トライアングル   作:ダブルシュガー

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B-2

 

海円歴1493年 ゼット9歳

 

「喜べ、ゼット。今日は待ちに待ったテストを行うぞ」

 

ああ、ついに、ついにこの日が来てしまった。

2ヶ月に一回行われる実力確認テスト。それはゼットにとって恐怖の象徴である。なにせ、毎回ろくな目に遭わない。崖から落とされたり、ライオンに追いかけ回されたり、賊の溜まり場に突貫させられたり。普段の訓練も大概鬼畜だが、テストは文字通り格が違う。よく今まで死ななかったなと思う経験ばかりで、むしろいっそ殺してくれと思う経験ばかりだ。てか、崖から落としたり、ライオンを焚き付けたりって、普通に殺人未遂だろ!訴訟を起こせば99%は勝訴できるぞ!……と一瞬思ったが、そう言えば教官は海軍の重鎮だった。きっと揉み消されているのだろう。そうに違いない。

 

「どうしたゼット?随分顔色が悪いぞ」

 

アンタのせいだよ!とは言えない。言ったらテストが重くなりそうだから。

 

「まあ、体調が悪くてもテストは手加減しないからな」

 

知ってましたよ。だから。昨日の夜何度も仮病を使うことを考えても、実行しなかったんだよ。

 

実のところ、昔一回、精神的に追い詰められた俺は病気になればテストも無くなるだろうと信じ、真夜中に滝行を行い、熱を出そうとしたことがある。結果的に俺の思惑は半分成功し、半分失敗した。つまり、熱を出すこと自体は出来たのだが、直ぐに滝行が見破られ、普通にテストを受けさせられたのだ。あの時のテストは地獄だった。熱でガンガンする頭でオオカミに追われ、マジで死ぬかと思った。それ以来テストをどう休むかではなくテストをどう切り抜けるかを考えるようになった。いや、初めからそうするべきだった。

 

「で、今日のテストは何なんですか?」

「ふふふ、それはだな」

 

ニマニマと実に楽しそうな笑みを浮かべる教官。そんなに弟子をイビるのが楽しいんだろうか?

 

「今日のテストはこれだ!」

 

ジャジャン!と一枚の紙を出す。そこにはこう書かれていた。

 

『決闘』

 

「え?決闘?」

 

まともだ。まともすぎる。どういうことだ。いや、待て!よく見れば何と決闘するか書かれてない。きっと熊とか猪とかと決闘させる気だ。

 

「一応聞きますけど、誰と決闘するんですか?」

「この写真の女だ」

 

教官は自分の胸に指を入れ、写真を取り出す。むろん、入れたと言っても文字通り皮や肉を穿ちながら突っ込んだ訳ではなく、水面に指を入れるように、すんなりと波紋を立てながら指が入り、写真が取り出された。なんかエロい。そんな煩悩を抱いていると、教官は写真を此方に投げ飛ばす。

俺は慌ててキャッチしようとして、手は空を切り、写真は地面に落ちる。修行で身体能力や反射能力は上がったが、スイッチが入らないとドジな所は変わらなかった。

俺は写真を拾い上げ、決闘相手を確認する。

 

「可愛い」

 

てっきりプロボクサーとかプロレスラーとかプロの山賊とか海賊とかを想像してたので、厳つい女が来るかと思ってたら、写真に写っていたのは自分と同じか少し上くらいの年齢の明るい茶髪の少女だった。容姿はスレンダーで、子役やモデルと言われれば信じてしまうレベルの美貌。しかし、とても強そうには見えない。そもそも戦えるのか?いや、それ以前に子供の女の子と戦うなんて出来ない!

 

「こんな普通の女の子と戦えませんよ!」

「手加減は必要ない。今のお前より強いからな」

「え?」

 

 

 

場所は移って、体育館のような場所。

白いランニングに黒いスパッツを着た少女が一人で開脚前屈をしていた。身長150cm程度で、茶色い髪を後で一つにまとめている。名前はロキシーと言うらしい。

 

「それで、その冴えなさそうな男が相手ですか?」

 

ロキシーは体を動かしながら問う。体が動く度に胸元どころかへそまで見える。俺はたちまち顔を赤くさせた。しかし、3年間露出狂もかくやという格好の教官と一緒に行動してきたため、多少の耐性はついており、いきなり顔面からダイブするなんて事はなかった。

 

「その男を倒せば父の事を教えてくれるって本当ですか?」

「え?どういうこと?これって俺のテストじゃないの?」

 

俺は聞いたが普通に無視された。なんだろう、この疎外感。

 

「ああ、二言はない。私の弟子に勝てばお前の父親の事を教えてやる」

「それならいいです。さっさと始めましょう。秒で終わらせます」

 

秒殺宣言を受けた。しかし、怒ることなく、むしろ縮み上がる体。な、なんかこの人めっちゃ強そう!

 

「じゃあ、ルールを説明する。とは言っても大したものはない。基本は何でもあり。ただし、相手を死に至らしめる攻撃、回復不能な怪我を負わせる攻撃は無しだ。では、始めろ!」

 

△△△△△△△△△△△△△△△△

 

戦いが始まってすぐ実力の差は分かった。教官が俺より強いと言っていただけあり、勝てる気が全くしない。事実俺の攻撃は一度もヒットしないが、相手の攻撃は面白いほどヒットする。顔面、腕、腹、胸、足、最後に首。

 

「ぐへ!イッテエ!」

 

強烈な手刀を受けた俺は悲鳴を上げながらも直ぐに起き上がる。それを見て相手は初めて驚きの表情を見せる。

 

「───!本当に驚くべきタフさですね。今のは確実に意識を刈り取るつもりだったのですが、ピンピンしているとは。……やれやれ何時もどんな訓練をしてるのですか貴方は?」

 

一度戦いの間隙が出来たがすぐに戦いは再開される。

 

「次はもう少し強くやりましょう。どうか死なないでください」

 

拳打の嵐。何とか捌こうとするが捌ききれない。正直勝ち目は全く無かった。しかし、諦める事はできない。男のプライドとかじゃなく、簡単に諦めたら明日の修行が殺人レベルになるからだ。だから、負けると分かっていても必死で食らい付く。そんな時だ、扉の方から会話が聞こえてきたのは。

 

「おい見たかニュース!シキとロジャーが戦ったってよ!」

「あーヤダヤダ!ロックスが死んで10年になるのに全然平和にならねえよな」

 

その会話が聞こえた瞬間、さっきまで殺意の無かった彼女の拳に明確な殺意が灯る。一体何の単語に反応したのかは分からないが、これはマズイと瞬時に悟った。

 

振り抜かれる拳。狙いは心臓。速度は先程までとは比べ物にならない。引き伸ばされた知覚の中で数多の選択が頭を過ぎるがどれを選んでも死ぬ未来しかない。

俺はとっさの直感で最適解を選ぶ。避けることも受けることも出来ないなら相討ち覚悟で一太刀浴びせる。それは戦士としての本能の発露。それを見た教官はニヤリと笑い、瞬時に二人の前まで移動すると、二人の手首を掴み取った。

 

「はい、そこまで。お前の反則敗けだ」

 

結局、勝負は相手の反則敗けで俺が勝った。終始サンドバッグ状態だった試合を勝ちと言っていいのかは分からないが、教官は機嫌が良さそうだった。その後、少女から「ついカッとなってしまいました。申し訳ありません」とやたら格式張った土下座の謝罪を受けたり、ちょっと話したり、お茶をしたりと、その日はテストの日とは思えないほど楽しい一日だった。

 

翌日

「おはようございます!」

修行場に行くと昨日会った少女が笑顔で立っていた。

「君は確か昨日の!何で此処に!?」

「今日から私も教官に修行をつけてもらうことになりました。よろしくお願いします、先輩」

「先輩?」

「はい。年齢は私が上ですが、弟子歴は先輩の方が長いですから先輩と呼ばせてもらいます」

「えええ!いいよ普通に呼び捨てで!てか、俺より強いんだから俺の方が先輩って呼ぶべきだよ!」

「いえ、そうはいきません。武道とは礼を重んじるもの。例え実力で劣っていようと年下だろうと、先達には礼を持って接するものです」

「そ、それなら仕方ないね」

ゼットは何か言おうと思ったが、鋭い眼光に臆して何も言えなかった。

こうしてゼットは新たな修行仲間を得るのだった。

 

 

 

 

余談

「ええ!教官に弟子入り!絶対にやめた方がいいよ!あの人加減を知らないんだ!俺なんて何度殺されると思ったか分からないよ!」

「あの先輩、後ろ」

「え?」

ギギギ、と後ろを向くと教官が立っていた。

「ひぃいい!!何で此処に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

△△△△△△△△△△△△△△△

 

海円歴1494年

 

film.4 覗き?冤罪?犯罪?

 

ビックタウンのある七色諸島はグランドラインでは珍しく四季がある島で、冬の平均気温は10度を下回るが、夏の平均気温は30度を越えることもある。7月中旬にもなると島の暑さは修行に支障をきたすほどになり、その日は暑さを避けるために二時間早く修行が開始された。それでも10時を回る頃には太陽も高く登り、燦々と降り注ぐ陽光は砂浜を熱し、足裏から危険な熱さを感じるほどだ。海も近いことで湿気も高く、ベタつく汗が全身を伝い、息苦しさまで感じる。三年前のゼットならこの気候条件だけでダウンしてピクリとも動けなくなっていただろうが、三年間の鬼の修行成果により、この程度の暑さでは問題にならないくらいの肉体が作られていた。

三年前と変わったのは肉体だけではない。むしろ一番大きく変わったのは周囲の関係だ。三年前は恋人はおろか、友達もおらず、とある出来事を機に父との関係も殆んど断絶してしまい、弟からも心底見下されていた。「運動も出来ない、勉強も出来ない、努力も出来ない、落ちこぼれ。同じ血を分けていると思われることすら恥ずかしい。どうせ海兵になんてなれないんだから学校なんて辞めろ」と言われるくらいに。引き籠りになったのも弟からそんな事を言われたからだ。もう何もかも嫌になり、全てから逃げ出して自分の殻に籠った。そんな時にあいつはやって来た。いきなり来た彼奴は根性を叩き直すとか言って、勝手に俺を弟子にして、それからは正に波乱万丈な日々だ。毎日朝六時に叩き起こされ、やりたくもない勉強や鬼のような鬼畜な修行をさせられて、時には森に放り投げられ、時には肉食獣に追い回され、時には不良集団と無理矢理戦わされ、文句を言えば殴られるし、逃げれば捕まえられる。逃走も反抗も出来ないので、仕方無く修行を続けていたら、少しずつ仲間が出来た。相変わらず学校には通ってないけど、一緒に修行したり、駄弁ったりできる仲間はできた。

教官の修行は鬼畜だし、正直言ってムカつくことも多いけど、何だかんだで感謝している。もしあのまま教官に会わずに、何もせずに引きこもっていたら今頃俺はどうなっていたんだろうか?それを考えると少し恐い。そんなことを朦朧とする頭でつらつらと考えていたら、

 

「時間になりました!時間になりました!時間になりました!」

 

と言う待ち望んだ機械音声が鳴り響く。

現在俺は覗きの冤罪を掛けられヤシの木のような木の枝に逆さで吊るされていたのだ。

今の音声はそのお仕置き時間が終わった合図である。

ようやっと木から解放されたゼットは大の字になって寝転がるのだった。

 

「うう、散々な目にあった……」

 

さて、何故こんなことになったかは少し前に遡る。

 

《30分前》

 

二時間早く修行を始めたので、二時間早い十時過ぎに午前の修行が終わった。

ミラの修行を受けている俺達、ゼットとロキシーとイソップ──ちなみに、イソップはロキシーが修行仲間になった半年後に仲間になった少年だ。天才狙撃手アソップの息子で、後の四皇幹部ヤソップの腹違いの弟でもある──の三人は、ミラの終了の合図を聞き、砂浜にどかっと座る。

 

「ふぅ、今日は一段と厳しかったわね」と静かに言うロキシーに、「あちー!」と胡座をかいて汗を拭うイソップ、「うう、汗、気持ち悪い…俺は早くシャワーを浴びたいよ」と泣き言を言うゼット。そして、そんなゼットの言葉にミラは「シャワーは今から私が使うからお前等は後だ」と何時もの宣告をする。

「な!またかよ!たまに位、ゼット様に先譲りやがれ!ババア!」

ミラの言葉にすかさずイソップが噛みついた。それにゼットが「俺は別に」と遠慮するのと、ミラがイソップを蹴り飛ばすのはほぼ同時だった。

「ぐは!」

「こう言うのは年功序列なんだよ。あと、ババアって言いやがったな」

「年功序列ってことは次は私?」

「はぁ、ふざけんじゃねえぞ!ロキシー!次はゼット様に決まってんだろ!」

 

イソップは昔ゼットに救われたことがあり、それ以来盲目的にゼットに忠誠を誓っていた。ゼットはもう少しフランクな友達関係を望んでいるのだが、その思いはイソップには届いていないようだ。

そして、争いよりも調和を重んじるゼットの性格に対し、ゼット第一主義のイソップは度々暴走することがあり、結果的にゼットを困らせることも多々あった。

 

「貴方こそ聞いてなかったんですか?年功序列だって言ってたでしょ!」

ロキシーは普段温厚かつ冷静で順番に拘るような人間ではないが、シャワーや御風呂に関しては話が異なる。年頃の女の子だけあってそう言ったことには煩いのだ。てか、この汗のベタベタを出来るだけ早く流したかった。

「私は13歳、貴方は12歳、貴方、私、より、年、低い」

「てめ!何だその赤ちゃん言葉は喧嘩売ってんのか!」

 

何時ものように言い争いを始めるイソップとロキシー、それをアワアワと止めに入るゼット。実に何時もの光景であった。

 

しかし、今回は問題のイソップが非常に余計なことを思い付いてしまったのである。

 

「くっそー!男女もムカつくが、あの若作りババアもムカつくぜ!毎回毎回ゼット様を待たせやがって、しかも、異様にシャワーが長げえんだよ!」

「まあまあ、俺は気にしてないよ」

「ゼット様が許しても俺は許せねえっす!くそ、何とかして一泡ふかしてやりてえ!何か良い手は…──!」

 

イソップは唐突に立ち上る。

 

「ゼット様!俺、良いこと思い付きましたよ!」

 

実に悪どい笑みを浮かべるイソップに、ゼットは物凄く嫌な予感がした。

 

「一応聞くけど、良いことって何?」

「覗きっすよ!」

「の、覗きー!」

 

思わずでかい声を出すゼットの口を慌ててイソップは塞ぐ。

 

「し!しー!声が大きいっす!聞かれたらヤバイっす!」

「い、いや、ダメだよ、イソップ。覗きなんて」

「バレなきゃ大丈夫っすよ!大体ここの野外シャワー、木の影に隠れてるだけでカーテンも何もついてないじゃないっすか!あんなん覗けって言ってるようなもんっすよ!」

「そ、それは此処がプライベートビーチだから…ってそう言う問題じゃないよ!覗きなんて絶対ダメだよ!」

「心配しすぎっすよ!昨日、すげー良い覗きポイント見つけたんすよ!じゃ、俺先に行ってますんで着いてきてください」

「あ、ちょ!」

 

足早に歩いていくイソップ。その足取りには一寸の迷いもない。しかし、根っからのチキンであるゼットは覗きなんて大それた真似が出来る筈もなく、数秒ウロウロと迷った後、イソップを止めるべく慌ててその背を追いかけるのだった。

 

しかし、この時ゼットは忘れていた。自分が普段はドがつくほどのドジで、ラッキースケベ体質であることを。

 

「ゼット様!こっちっすよ!こっち!」

「こんなやり方やっぱダメだって、うわああ!!」

「ゼット様!!」

 

焦っていたのと修行で疲れていたことが重なり、石に躓いたゼットはそのまま坂を転げ落ち、真っ逆さまにシャワーを浴びてる教官の真横に落下した。

 

「いててて……またやっちゃった……でも、修行のお陰で受け身は取れた」

 

腰を擦りながら顔を上げると、裸でシャワーの下に立ち、髪を洗う教官の姿が目に飛び込んできた。

 

「随分堂々とした覗きだな、ええ?ゼットー?」

「ひぃいい!こ、これは事故で」

「 どんな事故があればわじわざ崖の上まで登って落ちてくることがあるんだ?ええ?」

「ひぃいいいいい!」

 

ミラの蹴りが飛んでくる。

言い訳が通じる状況でもなく、そもそも言い訳を言う暇もなく、速攻で意識を刈り取られたゼットはその後、ヤシの木に30分間炎天下の中で吊るされることになる。さらに、それを無断で助けようとしたイソップも吊るされることになる。

 

「頭に血が昇る……」

「無念です!でも、ゼット様の侠気溢れる覗きは流石でした!」

 

朦朧とした意識で譫言を言うゼット。

検討外れな尊敬を向けるイソップ。

ゼットはもはや答える気にもなれなかった。

 

 

ゼットは今回の恥ずかしい覗き事件をなんとか隠し通そうと頑張ったが、結果的にそれは不可能だった。何故なら、事件の起きたその夜、ゼットの行き付けの酒場にて、ゼットのことを心酔するイソップにより、今回の事は武勇伝として語り聞かされていたからだ。

酒が入り、良い感じに酔ったイソップは正に勇者を語る義勇詩人のような誇らしげな面持ちで、身ぶり手振りを大袈裟に交えて、尊敬するゼットの偉業を飲み仲間に語り聞かせる。

 

「──俺がこそこそ覗きをしようとしていたその時!ゼット様は言った!「そんなやり方は間違ってる!俺のやり方を見ていろと!(*言ってない)」そして、オレの肩を引き止めると、今正に裸でシャワーを浴びるミラの野郎の横に飛び降りたんだ!」

「「「うおおおお!!!!」」」

 

それを聞いていた男達は酒が入っていた事もあり、一斎に沸き上がる。口々にゼットを称賛する声が上がり、楽しげにゼットを小突き回す。ゼットは必死に「いや、足が滑っただけだから!」と否定していたが、誰も聞きゃしない。そして、誰かが言った。奴は勇者だと。その言葉は不思議と煩い室内に良く響き、瞬く間にそこかしこで勇者コールが上がった。

それからしばらくの間ゼットは一部の男達から勇者と呼ばれることになったのだった。

 

 

 

 

 

余談1

ヤシの木に二人の海パン姿の少年──|一人は紫色の短髪の10歳くらいの少年で、もう一人はドレッドヘアーの黒髪に少し日焼けした肌をした12歳くらいの少年《ゼットとイソップ》──が吊り下げられていた。

 

「あ、あついー…!…死ぬー…!」

「うう、頭がくらくらするぜ……」

 

そして、その様子を木の木陰からもう一人の修行仲間のロキシーが見ている。ロキシーは当然、覗きには参加しなかったので、ヤシの木吊るされた二人を呆れた顔で見て、

 

「イソップは兎も角、ゼット先輩まで何をやってるんですか……情けない」

「面目無い」

「おい、何で俺は兎も角なんだよ!」

「日頃の行いを振り返ってください」

 

 

余談2 ゼファーとミラ

「ゼットにも友達ができたぞ。しかも、二人もだ」

「ほんとか!」

 

ミラの言葉にゼファーはパアッと顔を明るくさせる。酒が入っているのもあるだろうが、今迄で一番嬉しそうである。

 

「へへ、そっか……あいつに友達が………ちなみに、どんな奴なんだ?」

「一人はあのアソップの息子だ」

「ほお、今世紀最高の天才狙撃手と歌われる怪物の息子か。何て名前なんだ?」

「イソップだ。少しスケベな所もあるが、仲間思いの良い奴だ。父親譲りの狙撃の才も持ってるしな」

「そりゃ、将来が楽しみな若者だな。んで、もう一人は?」

「もう一人はロキシーだ。知ってるか?」

「ロキシー……どこかで………………!……まさかお前!アイツの娘か?」

顔を若干青ざめて声を小さくして聞くゼファーにミラは首肯する。

「おいおい。大丈夫なのか?」

「お前の心配は最もだが、大丈夫だ」

「はあ、ゼットが悪の道に行かなければいいが……」

 

 

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