毒殺された脳筋マーシャルのやり直し~義兄と義妹が幸せになるため、タイムリープして生き残る道を探す~   作:わんた

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第11話 巡回していて気になったことは?

 朝食を終えると午前中の政務を行うことにした。

 

 午後には冒険者ギルドへ向かうため、仕事を効率よくこなしていかなければいけない。

 

 領内の税収確認や罪人への判決、魔物退治の状況把握など、やることは山のようにある。デスクの上に高くつまれた羊皮紙を本日中に処理するのは不可能だ。優先度の高い仕事を選んで判断していく。

 

 仕事を進めていく中で、一つ気になる報告書があった。

 

 他領から冒険者の流入が増えているといった内容である。三週間ほど前から徐々に増加し、今は普段の四倍ぐらいの冒険者がブラデンク辺境に来ているらしいのだ。

 

 金の鉱山が領内にあると噂が流れて、一山当てようとした人たちが冒険者を派遣したからだろうか。これほど多くの冒険者が来ているのであれば宿の空きはほとんどないはず。乱暴者が多いので治安は悪化しているかもしれない。

 

「トンケルスを呼んでこい」

「かしこまりました」

 

 執務室で待機しているユリアに命令をだしてから、犯罪事件の報告書を見ていく。

 

 やはり暴力事件の件数が最近になって急増している。次期当主として父から過去の数字を教えてもらっていたこともあり、すぐ異変に気づけた。領内に小さいが確実に変化は起きている。

 

 冒険者が増えた程度で領内が揺らぐほどブラデンク辺境は脆弱でない。宿や治安の問題はあるが、すぐに対処は出来る。

 

「トンケルス様がおこしになりました」

「入れ」

 

 ドア越しからユリアの声がしたので入室の許可を出すと、若い騎士が入ってきた。ブレストプレートとガントレット、鉄製のブーツを身につけており、腰には片手剣がぶら下がっている。騎士としては標準的な装備だ。

 

 青い長髪で見た目麗しい。体の線は細く見えるが、しっかりと筋肉が付いているので実力はある。オーラをまとって戦うことも出来るため、新人の中でも有力な男だ。

 

「ご用があると聞いたのですが」

「巡回業務をしているお前に聞きたいことがある」

 

 新人の騎士は町の巡回業務が義務づけられている。突発的なトラブル対応、住民の生活ぶりを理解、地味な仕事を遂行する忍耐力など、最初に身につけて欲しい能力や知識を入れるのに便利なので、我が家の伝統として長く続いていた。

 

 新人の中でも特にトンケルスは非常に真面目で観察力があるため、些細な変化にも気づいているだろうと思い呼び寄せたのだ。

 

「巡回していて気になったことは?」

「……冒険者による暴力事件が増えたことですかね」

 

 数秒考え込んだトンケルスは、俺が予想していた通りの内容を伝えた。書類だけではなく現場でも異変を感じ取っているようだ。

 

「理由は分かるか?」

「数週間前から冒険者の数が増えています。商人も同じく増えているようなので、人口の増加が原因かと」

「宿の数は足りているのか? 一時的に人口が急増しているのであれば、寝る場所は足りないだろ」

「いえ、宿の数は足りています。路上で寝るような冒険者はでていません」

 

 現場で働いている騎士が気づくほど、冒険者や商人の数が増えているのだ。本来であれば宿が足りないという問題が発生しなければおかしい。だがトンケルスは、宿の数は問題ないと断言したのだ。

 

 俺の予想と異なる結果に驚き、同時に興味を引かれる。

 

「なぜだ?」

「領地に入った冒険者たちは、大量の食料と水を購入して魔の森で滞在しているからです」

 

 魔物の素材や貴重な薬草を目当てに魔の森に滞在する冒険者はいたが、あまりにも危険なので、よほどのことがない限りやらなかった。仮に必魔の森に数日滞在するのであれば、魔物そして魔族を刺激しないよう少人数でおこなうのが常識である。

 

 金の鉱山があるという噂が流れてはいるが、常識を破って多くの冒険者が偶然にも魔の森に長く滞在する選択をとるとは思えない。

 

 絶対、冒険者に命令を下しているヤツがいる。

 

 大量の金をばらまいてバラバラに冒険者を動かしているように見せ、魔の森に滞在させているのだ。

 

「領内にいる冒険者の数は、間違いなく増えているんだよな?」

「冒険者ギルドに直接確認したので間違いありません」

 

 武器を持ち、戦いの技術を習得している冒険者の人数は常に把握するようにしている。俺らが細かく管理するのはコスト面からできないので、具体的な人数を知りたいときは冒険者ギルドに聞き込みをしていた。

 

 騎士の質問に対して冒険者ギルド側も隠し事はしないだろうからな。

 

 金の鉱山の噂、冒険者の集団行動、ストークの協力者。

 

 この三つを別に出来事だとは思えない。調べを進めていけば同一人物にたどり着くだろう。

 

「協力者か……」

 

 ストークの婚約話を拒否しなければ、こうやって表に出て動き出すことはなかっただろう。恐らく前回の人生では、ナターシャとの婚約成立をきっかけに俺や父に気づかれないよう、裏で動いていたはず。それこそ、毒殺にも関わっていただろう。

 

 海運事業の立ち上げ、さらに大勢の冒険者を動かし、裏工作に長け、多額の借金返済の肩代わりが出来る人物。それがブラデンク家を狙っているかもしれない。

 

 控えめに言って最悪だな。

 必ず排除してやる。

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