DQM 異世界に転生したので最強のモンスター達を作って生きていく(準備編 作:雨宮南雲
キットの世界での行動
光が収まり、視界が晴れると、そこはキットがいつも寝ている部屋でした。
初めての場所なので、スラリンとロジャーが辺りを見回しています。
「ぴぃ?」「キキ?」
「2人とも悪いんだけど、静かにね~」
そんな2匹に、キットは声を掛けて大人しくさせます。
その様子を見ていたソフィーが、キットに尋ねます。
「それで、連れて来たけどどうするの?」
「そうだね。いろいろ実験したい事があるけど、その前に……」
「その前に?」
キットは、話しながら準備をしています。
大き目のシーツと、いつも洗濯に使う盥を取り出しました。
それをみて、ソフィーが聞きます。
「あれ? また洗濯するの?」
「まさか」
ソフィーの答えを否定して、キットが言います。
「これから街に、お出かけだよ」
「はい?」
キットの答えに、ソフィーが首を傾げます。
キットの部屋のドアを少し開けて、ソフィーが中から出て来て辺りを見回します。
使用人が居ないことを確認したら、ソフィーがドアの方に声を掛けます。
「誰も居ないわよ」
「了解」
そしてキットが、膨らんだシーツの入った盥を抱え込んでドアから出てきます。
そして、ソフィーに次の指示を出します。
「それじゃ、右側の廊下を進んで、角の先に誰かいないか確認してくれない?」
「オッケー」
キットの指示に従って、ソフィーが飛んで行きます。
廊下の先を確認して、誰も居ないことを確認したソフィーが、腕を使って丸を作ります。
ソフィーの、キット達以外に見えない様にする能力で安全に確認ができます。
「よし、行くか。スラリン、ロジャー。窮屈だけど我慢しててね」
「ぴ」「きぃ」
キットは、盥に声を掛けると、中から小さいですが鳴き声が聞こえました。
スラリンとロジャーは、洗濯する盥の中に、できるだけ動かない様に入っています。
ソフィーに追いついたら、次の指示を出します。
「それじゃ、次はあの廊下の先を見て来てくれない?」
「オッケー。だけど、玄関と別方向じゃない?」
「後で説明するよ」
キットの道案内に疑問を持ちながら、ソフィーは指示に従っていきます。
途中、使用人の近くを通りましたが、特に怪しまれずに目的の場所に到着できました。
屋敷の端の扉の前に居ます。
「昨日も思ったけど、キットに対する使用人の目が最悪ね」
「気にしない、気にしない」
キットは一度、2匹が入っている盥を置いて、ドアに鍵を指して施錠されたドアを解除して、中に入ります。
中に入ったら、近くの蝋燭に火を点けて、またドアを施錠しました。
ソフィーが入った瞬間、顔を顰めて言います。
「なにここ……カビ臭い……」
「2人共、もう出て来てもいいよ」「ぴ」「キキ」
部屋の中には大量の木箱が積まれていました。
キットは、盥から2匹を出してから説明します。
「ここは、使われなくなった古い倉庫だよ。埃が舞うから、あんまりその辺触らないでね」
「了解。それで、此処に何の用事があるの?」
ソフィーが此処に来た目的をキットに聞きます。
キットは、奥の木箱に近づきながら言います。
「さっき言ったけど、お出かけだよ」
「それは、聞いたけど、ならなんでこの部屋に来たの?」
キットは、奥の木箱の蓋を開けると、中に身を乗り出して作業をしています。
「それについては、もう少し待ってね。おお、このリングの収納機能が便利すぎる」
「……ちゃんと説明しなさいよ」
ソフィーはキットの行動が分からないので、少し待つ事にしました。
適当な場所に座ろうとしましたが、埃が凄くて座れません。
「それにしても、いくら使わないからって掃除くらいはしないの?」
「うちの使用人に、そんな暇はないんでしょ。後、此処は鍵掛かっているし」
「あっそ。……スラリンとロジャーは元気そうね」
「ぴぃ?」「キキ♪」
元々洞窟暮らしをしていた2匹なので、特に気にしていません。
キットは作業が終わったのか、木箱から出てきました。
手にはフード付きローブと、大きい空のリュックを持っています。
「よし。スラリン、ロジャー、こっちに来て」
「ぴ?」「キキ?」
呼ばれた2匹がキットに近づきます。
キットは、ローブを着て2匹に言います。
「スラリンは頭に、ロジャーは胴辺りに入ってくれる?」
「ぴ!」「キ!」
キットの指示に従って、2匹が隠れます。
少し膨らみますが、何とか入る事が出来ました。
その姿をソフィーに聞いてみます。
「どうかな? ソフィー」
「まぁ、ギリギリセーフかな?」
「よしよし、2匹とも出てきていいよ」
キットの言葉に従って、体から2匹は出てきます。
ソフィーはキットが此処に来た理由を少し理解しました。
「今の確認するために、此処に来たのね」
「それだけじゃないんだよね~」
「まだあるの?」
キットは、先ほどの木箱の位置を移動して、木箱があった場所を探っています。
「え~っと、あ、ここだここだ」
床の穴らしき場所に指を入れて引くと、板の一部が外れました。
その場所から、丸い扉らしき物がでてきました。
「よっと」
「コレって、隠し扉?」
「正確には緊急脱出口だね」
キットは、その扉を開けると、中に梯子が見えました。
「それじゃ、此処から屋敷の外にでるよ」
「了解」
「ぴぃ!」「キキ!」
キット達は梯子を下りて、中に入って行きました。
中に下りて行くと、暗く辺りが見えません。
キットは、近くにある松明を探して明かりを付けようと、火打石を使います。
しかし、湿気っているのか中々火が点きません
「よ、ほ、あれ?」
「ねぇ、スラリンにやらせたら?」
「スラリン? あ、そうか! スラリンお願い」
「ぴ! 『メラ』」
スラリンがメラを唱えて、松明に火を点けます。
明るくなると周りが見えて、地下はギリギリ大人が通れるくらいの広さになっています。
よく見れば、排水が悪いのか、下に水たまりがいくつかできています。
「そろそろ、この松明も湿気ってきたけど、スラリンのお陰でまだ使えそうだ」
「ここが原因で、あの部屋がカビ臭かったのね」
ソフィーが、最初に感じた匂いの原因を理解して言います。
キットは一度松明を戻して、上に戻ろうとしています。
「何してるの?」
「上の蝋燭を消してくるよ」
「それくらい、私が行くわよ」
「お、ありがとう」
ソフィーは飛んで行き、蝋燭を消してからまた、戻って来ました。
ソフィーが戻って来たのを確認して、キット達は先に進むことにしました。
「それじゃ、行こうか」
「了解」
「ぴぃ」「キキ♪」
キット達は進みながら話をしています。
ソフィーがキットに、色々質問をします。
「この通路ってキットの屋敷だけなの?」
「いや、よく見ると分かるけど、他の屋敷からも出れるはずだよ。他の屋敷の方で埋め立てていなければ」
ソフィーがキットの言葉に従って、見ると崩れたりしてますが、梯子の跡が有ったりします。
ソフィーが更に質問します。
「この通路の事、何処で知ったの?」
「ああ。書斎で勉強中に、本の中から屋敷の見取り図と鍵を見つけてね。それで利用できると思ったんだ」
「なるほどね。ここを利用して、屋敷の人に見られず外に出る事が出来るわけね」
「そゆこと」
「ぴぃ?」「キィ?」
キットとソフィーの会話に、スラリンとロジャーが疑問の声を上げます。
キットが2匹に言います。
「後で、色々と事情を説明してあげるから、とりあえず、先に進もうか」
「ぴぃ」「キキ」
2匹はよく分からないが、とりあえず、従うことにしました。
その様子をみて、キットがため息を吐きます。
「ソフィーの説明のおかげで、恥ずかしい思いをしたよ」
「あら? とっさに言い訳を思いつかなかった、キットが悪いのよ?」
キットの文句に、ソフィーは悪びれず言います。
それに対して、キットが言います。
「分かっているよ。エレナさんに心配させたくない、俺の気持ちを汲んでの行動だってのはね。今考えると、あの説明は中々いいと思うし」
「なら良いじゃない」
「ちょっと言いたくなっただけ」
(それに復讐は後でな……)
キットの心の中の闇を気付かず、進んでいくと、鉄格子が見えました。
「ここ閉まっているけど?」
「大丈夫、鍵はあるよ」
キットは、リングから鍵を取り出して、鉄格子の鍵穴にはめ込むと施錠を解除して開けます。
通った後、また閉めます。
「その鍵も、書斎から?」
「いや、コレは松明を置く台の近くに打ち付けてあった」
「なるほどね」
キット達は進んでいくと、行き止まりに着きました。
「ここで終わり……じゃないのね」
「正解。そこの輪っかを引くとね」
キットは壁の近くの輪っかを引くと、壁がズレて光が見えました。
「光ってことは、外に着いたのね」
「そ。皆出るよ」
「ぴぃ!」「キキ!」
キット達は、その壁の隙間から外に出ることにしました。
外に出ると周りは石壁で、上を見上げると空が見えます。
「此処って枯れ井戸かしら」
「そうだよ。ソフィー、上に飛んで誰かいないか見てくれない?」
「オッケー」
キットの指示に従って、ソフィーが飛んで行き井戸の上に出ると、辺りを見回します。
井戸は、高級住宅街と普通住宅街の間にあるようです。
ソフィーが見た感じ誰も居ません。
「誰も居ないみたいよ」
「了解。一応念を入れて、スラリン、ロジャーはさっきみたいに俺のローブの中に隠れて」
「ぴ」「キ」
キットの指示に従い、2匹は先ほどのように隠れます。
それを確認して、キットは井戸を上ります。
一見壁の様で、所々に隙間があるので、梯子を上る感覚で上がる事が出来ました。
そして、キット達は井戸から出ることが出来ました
「よし」
「それで、次は何処に行くの?」
「大通りは避けて脇道を行こうか」
「了解」
キット達は、移動を開始しました。
脇道を進んで、行くと段々と雰囲気が悪い場所に進んでいきます。
その事が心配なのかソフィーが聞いてきます。
「ねぇ、キット。本当にこっちでいいの?」
「うん。確か、こっちだったはず」
「なんか、時々ガラの悪い奴らがこっちを見てる気がするんだけど……」
「スラム街が近いからね」
「大丈夫なの、それ……」
ソフィーの言う通り、人相の悪い人間が所々でこちらを窺っている気がします。
キットは、特に気にした様子はありません。
「たぶん大丈夫だよ」
「たぶんって」
「俺も似たような格好しているし」
「それは、まぁ、確かに……」
そんな会話をしていると、1人の男がキット達の前に現れました。
「よう、ガキ。見ない顔だな」
(話しかけられたじゃない!)
ソフィーが、キットにしか聞こえない声で言うと、キットはそれを無視して、男に言います。
「こんにちは、良い天気ですね」
「あ? 呑気か? ここはお前みたいなガキの来るところじゃねぇぞ」
「でしょうね」
キットの抜けた会話に、男がイライラして言います。
「ふざけてんのか? まぁいい……有り金全部出しな。そしたら見逃してやる」
(ちょっと! キット、どうすんのよ?!)
ソフィーがキットの方を見ると、キットは笑顔で男の方を見て、1枚の絵柄の描かれた銅貨を出します。
そして、男に見せて言います。
「おじさん。勝負しない?」
「あん?」
「ルールは簡単。このコインを弾いて、表が出るか裏が出るか当てるだけ」
「……」
「おじさんが勝てば、有り金と僕を売り払っていいですよ」
(キット?! 何言っているの?)
キットの言葉にソフィーが驚いています。
スラリンとロジャーも、動揺して少しもぞもぞします。
キットは2匹を落ち着かせながら続けます。
(落ち着いて……)
「……お前が勝ったら?」
「この場を見逃してくれるだけでいいですよよ」
「……いいだろう」
キットの言葉に、男はにやつきながら答えます。
勝負が始まります。
「それじゃ、おじさんから先にどうぞ」
「なら、表だ」
「それじゃ、僕は裏だね」
そう言って、キットは銅貨を弾きます。
銅貨は回転しながら上に上がっていきます。
(裏! 裏! 裏でろ!)
ソフィーが、必死に祈っています。
銅貨が地面に落ちて、絵柄が見えました。
それは、裏の部分です。
(やった! 裏だからキットの勝ちだわ!)
「僕の勝ちですね。此処を通ります」
「……ああ、そうだな」
キットは落ちた銅貨を回収して先に進もうとしますが、
「待ちな」
「はい?」
男がキットを止めていいます。
「この先は、スラム街だぜ。何しに行くんだ?」
男がキットの目的を聞いてきます。
ソフィーも、それを知りたいので黙っています。
「昔、世話になった人がいるので、その人に会いに来ました」
「そいつは誰だ?」
「ボロボロの青い服を着た老人ですね。ご存じですか?」
「……さぁな」
男はキットの質問に否定します。
そして、鞘に装飾された短剣をキットに渡します。
「あの、コレは?」
「貸してやる。それを腰にでもぶら下げて置けば、この辺りで襲われる事はないぞ」
「いいのですか?」
キットは、男の行動に驚いて、聞き返します。
男はキットの方を見ないで答えます。
「貸すだけだ。挨拶が終わったら返せよ」
「ありがとうございます」
「さっさと行け、ラッキーボーイ」
男は、キットの相手を終わったと言わんばかりに元の位置に戻りました。
キットは、男に再度お辞儀をした後、先に先に進んでいきました。