東方妖鳥巫女伝   作:赤バンブル

2 / 4
デビルマン漫画版を見た時の衝撃ときたら・・・・


取引

「・・・・う、うぅ。」

 

シレーヌが目を開けるとそこには見覚えのない天井が広がっていた。森にいたはずの自分がどうしてここにいるのかとかけられていた布団をどかして起き上がると隣で女性が目を閉じながら座っていた。

 

(この女が私をここに連れてきたのか?だとすればこの小娘の母親と言ったところだが・・・・なんだ?この得体に知れない気配は?まるで百の魔将軍たちの前にいるような感覚だ。あの台所で作業をしている狐の尾を持った女も少なくとも私と互角・・・いやそれ以上の力を持っているように見える。いったい何者なんだ?)

 

「・・・ん?あら、霊夢。目が覚めたのね。」

 

紫は、ちらっと眼を開けるとホッとしたように声をかけてくる。声を聴いて気付いたのか台所で作業をしていた藍も盆を持って部屋に入ってきた。

 

「目が覚めたか霊夢。いや、昨日は済まなかったな。お前の成長具合を確かめるために一人で行かせたが・・・まだ早かった。すまない。」

 

藍は、食事の載った盆を置くと申し訳なさそうな顔をして謝罪をする。シレーヌは、自分のことだと理解しながらも下手に喋れば正体がばれかねないと思い、答えるのに戸惑う。

 

「えっ、えぇ・・・・・」

 

「ダメよ、藍。霊夢は起きたばかりなんだから混乱するだけよ。悪いと思うならもう少し優しく修行させなさいな。」

 

そんな彼女に対して紫は、何故かフォローするように庇う。

 

「ですが、紫様。」

 

「今回は運が良かったけど・・・下手に急げば霊夢が命を落としていたわ。先代だって役についたのは14の時よ。霊夢はまだその半分にも行っていない。同じ感覚で修行し続けてしまったら体が壊れちゃうじゃないの。」

 

「は、はあ・・・申し訳ございません。以降は少しペースを落として行います。」

 

「う、うん。」

 

よくわからないが正体がばれるような事態は回避できたと内心ほっとする。

 

「さて、私はもう少し霊夢の傍にいたいから藍は先に屋敷に戻ってちょうだい。」

 

「よろしいのですか?霊夢の世話は私がやりますけど。」

 

「昨日の夜から帰っていないおかげで屋敷の掃除とかしていないでしょ?私は朝から食べてないからお腹空いているのよ。」

 

「あっ。」

 

「まあ、空いていた方が食事がおいしく感じられるからいいけど。帰るまでには支度しておいてちょうだい。今回は豪華にしてちょうだいね?」

 

「は・・・・はい。」

 

紫の不敵な笑みに藍は、何とも言えない表情になり、トボトボと部屋から出ていく。

 

「では、先に戻ります。霊夢、巫女の修行は今週はカリキュラムを組みなおすから動けるようになり次第自主的に行ってくれ。ただ、無茶はしないようにな。」

 

そう言うと彼女は、紫が開いた隙間の中へと入って姿を消した。

 

「やれやれ、藍も困ったものね。先代の時の経験で同じような修行をさせようとするんだから。」

 

彼女がぼやいている間シレーヌは、早く退散してくれないかと内心思っていた。

 

この女に正体がバレれば確実にやられる。

 

体力が回復していないこともあるがデーモンの姿に戻れたとしても恐らく勝負にすらならないだろう。

 

紫は、襖を占めると自分の前にまで来て頭をなでながら優しく抱きしめる。

 

「霊夢も大変よね。お母さんが亡くなってから急に巫女修行をやらされているんだもの。かわいそうにね~。」

 

「う、うん・・・・」

 

「でも、そんな貴方に憑りついて悪さをしようとしているのはどこの誰かしら?」

 

「!?」

 

その一言で全身に鳥肌が立つ。

 

シレーヌは、離れようと手から波動攻撃を放とうとするが体が思うように動かない。

 

当の紫は、彼女の顔を見ると苦笑しながら手を放す。

 

「図星のようね、別に取って食べようなんて思ってないわよ?」

 

「・・・・」

 

「霊力は霊夢とほとんど変わっていない。でも、その髪といい、中身は明らかに変わっている。どうしてこんなことになったのか教えてもらえない?乗っ取ったの?それとも・・・・殺して?」

 

物腰柔らかに質問してくるが目は笑っていない。明らかに敵意を持った眼差しだ。

 

体が万全ではない以上抵抗することすらままならない現状、抵抗しても無駄だと考えたシレーヌは、口を開いた。

 

「この体の持ち主は、私が見つけた時点で既に瀕死だった。」

 

「・・・それで?」

 

「私も重傷だったからな。生き延びるために合体して利用させてもらった。悪いが分離しろと言ってもどうすることもできん。デーモンとしての性質なんでな。殺すならさっさと殺せ。」

 

自分がまさか不動明と同じ言うことになるとは。

 

シレーヌは、目の前にいる圧倒的強者とも言える存在に諦めたように両手を上げた。

 

 

だが、紫の方は先ほどの態度と打って変わって頭を抱えていた。

 

「やっぱり・・・・陰陽玉が壊れていたから嫌な予感はしていたけど・・・それもそうね。あの子はついこの間まで普通の人間だったんですもの。服にあんな血が付いていれば普通に死んでるわよね。憑依ならともかく合体って・・・・はぁあ。」

 

彼女は、頭痛がし始めた頭を押さえながら次の質問をする。

 

「それでデーモンって言っていたけどなんなの?そんな妖怪、聞いたことないけど。」

 

「妖怪?そんなもの人間どもが考えたくだらない空想の産物だろ。我々と同じにするな。」

 

「私がその妖怪の賢者なんだけど・・・・」

 

シレーヌは、簡単にデーモンのことについて説明する。

 

デーモンは元々人間と同じ姿だったが弱肉強食の世界を生き抜くために合体能力を駆使して生き延びてきたこと。

 

太古の戦いの後に冷たい氷河の世界で眠り続けていたこと。

 

そして、現在人類から地球を奪い返そうと動いていること。

 

そして、自分がその任務達成寸前で気が付いたらこの地に来ていたことを。

 

(・・・・今の話が本当ならこの子、私よりも年上と言うことになるのよね?まあ、それはともかく合体能力ねぇ。理性がないものとなら何でも合体できるというのなら彼女が行った時点で霊夢は既に死んでいたことになる。外の世界のことに関しては特に言うつもりはないけど博麗の巫女が不在というのは流石にまずいわ。新しい巫女を用意するにしても実戦できるようになるまでの養成が間に合わないし。そもそも先代や霊夢ほどの霊力を持った輩なんて早々・・・・霊力?)

 

紫は話を聞きながら一刻も次の博麗の巫女を用意しなければと考えた矢先、シレーヌの方を再度見る。

 

確かに純粋な人間ではなくなっているが先代から受け継いでいる博麗の巫女としての素質は消えたわけではない。

 

人間を見下しているようには感じるが知性そのものはしっかりあるようだし、少なくとも厳重注意すれば妖怪のように捕食しようとはしないだろう。

 

賭けに近いが力はこちらの方が上と認識しているようなのでうまく利用できるはずだ。

 

「・・・・そういえば貴方、名前は?」

 

「シレーヌだ。」

 

「そう・・・・シレーヌ、貴方今こうして霊夢と合体して生き延びることには成功したけどそこから先は何をするつもりだったのかしら?」

 

「部下や仲間を犠牲にした以上、氷の世界には戻れないからな。もう一度、不動明に挑むつもりだ。今度こそ本当に死ぬかもしれないがこれでも私は誇り高いデーモンだ。逃げるつもりはない。」

 

「・・・正直、仲間の協力があってもこの有様なら貴方はおそらくその不動明に殺されることになるでしょうね。でも、無駄死にするのは貴方の本望ではないのでしょ?」

 

「無論だ。」

 

「なら、一つ提案・・・取引があるんだけど?」

 

「取引?」

 

「貴方は、この幻想郷を維持するための担い手の一人を奪った。本来なら厳罰としてここで始末されてもおかしくない。でも、貴方は彼女に備わっていた『博麗の巫女』としての素質を受け継いでいる。」

 

「言いたいことがあるならさっさと言え。」

 

「単刀直入に言うわ。シレーヌ、貴方がその役割を受け継ぎなさい。博麗の巫女、『博麗霊夢』として。」

 

「なんだと?」

 

彼女の言葉にシレーヌは、驚愕する。

 

普通なら言われたように殺されてもおかしくなかった。

 

それを条件付きとはいえ生かすと言うのだ。

 

「嫌だと言ったら?」

 

「ここで死んでもらうことになるわ。敵から逃げた上に見下していた存在に殺される。誇り高い貴方にとっては屈辱ではなくて?」

 

「クッ。」

 

「悪い話じゃないはずよ、さっきの行動を見ていたけど霊夢と合体した貴方は、本来の力を発揮することができなくなっている。おそらくデーモンの肉体と巫女の力が拒絶しあっているからかもしれないわ。巫女として修行をすれば制御できるようになるはず。」

 

「デーモンとしての姿にも戻れると?」

 

「それは分からない。貴方が言うにはデーモンは合体するたびに姿も変化するのでしょ?力を制御できるようになったからと言って100%元の貴女に戻れる保証はない。」

 

「つまり、奴と同類に成り果てたというわけか。」

 

「もっと前向きに考えなさい。デーモンの方が人間よりも各上だと思っているようだけど博麗の巫女はおそらく貴方が想像している以上強いのよ。そうなれば不動明を倒せる可能もなくはない。」

 

「・・・・本気で言っているのか?」

 

「先代も歴代の中でかなり優秀だったからその子である霊夢の肉体を持つ貴方もそれなりの潜在能力はあるはずよ?デーモンの力がどれだけ干渉するかは知らないけど。」

 

「・・・・」

 

「今の幻想郷は、不安定な状況にある。貴方がこの役割を引き受けるなら今回の件を不問としましょう。そして、今後の功績次第では、憎き相手である不動明を見つけ出して再戦のチャンスを与えなくもないわ。但し、そうなった場合は貴方の後任を育成してからという条件になるけど。」

 

「・・・・ゲルマー、アグウェル・・・・・カイム。」

 

「これが取引よ。今ここで決断してちょうだい。巫女を継いで苦難な道を歩みながらも再戦の機会を手にするか、名もなき妖怪としてここで死を受け入れるか。どちらの選択でも私は受け入れるわ。後は貴方次第・・・どう?」

 

紫を目の前にシレーヌは、目を閉じながら考える。

 

博麗の巫女となるということは、本来人間を滅ぼす側のデーモンの自分が守る側になることを意味する。自分たちが守った地球を怪我した憎き相手を守ると言うことは同族からしてみればデビルマンと同じ裏切り者に堕ちるということだ。かつてはデーモン族最強の女戦士とまで謳われた自分にとっては耐え難い苦痛である。

 

だが、一方で脳裏にあのデビルマンの笑い声が響いてくる。

 

勇者アモンの肉体を手に入れ、強靭な精神力で超悪魔と化したあの男に敗北した。

 

自分だけここにいると思うとカイムたちを無駄死にさせてしまったことと上司であるゼノンの期待を裏切って始末たことへの罪悪感と憎悪が強まっていった。

 

奴をこの手で葬らない以上、死んでも死にきれないと。

 

「・・・・分かった。人間共を守る側に着くことは耐え難いが、それ以上に私がこのまま無駄死にする方が許せん。その博麗の巫女とやらの役目、しばらく継いでやる。」

 

「決まりね。来週には私の式神である藍が貴方の巫女修行を始めるわ。それまでの間に貴方は完全に霊夢の仕草を覚えてちょうだい。いきなり態度が変わるとあの子も不審に思うからね。それと修行以外の行動に関しては自由にしても構わないけどここから逃げ出そうとは考えないことね。私は、いつでも貴方のことを見ているから。そんな素振りを見せれば取引を破棄したとして処分させてもらう。いいわね。」

 

「今の私では、どこへも逃げられんさ。翼を失った私では。」

 

彼女は、小さい手を握りしめながら答えた。

 

「・・・・さあ、話も終わったことだし。取り合えず食事でも摂りなさい。まずは体力を取り戻さないと。」

 

話を切り替えて紫は、藍が作った食事を目の前に置いた。

 

「一つ聞くけど貴方・・・・箸は持てるわよね?」

 

「橋?デーモンの姿なら鉄橋ぐらいは、念動力で持ち上げられるが。」

 

「・・・・・常識から教育しないとダメ見たい。」

 




自分にとってデビルマンは正直初代アニメ版のイメージが強い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。