暴虐の魔王スペックの転生者と一番星の生まれ変わり。   作:混沌の青魚

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デビュー

 アイドルとして、覚えることは山のようにあった。

 

 ダンス。これは俺達にとって造作もないことで、一度踊れば完璧以上の精度で修めた。

 

 

 歌唱力。アイは少しばかり苦戦をしたものの、それでも3日あまりでカラオケアベレージ98点以上を叩き出す歌い手へと成長した。

 俺?当然だが初手から100点だった。

 

 

 社会人としてのマナー。俺は前世黒の企業のエリート戦士だったことから、この辺は問題はなかった。

 しかしアイはやはり子ども、そして過去、母親からの虐待を受けて施設へと入ることになった経緯から、一般的なマナーというものが欠落していた。

 

 そこは俺が半年をかけてみっちりと教え込んだ。

 

 

 そして明るさ・元気・笑顔の三要素。アイドルとして生きていくうえで、これは必要不可欠と言っても過言ではないが、まあここは普通に問題はなかった。

 最悪の場合は魔法で誤魔化すことも可能なのだからな。

 

 

 これらを頭へと叩き込み、苺プロダクションへ加入から1年後、ようやくとして俺たちのデビューが決まった。

 

 地下アイドルとしてだが、双子の美少女(笑)という話題性、そして未だ普及率は高くないが、SNSを駆使した広報。

 決して多くはないが、会場には少なくもない人数の客たちが居た。

 

 

 緊張をしていない、と言えばそれは嘘になるのだろう。

 いくら俺が暴虐の魔王のスペックを生まれ持った怪物だったとしても、アイドル活動なんて未知な世界へ足を踏み入れ、しかも正体どころか性別すらも偽り、人々を完全に騙し切る。

 

 原作の暴虐の魔王、アノス・ヴォルディゴードだったのなら、それは完璧に演じきってみせたのだろう。

 しかし俺はその力を持っているだけの、ただのアノシュ。

 

 

 ――ああ、それでも。

 

 ――とても楽しそうな、彼女の笑顔。偽り、嘘だらけ、そんな君を見て、俺は―――。

 

 

 

 

 最高に楽しくなってきたところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果として、俺たちB小町の初ライブは大成功に終わったといえるだろう。

 

 アイ、そして俺は、ライブと並行して常時発動していた聖愛域により、これからファンとなるであろう人々に向けて愛を歌った。

 

 後の話にはなるが、今回の初ライブの動画がSNSに出回り、そして世界中から熱狂的な支持を集めるようになるのは別の話。

 

 これからは今日の話を――。

 

「……初ライブにしては上出来、というより、既にトップアイドルの中でも上澄みに位置するパフォーマンスだった。正直なところ、俺みたいなヤツが、お前らを活かしきることが想像できないっツーか……」

 

「それでも、俺たちはあなたの下でしかアイドルなんて仕事はきっとやらないだろう。それが頭を垂れて這いつくばり、靴を舐められたとしてもだ」

 

 斎藤壱護。俺たちの雇い主であり、苺プロダクションの社長が、そんなことを俺たちに告げてきたので否定しておく。

 

 俺たちがアイドルデビューするにあたり、身元引受人として里親となってくれた、父。

 

 見た目は完全なチャラ男だが、しかし根は善人。

 

 そして身元引受人になってもらうにあたり、俺の正体については明かしてある。

 

 当初は非常に驚き、そして反対もされた。

 当然だ。得体のしれない、魔法なんてお釈迦の存在を使う男。そんな化け物のような存在が、正体を隠して自身の手元でアイドル活動をするのだ。

 

 火が着けば、社長はおろか、周辺の人物までもが瞬時に爆発に巻き込まれる核爆弾のような存在。

 

 それでも最後には認め、俺たちはこうして最高のスタートを切ることができたのだ。

 

 そんな彼を、尊敬をしている。

 

 アイの方も、きっと気持ちは同じだろう。

 

 

 ……社長が語りだした時点で俺の膝の上で寝てしまっているのだが。

 それでも、同じ。…………………………………はずだ。多分。

 

「あなたは、あなたの夢であるドームとやらに行くため、全身全霊を賭して、あなたの仕事を果たしてくれ。俺たちは、その期待にすべて応えてみせる」

 

「……ああ、分かったよ。この、ネカマイドル!」

 

「……待て。なんだ、そのネカマイドルというのは」

 

「そりゃ、お前……ネカマのアイドル、略してネカマイドルだろ」

 

「……なるほど。言い得て妙。しかし、そう呼ばれることには無性に腹が立つ。あなたのことは父と呼び、尊敬したいと思っていたのだが、それは50回ほど殺してから考えるとしよう」

 

 魔法陣を描きながら、純粋(殺意MAX)な笑みを浮かべる俺に、社長は怯えながら。

 

「……じょ、冗談、だよな?」

 

「ああ、流石に50回も殺したらあなたの魂が壊れるだろう。だから精々10回までに留めておくさ」

 

 

 

 その日、苺プロダクション事務所に野太く汚い悲鳴が10回鳴り響くのだった。

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