ENDER LILIES×Arknights   作:偽巫女

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第一話

「検査の結果、何も異常はありませんでした。ですが、よろしければ定期的に検査を……あの……?」

 

医療オペレーターの女性からそう言われた二人――リリィと黒騎士はそうか、という感じで特に反応しなかった。検査中の二人は少々騒がしかった―リリィは楽しそうに、黒騎士は心配そうに、という違いがあった―が、その後リリィが近くの長椅子に横になって休み始めてからは、この世界に来た時と同じように寡黙になる。

 

二人は今、ロドスの移動都市にいた。

 

反応しなかったのは、それよりも聞きたいことがあったからだった。

黒騎士は医療オペレーターに話しかける。

 

「……もう一度聞くが、この大地はテラ、というのだな?」

「えっと、はい」

「死の雨や、穢者という単語に覚えはないか」

「すいません、私の記憶にはありません。多分、他の方や記録にもないかと。お力になれず……」

「いや、問題ない。そうか……」

 

黒騎士は黙り込み、考え始めた。

検査中に多少話は聞いたが、やはり、彼女らが聞き覚えが無いように、私にも聞き覚えのない単語ばかりだ。天災、鉱石病(オリパシー)……死の雨や穢者に似ているようで、どこか違う。……死の雨と、天災……どちらがマシか、などとは考えられないが……天災は対策が出来たが、死の雨はその時間も与えてくれなかった。……リリィにとっては、人のいるこちらの方がいいか……

 

そこで考えるのをやめる。それを決めるのはリリィ自身だと。

それよりも黒騎士はこれからをどうするかに悩み始めた。リリィはともかく、自分も右も左も分からない場所を旅をさせるのは、黒騎士から見れば、とてもさせたいとは思えなかった。

 

「あの……」

「なんだ?」

 

ずっと黙っていた黒騎士に、おずおずと医療オペレーターが声をかける。

 

「よろしければ、ここの案内でもどうかと……お悩み中みたいでしたので、気分転換にでも。リリィちゃんも、暇しているようですし」

 

黒騎士はリリィの方を見てみると、寝ていたはずのリリィが暇そうに足をぶらぶらさせていた。

 

「……そうだな、ついさっきに決めるのはリリィだと考えていたのに、また私が考えていた。お前がしたいように、私達はついていこう」

 

そう言って、黒騎士は光の球に戻った。リリィは椅子から下り、医療オペレーターと顔を合わせる。行きますか?という問いにリリィは首を縦に振り、答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリィは見たことのない壁や、人を見ながら医療オペレーターの後ろをついて歩く。そうして廊下を歩いていると、一つの広い場所についた。

 

「ここが食堂で、いろんな人がここでご飯を食べるの。そういえば、リリィちゃんは最近ご飯ちゃんと食べた?食べて無いなら簡単なものなら作ってもらえるけど……どうする?」

 

医療オペレーターのその言葉に少し悩み、軽く頷く。それを見た医療オペレーターは分かったと言い、ちょっと待ってねと(コック)がいるとこまで走り、少しすると何かを持って戻ってきた。

 

「はいこれ、ホットドッグだよ。あっ、リリィちゃんは食べられないものない?ごめんね、先に聞いておくべきだったね」

「……大丈夫」

 

リリィはそれを受け取り、まじまじと見つめる。多分、パンと、多分、肉。食事をしたことが無く、食べ物もほとんど見たことのないリリィにとってそれは、未知の存在だった。

見つめた後、ついにかぶりつく。リリィは目を見開き、

 

「……?」

 

頭を捻る。噛んで、噛んで、飲み込む。自身の感情に名前を付けることが出来なかった。嬉しいや、幸せに似た感情。

それを見た医療オペレーターが不安そうに

 

「美味しくなかった?」

 

とリリィに言う。

そしてリリィはその感情の名前に気付いた。

 

「おいしい……」

 

始めて放った言葉に、リリィは嬉しそうに微笑む。医療オペレーターは良かった、と安堵した表情を見せる。

 

「少し行儀が悪いけど、食べながら行こっか」

 

ホットドッグを食べながら、リリィはその言葉に頷く。

 

 

 

その後も、色々な場所をリリィは見て回った。

人々が住む区域や、花や野菜を育てる庭園。リリィ達にはよく分からない医療関係の区域など、多彩な施設を回り、リリィは楽しそうにしていた。

 

だが、とある一つの部屋を通り過ぎようとすると、足が止まった。

 

リリィは自分がなぜ止まったのかは分からない、だけど、止まらなければならないと感じた。急に後ろの気配がなくなった気付いた医療オペレーターは急ぎ足でリリィに近づき、話しかける。

 

「どうしたの?……この部屋が、気になるの?」

 

頷く。医療オペレーターはそっか、と暗い声を出す。何かを言おうとして、中々出せないようでいる。リリィは首を傾げながらも、言葉を待った。どうしても、知りたいから(知らなければならないから)

一分ほど経って、ようやく言葉が紡がれた。

 

「リリィちゃんは、リリィちゃんと一緒に保護された子を、覚えてる?」

「……うん」

「ここは、その子の部屋なの。それで……その子は、鉱石病に罹ってて……その……」

 

リリィは言葉を待った。どうしても、聞かなければならないと思ったから。

 

そして、最後に紡がれた言葉は、悲惨だった。

 

 

「……もう、長くないの」

 

 

リリィはその言葉を聞き、目を見開く。ホットドッグを食べた時とは違う感情で、その表情をする。黒騎士は光の球の状態で聞き、やはりか……と暗くも納得していた。

医療オペレーターは説明を続ける。

 

「鉱石病は、未だに治療法が無い……精々進行を遅らせる程度……でも、あの子は、もう既に遅らせることさえ意味のないところまで蝕まれてたの……」

 

その話をする医療オペレーターの拳は、強く握りしめられていた。悔しさと、悲しみ。医者である医療オペレーターは、まだ小さく、未来のある子ども達を救えない自分にその二つを感じている。

 

リリィは瞳を閉じ、何かを決心したかのように、扉の前に立つ。

そして医療オペレーターに入りたいと願った。

 

「入りたい?それは……いや……あの子は、親も、友達もいないの。だから……最期の時までには、一人ぐらい……うん、私が責任を取るから」

 

医療オペレーターは扉を開け、リリィを中へ誘う。

意を決して、リリィは中に入っていった。

 

 

「……だれ?」

 

中に入れば、すぐにそう言葉がやってきた。部屋の中は簡素な作りになっていて、ベッドと、それを隠すカーテン、小さな椅子と机、そしてタンスしかなかった。

そしてベッドには、リリィが見たことのある少女が上半身だけ起こして座っていた。

 

「……あなたは?」

「……リリィ」

 

素直に名乗るリリィに、少女はそう、と淡白に返した。

 

「何の用なの?」

 

何の用。リリィはその言葉に言葉を返せない。その代わりという風に、少女の近くに寄る。

 

「……何なの、あなた」

「……分からない」

「……変なの」

 

少女は怒りも、悲しみもない、感情が含まれない言葉を淡々と放つ。まあいいやと、少女は言葉を続ける。

 

「どうせ、わたし長く生きられないらしいし、ちょっとだけ、話に付き合ってよ」

「え……それをどこで……」

 

扉の近くに立っていた医療オペレーターがつい声を上げる。その情報は少女にとって知らないはずのものらしい。少女はそれぐらい、知ってるよと声を返した。

 

「それで、聞いてくれる?」

 

リリィは頷き、静かに話を聞き始めた。

 

「……わたしは、お母さんと、お父さんの、普通の家族だった。だったはずなんだ……白い仮面の集団に、襲われるあの時までは。急に襲われて、お父さんに逃げろって言われて……訳も分からずわたしとお母さんは逃げたの。

 

お父さんは、その時に……

 

その後は、なんとか逃げられたと思って、お母さんと一緒に抱きしめあって、泣いたの。怖いのか、悲しいのか、分かんなかったけど……

 

それで、わたしの後ろに人が迫ってることに気付かなかったの。

 

お母さんは、危ないって言って、わたしの後ろに飛び出して……肩から、血を流して……倒れて……そこからは、よく覚えてないの。白い仮面に連れてかれて、廃墟で、服を脱がされたりされかけて、急に仮面の奴らが仲間割れし始めて……そこで、隙を突いて、逃げたの。何にも食べず、何にも飲まずにね。その時に感染したみたい。

痛さとかで疲れて、倒れて……気付いたら、ここにいたの」

 

医療オペレーターはその話を聞きながら驚く。その話が本当ならば、彼女はこの短期間でどれほど蝕まれてしまったのかと。神がいるのなら問いたかった。なぜこんな試練とさえも言えないことを、この小さな少女に降り注いだのかと。

 

「……ねえ、わたしと一緒に保護されたって子、あなた?」

「……うん」

「……そっか。なんだろう、聞いてもらえてよかった。……もう、やりたいことも無いし、いいかな……もう、何もかも……」

 

 

「ほんとう?」

 

 

リリィは、そう問いかけた。まっすぐと、少女の目を合わせて。

リリィは、聞きたかった。それが、少女の本当の心なのか。

 

「な、何言って……」

「……」

 

目を泳がす少女に、静かに、何も言わずにただ、目を合わせる。

 

「……」

「ほ、ほんとうだよ……もう、いつでも死ねるよ……お母さんとお父さんに会えるから……」

「……」

「っ、ほんとうだって!怖くない……怖くないよ……死ぬのなんか……怖く……

 

 

……怖いっ……!」

 

 

少女はついにそう言葉を溢す。そして今まで出してなかった感情を、むき出し、涙を、溢れ出しながら、叫ぶように思いを吐き出す。

 

「怖いよ……!どんなに、大人ぶっても、怖いを消すことなんてできないよ!お母さんとお父さんに会えるなんて思ってもっ、そんな訳ないって分かる!でも……死ぬんだよ……わたし……ぐすっ……もうっ、逃げられないって……ていうことも、分かる……」

 

そこまで言って、膝を抱える少女。呆気にとられていた医療オペレーターは慌てて止めようとする。しかし、次の光景を見て、また動きを止めた。

 

 

リリィが、少女を抱きしめた。

 

 

優しく、慰めるように。

 

『いいのか?出来るのかは、分からないが……』

 

黒騎士の言葉に、リリィは静かに頷く。

 

『……分かった。それが、お前の願いなら……』

 

「……っ……!」

「リリィ!?」

「リリィちゃん!」

 

突然、リリィが苦しみだした。少女は、訳の分からない様子でリリィを支え、そして気付いた。

 

「腕が……!?」

 

自分の腕から生えていた石が、どんどんと小さくなっていく。その言葉を聞き、その光景を見た医療オペレーターは信じられなかった。抑制されるものはあっても、小さくなっていくことなど、一度も見たことが無かったからだ。正確には、一度目が今目の前に現れたが。

 

 

そして数秒後には、リリィは気絶し、倒れてしまった。

 

 

 

 

 

すぐさま二人の検査を始め、出てきた結果は――

 

 

 

 

 

――少女の進行が激減し、反対にリリィの体を襲っている、というものだった。




ねえ!誰か続き書かない!?文才無いのよ私!

えー、私が続きを書くとしましたら、ロドスのなんやかんやを終わらせ、最初の龍門編に入りたいと思います。え?なんで最初の場面でドクター出てきたのって?書くから……
とりあえず続けるとしたら、独自解釈、設定多めだと思われますので、ご覧になる場合は寛大な心でお願いします……
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