無職世界に来たレグルス・コルニアス(偽)   作:優雅ながらも不利飛車を蛇蝎の如く嫌う老人

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ここは何処?私はレグルス

 目が覚めると、そこは見渡す限りの草原だった。

 

 記憶を探るが、こんな場所で眠った覚えはない。

 状況がつかめないが、ひとまずはこのあたりを探索することにした。よっこらしょと立ち上がる。

 

「...?」

 

 その時、何か得も言われぬ違和感を感じた。そして、それはすぐに分かった。

 服だ。神父が着るような真っ白な服を何故か着ているのだ。

 僕にはこんな服を着る趣味も、着る意味もなかったはずだ。どうしてこんな服を着ているのだろうか。

 

 ふと湖を見つける。僕は何気なく近づき、湖に映った自分の姿を見て驚愕した。

 

「レグルス・コルニアス...?」

 

 僕は、強欲になっていた。

 

 

 

 レグルス・コルニアス。彼は、Re:ゼロから始める異世界生活の登場人物の一人である。

 魔女教大罪司教の強欲。この肩書だけで分かりそうだが、悪役だ。

 彼の性格は、一言で表すなら自己中で独善的。幼稚な理論を他人に押し付けて、それを認めないと、平気で殺そうとする。そのくせ、自分は無欲で平和的思想の持ち主だという始末。彼の性格の悪さは作者も認めており、「作中一番のクズ」や、「ノミ以下」とまで言われるほどである。

 

 そんな彼だが、能力に関しては凄まじい。ぶっちゃけ、ほぼ無敵である。まあ、幾つか抜け道はあるが。

 彼は、魔女教大罪司教だけに与えられる特殊能力である権能を二つ持っている。

 それは、獅子の心臓と小さな王だ。

 

 獅子の心臓とは、自身や触れた者の時間を完全に停止させる権能である。

 自身の肉体の時間を停止させると、あらゆる攻撃を受けても肉体の状態は変わらない、つまり攻撃が全く効かない肉体になる。スター状態といえばわかりやすいだろうか。火であぶられても熱くならないし、水を掛けられても濡れない。時間を止めているので老化もしないのだ。

 さらに、触れた物を停止して飛ばすことで、外界からの影響を全く受けない飛び道具となる。具体的には、砂の時間を停止させて投げると、砂は何があろうとそのままのスピードで飛ぶようになる。つまり、どんなに硬い物質に当たろうが関係なく、全てを貫通してすり抜けるようになる。

 ここまで聞けば、攻守ともに完璧な能力だと思うだろう。しかし、この権能には一つだけ大きな欠点が存在する。それは、獅子の心臓で時間を停止させている間、自分の心臓も同様に止まってしまうというものだ。レグルス曰く、心臓を止められるのは5秒が限界で、それ以上止めると死んでしまうとのこと。つまり、5秒間しか無敵になれないのだ。

 

 この欠点を補うのが、小さな王である。

 その効果というのが、他者に自分の疑似心臓を寄生させるというものである。これを使うことにより、時間を停止させて自分の心臓が止まってしまっても、疑似心臓が動いているので死ぬことはなくなる。つまり、永続的に無敵になることが出来る。

 また、何らかの方法で疑似心臓を破壊しても、自身にダメージが入ることはない。それどころか、破壊されても別の人間に疑似心臓が移るだけである。

 

 このように、獅子の心臓と、小さな王。それぞれがそれぞれの欠点を補うことによって、彼は無敵の存在になっているのだ。

 

 

 

 さて、そんなレグルスに憑依した僕だが、如何せんここがどこか分からない。ここは何処?私はレグルス状態である。レグルスがいる以上、リゼロ世界だとは思うのだが。

 周りを見渡しても、自分の妻らしき存在(レグルスは疑似心臓の寄生相手として何十人もの妻達を引き連れていた)は見当たらない。

 

 兎も角、ここにいても何も事態は進まないのは間違いない。適当な方向にひたすらに進む。

 

 現在、自分の妻がいないために小さな王は使えない。そのため、永続的な高速移動(獅子の心臓で自身の肉体の時を停止させた状態で移動する)は出来ない。5秒間なら出来るかもしれないが、もしもうまく減速できずに、高速移動中に5秒間経ってしまったら悲惨である。とてつもない風圧に襲われて最悪の場合死んでしまうだろう。

 

 そもそも、僕は外面はレグルスだが、中身は別人だ。レグルスの権能は使えるのだろうか?

 確か、身体の中にある魔女因子により、権能は使えたはずだ。

 僕は自身の身体の中に意識を集中させる。すると、なんだか暖かい水の流れのようなものが感じられた。それを辿っていくとやがてその水の供給源に行きついた。これが魔女因子だろう。ということは、暖かい水のようなものは魔女因子からでるエネルギーのようなものだろうか。

 僕はその流れを自身の手に集中させる。体内を得体のしれない物が駆け回っている感覚。そして、完全に集まったタイミングで腕を振り上げた。

 

 ズドンと音を立てて風の刃が発生した。その風の刃は目にも止まらぬスピードで直進し、彼方へと飛んで行った。しかし、僕にはその刃を見届けることが出来なかった。

 

 「ゲホッ...!ゲホッ......!」

 

 多分、一秒間も権能を使用していなかったと思う。にも拘らず、とてつもない疲労感が僕を襲った。僕は立っているのがやっとなくらいになっていた。  

 権能を使用したとき、徐々に頭が真っ白になっていくのを感じた。今思えば、心臓は血液を全身に送り出すポンプで、血液は全身に酸素を循環させる流れの為、脳のようなデリケートな部位は酸素が供給されなくなるとすぐに異常をきたす。そんなのは当たり前だ。

 考えなしで使ってしまったが、あのまま意識を失っていたら本当にヤバかった。

 

 これでは当分、権能を使うことが出来ないだろう。レグルスの最大にして、唯一の武器が使い物にならない。それは僕の心に対して多大なるダメージを与えた。レグルスは戦闘の全てを権能に頼っており、他の特殊能力等は一切ない。権能を使えないのならば、一般人、いや権能に頼っていて自身を磨いてこなかった分、一般人以下だろう。

 まあ、いいさ。結局のところ、妻達を見つければいいのだ。それさえできれば、小さな王を使用でき、永続的な無敵を手に入れることが出来るのだ。

 リゼロ世界は戦闘能力が一般人以下のレグルスが生きられるほどイージーな世界ではない。それは主人公である菜月昴の死亡回数を考えれば納得だろう。平行世界も入れれば、数百、数千という数では収まらないほどだ。そのため、当面の最優先にして、最重要目標は妻達の発見である。

 

 しかし、先ほどからずっと歩いているが、魔獣らしき存在は確認できない。空に鳥が飛んでいるのが見えるが、その程度だ。その鳥も、魔獣というよりも単なる動物といった感じだった。ここは安全な草原らしい。良かった。今の僕には魔獣の一体でも倒すのが困難なほどだから。

 

 

 

 そうして、進むこと数時間。ついに僕は村を見つけた。

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