DQM 異世界に転生したので最強のモンスター達を作って生きていく(準備編 作:雨宮南雲
男と別れてから、ソフィーが怒った様子でキットに言います。
「本当に焦ったんだからね! 何考えているの!」
「ごめんて、ソフィー」
先ほどのキットの行動に、ソフィーが叱って言います。
ついでに、スラリンとロジャーも心配して唸っています。
「勝ったから良いけど、負けたらどうするのよ!」
「ああ、それなら大丈夫。あのおじさんが勝負に乗ってくれた時点で、俺の勝ちが確定してたから」
「はぁ?!」
キットの発言にソフィーが、驚いて聞き返します。
「それって、どういうことよ!」
「ヒントはコレ」
そう言って、3枚の銅貨をソフィーに見せました。
3枚とも、絵柄が書かれている銅貨です。
「これが、何なのよ?」
「よく見てごらん」
キットに渡されて、ソフィーが銅貨を調べています。
1枚目に渡された銅貨は、特におかしなところはありません。
しかし、2枚目の銅貨を見て違和感に気付きます。
「なにこれ? 表と裏、両方とも同じ絵柄じゃないの」
「そうだよ」
3枚目も2枚目と同じように表と裏が両方とも同じ絵柄です。
2枚目と3枚目の違いは、その書かれている絵柄が1枚目の表か裏かの違いです。
ソフィーがコレが何か気付いて言います。
「イカサマコインじゃないの!」
「ピンポーン♪」
ソフィーの答えに対して、キットは楽しそうに正解の音を言います。
そして、説明をします。
「あのおじさんが、表で言ったら両面裏のコイン、裏なら両面表のコインを弾けば俺の勝ちなんだよ」
「勝ちなんだよって、バレなかったから良いけど、バレたらどうするつもりなのよ?」
ソフィーが疑問を言います。
それに対して、キットは驚きの答えを言います。
「ああ、それなら、あのおじさんにイカサマはバレてると思うよ」
「はぁ?!」
「そもそもコレ、イカサマやってる事を理解してる前提の話だし」
「意味がわからないんだけど……」
キットの説明に、ソフィーが頭を抱えています。
キットは説明を続けます。
「この裏通りの人間は余所者を嫌うけど、仲間なら助け合う精神なんだ」
「それで?」
「さっきのおじさんとのやり取りは、その仲間を示す合図みたいなやり取りなんだ」
「なるほど。だから見逃してくれたのね」
「そゆこと」
キットの説明に、ソフィーが納得しました。
ただ、ソフィーが疑問に思ったことを言います。
「でも、キットはそれを何処で知ったのよ?」
「それは、少し昔の話をするね」
「うん」
キットは、ソフィーに説明をします。
「昔、俺は迷子になったんだよ」
「迷子って、なんで?」
「さぁね? あの両親との買い物だったから、もしかしたらそのまま行方不明を期待してたのかもしれない」
キットの話を聞いて、ソフィーが嫌な顔をしました。
それを無視して話を続けます。
「その迷子になった時に、1人の老人が助けてくれたんだよ」
「それって、さっき言ってたお世話になった人?」
「そうだよ。その人と一緒に大通りを抜ける時、さっきのやり取りをしていたんだ」
「その時に覚えたのね」
ソフィーの言葉に、キットは頷きます。
説明はまだ続きます。
「大通りが見えてきたら、その老人から3枚のコインを貰って、教えて貰ったんだ。「もう、此処には来ちゃいけないが、もし迷い込んだらこのやり方で見逃してくれる」って」
「なるほど」
「んで、その当時は危険な所に行かない様にしてたから、それ以来此処には来てないんだけどね」
キットは笑いながら言います。
ソフィーが聞いてきます。
「なら、何で今頃来たの?」
「1つは、強くて信頼できる仲間が出来たからね」
「ふむふむ」
「もう1つは、拠点が欲しいんだ」
「拠点?」
キットの言葉にソフィーが聞きます。
「あの屋敷に仲間のモンスターを呼んだら、確実にめんどくさいことになるからね。でも、スラム街なら多少の騒ぎはいつもの事だし問題ないでしょ」
「納得したわ。つまり、その老人の家を拠点にしようってことね」
「正解」
キットの言葉に、ソフィーが納得してると、ふと先ほどの短剣が目に入ります。
「さっきの男は、なんでその短剣をキットに渡したのかしら?」
「ああ、それはたぶんこの辺りを仕切っているボスが変わって、このコインでの挨拶が無効になってるからでしょ」
「なるほど……はい?!」
その話を聞いて、ソフィーが驚いてキットに聞きます。
「どういうことよ?!」
「どうもこうも、俺が昔の挨拶をしたから、それはもう使えないぞって優しく教えてくれたんでしょ。あのおじさん、めちゃくちゃ良い人だね」
キットは、先ほどのやり取りを思い出して、笑顔で言います。
その様子を見て、ソフィーが怒ります。
「それって、もし、あの男じゃなくて、別の人だったらどうするつもりだったのよ!」
「その時は、スラリンとロジャーに脅かして貰って、ルーラで逃走するつもりだった」
キットの計画を聞いて、ソフィーが呆れて言います。
「なによそれ……」
「だから、あのおじさんも別れの際「ラッキーボーイ」って言ったんだよ。本当にあのおじさんの言う通り運が良いんでしょ。良かった良かった」
「良かった良かった、じゃなーい!」
ソフィーが、キットの態度に対して我慢の限界なのか、ポカポカと殴ります。
キットは痛がりながらも、先に進んでいきます。
裏通りを進んでいき、キットは目的の場所に到着しました。
「ここ……なの?」
「うん。昔と同じだ」
キットの目の前には、木の壁で所々穴が開いていて、入り口はボロボロの布が付いているだけの小さな小屋です。
ソフィーが少し引きながら聞きます。
「本当にここなのね?」
「そうだよ。こんにちは~」
「ちょっと?!」
キットはさっさと中に入っていきます。
ソフィーは慌てて後を追い、中に入ります。
「勝手に入っていいの?!」
「……」
「キット?」
答えないキットに、ソフィーが気に掛けると、キットは真顔で何かを見ています。
ソフィーも、キットが見ている方向をみると。
「なに……あれ……」
「……やっぱりか」
「ねぇ、キット……それって」
キットは、ソフィーに答えずに見ていた物に近づきます。
土の床に、藁で敷布団替わりにした上に、ガリガリになった、ミイラがそこにありました。
「こんにちは、おじいさん」
「……」
キットは、そのミイラに話しかけます。
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
「キット……」
「……予想はしてたよ。俺が子供の頃から大分弱っていたし、あのおじさんの反応でもね」
キットは、ゆっくりと手を合わせてお辞儀をしました。
それが、終わり顔を上げて言います。
「ソフィー」
「何?」
「この小屋にルーラで直接飛べるようにできるかな?」
「へ?!」
キットの言葉に、ソフィーが驚きの声を上げました。
「どうしたの?」
「どうしたのって、今その話するの?! 普通はこの人の埋葬とかじゃないの?!」
「ああ、それはゴロウを呼んでからしようと思っている。さすがにこのメンバーじゃきついでしょ」
「それは……まぁ、確かに?」
キットの言葉に、ソフィーが納得します。
子供と妖精とスライムとドラキーでは、確かに大変だからです。
その事を納得した後、ソフィーも気持ちを切り替えて言います。
「わかった、ここにルーラで飛べるようにすればいいのね?」
「うん」
「少し待ってね」
そう言うと、ソフィーは地面に降りて、土の床に何か図形を描き始めました。
何か、魔法陣のような物を描いた後、キットに言います。
「スカウトリングの宝石部分をこの陣の中心に当ててみて」
「わかった」
キットは、言われたとおりに緑の宝石部分を当てます。
すると陣が青白い光りを出しています。
キットが驚き、ソフィーに聞きます。
「これは?」
「これで、この場所にルーラポイントを登録できたわ」
「マジか! ……マジだ!」
キットは言われたとおりにルーラの画面を確認すると、「お気に入りポイント1」と出ました。
キットが聞きます。
「このお気に入りポイントを押せば此処に飛べるんだね?」
「そうよ。ちなみに、このルーラポイントの登録数は最大3か所まで、それ以上の登録は、どれかに上書きになるから気を付けてね」
「わかった」
キットは、残り2か所を何処にしようか考えながら画面を閉じます。
「これで、キットの部屋とこの場所に一気に飛べるようになったから、次にあっちに行くときは此処から行きましょ」
「了解」
「それで次はどうするの?」
ソフィーは、キットに次の行き先を尋ねます。
キットは、背負っていたリュックを下ろして言います。
「スラリン、ロジャー。悪いんだけど、次はこの中に隠れてくれない?」
「ぴぃ」「キキ」
キットの指示に従って、ローブから出て来て、リュックに入りなおしました。
リュックが膨らみ、キットがそれを背負います。
「んじゃ、移動開始するよ」
「わかったわ」
「ぴ」「キ」
キット達は小屋を出て、スラム街から移動を開始しました。
帰り道、男の場所まで特に問題なく来れました。
男がキットを見つけると、話しかけてきます。
「よぉラッキーボーイ。……なんか縮んでね?」
「いろいろと安全対策をしていたのですが、おじさんのおかげでその心配がなくなりましたから」
「あっそ。……目的の人物には会えたのか?」
「一応。挨拶はしてきました」
「そうかい」
そういって、男が手を出して来たので、キットは短剣を返却します。
「コレのお陰で安全にいけました。ありがとうございます」
「別に。……もうこの辺りには来るんじゃないぞ」
「できるだけ努力をします」
「おい」
キットは、笑顔で返事しました。
その様子に、男は呆れています。
「次も俺と出会えるとは限らないぞ」
「その時は、自力で対処します」
「……勝手にしろ」
「それでは」
男は、キットに興味がなくなったのか、定位置に戻って行きました。
キットも、その位置から移動を開始しました。
表通りを避けて、脇道を進んで行きます。
ソフィーが次の目的地を聞きます。
「次は、危なくないんでしょうね?」
「まぁ、ある意味危ないかな」
「あんたね……」
「まぁ、安心してよ」
ソフィーが、呆れていると目的地に近づいて来ます。
それは、街から出る通り門でした。
「もしかして、街の外にでるの?」
「うん」
「大丈夫なの? 主に後ろのリュック」
「まぁ、見ててよ」
そう言って、キットは門に近づきます。
そして、受付の兵士がキットに気付くと。
「そこで止まれ!」
キットを止めて言います。
その様子にソフィーがまたもや焦ります。
(どうするのよ!)
ソフィーが焦ってキットを見ると、キットの顔が不機嫌顔になっています。
「なんすか? 急いでいるんだけど」
(って態度悪!)
キットは兵士に対して、先ほどとは違う言葉遣いを使います。
そんな兵士は、キットに言います。
「街を出るなら荷物検査を受けてもらう」
(やっぱり……)
「え~……勘弁してくれよ」
兵士が、キットに近づいてリュックの中身を出すように言います。
しかし、キットはその兵士に、そっと囁きます。
「ねぇ、見逃してくれませんか?」
「駄目だな。規則なんでね」
「はぁ……お望みは?」
(お望み? まさか、賄賂?!)
そのキットの言葉に、ソフィーが驚いていると、兵士の態度が変化します。
「そうだな。二日酔いの薬が無くなったからあれを貰おうか」
「はい?! この前与えたばかりでしょ! もう使い切ったの?」
「いや~あれが中々良くてな~」
(ナニコレ……?)
キットと兵士が仲良く会話しているのを見て、ソフィーが困惑しています。
そんな様子を知らず、2人の会話は続きます。
「いっその事、自分で作ったらどうですか?」
「嫌だよ。ようやく煩い婆から逃げたのに、同じ事するなんて」
「はぁ……二日酔いの薬ですね。わかりましたよ」
「お、悪いね♪」
そう言って、兵士はキットに道を譲ります。
キットはそれに従って、通ります。
「明日、通る時に渡しますね~」
「おう、頼むわ~」
キットは、荷物検査をすり抜けて、街の外に出ることが出来ました。