ゲーマー兄妹がSAOに送り込まれたそうですよ? 作:ハッピー23
《はじまりの街》
「なにこれ……これマジっすか?」
「……見る、限り……マジ」
テトにソードアート・オンラインの世界に送られるやいなや。いきなりログアウトできないとか、この世界で死ねば現実でも死ぬと聞かされた兄妹。
だがここで驚くことはない。理由は簡単。なんて言ったって、空白にログアウトなんて抜け口は元から存在しない。それにテトが言うには実際空たちは死ぬことがないのである。まあ、簡単にいうと、怯えず好き勝手できるチートプレイヤーに近い存在だから、である。
「……で、俺らはどうすりゃいいんだ?」
「…………知ら、ない…」
いつもと違い、質問に対して少し間があった。うん?と、気になって視線を白へ向ける空。どうやら処理に追い付いていないらしい。いつもは半眼である白の目が、完全に閉じてしまっている。まあ当然かと、溜め息しつつ空。
「……だよな。しょうがない、このチュートリアル終わったら情報収集だな。《情報屋》探すぞ」
確か鼠のアルゴ……だったよな?と互いに確認する。
デスゲー始まって早々に情報屋として動いてるかはわからんが、進めていくうちに俺たちの知っているプレイヤーになるのは間違いないし
「まあ、問題ねぇわな」
「……問題、なし…」
と、勝手に納得しつつ、今度はメールが届いてることに気づく。
「なんだこれ?えっと……」
内容はというと
その世界はどう?気に入ったかい?まあ、チュートリアル聞かされてるだけで判断できないよね(笑) by テト
と、なんかバカにされた感半端ない内容だった。
「……なんか腹立つな」
その文と睨めっこする空。と、何かに気づいた白。
「……にぃ…まだ続き…ある……」
「え?あ、本当だな」
白の指差す先に視線をやる。
そこにある文は
『ボクもこの世界にいるよ』
「テトのやつも来てるのか?」
まあ、なんとなくそんな気はしてたが、と半眼になりながら続きを読む。
『とは言っても、出会わないかもしれないけどね。だってこれは君たちとの二回目のゲームだ。当然手伝うことはできないしね♪』
「……ゲーム?」
はて?とここに来る前に何か言われたかと頭を回転させる空。
すると、ふと、この世界に来る前に聞いたテトの言葉を空白は思い出した。
『この世界で出会う仲間を死なせないこと』
「なるほど。もしかしてアレか?」
「………ん」
白の返事は即答。どうやら、白は空より早くにそこまで気づいていたらしい。流石は白と言葉には出さないが誉める空。
『ボクが勝てば一つだけ願いを叶えてもらう。君たち『 』が勝てば、君たちの願いを叶えてあげるよ♪君たちのことだ。きっとゲームに乗ってくれると信じーーー』
そして、空白はあの言葉を言う。
「盟約に誓って」『盟約に誓って♪と言っておくよ』
メールの内容は以上だった。
少し間を開けて深呼吸。息を整えスイッチを切り替える。
「……さて白よ。そろそろチュートリアルは終わりだよな」
「……ん」
そして、正面に不気味に浮かぶGM《ゲームマスター》ーー茅場 晶彦に視線を向ける。
そして一言ーーー。
「いやいやアンタ最高だよ。まともじゃない」
ヘラヘラと空。当然、空の周りにいるプレイヤーがこちらに振り向く……茅場 晶彦も含めて。
「だからこそ尊敬する。俺はここまでするゲーマーは初めて見たよ。うん、まあ当然なんだがな?」
なぜここまで平然と、いや、この状況で笑っていられるのか……。他のプレイヤーにはわからない。白以外のプレイヤーには
『……お誉ほめの言葉、有り難くいただいておこう』
「うんうん♪」
『……一応名を……いや、ここではプレイヤーネームか。教えてもらおうかな?』
「んー、別にいいよ。俺空ね」
普通に全プレイヤーに名前を公開する。もちろん、それがプレイヤーネームなんだろうと他のプレイヤー達は思うだろう。だからあえて、そして何となく
「もちろん、これはプレイヤーネームじゃないぜ?」
一瞬。静まってたかと思えたが、いまの一言でざわつき出した。聞き取れる内容は『あいつバカか!?』的なことだ。まあ、確かにバカだ。現実に帰れば、居場所探り出されて悪戯されるだろ?変にしつこいやつだっているわけだし。でも、俺達には関係ない。……だって、俺達って別世界の人間じゃん?隠していても暴露しても結局同じだ。
「そして、俺の膝に座ってる可愛い妹が」
「……白…」
「んで、俺達のプレイヤーネームはどちらも空欄な♪」
茅場すらも少し反応が遅れる。が、すぐに理解できたようだ。
「……なるほど、空と白。二人会わせて空白……だからか」
「そうそう。俺達のプレイヤーネームって知られたらさ」
「……そこ、まで…簡単に、辿り着ける……別に暴露しても…構わ、ない…」
「だよね♪だから教えてあげる」
半眼で白。いまだにヘラヘラと空。
「そして、最後に尊敬してるからこそ言っておくぞ?」
そう言った瞬間だった。
ゾクッ、そう感じられるような冷たい笑みを見せる空。先程までヘラヘラした男とは到底思えもしないほどに。そしてその男……空は言い放つ。
『このゲームをここで終わらせてやろうか?』
沈黙。
『アンタさ、いまこのプレイヤーの中に紛れ込んでるだろ?』
さらに沈黙。そりゃそうだ。いきなりこんなこと言われてもパッとわかるやつがいれば逆に驚きだ。だからこそ続けるーーー
『あれ?わかんない?わからないの?つまりだぜ?俺が言いたいのは……』
『……見つけ、出し…PK…すれば……助かる、かも?』
今度は茅場 晶彦ではなく、その他のプレイヤーへ。もちろん、助かるというのはログアウトできるかもしれないと言うこと。つまり、少しした期待を与えた。デスゲームから、ログアウトできないゲームから抜け出せるかもしれないという希望を。
突如、先程自分達が暴露った時より遥かに大きく。ゲーム内のはずなのに地面が揺れてるようにも感じられるような騒ぎが始まった。
『……なぜ私がいると?』
「え?だって何か目的があってすんだろ?人が死んでいくの見て楽しみたいだけなのか?違うだろ?てか、ゲーマーならやるっしょ?なあ白よ?」
「…当、然……」
「ほら、絶対いるだろ?てか、灯台下暗し。以外に身近にいるのが定番だぜ?」
バカげてる。なぜこの二人は根拠もないのに……。何を企んで
「ーーーって、思ってんだろ?そう、なんの根拠もないのさ。だって、ここにいる連中を疑心暗鬼にするためにデタラメいってるだけだからさ♪」
茅場 晶彦と空白以外は周りを気にし合っているためにここの会話は聞こえていない。
「なぜそんなことを?する必要があるというのか?」
「ああ、大有りさ」
「……目的、わからない…でも、何かあるから…作られた……」
「つまり、その目的とやらを達成できなくすればいいんじゃね?」
茅場は二度目の寒気に襲われる。
「そう、アンタがプレイヤーに紛れていると……連中が思い込めばどうだ?そりゃ、こんなことした主犯だ。捕まえたくなるのが道理だろ?攻略なんて後回しだ後回し」
「……捕まえ…ゲーム終、了……」
「このゲームのクリア条件は百層クリアだろ?ほら、百層行くより手っ取り早くね」
兄の空は、まあ、正直面白くなくなるけどなと、苦笑いしつつ言うが、二人の顔は何かを見透しているようだった。
「てかさ、どうするよ?結構パニクってんじゃん?もしかしたら誰も攻略しないかもよ?」
「……それか、PK…プレイヤー、減る…」
そう、これが『 』の狙い。
「なるほど……確かにこれでは、計画が潰されてしまうかもしれない」
「だからな、設定の改善を要求する」
「……一、プレイヤー…に対し、て……プレイヤーは、攻撃でき…ない」
「そして二、決闘《デュエル》はHP半分を切ったところでの終了」
少しばかり、考え込むように沈黙する。
「……いいだろう」
「よし、なら止めてやるか」
そう言う空は白を抱き上げたかと思うと見晴らしのよい台の上えと飛び乗った。
「あー、諸君!!!」
正直、ここまで大声を出すなんて思いもしなかった。こんな堂々とこんな大勢のなかで。でも、結局クリアすればお別れな訳であって、別にそう考えてみるとコミュ症とかどうでもいいわけであって……はっちゃければよくね?と、ここまでに至った。
そして、この一言
「お前らバカだろ?」
全プレイヤーの視線が空へと集まった。