暴虐の魔王スペックの転生者と一番星の生まれ変わり。 作:混沌の青魚
「……星野アイ。6歳、です」
今朝、院長に連れられ、その少女はやってきた。
容姿は、全体的に暗い雰囲気を晒しだしてはいるものの、幼女にしてすでに完成された美を誇るもの。
ロクな生活を送ってこなかったのか、髪はボサボサで傷んではいるものの、とても綺麗な黒、なによりも特徴的なのは両目に浮かぶ星。
暗い、全てを憎悪するような、そんな星。
しかし相対する全てを魅了する、そんな星。
俺は、気がつけば彼女の星に魅了されていた。
そして自覚するのは、俺の内側に対しかけられていた鍵、それが一重、解かれているような感覚といえば良いのか。
直感、根拠はなく、それでも確信したのは、今まで開く術もなく放置していた転生特典が、遂に芽吹いたその理由、星野アイの存在そのものだということ。
「……面白い。院長、そこの女の面倒は俺が見る。良いか?」
口元が緩み、笑みを浮かべているのを自覚する。
泣くことも、笑うこともなく、常に仏頂面で無感情、そして誰かに興味を持つことすらなく、世界に飽いたような俺がはじめて見せたそんな姿。
職員、そして周りの子たち、誰もが驚いた表情を浮かべるなか、院長は。
「……そうね。あなたなら、安心してこの子を任すことができます。よろしくお願いします」
「ああ、任せておけ」
柔和な表情で頭を下げる院長に対して、口角を上げ、不敵な笑みを浮かべる。
「星野アイ、だったな。今日からお前のことを世話することになった、亜乃主だ。よろしく」
手を差し出す。人間、誰もが最初が肝心。
――無反応。
「……ふむ」
眼の前で手をひらひらと振ってみる。
――無反応。
「……なるほど」
段々と、皆が俺を見る眼差しが変わってくるのを感じる。
驚愕、そして畏怖のこもったものから、哀れみのものへと。
だがこれしきのことで、俺は挫けたりなどしない。
「――こちらを、向け」
「……え」
星野アイ、彼女の顎へと指先を這わせ、そして持ち上げる。
俗に言う顎クイというもの。それを実践し、無理矢理に視線を向けさせる。
相手を怯えさせぬよう、柔和な笑みを浮かべた表情――は、すこし難しいので、遂に開眼した破滅の魔眼へと魔力を送り込み、最低出力で発動。
そうすることで俺の瞳は妖しく輝き、そして見る者には美しさを感じさせるものへと変える。
「……綺麗」
そして目論見通り、俺へ興味を向けることはできたようで、彼女は魅入られたように頬を赤く染め、まっすぐに俺の瞳を見つめる。
しかし最低出力とはいえ、俺の破滅の魔眼を長く見つめていては、心を壊す、最悪の場合は根源ごと消滅させてしまうかもしれないので、一度まぶたを閉じ、魔眼を閉じる。
「改めて、俺は亜乃主。年は6歳。お前を世話することになった。よろしく」
「……うん。星野、アイ……です。よろしく」
軽く魅入られたままの彼女の瞳、その奥には少しばかりの光が宿っているように感じたのだった。