毒殺された脳筋マーシャルのやり直し~義兄と義妹が幸せになるため、タイムリープして生き残る道を探す~   作:わんた

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第24話 それは許されない

「魔族が集団で襲うだと?」

「嘘ではございません! 本当に……ガハッ、ガハッ、ゴフッ」

 

 クルードは咳とともに口から血を吐き出した。普通に話していたので忘れていたが死にかけだったな。真偽の確認は後回しにて必要な情報を集めることに注力しよう。

 

 咳が止まるのを待ってから質問を続ける。

 

「父様は魔族三体に殺されたのか?」

「いえ。多大な犠牲は出ましたが何とか倒せました」

 

 さすが父だな。魔族三体と戦っても勝てるとは。仲間の騎士がいても普通はできないぞ。

 

「ですが、その後に大きな問題が……ゴフッ」

 

 大きな血の塊を吐いた。こういった人を何度も見てきたので分かるのだが、クルードはもうすぐ死ぬ。医者がどんなに優秀だったとしても助かりはしないだろう。

 

「戦いが終わった直後に……植物を扱うスライム型の魔族の襲撃があり……ご当主様は…………殺されました…………」

 

 スライムの魔族とは、俺が取り逃がしたプルップのことだろう。重傷を負わせたのでもう二度と、こっちの方に近寄ってこないと思ったのだが。まさか復讐しにくるとはな。

 

「スライム……魔族……村と街を襲い…………気をつけてくだ……さ…………い」

 

 最後の力を振り絞ってクルードが重要なことを伝えると、目から光が失われた。全身から力が抜けている。

 

 最後まで職務を全うした素晴らしい騎士だったな。

 

 そっと瞼に手を当てると目を閉じさせた。

 

「マーシャル様……」

 

 ローバーが心配そうな声を出していた。騎士の死なんて何度も見てきたんだぞ。この程度で俺が傷つくはずない。無駄死にさせないために、今はやるべきことをやる。ただそれだけだ。

 

「スライム型の魔族が率いる魔物が街を襲ってくるはずだ。準備を進める」

 

 俺にケンカを売るなんて良い度胸だ。良いだろう。お前の首を取って父の墓に捧げてやる。

 

「冒険者ギルドに緊急依頼を出せ。勝つためなら金は惜しまない。好きなだけばらまけ」

 

 この戦いは絶対に負けられない。

 ローバーにも俺の考えは伝わったことだろう。

 

「住民の避難はどうされますか?」

「どうせ逃げ場なんてない。襲撃があることだけ伝えて、後は好きにさせろ」

 

 全員を収容できる避難場所なんて存在しない。街の外に出ても行き先のないヤツらが大半なので、強制させなくても戦いを手伝うだろう。

 

「かしこまりました。すぐに手配いたします」

「頼んだぞ」

 

 命令を出し終えると、ローバーに準備を任せて屋敷に戻り、ナターシャの部屋の前に立つ。ドアをノックしてから返事を待たずに開いた。

 

 部屋に入るとピンクの天蓋のついたベッドが目に入る。数人寝られるほどデカい。枕元には動物のぬいぐるみがあって可愛らしいな。右側の方を向けば全身鏡や化粧台があって、ナターシャは椅子に座りながらメアリーに髪を整えてもらっているところだった。

 

 近くには専属護衛の二人が暇そうにしながら絨毯の上に座っている。俺の姿を見ても怠けた姿を変えようとはしない。同僚の半数がしんだというのに。のんきなもんだな。

 

「お兄様、どうされました?」

 

 無作法な入り方をしたのに非難するような声ではない。

 むしろ歓迎してくれる雰囲気だ。

 

「父様が死んだ。犯人は冒険者ギルドで殺し損ねたプルップのようだ」

 

 ナターシャが驚きながら振り返った。メアリーの手をどけると立ち上がって俺の前に立つ。

 

「本当なのですか?」

「騎士から証言がある。間違いない」

「う、そ……どうしてこうなったの……」

 

 強いショックを受けて急に力が抜けたようだ。よろめいたので、腰に手を回して支える。

 

 そのまま抱きかかえると、ベッドの上に座らせた。

 

「プルップは父様を殺しただけじゃ満足しないみたいで、これから街を攻めに来るようだ。今は周辺の村を滅ぼしていることだろう」

「そんなっ! 領地の危機ではないですか! 助けに行かないと!」

「ダメだ。残念だが村は見捨てる」

「どうしてですかっ!」

「既に多くの騎士が死んでいるんだ。人が足りないんだよ。わかってくれ」

 

 涙を流しているナターシャの頬に触れる。

 

 温かい。肌は陶器のようにつるつるしていて、さらに弾力性もある。気持ちが良い。ずっとこのままでいたいぐらいだ。

 

「これから偵察を放って相手の戦力を確認するが、街を守り切れない可能性がある。ナターシャは王都へ避難してくれ」

「ダメです! 私もここに居ます!」

「それは俺が許さない。ナターシャは必ず生き残ってブラデク家を守るんだ」

「お兄様……」

 

 俺が死ぬ覚悟をしていると伝わったことだろう。

 

「私はブラデク家の血は流れていません。生き残るのであればお兄様が……」

「大切なのは血ではない。俺たちとの心の絆だ」

 

 血を尊ぶ貴族としてダメな発言をしている自覚はあるが気にしない。

 

 小さい頃から同じ家で過ごし、一緒に笑い、悲しみ、怒ってきたのだ。この関係を家族と言わずに何という!

 

 ナターシャはずっと前からブラデク家の一員なのであり、俺が命を賭けて守るべき存在である。誰が会っても、この気持ちは否定させない。

 

「でしたら、お兄様も逃げましょう」

「それはできない。騎士と最後まで戦う」

 

 また死んで過去に戻れる可能性はあるかもしれんが、俺はそんな不確かなものに頼らない。すがらない。犠牲になった父、そして騎士たちのために、今を精一杯生きる。

 

 その覚悟はナターシャの言葉でも揺るがない。だから逃げるつもりはないのだ。

 

「これを預ける。絶対に落とさないでくれよ」

 

 遺品として預かった父の指輪をナターシャに持たせる。これで俺が死んだとしても、正式な跡取りとして認められるだろう。

 

 もう、思い残すことは何もないな。

 

 戦いに向けて全力を尽くすぞ。

 

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