東方妖鳥巫女伝   作:赤バンブル

3 / 4
できれば紅魔郷辺りはやってみたいと思っている。


巫女修行

一週間後、八雲藍は予定通り博麗神社にやって来た。

 

紫に注意されたこともあって今後の霊夢の教育方針を見直し、今後は基礎トレーニングを中心に妖怪退治などの実戦は自分も離れた距離から付いて行くなどできるだけ離れないように切り替えることにしていた。

 

「霊夢のことだから恐らくいつものように自主トレせずに暢気にしているだろうな。先代もそうだったがいざと言う時までやろうとしないからな。だが、あの一件で自分の未熟さも理解していないほど馬鹿ではない。私の修行も受け入れ・・・・」

 

頂上にまで上がったとき、彼女は目の前に光景を見て口を大きく開ける。

 

本殿の前では霊夢が背中に巨大な岩を背負って腕立てをしていた。

 

以前の修行でも同じようなことをしていたが子供だからという配慮で2、3キロの漬物石よりも少し大きめのサイズで済ませていた。

 

その時ですら途中でバテていたのだが今回背負っている大岩は本殿より少し小さいぐらいで普通の子供なら潰されて即死しかねないサイズだった。

 

(え、え、えっ?こ、これはいったい何が起こっているんだ!?霊夢の奴、いつの間にあんな大岩を持ち上げられるように・・・・いやいやいやいやいや、どう見ても1トンぐらいは余裕であるぞ?夢でも見ているのか!?)

 

彼女は、目を擦ってもう一度見直してみる。自分の存在に気づいたのか岩を片付けて目の前に来ていた。

 

「何しているんだ?」

 

「え・・・えっ?」

 

「今日から修行なんだろ?早く始めてくれ。」

 

「あ、あぁ・・・・コ、コホン。いつもと違って自ら進んでやるとは感心だな。」

 

動揺していることを悟られないように藍は、咳払いをして向き直る。

 

霊夢のことに関してはよく見ているつもりだ。

 

どうせ、どこかで襤褸を出すに違いない。そこを指導してまだ鍛錬が足りないと認識させればいいと考えて冷静になろうと努めていた。

 

考えてみれば彼女は、歴代で三本指の中に入るであろう実力者の先代巫女の子なのだ。

 

このぐらいできても何ら不思議ではないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、手始めに私と組手だ。病み上がりだからと言って加減するつもりはないから本気でくるんだぞ。」

 

「わかった。」

 

距離を取ると二人は、構えを取って組手を開始する。

 

初手に突っ込んでくる霊夢に対して、藍はいつものようにカウンターをかけて弾き飛ばそうとするが、彼女はガードした腕に掴まって逆上がりをするような感覚で顔に蹴りを繰り出した。

 

「うっ!」

 

リーチの短さのおかげで当たりこそしなかったが予想外の攻撃に藍は、冷や汗を掻いた。霊夢は攻撃が外れるとバク転を数回して距離を取り直し、飛び蹴りを仕掛けてくる。

 

(動きが洗練されている!?いくら成長しているとはいえ、おかしすぎるぞ?先日まで素人だった奴が急に上級者になるような感覚だぞ!?)

 

組手をしていく内に藍は、無意識に本気を出し始めていることに気づいていない。

 

もし、先日までの霊夢だったらこんなことにはならなかっただろう。むしろ本気を出させることなく力尽き、泣きながら立ち上がっていたに違いない。

 

だが、今の彼女は上級デーモンであるシレーヌだ。

 

彼女自身、太古に多くのデーモンをその手で葬って来た経験がある。

 

合体の影響で不完全になってしまったとはいえ、多くの戦闘経験と幼いながらも秘められている博麗の巫女の力が開花し始めていることもあってこの攻守抜け目のない組手を繰り広げているのである。

 

 

 

組手は30分以上続き、体力はまだ少ないシレーヌが先に倒れたが藍は、自分が知らぬ間に多量の汗を掻いていることに気づいた。

 

(まさか、霊夢相手にこんなに汗を掻くことになるとはな。思えばここ数年幻想郷は平和だったからな。感覚が鈍ってしまっているのかもしれん。私もまだまだだな。)

 

汗を拭い取ると彼女は、手を差し伸べて起こしてあげた。

 

「驚いたぞ、霊夢。まさか、私が加減をできないほどの動きをするとはな。」

 

「ハア・・・ハア・・・」

 

「休憩したら、次は勉学だ。封印術や結界の張り方を教えるからちゃんと聞くんだぞ・・・・・と言いたいが臭うな。その前に水浴びするか。私も汗掻いたし。」

 

藍は、疲れていることもあって重くなっていることも気づかずシレーヌを抱えて住居の方へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水浴びを終えると二人は着替えなおして、和室で勉学を始めた。

 

「して、この布陣を組めば妖怪を結界の中に閉じ込めることができる。だが、霊力を弱めてしまうと内側から簡単に破られてしまう。また、手練れの妖怪の中にはワザと捕まったふりをして近づいてきたところを強引に破って襲ってくることが過去の例に存在する。中には負傷して引退せざるを得ない巫女が現れたほどで」

 

「藍。」

 

「うん?」

 

「この漢字が分からない。教えてくれ。」

 

「なんだ、そこはこの間教えたはずだぞ。」

 

「忘れてしまったんだ。頼むから教えてくれ。」

 

「仕方ないな・・・」

 

一見普通に聞いているように見えるがやはり違和感がある。

 

前の霊夢なら真面目に話を聞かず、よく注意していたのが当たり前だった。

 

母親が急死したこともあるが同じぐらいの歳の子はまだ寺子屋に行かず外で遊ぶのが普通なのだから仕方ないともいえるが。

 

一方のシレーヌは、今も昔もやることは変わらない。親だろうが子だろうが弱ければ待っているのは死のみだ。デーモンの世界ではそれが当たり前で生き残るためには合体を始めとするいかなる方法でも用いる。

 

生き残るためにも今の彼女は、憎き人間が生み出したものでも覚えようと積極的に動いていた。

 

 

 

 

そうこうしている間にあっという間に時間が過ぎ、気が付けば夕方になっていた。

 

「ん?もう、こんな時間か。そろそろ夕飯の支度をしなくてはな。霊夢、何か食べたいのはあるか?」

 

「肉なら何でもいい。」

 

「・・・・お前、あの一件から逞しくなったのか、単純になったのか変わったな。前は『ナポリタン食べてみたい!』とか言っていたのに。」

 

予想していた反応と違うことに残念がりながら藍は、ある材料で簡単な料理を始める。

 

「鶏肉か。なら、照り焼きにでもするか。汁物は・・・」

 

調理をすると彼女はちゃぶ台に並べた。シレーヌは座ると箸を持って頂き始める。

 

「・・・・・」

 

「どうだ?うまいか。」

 

「うん・・・うまいと思う。」

 

(前は『おいしいよ!』って言ってくれたんだけどなぁ。余程怒っているのか、大人になったのか。)

 

食べている様子を見て藍は、少し寂しそうな顔をしながら外に出る。

 

「じゃあ、私は帰るぞ。明日も修行を行うからしっかり休むように。早く寝るんだぞ。」

 

「あぁ、気を付けて。」

 

(そこは『ばいば~い、藍姉ちゃん~。』だろ!くぅう・・・私、本当に嫌われてしまったのかもしれん。)

 

彼女は、涙目になりながら神社を後にする。

 

いなくなったのを確認するとシレーヌは、出された食事をさっさと平らげて後片付けをしてしまう。

 

「はあ。いくら体が小さくなったとはいえ、デーモンである以上エネルギーの消費が通常の人間が食べている分じゃとても足りんな。あの式神に足りないとも言えないしな。・・・・・狩りにでも行って鳥か獣でも喰うか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が沈んだ後、シレーヌは夜の狩りに出かけた。

 

紫の話では、夜は妖怪の活動が活発になるから外出を控えるように言われているがデーモンである彼女は暗闇でも視界が利く目をしているため、遭遇することなく駆けて行った。

 

しかし、肝心の獲物は見つけじまいだった。

 

「クッ、こんなに進んでも蛇の一匹すら見つからないか。途中で食べられそうな木の実はいくつか拾ったが腹の足しにはな・・・・ん?」

 

一瞬動きを止め、全身の感覚を研ぎ澄ます。

 

背後からゆっくり何かがこちらに近づいてくる。

 

今日、藍から教わった霊力の扱いを応用して拳に集中させると近づいてくる何かを待ち構える。

 

「見つけたのだ~。ねえ、貴方は食べていい人る」

 

急に目の前に現れた金髪の少女に向かって拳を振る。拳は顔面に勢いよくめり込み、少女は勢いよく吹き飛ばされ、木に激突した。

 

鼻から鼻血を出て、彼女は顔を押さえながら泣き始める。

 

「痛いのだ~。いきなり殴られたのだ~、食べちゃいけない人類だったのだ~。わ~ん~。」

 

少女が泣いている姿を見てもシレーヌは、特に気にすることなく先へ行こうとする。

 

これがデーモン同士の戦いだったら確実に死んでいた。生きているだけでもありがたいと思うべきだ。

 

そう考えながら通り過ぎようとすると彼女のお腹がギュルルとなったのが聞こえた。

 

どうやら空腹だったようだ。

 

一見無害そうに見えるが後から襲われでもしたら面倒だと考え、シレーヌは拾っていた木の実を全部彼女に手渡した。

 

「ふえ?」

 

「これ持ってさっさと消えろ。次、現れたらこの程度じゃ済まんぞ。」

 

「う、うぅん・・・・」

 

少女は、木の実を食べながらフヨフヨとどこかへと飛び去って行く。その姿を見届けると彼女は、再び闇夜の中を走りだした。

 

「肉は期待できんな。なら、川で魚を採った方が賢明か。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、川で満足できるぐらいの魚を捕まえることに成功したシレーヌは、神社に戻って来た。

 

「この位取れれば空腹は満たせるだろう。だが、今後の生活を考えると何か対策を考えなければならないな。」

 

彼女は、まだぴちぴちと靡いている魚をそのまま被りつこうとすると急に隙間が開いて止められた。

 

「ん!?」

 

「あらあら、博麗の巫女が魚を生のまま食べるなんて知られたら飛んだ悪評になるわ。」

 

紫が呆れた顔で隙間から現れる。

 

食事を邪魔されたことに腹が立ったが特に問題行為を行った覚えがないシレーヌは、警戒しながら訪問の目的を聞く。

 

「何しに来た八雲紫?私は問題行為をした覚えはないぞ。」

 

「霊夢の体で体に悪そうなことはしないでちょうだいってことよ。一週間黙って見ていたけど、生ものばっかり食べて。生魚なんか寄生虫の巣窟なんだから火に通さなかったら大変なことになるわ。」

 

隙間から体を出した彼女は、シレーヌを台所の窯の前にまで連れていく。

 

「火の点け方教えるからよく見ておきなさい。これからの生活は肉と魚を火で通すようにしなさい。」

 

「今更追加か?」

 

「人間としての常識よ。貴方は、一応博麗の巫女なんだから。その辺しっかりしてくれないと困るわ。」

 

窯の火を起こすと紫は、内臓を取り出した魚に串を通して周りに並べる。

 

「デーモンは、食事の文化というものがないわけ?」

 

「食事は、傷の回復の促進と能力の強化の一環に過ぎなかったからな。ただの獣のこともあれば殺した相手の肉を喰らうこともある。」

 

「貴方たち、どこぞの戦闘民族よりも野蛮よ。」

 

「ただ殺し合って終わりの人間どもよりはよっぽどマシだと思うがな。相手の血肉を喰らうことは自分の一部となることでもある。そいつの死が無駄にならないという意味でな。」

 

「変な文化ね。」

 

話している間に魚が焼けた。

 

彼女は、手に取ると早速齧り付いて骨ごとぼりぼりと食べ始める。

 

「骨は吐き出しなさいな。喉に刺さるわよ。」

 

「噛み砕けば問題ない。」

 

「はあ・・・・こんなに変わっても気づかない藍って目が節穴なのかしら?態度が変わってしょぼくれていたけど。」

 

 

これから先のことに頭を抱える紫であった。




デーモンってここまで野蛮だったけ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。