスッキリした〜!」
「今度何か奢ってね」
「感動薄れるわ〜」
ひとしきり泣いた後、食器を片付けてシャワーを浴び、寝る準備に入る。ところが、ジュンは未だ眠り続けていた。
「どうしよう、起こしてシャワー浴びさせた方が良いかな」
「酔ってるし、いいんじゃない?」
ソファで寝ているジュンは、その大きな体を縮こめてぐっすりと眠っている。普段は見られないあどけない寝相に、私の中の母性が刺激されたような気がした。
そして、リョウが私に近づくや否や耳元でそっと囁く。
それはまるで悪魔のような囁きだった。
……いや、天使の囁きだったのかもしれないな。
「……虹夏、今だよ」
「え? な、何が?」
「ジュンの唇を奪うチャンス。今なら抵抗されないよ」
「えぇっ!?」
リョウの突拍子もない言葉に、思わず赤面してしまう。しかしよく考えると確かにこれはチャンスだった。好きな人にキスできるというのだから。
私は一度大きく深呼吸をしてからジュンに近づくと、ゆっくりと彼の唇との距離を縮めていった。
「……って、妹が見てる前でやるかーい!」
「チッ」
「舌打ちした!?」
それから二人でジュンを抱え、ベッドまで運んだ。流石に大人の男一人を持ち上げるのは骨が折れる。
投げ入れて毛布を掛けた後、私達は隣にある来客用の寝室に向かおうとした。利用しているのは大体リョウか田中さんだ。
「……虹……夏……?」
ふと、パジャマの裾を引かれる。振り返るとジュンは目を薄く開き、私達の方を見つめていた。
「……また眠れないのか」
「え?」
「おいで……」
優しく手を引かれるがままにベッドに迎え入れられ、頭をポンポンと叩かれる。小さい頃にお母さんがしてくれたみたいに、その大きな手から暖かなものが流れ込んできたような気がした。
「わお……」
「……ほら、リョウも」
ジュンが逆の手でリョウを抱き寄せると、いきなりの出来事にリョウは目を白黒させた。しかし、すぐに受け入れて二人でジュンに抱きつき合う形になった。
酔っている影響なのか、普段のジュンからは考えられない程の兄力を発揮していた。
「……これで、怖くない……な」
そう言って、ジュンは再び目を閉じると夢の世界へと旅立ってしまった。
彼の腕に包まれ、心臓の鼓動が加速する。私の耳をくすぐるその声はとても優しく、私を安心させてくれた。
やがて向こう側からリョウの安らかな吐息が聞こえ始める。
……これは、アルコールの匂いに当てられたことにしよう。
そんな言い訳をし、ジュンの頬に優しく手を添える。
顔を近づけ唇が触れ合う直前に、私の動きは止まった。やはり悪いことなのではないかという罪悪感が拭えないのだ。
しかし、次の瞬間。
「……んむっ!?」
リョウの寝返りの影響か、突然ジュンの顔がこちらに寄ってきてしまい、そのまま私の唇はジュンの唇にクリーンヒットしてしまった。
「し、しちゃった……」
奪ったとも言えるし、奪われたとも言える。私はこっそりと自分の唇に触れた後に、彼の顔を至近距離で見つめる。リョウが寝返りを打ったのは事故だったとしても、その責任の一端は私にあるのだ。
……それに、このキスは私にとってもファーストキスになる。
そう考えると少し嬉しくなった。でもやっぱり、恥ずかしさの方が勝ってしまう。
私は自分の頬が赤くなるのを感じた。
「……全然、レモンの味じゃないじゃん」
私はそう呟くと、彼の胸に顔を埋めた。心臓の鼓動が聞こえる距離に自分がいるという事実がとても心地良い。
……この温もりを手放したくないな。
そんなことを思いながらも、私の意識は段々と微睡みの中に落ちていったのだった。
◇
「……つまり? 俺が寝ぼけてベッドに引きずり込んだと」
「うん」
「添い寝しただけで、ピーなことはしてないと」
「さっきからそう言ってるじゃん」
「漏れたら不味い動画とか、ホントに無いんだな!?」
「ジュンが社会的に死んでも、私達にメリットあんま無い」
「ちょっとはあるんだぁ!?」
土下座したまま全く頭を上げずに話を聞き続け、ようやく自分が無罪だという確証が持ててきた。
しかし、いくら飲み会と言えどそこまでハメを外して飲んだ訳でもない。なのにあそこまで酔うことなどあるだろうか?
「それより、朝ご飯にしよ。お腹空いてるでしょ?」
「……そうだな、頼むよ」
「はーい!」
「やけに機嫌良いな。まぁ、俺の寝顔を間近で見れる機会なんて滅多に無いから当然か」
虹夏がキッチンの方に去って行くのを見送る。
「お兄ちゃん」
「どうした?」
「昨日は何の夢見てたの?」
「んー……お前らを寝かしつけた後にこっそりスロット打ちに行ってタコ勝ちした」
このイマジネーションをかかえて、俺は打つよ。
感想いただくと先バレぐらいのビックリと喜びに襲われます