淡路島に着いた双八は鬼神"大蛇神"を見て壮観だと思った。
「兄者達から聞いてはいたけど、まさかこれ程巨大な鬼神だなんてな!ホントに清六の兄者には感謝だな…忠告がなけりゃ殺り合っちまってたかも知れねぇ!」
"大蛇神"は他の鬼神達と比べて遥かに大きな鬼神だった。
まぁ兄者達からお叱りを受けるのは勘弁だから殺り合え無いのが残念ではあるが。
「まぁそれに今は俺の私情を優先すべきでもねぇしな」
そう、淡路島のすぐ近くに位置する大陸には、今鬼神を討伐しようとする武士団、その連合軍が出来上がっていた。
報告によれば3つの武士団の連合軍だとか。
「まぁ五結将でもない雑魚武士団共だからなぁ…正直気は乗らねぇし、大蛇神だけでも全滅させてくれそうだが…それじゃあ面白く無いよな…」
【武士団連合内】そこでは土岐武士団、楠木武士団、大谷武士団の3つの武士団が"大蛇神"を倒すための作戦会議をしていた。
そこは作戦会議をしているにしては、そこまでの緊張感は無い雰囲気であり、その外では鬼鉄の売り渡し等、活気が溢れた様子であった。
しかしそれは仕方のないことで、"大蛇神"は敵だと認識する存在を問答無用で薙ぎ払うという性があるが。それは逆に言えば認識さえされなければ敵対すらされないのだ。
更に言えば"大蛇神"が生み出す"口裂鬼"も海の上でしか活動していない。
彼らからしてみれば気を抜くなという方が無理な話なのだろう。
「そのせいでお前達が死ぬことも、また仕方のないことだよな…」
俺は誰にも聞こえない位小さな声でそうつぶやくと、酒に酔っている武士の隣に降り立って武士の胴体と頭を切り分ける。
気を抜いていたであろう武士達から悲鳴が上がった。
「貴様!何者だ!我等が武士団と知っての狼藉カッ!!」
「貴様、問答次第ではただではおかんぞ!」
期待外れだ、正直にそう思った。
ハァ…
息が漏れる、もちろん出そうと思って出したわけじゃない。
勝手に出てしまった。その程度にはここの武士団連合に失望した。
「お前ら、何でも良いからさ…掛かってこいよ!」
俺は怒号を込めた声を張り上げて2対の刀を抜くと、同時に青と赤の刀輪を出す。
「な、なんだあいつは!?」
「青刀と赤刀だとっ!?」
「有り得ない!2色の魂色だなんて!」
「確かにな!あり得ないよな?2色も魂色が有るなんてよ!俺以外ならな」
ニッっと笑うと赤刀を振りかざし武士達を薙ぎ払う。
仲間を武士に殺されて気が気でなかった武士達は、刀を一度も振るうこと無くこの場から退場した。
「弱い!弱いなぁ!ホントにこんなんで鬼神"大蛇神"を倒せると勘違いしてたのかよ!ハハハッ鬼神に絶望しないまま逝けてよかったな!」
それでもまだ武士達は多く残っていた。
これからが本当の戦いになる!はずだった…
だがあたりを見渡せば武士団員はそのほとんどが戦意を失っている状態だった。
「無理だ、あんな化け物どうやって倒すというのだ…」
1人の武士がこぼした一言だった。
その一言が全ての武士の言葉を代弁していたのは明らかだった。
2色の魂色を持つ相手だからではない、たったの一撃で仲間の武士達が消し炭になるほどの威力を放つ化け物だと認識したからだ。
武士は仲間の武士の闘気を繋いで初めて、その鬼の角を折る力を持つに至るのだ。
しかし目の前の存在は、それ1人で鬼神に…いや五結将にまでも届きうるのでは無いかと思えるほどの圧倒的な強さだった。
もちろん黒犬は、全員がそのくらいの力を持っているのだが、黒犬を知らない武士団連合の武士たちの心を折るには十分な恐怖だ。
この場で逃げても、誰も責める者は"いなかったであろう"。
もちろんそれはこの場から逃げ切れればの話だ。
そして、事実逃げた武士はいた。
「おいおい…これ以上俺を失望させないでくれ…」
そう言うと、俺は青刀の力を使い、逃げようとする武士達を縛り上げて赤刀を振り上げた。
「それじゃあ…さよなら」
ただ笑顔を作って、その赤刀を振り下ろす。
…………