毒殺された脳筋マーシャルのやり直し~義兄と義妹が幸せになるため、タイムリープして生き残る道を探す~   作:わんた

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第29話 消し飛べ

「いいぜ。すぐ倒してやるよ」

 

 この俺ならできるッ!

 

 剣で叩ききろうと一歩踏み出すと、プルップは擬態を解いて液状になった。地面を這って移動するとトレントの死骸の下に潜り込む。

 

 こいつ! 戦うんじゃなくて時間稼ぎをするつもりか!

 

 それなら俺にだって考えはある。プルップを置き去りにして街に行けば良いのだ。

 

 戻ろうとして馬に向かって走り出す。地面から木の枝が出てきたので、急停止して後ろに下がった。

 

 積極的には攻撃しないが、嫌がらせはするのか。ムカつくが効果的なやり方だ。

 

 こんなこともあるかもと思って、街には副騎士団長のローバーを残している。戦闘能力は俺にやや劣るが、指揮能力は高いので何とかしてくれると期待するしかない。

 

 一度深く息を吸って吐いてから、プルップが潜んでいる方を見る。

 

「お前の遊びに付き合うつもりはない」

 

 魔力の体内を活性化させて、オーラに変換。体、そして刀身にまとう。愛用の剣が淡く光った。さらにオーラを込めていくと輝きは強くなっていく。

 

 これだけじゃ勝てないので、オーラに消滅の属性を付与する。これはブラデク家に代々伝わる秘術で、オーラや魔力で守られていない物体は、即座に消滅する。父から教わった技術で、使えるのは俺だけだ。

 

 俺が乗っていた馬は危険を察知して遠くに逃げだしたのにプルップは動かない。近くで様子を見ているはずなので、気づいているはずだ。徹底的に時間を稼ごうという魂胆なんだろう。

 

 甘いヤツだ。

 人間を舐め腐っていやがる。

 だから魔族は嫌いなんだよ。

 

 限界まで腰をひねりながら剣を後ろに回す。その間もオーラを刀身に注ぎながら力を溜めていった。

 

「消し飛べ」

 

 解放の瞬間だ。

 

 剣を横に振るうと刀身から光りの線が伸びて、周囲を飲み込み、消滅させていく。光りに触れた瞬間、トレントやゴーレムは風化していきボロボロと崩れる。物理的な防御は意味を成さない。消滅属性を付与させたオーラに触れれば、崩れてしまうのだから。

 

 俺を中心に光りの波が広がった結果、何も残っていない。

 

 トレントの下に隠れていたであろうプルップも巻き込まれて消滅……いや、生き残っていやがった。

 

 ぼこっと地面が盛り上がるとプルップの腕、そして頭が出る。下半身は埋まったままだ。

 

「これが奥の手? 地面に隠れただけでやり過ごせたよ」

 

 挑発する言い方だ。口論する気はないので、プルップの腕を無言で斬る。パシャリと音を立てながら落ちて水溜まりになったが、本体の方にズルズルと移動して合流しようとする。

 

 コアを壊さなければダメか。

 

 良いだろうやってやる。

 

 もう一度、刀身にオーラをまとわせてから、剣を逆手に持ってプルップに突きつけようとする。

 

 直後、地面が爆発する。

 

 俺は上空に吹き飛ばされてしまった。

 

 体勢を整えながら眼下を見ると、長い白髪で一本角のある老婆の魔族がいた。

 

 クソッ! 完全に忘れていた。

 

 プルップは普通と違って、他の魔族と協力することに!!

 

「殺せ」

 

 プルップが指示を出すと、老婆が手を上げた。光りの球体が浮かんでいる。魔力が濃縮されていて威力は高そうだ。オーラをまとった状態でどこまで耐えられるだろうか。剣で軌道を変えられればいいのだが。

 

 光りの球が高速で飛んできた。当たる直前で黒い剣に当てる。強い衝撃を受けて刀身は大きく歪んだが、なんとか耐えてくれた! 軌道を変えて受け流すことに成功する。

 

 衝撃で落下地点はズレてしまったが問題はない。

 着地と同時に反撃をする……ッ!?

 

 地上でプルップが口を開いていた。炎を吐くつもりだ!

 

 光りの球と違って受け流しは不可能である。耐えるしかない。早く落下しろと思いながらも間に合わず、炎の渦が迫ってきた。

 

『シールド』

 

 青い盾が俺の前に出ると炎を完全に防いでくれる。

 

 俺は魔法なんて使えないし、騎士も同様だ。他の兵だって街で発生している騒動に対処するので忙しく、奥地まで駆けつける余裕はないだろう。

 

 だが一人だけ、今回の戦場と関係なく、さらに魔法が使える人物を知っている。

 

「ナターシャ!! なぜここにいるッ!!」

 

 俺は領地や仲間を犠牲にしてでも逃がすと決めたのに!

 

 護衛騎士の二人は何をしていた! って、老婆の魔族と斬り合いをしているじゃないかッ! なんでお前たちまで戦っているんだよ!! せっかく生き残るチャンスを与えたんだから、一緒に逃げてろよ!!

 

「やべ。マーシャル様、マジギレっす」

「大丈夫だよ。私たちの命令権はナターシャ様にあるからっ!」

 

 二人は老婆の魔族と斬り合いながら叫んでいる。器用なヤツらだ……。

 

『シールド』の魔法で守ってもらいながら地面に着地したので、全力で走ってナターシャの隣に立つ。

 

「おまえ――」

「説教は後でお願いします! いまは聞きたくありませんーーーっ!!」

 

 耳を塞いで言われてしまったので口が止まってしまった。

 

 可愛らしい仕草に怒りが霧散していく。

 

「わかったよ。プルップをぶち殺してから、じっくりと話を聞いてもらおう」

「えーーーっ。お兄様、それ嫌です」

「……じゃ、話し合いはなしだ。さっさとあのクソ魔族を殺すか」

「そうしましょう!」

 

 一人だけだったら苦戦していたかもしれないが、ナターシャが魔法でサポートしてくれるなら勝機は充分ある。

 

 街の方も気になるし、すぐに終わらせよう。

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