毒殺された脳筋マーシャルのやり直し~義兄と義妹が幸せになるため、タイムリープして生き残る道を探す~   作:わんた

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第13話 妹は元気か?

 その後はナターシャとたわいのない話をしていたら、すぐ冒険者ギルドについてしまった。

 

 御者がドアを開けたので先に俺が降りる。

 

 周囲を見渡すと武器を持った集団が多数いるが、冒険者ギルドの前なので当然だろう。怪しい人物はいないな。

 

 安全を確認したので、ナターシャを馬車から降ろすと建物の中に入る。

 

 汗とホコリ、血や男の臭いが混ざり合った最悪の空気が歓迎してくれた。こんな所に通っている冒険者どもは慣れているのかもしれないが、俺には少々キツい。ということは、貴族の子女として育てられたナターシャには過酷な環境となるだろう。

 

「くさいーーー!」

 

 素が出たな。ナターシャが鼻をつまみながら叫んでいた。

 

 父が見たら説教されるかもしれないが俺は違う。甘やかし担当なので何も言わない。恨まれ役は親の務めだからな。

 

「辛かったらそこに居て良いぞ」

「そうします~~」

 

 ナターシャは護衛の二人に任せると、冒険者ギルドの奥へ進む。貴族に絡んでくるようなバカはいない。受付の近くに知り合いがいた。

 

「マーシャル様、どうしてここに?」

 

 隠し鉱山で働くゴーレムを作っている錬金術師のピーテルだ。普段は屋敷内にある専用の研究室にこもっているのだが。俺の方こそ、どうしてここに、という疑問が浮かぶ。

 

「それはこっちのセリフだ。外出許可は取っているのか?」

 

 ピーテルは我が家の秘匿情報を扱っている重要人物である。大金を支払い貴重なアイテムを渡す代わりに、行動には強い制限がかかっている。屋敷内ですら自由に歩けないほどだ。

 

 外出なんて特別な理由がない限り、絶対に許されない。

 

「ご当主様に許可をいただいております」

「外出の理由は?」

「故郷にいる妹への手紙を出しただけです」

 

 そういえば、雇う際の条件として月に一回、妹に手紙を出してよいと許可していたな。昔に約束したことなので忘れていた。ピーテルの理由は正当なもので俺が避難できることではないだろう。

 

 手紙の内容は事前に確認し、さらにギルドから領外へ出す前にも確認しているので情報が漏洩することはない。秘匿情報は維持できている。

 

「妹は元気か?」

「ええ。元気なようで今年結婚するようです」

「もうそんな歳か」

「お腹にの中に子供がいるみたいですし、これからが楽しみです」

 

 嬉しそうに笑っているが、ピーテルが妹や将来生まれてくる子供と会うことはない。機密情報を抱えている男を遠出なんてさせられないからな。

 

「それは楽しみだ。俺の方からもお祝いの品は用意しておく」

「ありがとうございます」

 

 ピーテルが礼儀正しく頭を下げたので肩を軽く叩いてから立ち去り、受付のカウンターの前に立つ。

 

「緊急の要件だ。ギルド長に会いたい」

「すぐに呼び出します」

「いや。俺が直接行く。ギルド長室にいるか?」

「この時間あら間違いなく」

 

 だろうな。だから午後に来たんだ。

 

 ギルド嬢の一人が慌てて階段を上って行く姿が見えた。先触れとして俺の来訪を知らせに行ったんだろう。彼女の努力を無駄にしてはいけないので、あえてゆっくりと進んで俺も二階に行く。

 

 調度品がない質素な廊下を歩くと、先ほどのギルド嬢とすれ違った。

 

 ギルド長のイスカリに話が通ったのであればゆっくり歩く必要はない。いつものスピードに戻して歩き続ける。すぐにギルド長室の前に着いたので、ノックなんかせずにドアを思いっきり開く。

 

 部屋の奥にはデスクがあり手前にはソファが二つ。来客用なので革張りで質は良い。この部屋には誰もいないので、視線を右側に向ける。仮眠室に続くドアがある。

 

「相変わらず乱暴な来訪だな」

 

 あくびをしながらドアが開くと、仮眠室から眠そうにしているイスカリが出てきた。

 

 目に隈があるので徹夜続きの仕事があったんだろう。

 

「元冒険者なんだから細かいこと気にすんな」

「貴族のクセに大雑把すぎるんだよ」

 

 荒っぽい口調なのは、俺たちが友人だからである。

 二人しかいないときはこんな風に気楽な会話をするのだが、今日ばかりは例外だ。

 

 勝手にソファへ座ると要件を切り出す。

 

「大量の冒険者どもが魔の森で遊んでいるみたいだな。理由はなんだ?」

「知っているクセに聞くなよ」

 

 立ったまま、イスカリはタバコに火を付けて吸い出した。ソファに座ることはなく壁により掛かっている。

 

 俺は質問に答えろと睨み続けた。

 

「金の鉱山があるって噂に踊らされているのさ」

「ほぅ。そんなものが魔の森にあるのか。是非とも手に入れたいな」

 

 噂が本当ならブラデンク家の物にするとメッセージを伝え、既に金の鉱山を手に入れていることは隠す。

 

 バレないよう、慎重かつ大胆に動くぞ。

 

「そう思うなら、お前も愚か者になって騎士団を派遣すればいい」

「イスカリは金の鉱山はないと思っているのか」

「仮に金の鉱山が見つかっても魔族の襲撃を気にして、まともに採掘なんてできないだろ。興味ないな」

 

 魔族は他の種族をオモチャのようにイジるのが大好きだからな。魔の森に集団で入れば、すぐに見つかり拷問されてしまうだろう。人を使った発掘はイスカリの言う通り不可能で、だからこそ、ブラデンク家はゴーレムを使うことによって問題を解決させたのだ。

 

「異論はない。俺も同じ意見だ」

 

 真っ当な回答で違和感はないのだが、だかこそイスカリが嘘をついているんじゃないかって気になってしまう。ただの直感でしかないのだが、意外と当たるんだよな。

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