DQM 異世界に転生したので最強のモンスター達を作って生きていく(準備編 作:雨宮南雲
「ついたぜ」
「ここは……」
「ちっさ」
スラきちの案内でついた場所は、小屋の後ろに牧草だけの狭い囲いがされている小さな牧場でした。
「何処まで案内するかと思えば、かなり遠くてしかも小さいし、てか、モンスターの姿も見えないんだけど。本当にやってるの?」
「やってるよ! ちょっと色々事情があるだけで……」
「2人(?)共落ち着いて」
ソフィーとスラきちの口論をキットが止めようとした時、別の所から声が聞こえました。
「スラきち! どこに行ってたの?!」
「お、エレナ。ただいまー」
「ただいまーって、仕事ほっぽり出して何してたのよ!」
エレナと呼ばれた女性は、スラきちを掴んでお仕置きなのか、口を横に引っ張ります。
「いでででで。はあひてふれ」
「いつもいつも、ふらふらどっかに行って! 今日は許さないわよ!」
「ほめん! ほめん!」
その光景をいつまでも見てるわけには行かないのでキットは声を掛けます。
「あの~?」
「はい? ……えっとこんにちは。ボク迷子? 親御さんは?」
「迷子じゃないわよ」
ソフィーが訂正します。
一瞬気が緩んだのかその隙に、スラきちがエレナに説明します。
「エレナ、よろこべ! 新しいモンスターマスターだぞ!」
「え? こちらの女性が?」
「私は違うわ。マスターはこっち」
ソフィーがキットの方を指差すとエレナは声を出します。
「へ?」
「初めまして、キットと申します。まだ、モンスターの1匹もいない見習いですが、モンスターマスターを目指しています」
キットの自己紹介を聞いてエレナは理解したのか、改めて挨拶をします。
「は、初めまして! このアドロフ牧場を経営しているエレナって言います! よろしくお願いします!」
「あ、はい」
「とりあえず、立ち話もなんですから中へどうぞ!」
キット達は、エレナに促されるまま小屋に入るのでした。
「なるほど、大体の事情は分かりました」
キット達は、小屋に案内されて飲み物(水)を貰った後、自分たちの状況をエレナに説明しました。
「私達の牧場を利用してくれるのは大歓迎なのですが……」
「何か問題があるのかしら?」
「はい。キットさんはモンスターを1匹も仲間にしてないんですよね?」
「そうですね」
「それだと、貴方が本当にマスターと証明できないので、もしかしたら登録の時に断られてしまうかもしれません」
エレナが残念そうな顔で説明します。
「私の方で用意できれば良いのですが、牧場の方はその……」
「1匹もモンスター居なかったわね」
「すみません……」
ソフィーの指摘にエレナが頭を下げます。
それを見たスラきちが怒りを露わにして言います。
「エレナは悪くないぞ! 悪いのはあいつが!」
「スラきち!」
説明しようとしたスラきちをエレナが制止します。
それを見て、キットが話します。
「そちらさんの事情は良いとして、とりあえず、牧場の利用は大丈夫なんですね?」
「あ、はい」
「モンスターの方は……ソフィーをモンスターと言い張ればいけるかな?」
「ちょっと?!」
「さすがに無理があるかと……」
3人が頭を悩ませていると、スラきちが言います。
「それなら問題ないぜ! 俺が一時的に仲間になるぜ!」
「スラきち?!」
「エレナ。これはチャンスだ。牧場を存続させたいんだろ?」
「それは、でも……」
スラきちの提案に、エレナが不安がります。
しかし、スラきちは自信を持って自分の考えを話します。
「俺の本能が言っている。エレナと違って、キットは本当にモンスターマスターだ」
「本当なの? スラきち」
「おうよ! ってことでキット。俺が手伝ってやるぜ!」
スラきちの提案に、キットは笑顔で答えます。
「こちらとしては願ったり叶ったりだよ。お願いするよ」
「よっしゃ! これからよろしくな!」
スライムのスラきちが仲間になった。
「それじゃ早速行こうぜ!」
「ちょっと、先に行くんじゃないわよ!」
意気揚々と出て行くスラきち、それを追いかけるソフィー。
そんな2匹の後を追いかけようと、キットは椅子から立ち上がったところでエレナに話しかけられます。
「あのキットさん」
「はい?」
「スラきちのことよろしくお願いします」
「こちらも、これからよろしくお願いします」
お互いにお辞儀をした後、キットは登録をするために闘技場に向かいます。
闘技場に着いたキット達は、マッチョマンの前に来ました。
スラきちは少し離れたところで待っています。
「あらん☆ 結構早かったわね?」
「そうかしら?」
「後2日か3日かかると思ったからね☆」
マッチョマンは驚きつつ、先ほどの書類を渡します。
「それじゃ、ここに続きを書いてもらおうかしら?」
「わかりました」
キットは、牧場の欄にアドロフ牧場の名前を書きます。
書き終えたのを見てマッチョマンに書類を渡します。
「これで登録完了ですか?」
「慌てないの。これから説明するんだから☆」
「説明?」
マッチョマンはそう言って1枚の地図を取り出しました。
「これはね、この国の地図よ☆ 貴重だからあげれないからね☆」
「はい」
「それで、ここが今私たちがいる闘技場よ☆」
マッチョマンが中心のやや下の闘技場を指で示した後、そのまま南東の方の小さな場所を示します。
「ここから南東に小さな建物があるのよ」
「山ギリギリの近くですね」
「そうよ☆ そして、その建物の中に下に降りる階段があるの」
「階段ですか」
「その階段を降りるとね、洞窟になっていて、なんとモンスターがいるのよ!」
マッチョマンの説明に、キットは気づきます。
「もしかして、その洞窟の奥に行って、何かしらの証みたいなのを取ってこいって事ですか?」
「正解! そのとおりよ☆」
キットの答えにマッチョマンは大きく丸を作ります。
ソフィーが続きの答えを言います。
「それで登録完了ってわけね」
「残念! でも、半分正解よ☆」
「はい?!」
ソフィーの答えに、マッチョマンは三角します。
そして、続きを説明します。
「その証を持ってきても仮登録みたいなものよ☆」
「仮ってことは、さらに次があるんですか」
「そうよ☆ その続きは証を持ってきてから説明するわ☆」
「めんどくさいわね……」
ソフィーがうんざりした表情で喋ります。
それを聞いたマッチョマンが、笑顔で答えます。
「モンスターマスターは、とても大変で、とても責任ある職業なのよ。お嬢さん」
「へ?」
マッチョマンの声に、ソフィーが少したじろぎます。
「それを、簡単な書類審査だけで通してしまったら、それこそモンスターと人間の両方が危ないのよ」
「あ、はい」
「だから、私達はちゃんと審査をして、適性を見極めなきゃいけないの。わかってくれるかしら?」
「はい、ごめんなさい。生意気言ってすいません」
マッチョマンの威圧の前に、ソフィーは謝ってしまいました。
「わかってくれれば良いのよ。ごめんなさいね☆ 怖がらせちゃったかしら?」
「いえ、彼女と僕も、貴方がこの仕事に誇りを持ってる事を理解しました」
「はい。大変よく分かりました」
「そう? それじゃ、建物には警備している兵士がいるから、コレを渡すと通してくれるわ☆」
マッチョマンが、結ばれた羊皮紙をキットに渡します。
「気を付けてらっしゃいね☆」
「では、行ってきます」
キットはソフィーを連れて、スラきちの待っている場所に向かいます。
静かなソフィーに、一応声を掛けます。
「大丈夫?」
「すっごい怖かった……」
よく見ればカタカタと震えています。
一部始終を見ていたスラきちが声を掛けます。
「あのマッチョの人間、すげぇな」
「そんなに?」
「離れていたけどこっちにまで威圧が飛んできたから」
キットも先ほどの事を思い出して震えます。
そして、次の目標をスラきちに説明します。
「とりあえず、南東の建物から証を持ってくれば、最初の試験は合格みたいだ」
「最初って事は、次があるのか?」
「その次は、証を持ってきてから説明してくれるみたい」
「なんだそりゃ、めんど「それ以上は駄目!」
ソフィーと同じことを言いそうになったスラきちを止めます。
卒然に大声にびっくりしたスラきちとキットが説明します。
「さっき同じこと言って、あの受付の人に怒られてた」
「ああ、なるほど……」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
理解したスラきちはそれ以上何も言いません。
キット達は、ソフィーの謝罪を聞きながら建物を目指して移動を始めました。
次回、ようやく戦闘が始まります