毒殺された脳筋マーシャルのやり直し~義兄と義妹が幸せになるため、タイムリープして生き残る道を探す~   作:わんた

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第26話 放てッ!!!!!

 兵に指示を出しに行ったトンケルスを見送ると、再び前を見る。

 

 目が血走ったゴブリンどもは、さきほどよりも外壁に近づいていた。

 そろそろ攻撃の準備を進めよう。

 

 振り返り城壁に集まっている兵たちを見る。

 

 正門で馬に乗って待機している騎士と歩兵、外壁の上にいる弓兵、決戦兵器を準備した魔道士、金を使ってかき集めた冒険者、それら全ての視線が集まる。俺の言葉を待っているのだ。

 

  先ずは普段、街の警備や街道を守っている兵士たちに向けてメッセージを伝えるため、大きく息を吸ってから声に魔力を乗せて叫ぶ。

 

「我々は魔族に攻め込まれている。数は五万。一方で我々の戦力は一万だ。ブラデク領ができてから二百年経つが、初めて経験する滅亡の危機と言って良いだろう。そんな状況下にも関わらず、よくぞ集まってくれた! 領地を守る兵たち、そして魔物を狩って治安を守る冒険者たちよ! 当主として感謝しているッ!」

 

 頭を下げると周囲から動揺するような声が聞こえた。

 

 少し間を開けてから顔を上げると、話を続ける。

 

「この戦いに我々が負ければ街は破壊され、家族、恋人、友人、そして隣にいる戦友は残らず死ぬ。しかも、ただ死ぬだけではない。生きたまま嬲られ、食われるのだッ!! 大切な人たちをそんな目に合わせたいか! 少なくとも俺は違うッ! 最後に訪れる死は、もっと先で、安らかなものでなければならない! 大切な人たちに、人の尊厳を踏みにじるような死を迎えさせてはいけないのだッ!」

 

 最悪と最善の死をイメージした兵たちは、仲間たちを守るためにも奮起してくれるはずだ。

 

 今は死に時ではない。最後まで生き残ろうと思ってくれれば最高だが。さて、俺の言葉はどこまで伝わっていることだろうか。

 

 兵士たちの顔を見る限りは心配する必要なさそうだが。

 

「これは大切な者を守るための戦いだ。侵略者に負けてはならないッ! 絶対に勝つぞッ!!」

 

 うぉぉおおお!! といった怒号にも似た熱のこもった声が響き渡る。空気が振動してビリビリするほどだ。

 

 守るための戦いという言葉に共感してくれたのだろう。

 

 俺たちが治めていた領地で、兵や冒険者たちは大切な人と出会い、関係を深めていたと思うと、不覚にも少し感動してしまった。

 

 戦意が急上昇している空気感をさらに高めるため、今度は騎士に向かって叫ぶ。

 

「ブラデク家に仕えている騎士たちよ! 毎日、死にたくなるほど辛い訓練をしてきたのは、今日という日の為であるッ! 魔物の数が五万でも十万でも関係ない! 死なず、休まず、殺し続ければ勝てるッ!! お前たちには、その力があるッ! 魔物の血で大地を赤く染め上げるぞッ!!」

 

 騎士たちは雄叫びを上げていた。「ぶっ殺してやるッ!」などと物騒な声を上げている。同僚をたっぷりと殺されたこともあって士気は充分だ。死んでも敵は殺すという強い意思を感じる。やはり、頼るべきは脳筋たちだな。

 

 俺だって似たようなものだ。父の無念を晴らすためなら、この体が斬り裂かれようともプルップをこの手で殺す。そう決めているのだから。

 

「俺は絶対に逃げない。大切な領民を守るため、そして父の敵を討つため、最後の一人になったとしても戦い続けるッ! 安心して付いてこい!」

 

 さて苦手な演説は終わりだ。弓兵に命令を伝えたトンケルスが戻ってきたし、ゴブリンが射程に入る。

 

 外壁の外を見ると手を上げた。

 弓兵たちが矢をつがえて号令を待つ。

 

 ギリギリと弦を引いている音を聞きながら、プルップの姿を探すが見つからなかった。どこに隠れていやがる。魔物の指揮を執っているのであれば、そろそろ姿が見えても良いはずなのだが。

 

 そういえば徒党を組んで砦を襲うような魔族らしくない作戦を使うタイプだったな。

 

 何かを狙っている。

 

 開戦直前になって嫌な予感は高まってくるが、気づくのが遅かった。考える時間が足りない。もうゴブリンが射程内に入っているのだ。

 

 攻撃を合図するために手を下ろした。

 

「放てッ!!!!!」

 

 雨のように隙間なく、矢が一斉に飛ぶ。トンケルスが指示したとおりに狙っていたようで、ゴブリンマジシャンを中心に次々と刺さり、倒れていく。

 

 ゴブリンの進行速度が明らかに遅くなる。防具を装備していないからか、予想以上の効果を発揮してくれていた。

 

 攻撃を止めて様子を見ていると、死体を乗り越えて前に進もうとするゴブリンが増えてきた。

 

 先ほどよりも密集している。

 

 そろそろだな。

 

 すっと手を上げると弓兵が矢をつがえた。

 

「放てッ!」

 

 また雨のように矢が飛んでいく。ゴブリンどもは逃げることも、防ぐこともできずに倒れていく。

 

 たった二回、矢を放っただけで多くが死んだのだ。

 しかし、まだ生き残りはいるので攻撃は継続する。

 

「うぉおおおお!!!!」

 

 兵たちの雄叫びを聞きながら、俺は見張りの兵から望遠の魔道具を奪って、ゴブリンの後方を見る。

 

 体調は三メートル近くある緑色の肌をしたオーガ、二足歩行する木の化け物であるトレントがいる数は三万万ぐらいだ。

 

 さらに十メートル近いビッグボアが一万ぐらいいる。あいつらの突進力は侮れない。下手したら外壁を破壊されてしまうだろう。しかも厄介なことに柔軟な毛や固い皮のせいで普通の矢は通らない。弓兵にとって点滴と癒える。

 

 だがな、プルップよ。遠距離攻撃の方法が弓矢しかないと思って投入してきたのであれば、甘く見すぎだぞ。

 

 二百年もの間、魔の森に隣接するこの土地を守ってきたのだ。奥の手の一つや二つあるんだ。

 

 砦や村を破壊し尽くして油断している魔物と、隠れているプルップに痛い目を見させてやる。

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