ENDER LILIES×Arknights   作:偽巫女

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第二話

頭から伸びている長い耳が特徴的な少女は、乱雑に書かれた手書きの報告書を読み終え、机に置く。その顔には、困惑が浮かんでいた。

 

(そんな……まさか……?)

 

今まであり得なかった、鉱石病の吸収……そして、()()

少女――アーミヤはまだ紙に書かれた文字を信じ切れていなかった。アーミヤはもう一度報告書を手に取り、読み始める。

 

数日前に行われた、未探索区域の探索。それはドクターのリハビリを兼ねたもので、大した問題も万に一つも起こるはずが無かった。だが、その一つを引き当ててしまったようだった。

数は多くないがいた、レユニオンの残党。それらは何かを追いかけ、囲んでいる様子だった。ドクターは襲われているのかもしれないと思い、制圧し、確認してみれば、いたのは少女二人と謎の騎士。

 

そこで問題があったのは―この子だけではないが―、少女の内の一人、リリィだった。

 

種族も分からない少女だったが、保護し、ロドスの案内をしていると、もう一人保護した少女の部屋に(医療オペレーターの許可があったとはいえ)入り、その少女と会話し、抱擁し、そして……苦しみ始めた。

そのすぐ後に、気絶し、少女と一緒に検査してみると、少女の進行分の鉱石病がリリィの体に移っていた。それだけでも驚くべきことだが、しかし、検査を続けた結果、もう一つの事が分かった。

 

 

リリィの鉱石病がゆっくりと、ほんの少しずつだが、無くなっている。

 

 

アーミヤは落とすように報告書を机に置く。もう既にアーミヤの脳のキャパシティは崩壊しそうだった。ドクターの救出、チェルノボーグでのレユニオンの暴動、そして、リリィのこの現象……

そして、龍門の交渉にも行かなければならない。アーミヤが多少他の同程度の少女より心が強いと言えど、流石に使命感より疲れが勝ってきていた。

 

話を戻してリリィ。報告書の出来事はつい数時間前のことだ。アーミヤは空を仰ぐ。どうすればいいんだろう、と考えてもすぐに別の考えに打ち消される。

 

間違いなくロドス以外には渡してはならない。絶対に。

 

とはいえ、一人で判断するには難しすぎる問題だった。アーミヤは一人の頼れる大人に意見を聞こうと決めた。目覚めたばかりで、いきなりこんな難しい出来事について考えさせるのは申し訳なく感じたが、記憶喪失でもなお聡明なあの人なら答えは無理でも、ヒントは貰えるかもしれないと。

 

丁度今、自由に動ける時間なため、アーミヤが向かおうとすると、ノックも無しに、勢い良く扉が開いた。その現象の犯人は、医療オペレーターのようだった。

医療オペレーターは息を切らしながら、アーミヤに伝えた。

 

 

「リリィさんが、起きました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーミヤは急いでリリィが寝ているという部屋に駆けていた。部屋に着くという時にアーミヤは人影を見つけ、足を緩めた。

それは先ほど会いに行こうとしていたドクターだった。ドクターは件の部屋の前で立っていた。

アーミヤは声をかける。

 

「ドクターも呼ばれていたんですね?」

「ああ。報告書も読ませてもらった。……まだ、よく鉱石病などの事が分かっていないとはいえ、あの子が特殊なのは理解しているつもりだ」

「はい…………急いで来てしまいましたが、何を話せばいいんでしょう……」

 

アーミヤはドクターに相談しようとしていたことを口から溢す。ドクターは考える体勢を数秒間作り、そして言葉を放つ。

 

「アーミヤはあの子達をどうしたい?」

「どうしたい……えっと、とりあえずロドスには留まっていてほしいです。もし彼女の特異性がバレてしまったら、最悪の場合、戦争が起こるかもしれません」

 

戦争。ドクターは現状の世界のことを知るため、暇があれば本や報告書を呼んでいた。それで分かるのは、一部(ほぼ全て)の国では感染者に強い差別意識があり、もしそんな国にバレてしまえば、少なくともろくなことが起きないことは分かっていた。

 

「なら、それを伝えよう。話しているうちに別の話題も出るかもしれない」

「はい。ありがとうございます、助言をしていただいて」

「これくらいしかできない。気にするな。では行こう」

「はい!」

 

アーミヤは扉を開け、入る。ドクターも続くように入っていく。

 

 

そこには、ベッドの横になっておらず、椅子に座っている白い少女と、その子の髪を熔かす二人のシスターがいた。

 

 

シスター。その肌はどちらも灰色の、例えるならゾンビのような見た目で、姉妹のように似ていた。

そして、今のロドスにはそのような者はおらず、保護の話もアーミヤは聞いていなかった。

 

「離れてください!」

 

アーミヤは右手をそのシスターに向け、いつでもアーツを発射できるようにする。

シスターはどちらもアーミヤを睨み、立って各々の獲物を構えた。鉄球に鎖が付いたモーニングスターに、小さくは決してないハンマー。

 

一触即発の状態だったが、リリィがシスターの前に立ち、首を横に振ると、シスターは頷いて光の球になった。

 

「あれは……?」

「……申し訳ない。驚かせてしまったか」

 

そう言ったのは、光の球から人型に変化した黒騎士だった。

 

「!?あなたは……まさか。申し訳ありません、突然攻撃しようとしたりしてしまって」

「いや、いい……と決めるのは彼女達だが。それで、何の用だ?」

 

アーミヤは言おうとしたことの前に、いくつかの質問を始める。

 

「報告書で、一応確認はしていましたが、そのように光の球になって、リリィさんのそばに居られるのはあなただけと……」

「私がリリィにそう助言をしたのだ。必要以上に我々のことを知らせるべきではないと」

「それは……我々が味方である可能性はまだ低いから、でしょうか」

「ああ。君は賢いようだ。手札は多い方がいい」

 

黒騎士は感心したようにそう言葉を放つ。アーミヤはおそらく教えてはくれないだろうと思いながらもう一つ質問する。

 

「……後、どれくらい居られるのですか?」

「それを教えるかどうかを決めるのはリリィだ」

 

次には二人のシスターが現れる。

 

「……えっと、この三人と、えーっと」

 

いち、に、さんと数え始めるリリィを見て黒騎士は

 

「……そうか、教えるのか」

 

と頭を撫でた。

 

「すいません、攻撃しようとしてしまって」

 

アーミヤは二人のシスターに頭を下げ、謝罪をする。シスターはアーミヤに近づき、肩をポンポンと叩く。

それを受けたアーミヤは、微笑み、ゆっくりと首を横に振るシスターを見て安堵する。

 

ドクターは静かに見守っていたのを止め、声を出した。

 

「アーミヤ。そろそろ本来の話に戻ろう。君も名乗っていないしな」

 

あ、と恥ずかしそうに頬を赤らめるアーミヤは、リリィと顔を合わせる。

 

「申し遅れました、私はアーミヤと申します。ロドス・アイランド製薬のCEOを務めています」

「しーいーおー……?」

 

リリィと黒騎士は首を捻る。それもそのはず、二人がいた場所ではCEOどころか会社なんてものは無く、争いや死の雨で進むことなく消えていった国だったからだ。リリィはともかく、長く生きてきた黒騎士でさえも知らない言葉だったからだった(もちろん、別の単語で存在していたかもしれないが)。

 

「えっと、一番偉い人の一人だと思っていただければ」

「……偉いの?」

「は、はい……一応」

 

リリィはそうなんだぐらいにしか思っていないが、アーミヤはまっすぐと目を合わせて言われたため、少し緊張したようだ。

んん、と咳払いをして、アーミヤは話を続ける。

 

「実はリリィさん達に、一つご相談があります。

 

ロドスで働いてみませんか?」

 

リリィと黒騎士は目を見合わせ、オウム返しのように「「働く?」」と呟いた。

 

「はい。リリィさんの特性が、とても珍しい……いえ、あり得ないほどのものであることは理解していますか?」

「ああ」

「そこで、ロドスで働くという名目で我々で保護したいのです。もちろん、時間はかかるかもしれませんが、家まで送ることも出来ます。……ロドスにいた方が安全だとは思いますが、強制はいたしません。どうしますか?考えるなら、部屋から出ますが……」

 

リリィは困ったように頭を捻り、黒騎士の顔を見る。助言を貰おうとしているようだ。

それを感じ取った黒騎士は目線を合わせ、優しく話しかける。

 

「……私達は旅をしている。そして行先はお前が自由に決めていいんだ。……ロドスという場所がお前に何をさせたいのかは分からない。もしかしたら、酷いことをさせるかもしれない。それでも、お前が望むのなら……」

 

それを聞いたリリィは何かを考えるように、瞳を閉じる。アーミヤ達は邪魔にならないようにゆっくりと部屋から出ようとした。

 

「アーミヤ」

 

だが、リリィの声で呼び止められる。

アーミヤは振り向き、リリィの開かれていた目を見て、聞く。

 

「どうしましたか?」

「ロドスって、何をするの?」

「そういえば、詳しいことを説明していませんでしたね。我々ロドスが掲げるのは、()()()()()。完全な治療法のない、必ず死んでしまう鉱石病の治療。現在はそれが主目的です。と言っても、研究よりその周りの解決の為に奔走する事の方が多いのが現実ですが……」

 

アーミヤは落ち込んだようにそう締めくくるが、リリィは一つの言葉に集中していた。

 

「鉱石病って、あの子の、病気……」

「あの子……一緒に保護された方なら、はい」

「……死んじゃうの?」

「……このままでは」

 

リリィはもう一度、瞳を閉じて、数秒後には開けた。

 

 

リリィは願う。誰も死なない、幸せな世界を。

リリィは想う。皆の事を。

リリィは思い出す。自身の。()を。

 

 

「私も、皆を助けたい」

 

 

リリィは頷く。かつての()の行いを思い出しながら。

 

そして、黒騎士は人知れず、悲しそうな瞳を浮かべていた。

 

アーミヤはその言葉を聞いて、嬉しそうな顔を浮かべる。目の前の少女を守れる、鉱石病の治療に近づくなど、色々な感情が浮かんでいた。

 

「分かりました。少々お待ちください、就職のための書類を持ってきますので!」

 

そう言ってアーミヤは走ってどこかへ行ってしまった。

ドクターは見送りながら、そういえばと一つの疑問が浮かび上がった。そして、その疑問を黒騎士に伝える。

 

「君達は、何処の出身だ?それで読める文字が変わるが……」

「……そういえば、リリィが案内されている時に、私も色々見たが、思えばどれも読めなかったな……」

「……まさか」

 

ドクターの懸念が当たり、書類の制作にかなりの悪戦苦闘を強いられるとは、まだ誰も知らなかった……




次回からエピソード2、相思相殺に入ると思います。できればリリィちゃんの戦闘訓練も入れたいけどいろいろバランスが悪くなるのでカットだ。そのシーンはカットか回想です。

なぜエピソード2からなのかというと、感想で
「ボス達とリリィちゃん's戦わせたらよくね?これとこれとか」
「天才かな?やりゅ~」
という感じなんですけど、途中からだといくつかのボスさんがいなくなってしまうな……どうしようかな、ってなったんです。


で、思いついたのが「穢者化させるか?」でした。


流石に人の心が無いなって思ったのと、穢者=死の雨が来てるってことなんで収拾がつかないな?ってことで止めました。
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