毒殺された脳筋マーシャルのやり直し~義兄と義妹が幸せになるため、タイムリープして生き残る道を探す~   作:わんた

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第34話 その程度の力でワレに攻撃するとは!

「その功績を讃えるため、人間の前に姿を現した……跪けッ!」

 

 言葉に物理的な重さがある。

 

 自然と足が地面についてしまいそうになるが、全身の筋肉を稼働させて耐えた。

 

「ほぅ。耐えたか。面白い」

「グダグダ言ってないで、さっさと降りて来いよ」

 

 植物のツタによって穴の空いた体から血が流れ続けている。この体は長く保ちそうにないので、挑発でもしてすぐにでも戦いたい思って発言したのだ。

 

「人間ごときがワレの子を殺したぐらいで、同じ立場になったと勘違いしているのか? 思い上がるなッ! 小僧ッ!」

 

 ビリビリと空気が振動するほどの大声だ。

 本能が怯えているようにも感じるが、意思の力でねじ伏せる。

 

 ブラデク家に残った最後の騎士として魔族に屈するわけにはいかない。死ぬと分かっていても闘志は折れない。いや違うな。多数の屍の上に立つ俺は、折れるわけにいかないのだ。

 

 魔族ごときに頭を垂れるような無様な姿なんて見せられない!

 

 残った僅かな魔力をオーラに変換して刀身にまとわせる。消滅属性を付与させると剣を横に振るい、オーラを飛ばした。

 

「その程度の力でワレに攻撃するとは! 片腹痛いわ!」

 

 王の周辺に半透明の膜がでる。オーラが衝突するとかき消えてしまった。

 

 防御魔法か。プルップと同じ魔法型というヤツだ。相手の魔力が尽きるまで連続して攻撃したいところだが、俺の体は言うことをきかない。力が抜けて動けないのだ。

 

 膝をついてしまったが、剣を地面に突き刺して、なんとか倒れないようにした。

 

「力尽きるのを待ってやろうかと思ったが。止めた。すぐ消してやろう」

「功績を讃えにきたんじゃないのか?」

「それはもう終えた。王の仕事は終わりである。次は父として、娘の仇を討たせてもらおう」

 

 無茶苦茶なことを言いやがって! ふざけるなと反論したいところだが、真っ赤な火の玉が出現したので止まる。

 

 およそ人が使える魔力を優に超えた量が込められており、近づいただけでも肉まで焼かれて死んでしまいそうだ。

 

 そんな強力な魔法が俺に向かって放たれる。

 

 避けることも、防ぐこともできない。

 

 これが、俺の終わりか。

 

『シールドっ!』

 

 目の前に青い半透明の盾が現れ、火の玉を防いだ。小規模な爆発を起こすと、飛び散って周辺に引火する。

 

 あれを防ぐ防御魔法を人間が使えるとは!

 

 今日は驚いてばかりだな。

 

「お兄様っ! 大丈夫ですか!?」

 

 倒れそうな体を支えてくれたのはナターシャだ。

 

 こうなるのが嫌だから置いてきたのに。

 

「逃げろ。俺じゃ勝てない」

「もう一人になるのは嫌ですっ!! 一緒が良いんです!!」

 

 泣きながら懇願されてしまった。しまったな。こうなったら、ナターシャは俺の言うことを絶対に聞いてくれないぞ。

 

 俺に抱き付いて離れようとしない。

 

「まだ仲間が残っていたのか。ワレがまとめて殺してくれよう」

 

 先ほどよりも二回りもデカい火の玉が出現した。さっきの上があるのかよ……。

 

 ナターシャの『シールド』では耐えられないだろう。周囲は燃えさかっているため、逃げることも不可能だ。

 

 俺が何とかするしかない。

 

 最後の瞬間まで、愛する義妹を守らなければらぬ。

 

「俺の後ろにいけ」

 

 かすれた声でナターシャに指示を出してから、立ち上がろうとする。穴から勢いよく血が出て、視界が一瞬だけ真っ暗になった。が、何とか耐えたぞ。

 

「ブラデク家は決して魔族には屈しない」

 

 体内の魔力を必死にかき集めるが、オーラへ変換するには足りない。それでも必死に集めようと集中していると、何か掴めそうな感覚を得る。

 

 温かく、脆い、儚い存在を感じるぞ。

 

「お兄様! それはダメです!」

 

 静止する声は聞こえたが、中断するつもりはない。この存在を引き出していくと膨大な魔力、そしてオーラへ変化できるからだ。

 

 効率はものすごく良い。普通の人間じゃ扱うことさえ難しいだろうが、俺は別だ。何とかコントロールしてみせる。

 

「なんでこんな時に限って、生命属性に目覚めるんですかっ! これは命を魔力に変換する禁忌の属性ですっ! すぐに止めてくださいっ!」

 

 マイナー属性を説明する本に書いてあったな。

 

 術者の命を消費して奇跡を発動させる魔法。

 それが生命属性だ。

 

 俺が使おうとしているのは魔力変換である。手に入る魔力は適正次第で変わるらしく、一説では世界を破滅させるほどの力を艇に入れることも可能らしい。

 

 残念なことに、俺の場合はそこまでの力は感じないから、適性は高くないのだろう。

 

「何をするかと思えば、忌々しい属性に目覚めたか」

 

 王が火の玉を放った。俺は剣を振るって、刀身にたっぷりとまとわせたオーラを飛ばす。

 

 お互いがぶつかり合い、激しい爆発が発生する。

 

 相殺できたようだ。これならナターシャが逃げる時間ぐらいは……。

 

「ゴフッ、ガハッ」

「お兄様っっ!!」

 

 血を吐き出したと思ったら、地面に座り込んでいるナターシャに膝枕をされていた。

 

 時間が飛んだみたいで俺を襲っていた王の姿は見えない。

 

「何が……起こった?」

「お兄様が倒れた後、魔族は興味を失って勝手に消えてきました」

「そうか……俺は……守れたのか?」

「はい。立派に領地を守られましたよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、全身から力が抜けた。

 

 父と俺は死んでしまうが、ナターシャが残っているのであれば再興の道は残っている。

 

「辛い役目になってしまうが……後は任せた……ぞ」

「嫌です! 私はお兄様と一緒にいるんですっ!」

 

 そうは言っても、俺の命は尽きる。失血死ではない。寿命だ。何をしても避けられない運命である。

 

 意識がゆっくりと、そして確実に薄れていく。

 

 あと数十秒で俺は消えてしまうだろう。

 

「また、やり直しましょう。今度こそ一緒に幸せをつかむんですっ!」

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