DQM 異世界に転生したので最強のモンスター達を作って生きていく(準備編 作:雨宮南雲
試合が終わった後、ダンは連れてきたモンスター達の治療をアンリに任せて、キットに笑顔で近付いてきた。
「いや~お見事。君の勝ちだね」
「ありがとうございます」
ダンは握手を求めてきたので、キットはその手を握ります。
そして、試合の感想を言います。
「最初にホイミスライムを狙ったのは、回復役を狙ったからだね」
「はい」
「ってことは、アレがホイミスライムだと知っていた。その知識を持っていたってことだね」
ダンの言葉で、キットは8歳の割に知識の多さに対して、どう誤魔化すか悩みました。
しかし、次の言葉でそれが杞憂だと分かりました。
「君はとても、勉強家なんだね!」
「えっと……」
「いや~大体この試験を受ける人は、ホイミスライムの厄介さを知って、大体2回目くらいで突破するんだけどね。君みたいに一発で突破した人は稀だよ」
「そう、なんですか」
ダンは嬉しそうにまだ語ります。
そろそろ、終わりにするためにキットが止めます。
「その後の指示も的確だし、君のモンスター達も大分強いしで」
「あの」
「ん。なんだい?」
キットに声を掛けられてダンは止まります。
「この後はどうすれば?」
「おっと。そうだった、そうだった」
ダンは思い出したかのように、懐から白い石を取り出した。
その石をキットに渡します。
「この石が証ですか?」
「そうだよ。その石を闘技場の受付の人に渡せば、君は晴れて新人のモンスターマスターだ。おめでとう!」
そう言って、ダンは大きな拍手をしました。
キットは照れつつ礼を言います。
「ありがとうございます」
「うむ。それじゃ、またね」
「はい」
キットはスラきち達と一緒に、ソフィーと合流します。
「おめでとう。キットにスラきち達」
「ありがとう」
「余裕の勝利だぜ」
ソフィーがキット達に勝利へのお祝いの言葉を言った後、先ほどキットが貰った石を見せて貰います。
「これが証なのね。ちょっと不思議な魔力を感じるわ」
「そうなんだ」
「それを持っていけばいいんだな。早く行こうぜ!」
「了解」
「急ぎましょ。そろそろ日が落ちそうだし」
建物に出ると、山の向こうが少し赤くなっていました。
キット達は急いで闘技場へ向かいました。
闘技場に着き、受付のマッチョマンに先ほどの白い石を渡します。
「はい、確かに☆ これで合格よ☆」
「よかった」
「おめでとう。キット」
合格の言葉を聞いたソフィーは、キットにお祝いの言葉を言います。
「さて、これからモンスターマスターに関する説明をする……予定だったんだけど、それはまた明日ね☆」
「なんでよって、もう遅いからね」
「そう☆ そろそろ営業終わりなのよ☆ 残業と夜更かしは美容の大敵よ☆」
「わかる」
美容の部分でマッチョマンに同意するソフィー。
その様子を静かに眺めるキットでした。
「それじゃ、明日の何時頃に来ればよいですか?」
「そうね~鐘が4つ(大体午前10時)鳴ったら、こちらも対応できそうだから、そのぐらいでお願いね☆」
「わかりました」
「それじゃ、気を付けて帰ってね~☆」
受付から離れたキットとソフィーはスラきち達に説明します。
「それじゃ、今日はもうエレナの所に帰るのか」
「そうなるね」
「よっしゃ! 早くエレナに合格したことを伝えなきゃ!」
そう言ってスラきちは急いで駆け抜けていきます。
その後をソフィーが追いかけます。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「速いことで。皆、行くよ」
「ぴぃ♪」「キキ♪」「チュウ♪」
その後をキット達も追いかけます。
牧場では、エレナが入口の辺りに立って、街の方を心配そうに見ています。
キット達が出発して、かなりの時間が経過しているので、日が落ちようとしている。
それなのに彼らがまだ、戻ってこないからだ。
(もしかして、何か問題があったのかしら……)
自分も付いて行けばよかったかもしれない。
そう思い、闘技場の方へ行こうか悩んでいたらエレナの目に、一匹のスライムが見えた。
そのスライムは、嬉しそうにエレナの名を呼んでいた。
「スラきち!」
そして、それをスラきちだと認識したエレナは駆け出した。
「エレナ! ただいま!」
「おかえり! スラきち!」
エレナとスラきちは、再会の喜びでくっついたのだ。
それを後から追いついたキット達が見ている。
「仲が良いわね~」
「邪魔しちゃ悪いんだが、後ろの子達もあるし、報告しないとな」
キット達がどう声を掛けようか悩んでいると、エレナが気がついた。
「あ、キットさん。ソフィーさん。おかえりなさい!」
「只今戻りました。エレナさん」
「ただいまー」
キット達はエレナに、挨拶を返します。
「無事に戻られて良かったです。あまりにも遅いので心配したんですよ」
「それについては、ごめんなさい」
キットは自分がさすがにやり過ぎたと反省しました。
そんなキットに、スラきちが助け舟を出します。
「エレナ。いろいろ話したい事あるし、家に入らないか? 新しい仲間を紹介したいんだ」
「あ、そうね。あの、御2人共。よろしければで良いんですけど、食事をご用意したので食べて行きませんか?」
「本当! 結構お腹が減っていたんだ♪」
「ちょっと、ソフィー」
ご相伴に預かろうとしているソフィーをキットが止めようとしてます。
その様子を見たスラきちがキットに言います。
「いいじゃねぇか。エレナの飯はうめぇぞ」
「そうよ、食べて行きましょうよ、キット」
「あー……確かにお誘いは嬉しいんだけどね、ただ……」
少し焦った顔をしてソフィーを見るキットに、エレナが残念そうな顔をして。
「あの、キットさん。無理そうなら良いんですよ?」
「むう……」
キットは少し悩んだ後、1つ頷いて。
「わかりました。エレナさんの料理、楽しみだったのでお願いします」
「本当ですか! すぐに用意しますからね!」
こうして、キット達はエレナの家に上がっていくのだった。
エレナが食事の準備をしながら、スラきちの話を聞いています。
「それで、キットのやつ「もう一周しようか」って言いだしたんだからな」
「そうなんですか! だからこんなに時間が掛かったんですね」
その様子をテーブルでキット達が見ています。
「エレナの料理ってどんなのかしらね?」
「なぁ、ソフィー」
「何よ?」
そして、キットがソフィーに聞きたい事があるのか問いかけます。
「大丈夫かな?」
「エレナさんの料理?」
「いや、そっちじゃなくてさ。時間の方だよ」
「時間?」
今一ピンとこないのか、ソフィーが首をかしげます。
キットは詳細に説明します。
「俺たち別の世界から来たんだけど、あっちの世界の時間大丈夫かな?」
「……あの洞窟で、あんなに時間かけまくったのに今更?」
「あの時は楽しくて、正直忘れていました」
ソフィーのジト目に、キットは反省します。
「さっき、渋ってた理由はそれなのね。それなら安心しなさい」
「本当?」
「後で説明してあげるわ。それよりも料理が出来たみたいよ」
そう、ソフィーが言うと、エレナがスープの入った器をトレーに乗せて持ってきました。
それを、キットとソフィーの前に並べます。
「お待たせしました。今日は特別に、肉団子入りの野菜スープです!」
「マジかエレナ! 豪勢だな!」
「慌てないの。スラきちの分もあるから」
「よっしゃぁぁぁ!」
運ばれてきた料理に、思わず固まったキット達。
しかし、スラきちの反応を見るに、どうやら普段の食事はこれより質素のようだ。
エレナは同じように器にスープを入れると、スラリン達にも与えます。
「さぁ、皆もどうぞ。あれ、キットさん、ソフィーさんどうかしましたか?」
「ああ、いや」
「ハッ! もしかして、キットさんとモンスターさん達の食事が同じなのだめでした?!」
「んあ? ヒットはほんなことひにひないほ? (キットはそんなこと気にしないぞ?)」
いただきますを言う前に、すでに食べ始めているスラきちが訂正します。
そして、誤解を解くためにキット達も食べ始めます。
「あ、いえ、大丈夫です。それでは、いただきます」
「そうね。いただきます」
「よかった。お替りも沢山あるので好きなだけしてくださいね。スラきち以外は」
「なんで?!」
突然のエレナの言葉に、思わずツッコミを入れるスラきちです。
そして、2人は料理を口に運んで味に驚きました。
「おいしい! エレナって本当に料理上手なのね!」
「お褒め頂き有り難う御座います。お口に合って、本当に良かったです」
「だから言っただろ? エレナの料理はうめぇって。な! キット……?」
スラきちがキットの方を見ると、キットの目から一筋の涙が流れていました。
「エレナさん。本当に美味しいです。有り難う御座います」
「あの、本当ですか?」
「ちょっとキット大丈夫!?」
「……? どうしたの皆」
ソフィーやエレナが何故慌てているのか、キットは不思議そうにしています。
ソフィーが涙の事を指摘します。
「だってアンタ、泣いてるじゃん……」
「泣いてる……ああ、なるほど」
自分の目の所に手を当てて、目を閉じて考えたキットは、笑顔で答えます。
「今まで、こんなに美味しいくて、暖かい料理を食べたの初めてだったので、思わず感動の涙を流してしまったみたいだ」
「本当?」
「本当だよ。だから、エレナさんも心配しないでください。お替り貰っていいんですよね?」
「ええっと、はい」
「それじゃ、無くなる前に沢山味わわせていただきます」
「お、おう! エレナの料理は凄いぞ!」
少し、変な空気になってしまいましたが、食事会を再開しました。
今日あった出来事をスラきちが楽しく話、ソフィーとキットが補足をして、エレナに話します。
「先ほどスラきちからも聞きましたが、キットさん。無茶は駄目ですよ?」
「はい。すみません」
「ちゃんと適度な休憩と栄養補給は忘れないように!」
「おっしゃる通りです」
たまにキットがエレナに叱られて反省する場面を見て、ソフィーやスラきちが笑っている、にぎやかな食事会なのでした。