ゲーマー兄妹がSAOに送り込まれたそうですよ? 作:ハッピー23
空白と別れて後日の事である。
そろそろキリトやアスナ、他のボス攻略に挑むβテスター、初心者《ビギナー》達が集まり出す頃だと街の中をブラブラとアルゴは彷徨いていた。
「……暇ダ」
少なくとも出来ることはあるわけで、暇だのなんだの言っているのは間違っていると理解している。そんなに暇とか言うぐらいなら、まだ未熟である《看破》の熟練度を上げるだとか、単純に自身のレベル上げをしておくべきだろう。
だが、はてさて、どうするかと、現在進行形で頭の中で迷っている振りをしながらも、自分と同じくこの街にいるプレイヤーの情報を集めたり、ボス攻略に挑つもりのない自分が、今後絶対に必要となる食糧、無難にこの層ではマイナー化されている《黒パン》を何個か購入、次いで回復に必要なポーションを買ったりとしていた。
「集いは明日な訳だし……、少しぐらい外に出てみるカ」
……いや、結局、動けば動いたでどうするって話だな、と真面目に考え出す。昨日、空白と共に入った喫茶店と思われる店の外のベンチに腰を掛けて空を見上げた。今日の天気も相も変わらず快晴……、外に出てレベル上げするには申し分、
「……ないナ。実際、ここの層でレベル上げをするにも限界に近イ。もうこの層でやり残したことはないはずだシ」
天気がこんなにもいいのに、何でテンション駄々下がりにならなければいけないのだろうか。
いや、今はデスゲーム真っ只中なのだから、テンションがどうとかぼやくのもおかしいか。と、フードを被り足を組んだ。
それに、すでに死人も出ているのは間違いはない。その現状に、たかが二ヶ月程で慣れ始め、それが当たり前と思えるように、早くもなってきているのだから、自分が怖くてしかたがない。
「……あー、駄目だ駄目ダ!同情とかそんなものこの世界に必要なイ。そんな暇があれば少しでも情報収集ダ」
ため息後、ネガティブ思考を振り払いバッと立ち上がった。
「……ん?あれハ」
そして、同時にアルゴの視界の中に、待ってましたと言わんばかりのタイミングで見知った顔が横切った。
「キー坊にアーちゃん……あれはベル?」
キリトとアスナと並び、その横にはベータテスト時から知り合っていたベル?という青年も確認した。実際のところ、βテストの時と異なり姿が変わっているために、本当にベルなのかどうかは分からないが、歩き方や相手との接し方等からベルだと推測した。
そして、ベルと思われる人物の横には、大きなリュックを背負った少女がいるが、アスナと同じく初心者の連れだろうとそこで観察を止めた。
「……たまには遊び心も必要だよナ」
アルゴは標的の誰にも気づかれぬよう、後ろから忍び寄ることにした。
アルゴが後ろから接近してる事に気づかぬ四人は、とりあえず、と今後の予定について話し合っていた。
「任せる……私はどうすればいいとかわからないし」
「そうだな。まずはアイテムの補充でもするか。特にあんたは無理しすぎだったしな。ろくにポーションや食糧も買ってないだろ?」
アスナは少しキリトの事を睨み付けたが、訳あって彼には助けられた恩?があり、キリトの言うことは正しいと嫌々ながらも理解してるゆえに渋々と頷いた。
「それと、念のために武器もストックしておくべきてしょう。いくら強化をしているとはいえ、ストックしておいて損はないでしょうし」
そして、次にリリの意見を取り入れアイテムと武器のストックを買うことに決めた。
「確か、広場へ向かえば店があったよね
と、ベルがキリトに問い掛けた瞬間、
「どこに行くんだイ?よければオレっちも仲間に入れてはもらえないだろうカ」
リリ以外は聞き慣れた声に驚き、一斉に振り向いた。が、遅かったのである。
すでに三人の中の一人に標的を絞ってアルゴは飛び付いていた。
「やぁアーちゃんおひサー!」
「え、ちょっ!?」
抵抗も虚しく、アスナはアルゴに押し倒された。
「キー坊、ベルも久しぶりだナ」
どっこいせ、と何事もなかったように立ち上がり挨拶を済ませるアルゴ、そしてアルゴの手を持って一緒に立ち上がるアスナ。
「ごめんヨ。ちと、勢いよすぎタ」
「別にいいですけど、いきなり後ろから飛び付いてくるのは勘弁してもらえますか……」
それはどうしようか、考えておくヨとおどけながら軽く流すアルゴは、次にお互い自己紹介を求めた。
「オレっちは《アルゴ》。多分、キー坊やベルと一緒に行動を共にしてたなら、オレっちの事、聞いたことはあるよナ?」
「はい。仰る通りお二人からよく聞いています……。私は《リリ》と申します。気軽に呼んでくださいアルゴ様」
「ン?オレっちのこともアルゴって気軽に呼んでくれてもいいんだゾ?というよりも、呼んでくレ」
様付け恥ずかしい、とリリに言い聞かせるがベルがリリの代わりに答えた。
「アルゴさん。リリは人の名前を呼ぶときは皆そうなんですよ。もしよければ、彼女の呼びやすいよう呼ばせてあげてもらえませんか?」
「マジかヨ……。まあ、いいけどナ」
自己紹介を終え、ポーションや武器を買うために足を進め、ある程度店に近づいたところでキリトは口を開いた。
「すまんがベル。細剣使い《フェンサー》さんと先に買いに行っといてくれ」
「あれ?他に用事でもあるの?」
「少しばかりアルゴに聞いておきたいことがあるからな」
ベルはキリトの目を見るや否や、そっか、とアスナとリリを連れて先に目的の物を買いに向かった。
「で、聞きたい事ってなにかナ?」
「昨日のメールのことだが……、あれは本当なのか?」
その質問にアルゴは頷いた。
実は、空白と別れてすぐにキリトへ情報を流していた。もちろん、第一層ボスの情報ことである。
「まず間違いないヨ。これはあの『 』も同じ意見ダ」
「あの二人に会ったのか……」
「うんまぁネ。オレっちも多分、キー坊と同じ印象受けタ。なかなか面白い人達と思ったヨ」
そうか、とキリトは他の三人に視線をやる。
「……なら、いま配布してるボス攻略本について、どうするつもりなんだ?少なくても間違いを訂正しなくちゃ《鼠》の立場が悪くなるだろ?」
「今のところ、まだボスに挑む無謀なプレイヤーはいなイ。だから、明日の集いに顔を出すつもりサ」
「……なるほど。面倒な事にならなければいいんだが」
「それはオレっちも同じだヨ」
初心者の中にはβテスターの事を良く思っていないプレイヤーの方が多い。
そんな連中がいるかもしれない中に堂々と顔を出すとなると厄介ごとが起こるかもしれない。
実際のところ、自らがβテスターであると明かし、情報を提供しているアルゴは他のテスターと違い、ビギナーからも信用があるのは救いであることに間違いない。
「まあ、何を言われようが我慢するサ。オレっちだって少しでも死者を出したくないからナ」
「……流石だ。俺には真似できないよ」
二人は笑い、三人が戻ってきたところで今度は今夜の宿を探すという話になった。が、すぐにその話は終わった。
「それだったら、俺の部屋に来るか?一応、一フロア貸切で広々してるしこの人数ぐらいならなんとかなるぞ?」
この言葉で即決した。
一人だけ最初は拒否していたが《風呂》というワードに引き寄せられ全員がキリトの借りている部屋へと向かうことになったのだった。
数十分後。
何事もなくキリトの部屋に到着したメンバーは、各自ソファー、イスに座り込んだ。
「思っていたよりもキレイな部屋ですね……。これで八十コルと言うのですから驚きです」
「そうだね。いままで借りてた宿より安いし、整頓されていて居心地がいいかも」
「それに、牛乳もあるし、しかも飲み放題カ!これは売れるんじゃないかキー坊」
皆がそれぞれ感想を述べる中、キリトはアスナを浴槽に連れていきながらもアルゴの質問に答えた。
「それは無理だ。俺も試しに外に出してみたんだが、この家の中でないとすぐに腐っちまう」
そうなのか、と残念そうな声が聞こえたが今度は無視してアスナの言葉に返事をした。
「絶対に覗かないで」
彼女の目からは殺気を感じられ、
「……ハイ」
怖かった、としか言いようがなかった。
そもそも、元から覗く勇気なんてないし、あったところで覗きなんてしないのだが……。
キリトは溜め息を着くもベルやアルゴのいる居間へ行き座り込んだ。
「とにかく、今日は自由行動にするか。アイテムの補充は出来たし、明日のために一日休むのもありだろ」
「オレっちは悪いが寝させてもらうヨ。最近ろくに睡眠を取ってなかったからナ」
「僕とリリも今日はここにいようかな」
「はい。私も少し疲れてますので少々休みを頂きたいです」
結果は全員ここで一日、明日にに備えて休息をとるということに決まった。
「ところで、あの二人はいまなにやってんのかな」
そして、その後キリトは空白へメールを送ったのだった。
場所は代わり第一層迷宮区。
「んあ?キリトからメール来たぞ白」
「……なん、て?」
メールの内容は至極普通のことだった。
「いま、何してるんだ?だとよ」
「……返信任せ、た」
「んじゃ、これで」
空は包み隠さず今現在何をしているかを書き込みキリトへと返信した。
きっと、これを見れば驚くであろう。
一体誰が予測できたであろうか。
このゲームが始まって二ヶ月の間誰もが踏み入れていない領域に、たった二人で乗り込むなんて。
『ボス部屋now♪』
はてさて、キリトはどんな反応をするのだろうか、楽しみでしかたがない。