暴虐の魔王スペックの転生者と一番星の生まれ変わり。 作:混沌の青魚
月日とは流れるものだ。
退屈なものであれば遅く、そして充実し、毎日が輝いて見えるような日々を暮らすのであれば、それは瞬く間に過ぎていくのだろう。
星野アイの世話係となり、実に1年と半分の月日が流れている。
彼女は、日に日に表情を明るいものへと変えていった。
それを間近で見ていた俺も、楽しげな笑みをよく浮かべるようになったし、どうやらそのおかげか、徐々に俺たちへ接する機会を伺うものが増えた気もする。
俺にとって、そして彼女にとってもあっという間の時だった。
「アノシュ!今日はなにして遊ぶっ!?」
砂場にて魔王城デルゾゲードを完璧な精度で作り上げていた俺へ、まさに元気いっぱいといった感じのアイが飛びついてくる。
力に対する封印が一重解かれた俺は、日々の鍛錬によりすでに霊長類最強の某女性に準ずる戦闘能力を保有するまでになったが、しかし普段の身体能力そのものは幼児そのものである。
結果としてどうなるのかと言われると……。
「むぐっ!?」
「わぷっ!?」
二人して魔王城デルゾゲードを破壊し、そのままの勢いで砂場に埋まった。
――。
幸いにも、俺たちは様子を伺っていた先生に助けてもらった。
しかし身体中泥まみれで、とてもではないがこのままで1日を過ごすなどできるはずもなく、俺たちは揃ってシャワーを浴びることになるのだった。
「……ごめんね、アノシュ?」
「なぜ謝る?」
「だって……アノシュの作ってたお城、壊しちゃったし、先生たちにもいっぱい怒られちゃったし……」
今にも泣きそうな顔で、申し訳無さそうにするアイ。
7歳、幼女。そしてバスローブ姿と、犯罪臭で今にも鼻がもげそうな光景だが、実際のところ俺も7歳なのでセーフだ?
なによりも優先すべきこと、それは。
「あの程度の城はいくらでも作れる。それに先生に怒らたこと、それも心当たりはないがよくあることだ。気にするな」
「でも……」
そう、まったく心当たりはない。
しかしそう励ましてやっても、あまり効果はない、か。
「ふむ」
それならば、今までひた隠しにしてきたことだが、魔法を使って喜ばせよう。
アイにならば、いいだろう。それだけの信頼関係は築けているはずだ。
それに仮に世間にバレたとしても、それこそ暴虐の魔王ムーブで世界を支配する魔王になればいいだけだ。
何がいい?
そう考えてみれば、思いついたのがひとつある。
それはアニメでも深く印象に残っていた、あのシーン。
それを再現してみせよう。
「
手をかざし、虚空に対して魔法陣を描く。
創造するは、アノス様がヒロインの一人であるミーシャ・ネクロンに対して贈る魔法模型。俺が砂で創っていた魔王城デルゾゲードの超縮小版のようなもの。
だが、実際のところ、今の俺の実力では原作通りの小さな石ころサイズの出来物を完成させることは不可能だ。なによりも分かりにくい。
なのでサイズとしては大人の手のひらに余るほど、それでいて、精度もまさか魔法のような超常現象にて再現したとは思われないような歪なもの。
今の俺は、まだ暴虐の魔王の力を持って生まれたことを世間に知られるわけにはいかないのだから。
なぜならば魔法を駆使すれば軍隊までは相手ができるが、某霊長類最強の女性と相対すれば一捻りにされてしまうのだから。
さておき。やがて完成したのは、想像した通りの物体だった。
いつの間にかアイも興味津々といった様子で俺の魔法を見ていたようで、完成された魔王城デルゾゲードに対して目が釘付けになっていた。
「魔王城デルゾゲード、こうやって魔法を使えば再現は可能なのだからな」
「……す、すごーい!!??」
不敵に笑ってみせれば、先程まで落ち込んでいたのはなんだったのかというほど喜色を滲ませた様子でまさに顔と顔がぶつかりそうな距離まで詰め寄ってくる。
それを手で引き剥がしながら、お願いをしておく。
「このように、俺は魔法が使える。しかしそれを世間に知られるわけには、まだいかない。俺とアイ……お前だけの秘密だ」
「わたしと、アノシュだけの……?」
「そうだ。その秘密を守れると、そう約束をするのならば、この城はお前にやろう」
「ほんと!?」
「ああ、当然だ。これはお前のためだけを思って作った物なのだからな」
「わたしの、ためだけ……?」
微笑を浮かべ、コクリと頷いてやる。
そう。これは兼ねてより計画していた、結婚を約束した伝説の美少女幼馴染な存在を作るためには必要で不可欠な行為なのだから……!
「あ、ありがとうっ、アノシュ!!」
「わぷっ!?」
感極まったアイが、俺の頭を胸に抱き寄せてくる。
しかし忘れてもらっては困るが、俺たちは未だ身体が未発達な幼児。
突然なことには対応が難しく、なによりも風呂場故に足場は濡れたタイル。
当然ながら、転ける。
咄嗟に位置を替え、魔力でアイを衝撃から護ったがゆえに怪我はないだろうが、激しい動きに彼女が身に纏っていたバスローブ、そして俺の腰に巻いていたタオルは脱げて舞い上がり、肌色を全開で見せ合うこととなったのだった。