純白の少年とスクールアイドルの物語   作:ハトル

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真姫とのデート

 

 

 

放課後

 

 

今日の授業も終わり、白羽はもう一度学院の校舎を訪れていた。今回はスクールアイドルの手伝いではなく、別の用事があるのだ。

 

「こんにちは」

 

「…………また来たの?」

 

「はい!また来ましたよ。西()()()()()

 

白羽がやって来たのは音楽室。音楽室に用事があるのではなく、白羽は真姫に会いに来たのだ。別に勧誘するつもりで来たわけでは無い。ただ、彼女の演奏を聴きに来たのだ。以前、ライブに来てくれたお礼を言いに来た時に一曲聞かせてもらってから、ほぼ毎日通っている。

 

※ちなみに、真姫も花陽も凜も、白羽の素顔を初めて見た時は声にならない程驚いていた

 

「はぁ~…………まぁいいわ」

 

そう言って、真姫はピアノを弾き歌を歌い始めた。

真姫が歌い始めると、白羽は近くの椅子に腰掛けて、目を瞑り、彼女の歌を真剣に聴いている。

 

(やっぱり綺麗だな……………)

 

白羽は彼女の歌を何度も聴いているが、そのたびに魅了されていた。

 

 

 

数分後、彼女の演奏は終わりを迎え、白羽は彼女の演奏に拍手を送る。

 

「やっぱり素敵ですね。西木野さんの歌」

 

「べ、別に…………」

 

毎回白羽は真姫の演奏が終わると、恥ずかしげもなく『素敵』『綺麗』などと褒めてくる。他人と距離を取っている真姫はこんなにもストレートに褒められる事に慣れていないので、そのたびに顔を赤く染めて照れている。

 

「それより、なんで毎日ここに来るのよ?」

 

「なんでって言われても…………()()()()()()()()

 

白羽は真姫の質問に体を少しモジモジさせて、恥ずかしそうに答えた。

 

「…………………………はぁ!!??

 

突然の告白に真姫は今までに見たことないほど顔を真っ赤に染めた。いきなり男子から切なそうな表情で『好き』などと言われればそうなるのも当然だ。

 

今、この状況を見れば、10人中10人が告白していると答えるだろう。しかし真相は…………

 

 

 

「西木野さんの()が」

 

…………ただ紛らわしい言い方をしただけであった。この男はそういう紛らわしい事を言って、女の心を乱す天才なのである。

 

「あ、ああ…………………そっちね

 

「ん?何か言いました?」

 

「な、何でもないわよ!!それより、あの人達の手伝いはいいの?」

 

「ああ、僕この後ちょっと用事があるんですよ。ちゃんと連絡はしてます」

 

これは嘘ではない。今日は本当に用事があり、白羽は今日の放課後は参加できないと穂乃果達に連絡している。ただ、その用事までまだ時間があるので今日もここに来たのだ。

 

「そう……………じゃあ、何かもう一曲歌う?」

 

「はい!お願いします!」

 

「そうじゃなくて…………その………い、一緒に」

 

「っ!!………はい!そうですね!」

 

最初の方は『………出てって』などと言われることが多かったのだが、最近ではこうして一緒に演奏するくらいには仲良くなっている。真姫はなんやかんや言って面倒見のいい娘なので、年下の白羽に対してはかなり甘くなっている。

 

 

 

 

 

「「~~~♪~~~♪~~~」」

 

真姫のピアノに合わせて、白羽が歌う。

 

白羽は呑み込みが早いのか、ここ数日で真姫も驚く程にどんどん上手くなっていった。

 

「あなた…………本当に音楽の教育受けたことないの?」

 

「え?……はい。音楽の授業ぐらいです」

 

(それにしては本当に上手いわね…………声も綺麗だし、耳も良い。ピアノも少し教えたらすぐにコツをつかんだし)

 

この数日、白羽はせっかくなので真姫から色々音楽について教えてもらっていた。もちろん、μ'sの活動のプラスにするためだが。

 

「あ!すみません。そろそろ時間なのでこれで失礼します」

 

白羽が時計を見ると、いつの間にか用事の時間が迫っていた。歌う事に夢中になりすぎて、時間の事をすっかり忘れていたようだ。

 

「ま、待って!」

 

「ん?なんですか?」

 

真姫は急いで音楽室を出ようとする白羽を呼び止めた。呼び止められた白羽は疑問の表情を浮かべながら真姫の方に振り返る。

 

「また…………来るわよね?」

 

真姫は白羽に対して少し顔を赤らめてそう言った。真姫は素直になれない子なので他人との接し方が分からない。なので、こうやって誰かと一緒に音楽をする時間は新鮮で、真姫にとっては心地の良い時間だった。

 

「………ふふっ、やっぱり西木野さん。まんざらでもないんですね!」

 

真姫の言葉を聞いた白羽は、少し二ヤケた笑顔を向けてそう言った。彼女が素直になれない人間なのはもちろん白羽も気づいているが、たまにこうやって素直になる時は本当に可愛い人だと思った。

 

「なっ!!?や、やっぱり!来なくていいわ!!」

 

真姫はバカにされてると思ったのか、顔を赤く染めてそっぽ向いてしまった。

 

「そんなこと言わないでください。またちゃんと来ますよ。西木野さんが寂しがっているので」

 

「~~っ!!べ、別に寂しいわけじゃ!!」

 

「ふふっ、顔真っ赤ですよ」

 

「あ、あなたねぇ!!ホントに怒るわよ!!」

 

「あははっ、すみません。からかいすぎましたね」

 

年上に対して少し失礼だったなと思い、白羽は真姫に謝罪する。そんな白羽を見て、真姫は少し違和感を感じていた。

 

「あなた…………やっぱりちょっと変わったわね」

 

「変わった??」

 

「ええ、前は…………何かを怖がっているようだったもの」

 

真姫は帽子を被っていた頃の白羽の事はかなり印象に残っていた。もちろん、唯一の男子生徒と言うこともあるのだろうが、真姫はこの少年が持つ独特な雰囲気に興味があった。表面は普通を装っていたが、内心では何かを怖がってどこか他人と一線を引いている。そんな空気を真姫は感じていた。

 

「そ、そうですかね………??」

 

(西木野さん…………人の事よく見てるなぁ)

 

白羽は心の中で真姫の事を称賛した。白羽が大切な物を見つけて、一歩踏み出す前に彼女と会ったのは数えるほどしかない。それなのに、ここまで言い当てた彼女に対して称賛するのも無理はない。

 

それに真姫の言っている事は正しい。最近の白羽は笑顔を浮かべることが多くなった。もちろん、以前も笑うことが多かったのだが。こんな風に誰かを揶揄ったり、ふざけて笑ったりすることは無かった。

 

「ごめんなさい。変な事言って…………」

 

「い、いえ。気にしないでください。それじゃあ、失礼します」

 

白羽は真姫に曲を聞かせてくれたお礼を言って、音楽室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

学院を出た後、白羽が向かったのは西木野総合病院。白羽が先ほど言っていた用事とは病院に行くことだ。別に怪我をしたというわけでは無い。彼はここにカウンセリングを受ける為に一ヶ月に一度通っている。

 

「…………失礼します」

 

白羽は数回ノックしてから診察室の扉を開けると。中には一人の医者が椅子に腰掛けており、入ってきた白羽に対して笑顔を向けていた。

 

「やぁ、白羽君。こんにちは」

 

「こんにちは。真也(しんや)先生」

 

この人の名前は西木野真也(にしきのしんや)。この西()()()()()()()を経営してる先生であり、昔から白羽のカウンセリングを担当している人でもある。白羽にとっては昔からお世話になっている恩人の一人だ。

 

「帽子…………取ったんだね?大丈夫かい?」

 

「はい…………大丈夫です」

 

「そうか。それで…………どうだい?苦手意識の方は」

 

「はい…………………まだ完全には治っていません。けど、最近はかなり順調に回復してると思います!!」

 

「ああ、君の顔を見れば分かるよ。女子校に通うと聞いた時は心配したが…………どうやら、良い傾向みたいだね」

 

「はい……!!」

 

「白羽君、学校は…………楽しいかい?」

 

「……………はい。大切な人達と…………やりたい事を見つけられたので!」

 

「っ!!………………そうか」

 

しっかりと前を向いて、そう答える白羽の顔を見た真也は一瞬驚きの表情を見せる。真也は()()()()()()()()()()()()()()を知っているので、こんなにも暖かい表情を出せるようになるまで回復した彼を見て、思わず涙ぐんでしまった。

 

「真也先生?泣いてます??」

 

「す、すまない!嬉しくなってしまってつい

………………これからも、がんばりなさい」

 

「はい!」

 

「それじゃあ、今日は……………」

 

 

それから、一時間ほど白羽は真也のカウンセリングを受けた。カウンセリングと言っても、ほとんどが学校で会った事を話したり、2人で何気ない会話をしたりするだけだった。しかし、その何気ない会話をしているこの時間が白羽にとってはとても有意義な時間なのだ。

 

 

「それじゃあ、今日はお終いだよ。また一か月後においで」

 

「はい!じゃあ、失礼します」

 

白羽は真也にお礼を言って部屋を出る。今の時間を確認すると、まだ夕方の5時過ぎだった。カウンセリングがいつもより早く終わったので、買い物とか途中で何処かよろうかと考える。

 

「さてと…………それじゃあ」

 

「え……!?」

 

「ん?……………に、西木野さん?」

 

白羽が部屋を出ると、突然横から聞き覚えの声がしたのでそちらに視線を向けると、そこにはさっきまで一緒に居た真姫の姿があった。

 

「な、なんで貴方がここに!?」

 

「い、いや……………僕はその……………」

 

「どうしたんだい?………あっ!真姫じゃないか」

 

部屋の外が少し騒がしいと思い、真也は診察室から出てきた。

 

「パ、パパ………」

 

「パパ!!??え!?西木野さんって真也先生の娘さんなんですか!?」

 

真姫は真也の事をパパと呼び、それを聞いて二人が親子であることに気づいた白羽は驚きの声を上げる。

 

「なんだい?二人とも知り合いかい?」

 

「え、ええ……………ちょっとね」

 

「じゃあ白羽君、改めて紹介するよ。この子は私の娘、西木野真姫だ。知り合いなら、これからも仲良くしてやってくれ」

 

「ちょ、ちょっとパパ!!」

 

「………………は、はい。こちらこそ」

 

白羽はまだ真姫が真也の娘だということに驚いて、頭の整理がつかないでいる。

 

「っていうか……………あなたは気づかなかったの?私の名前を聞けば想像できると思うけど………」

 

「いや…………苗字が同じ西木野で……前に真也先生が『赤毛でピアノの上手な一人娘がいるんだよ~』とか言ってたりしてましたけど……………ただの偶然かと思ってました」

 

「……………気づきなさいよ」

 

真姫は頭を抱えて呆れ気味にそう言った。真姫のツッコミはもっともだ。逆にそこまで知っているなら、普通気づくだろ!!って話になる。

 

(いや、だって…………真也先生と西木野さんって全然似てないですもん)

 

以前、白羽は雪穂や亜里沙が穂乃果と絵里の妹だと気づいたのだが、それは名字が同じだったから気づいたわけでは無い。名前だけでなく雰囲気や笑顔がどこか似ていたので気づくことが出来たのだ。

 

「あははは…………さすが白羽君。頭は良いのに凄く鈍い時があるよね………………特に女性関係で

 

 

(なんか今、すごい失礼な事言われなかった??)

 

 

「まぁ、それはいいわ。それより、なんでここにいるのよ?」

 

「え~っと……………それは…………」

 

「真姫、白羽君は少し体を痛めてしまって、その治療に来たんだよ」

 

「………………そう」

 

真也は白羽が事情を言いたくない事を悟り、適当な理由で誤魔化した。

 

(別に隠しているわけじゃないんだけど、僕の苦手意識を知ったら気にするかもしれないしなぁ~)

 

今、白羽が女性を苦手としている事を知っているのは、家族や綺羅ツバキ、南雛奈といった昔からずっと一緒にいる人達。そして学校では柏木桜と園田海未だけだ。桜には色々サポートしてもらうということで、海未には怖がられているのかと聞かれてやむを得なく話したが。気を使われるのも嫌なので、結局白羽は穂乃果やことりにも話していない

 

「気を付けなさいよ」

 

「…………はい。気を付けます」

(すみません……………怪我なんてしてないんです)

 

真姫の純粋に心配している言葉を聞いて、白羽は少し罪悪感を抱きながら返事した。

 

「それで、二人は一体どういう関係………ハッ!!」

 

「「ん??」」

 

真也は、2人に関係性を聞こうとしたのだが、言い終える前にある可能性が頭をよぎった。

 

「真姫……………」

 

真也は真姫の肩を掴み、真剣なまなざしを向けた。そして…………

 

「な、何……??」

 

「私は……白羽君なら……婿()として迎えてもいいぞ!」

 

…………自分の娘にとんでもない事を言い出した。

 

「っ!!?バ、バカじゃないの!!??」

 

「……………あ、あははは」

 

真也の一言に白羽は苦笑いを浮かべ、真姫は顔を赤くし、持っていた学校のカバンで実の父の顔を殴った。

 

「イテテテ……………もう、ひどいな真姫」

 

「パパが変な事言うからでしょ!!」

 

「それで…………どうだろう?白羽君、真姫と結婚する気はないかい?」

 

真也は真姫の言葉を無視し、白羽の肩を掴み、真剣な眼差しを向けた。

 

「ちょ、ちょっとパパ!!?」

 

「う~~ん……………どうします?西木野さん……僕達、結婚します??」

 

白羽は真姫を揶揄うチャンスだと思い、ニヤニヤした表情で真姫に質問した。

 

「す……………するわけないでしょ!!!」

 

「あはははっ!冗談ですよ、冗談。僕と西木野さんじゃ釣り合わないですもんね…………」

 

白羽は真姫の言葉を聞いて、少し残念そうな表情を浮かべ、顔を下に向けて見るからに落ち込んだような雰囲気を見せる。当然、あくまで落ち込んだふりなので全然気にしていない。

 

「え?…………いや………べ、別にそこまでは言ってないでしょ」

 

白羽が落ち込んだと思い真姫は恥ずかしそうに顔を赤くしながらフォローを入れる。

 

「どうだい?うちの娘、可愛いだろう?是非とも結婚――――ゲブッ!!!」

 

真也が余計な事を言い終える前に真姫は自分の父の鳩尾に一撃を入れた。今度はカバンではなく拳で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、真姫は真也の事を正座させ、病院のド真ん中で説教が始まった。いたたまれなくなった白羽は帰ろうとしたのだが、真也が『せっかくなら一緒に帰ったらどうだい?』と言ってきたので、真姫と白羽は一緒に帰ることになった。

 

※ちなみに真也は帰り際『真姫…………デートして落としてきなさい』と親指を立てて言ったら、真姫からもう一発攻撃を喰らった

 

 

 

 

「あの~、なんかすみません」

 

「…………なんで謝るのよ?」

 

「いや……………何となく…………」

 

「別にいいわよ……………そもそも私のパパが勝手に言った事だし」

 

真也が始めた事とはいえ、流石にさっきのはやりすぎたなと思い、白羽は少し気まずそうな顔を浮かべる。

 

 

――――そういえば真也先生、西木野さんに()()()()()()()()とかなんとか言ってたけど………一体何を落とすんだろう?

 

 

「こっちこそ悪いわね。パパが変な事言って」

 

「いえ、なんか新鮮でした。真也先生って家族の前だと少しお茶目なんですね」

 

「普段はああじゃないんだけど…………よっぽどあなたの事を気に入ってるのね」

 

「あ、あははは…………」

 

実際、真姫の言う通り真也は白羽の事をかなり気に入っている。性格良しで礼儀正しく、誰に対しても親切な人格者。それ故に西木野総合病院の看護師たちにもかなり可愛がられており、病院内ではかなりの人気者なのだ。

 

「それで…………あなたの家は何処なのよ?」

 

「え………?何でですか?」

 

「??何でって?送っていくわよ?」

 

「いえ、そうではなく……………デートしないんですか??」

 

「はぁ!!??」

 

真姫は白羽の言葉を聞いて再び驚きの声を上げた。それもそうだ、まさかこの少年が先ほどの父の言葉を鵜吞みにするとは夢にも思っていなかった。

 

「す、するわけないでしょ!!」

 

「えぇ~~、行きましょうよ!せっかくなんですし!」

 

「あ、あなたねぇ!!デートの意味わかってるの!!?」

 

「??男女が一緒に遊びに行くことですよね?それぐらい知ってます!!」

 

白羽はそう言って、真姫に対して胸を張り、腰に手を当てて『えっへん!!』とでも言いたげなポーズをとった。ちなみに、白羽はデートをそこまで特別な物と認識していない。

白羽にとってはデート=遊びに行くZE!!的な認識なので、デートに行きたいというより、ただ純粋に真姫と遊びたいと思っているだけである。

 

「……………はぁ~~~」

 

「ん?」

 

真姫も彼の顔を見て、そのことに気づき、目の前にいる少年に対して深いため息を吐いた。そして、なぜため息を吐かれたのかわからない白羽は首を傾げ………

 

(なんか……最近ため息吐かれること事多くない??)

 

…………などと考えていた。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

結局あの後、白羽の遊びに行きたいアピールに負けて、真姫は遊びに行くことにした。そして、2人がやって来たのは秋葉である。この前、雪穂たちと遊んだ時かなり楽しかったのでまたここで遊ぶことにした。

 

「それで……………何するのよ?」

 

「…………………………何しましょう?」

 

白羽は何時ぞや桜がこの場所で言い放ったノープラン発言を口にした。

 

(まぁ、西木野さんと遊べるなら何でもいいんだけど…………)

 

 

 

「西木野さんは何したいですか?」

 

「………………何でもいいわ」

 

「じゃあ……………あそこに行きましょう!」

 

「??………ゲームセンター??」

 

白羽が指さしたのは近くのゲームセンターであった。ゲームセンターを選んだのに理由は特に無かった。()いて言うなら、一番最初に目に留まったのがゲームセンターだったというだけだ。ただ、真姫と一緒に遊べるなら白羽は何処でもよかった。

 

「行きましょう!西木野さん!!」

 

「あ、ちょっと!待ちなさいよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおおお!!久しぶりにゲームセンターに来ました!!」

 

中に入ると、白羽はなんかすごい未来チックなゲーム機に心を奪われて、中学生の男子らしく目を輝かせている。

 

「西木野さん!まずあれをやりましょう!!」

 

白羽が指さしたのはダンスゲームであった。最近習い始めたダンスを使った遊びが面白そうと思い、白羽は目を輝かせている。

 

「わ、私はいいわよ………」

 

「そんな事言わずに!ほらっ!一緒にやりましょう!!」

 

「あっ!ちょ、ちょっと………!」

 

白羽は渋い顔をしている真姫の手を掴み、無理やりゲーム機の前に立たせた。

 

「ちょ、ちょっと!私はやるなんて一言も……!!」

 

「じゃあ、ゲームスタートです!!」

 

駄々をこねる真姫の言葉を無視して、白羽はゲーム機に2人分のお金を入れ、強制的にスタートさせた。

 

『Let's Dance!!』

 

ゲーム機の画面にはそう表示され、白羽は踊る音楽を選択した。もちろん、真姫も楽しめるように絶対知っているであろう有名な曲を入れた。

 

「じゃあ、西木野さん!どっちがいいスコアをとるか勝負ですね!!」

 

「は、はぁ?別にスコアとか関係………」

 

「あ!もしかして、負けるのが怖いんですか??」

 

白羽はニヤニヤ顔を浮かべて真姫を挑発する。

 

「なっ!!い、いいわよ!やってやろうじゃない!!」

 

(…………チョロい)

 

それを聞いた真姫は負けず嫌いが発動し、安い挑発に乗ってしまった。ちなみに、こういう挑発をすれば真姫は必ず乗ってくると白羽は分かっていたので、わざと挑発した。

 

「負けません!」「負けないわ!」

 

 

 

 

 

そして、数分後…………

 

白羽 スコア…………B

真姫 スコア…………C

 

 

 

という結果になり、白羽が勝利した。

 

「ハァ……ハァ……や、やった~~~!!」

 

「ハァ……ハァ………」

 

勝った白羽は嬉しさのあまりガッツポーズをして、負けた真姫は膝に手をついて悔しそうに顔を歪めている。その後、悔しさのあまり真姫は再戦を挑んだのだが、結局白羽のスコアを超えることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――十数分後

 

 

あれからゲームを終えた白羽と真姫はさすがに疲れてしまったので、ゲームセンター内にあるベンチで休憩している。

 

「西木野さん。はい、お疲れ様です…………」

 

「あ、ありがとう…………」

 

白羽は自販機で買ってきた水を真姫に手渡した。

 

「西木野さん運動神経良いんですね。あれ初心者がC出すのかなり難しいらしいですよ」

 

「べ、別に…………」

 

途中、真姫のダンスを横からチラ見していた白羽だったが、彼女なら少しダンスを練習すれば、すぐにさっきのゲームでもスコアBをとれるぐらいには上手くなると思った。

 

「よし!じゃあ、次行きましょう!」

 

「えっ!?まだ行くの!?」

 

「はい!次は…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――カラオケ

 

 

「ここです!」

 

「カラオケ?」

 

次に白羽達がやって来たのは、近くにあったカラオケである。今度は適当に選んだのではなく、ちゃんとした理由があった。

 

「西木野さんって歌が凄く上手ですよね」

 

「っ!!…………あ、ありがとう」

 

白羽の誉め言葉は何度も聞いているのにいまだに慣れず、真姫は頬を赤らめた。

 

「だから…………今度は歌で勝負です!!」

 

「歌?点数を競うの?」

 

「はい!!」

 

さっきの勝負は白羽が有利な物だったので、今度は真姫が得意そうなものを勝負内容に選んだ。まぁ、実際はただ単に白羽が真姫の歌を聴きたいだけなのだが

 

「では、まず僕から行きます!!」

 

「ちょっと!だから勝手に話を進めないでって…………!」

 

「えっ?もしかして…………自信ないんですか??」

 

「ち、違うわよ!!」

 

(チョロい…………あまりにもチョロすぎる)

 

また真姫は白羽の安い挑発に乗ってしまった。自分でやっておいてなんだけど、白羽は真姫が将来悪い大人に騙されたり、食い物にされないかちょっと心配になってきた。

 

 

 

 

 

そして、2人共歌い終わり、点数は…………

 

白羽 96点

 

真姫 98点

 

…………となり、今度は真姫が勝利を収めた。

 

 

「ああ~、負けちゃいました……………」

 

「ふんっ!当然よ……………」

 

真姫は白羽の反応に少しドヤ顔を浮かべて、そっぽ向きながらそう言った。白羽もかなり高いのだが、やはり昔から音楽の教育を受けている真姫には敵わなかった。

 

「もう一回!もう一回やりましょう!」

 

「………………まだやるの?」

 

「はい!!お願いします!!」

 

「…………………………ふふっ、分かったわよ」

 

白羽のもう一回やろう!という提案に真姫は少し微笑みながら了承した。この時、真姫は手のかかる弟が出来たような気持ちになり、自然と笑みをこぼした。

 

 

 

 

 

それから、何回も勝負したが結局白羽は真姫の点数を一度も超えられなかった。真姫も途中から歌うのがどんどん楽しくなっていき、最初の渋々付き合うという気持ちはもうどこにもなかった。

 

 

「そろそろ時間ね…………」

 

「あ!本当ですね!!」

 

時計を見るといつの間にかあと数分で終わりという時間になっていた。数分なので歌えるのはあと一曲ってところだ。

 

「西木野さん…………最後歌います?」

 

「私はいいわ。あなたが歌いなさい」

 

(う~~ん、でもせっかくなら西木野さんの歌がもう一回聴きた…………あ!そうだ!)

 

「じゃあ西木野さん!デュエットしましょう!デュエット!!」

 

「デュエット?」

 

「はい!さっき音楽室で一緒に歌ったみたいに!」

 

白羽が思いついたのは最後は2人で歌うというアイデアだった。白羽もせっかくなら最後は歌いたいし、真姫も口ではいいと言っているが、本心では歌いたいと思っていた。

 

「まぁ……………いいけど」

 

「やったぁ!…………じゃあ、どれにします!??」

 

白羽おもむろに立ち上がり、真姫のすぐ隣まで行って、彼女が持っている歌のリストを覗き込んだ。そのせいで、2人の距離はかなり近くなってしまった。

 

「ちょ、ちょっと近いわよ!!」

 

「っ!!?あ…………す、すみません…………」

 

「うっ…………」

 

真姫はいきなり至近距離まで近づかれて恥ずかしくなり、顔を赤くし少し強めに怒鳴ってしまった。怒鳴られた白羽は見るからに落ち込んでしまい、真姫はさすがに怒りすぎてしまったと罪悪感に襲われた。

 

「ご、ごめんなさい………少し言い過ぎたわ」

 

「い、いえ、僕もすみません」

 

(最近、穂乃果さん達といるからか、距離感がおかしくなってるのかな?)

 

※あなたは元々距離感がおかしいです

 

お互い謝り、2人は気を取り直して最後の曲を入れる。最後なので良い点数を取りに行こうとした白羽だったが、流石に疲れたのか、途中音程がずれそうになる事が多かった。しかし、そのたびに真姫がフォローしてなんとか最後まで歌いきることが出来た。

 

 

そして結果は…………………なんと99点!!

 

今まで獲った事の無い点数を見た瞬間、白羽は嬉しくなり真姫とハイタッチしようと腕を上げた。真姫もそれに応えて、少し微笑んだ後に白羽の手に自分の手を合わせ、乾いた音が部屋の中に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白羽達がカラオケを出た後、あたりも暗くなってきたので帰ることになった。真姫の家はここから近かったので、白羽は真姫を家まで送ることにした。

 

「ふぅ~~~、遊びましたね!!」

 

「まったく……………ホントに遊びすぎよ」

 

「あ、あはは……………す、すみません」

 

「まったく…………今日は散々だったわ」

 

そう言ってそっぽ向く真姫であったが、顔には楽しかったという気持ちが溢れている。白羽もそれに気づき、嬉しそうな笑顔を浮かべた。そしてしばらく歩いていると、白羽は立派な家の前に着いた

 

「それじゃあ、私の家ここだから」

 

「え?…………こ、ここですか?」

 

「ええ……何か変??」

 

「い、いえ…………立派だなぁと思って」

(真也先生は病院を経営してるし、お金持ちなのは知ってたけど………こんなにすごいとは)

 

白羽はあらためて、自分は凄い人にカウンセリングを担当してもらっているのだと認識した。

 

「そんなに驚くほど……??」

 

庶民(白羽)お金持ち(真姫)の感覚はやはり違うようで、真姫は白羽の反応に疑問を浮かべた。

 

「じゃあ、ありがと。送ってくれて」

 

「………………あの!」

 

「??」

 

真姫が家に入ろうとすると白羽は真剣な表情を浮かべて真姫を呼び止めた。

 

「西木野さん………………やっぱり、μ'sに入る気はありませんか?」

 

 

 

突然だった。まるであの少女(高坂穂乃果)のように突然白羽は真姫をμ'sに勧誘した。そんなつもりで遊びに誘ったわけでは無い。そんなつもりで彼女と交友を深めたわけでは無い。それなのに、今日一緒に遊んだことで、白羽は彼女にμ'sのメンバーになって欲しいという気持ちが止められなくなっていた。

 

 

 

「………………」

 

「穂乃果さんも、僕も…………やっぱり西木野さんにμ'sに入ってほしいんです!きっと、西木野さんの事を知れば、海未さんやことりさんもそう言います!だから…………!」

 

「私ね………」

 

白羽の言葉を黙って聞いていた真姫はおもむろに口を開いた。その顔は少し悲しそうな表情だった…………

 

「………大学は医学部って決まってるの」

 

「えっ?そ、そうなんですか………」

(医学部……………やっぱりすごい人なんだな……………)

 

「そう。だから……………私の音楽はもう終わってるってわけ」

 

「……………………………西木野さん」

 

真姫はそう言って、遠回しに白羽の勧誘を断った。医学部に進むなら、音楽をこれから先続けることは難しい。だから、もう音楽活動はしないという真姫の意思を白羽は感じ取った。

 

 

 

 

しかし、白羽はそれが彼女の本心ではないということを見抜いた。

 

 

白羽は知っている、彼女が誰よりも音楽を愛している事を

 

白羽は知っている、彼女が誰よりも歌うことが好きだと

 

 

 

そうでもなければ……………

 

あんなに綺麗な歌を演奏できるはずがない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………終わってませんよ」

 

「えっ………………」

 

白羽はそんな真姫に向かって、優しく微笑んだ。μ'sのファーストライブで穂乃果達を支えた時のように、どこまでも優しく、暖かい笑顔を向けた。

 

「終わっていませんよ。人の中で何かが終わる時は、それを辞めた時じゃありません。それを嫌いになった時です」

 

「っ!?」

 

「もし、そうじゃないなら……………貴女がまだ歌いたいと思っているなら、例え貴女が音楽をやめても、貴女の音楽は終わりません」

 

「………………」

 

真姫は白羽の言った言葉に心を動かされた……………あの時、高坂穂乃果の言葉に心を動かされたように

 

「すみません………………なんか生意気な事言っちゃって。最終的に決めるのはあくまで西木野さんです。でも、僕は……………いえ、μ'sはいつでも貴女を歓迎します!!それだけ、覚えておいてください!失礼します!」

 

そう言って、白羽は真姫の元から去っていた。真姫は家の中には入らず、走り去っていく白羽の背中を見えなくなるまで眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優木白羽…………」

 

走り去っていく白羽の背中が見えなくなった瞬間、真姫は白羽の名前を無意識のうちに口にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらっ、おかえりなさい。真姫」

 

「………………ただいま」

 

「どうしたの?今日はずいぶん遅かったわね?病院で何かあった?」

 

「ちょっと遊びに…………………な、なんでもない!!」

 

男の子と遊びに行ったなんて知られるのは恥ずかしいので、真姫は咄嗟に言葉を濁す。

 

「あら…………もしかして、男の子とデートだったり?」

 

「そ、そそそそ、そんなわけないでしょ!!」

 

「…………あら??」

 

真姫の母親は冗談で言ったつもりだったのだが、真姫は言い当てられてしまったことで動揺しながら否定する。

 

(も、もう!!何でママはこういう時の勘が鋭いのよ!!っていうか!!デートじゃないし!!)

 

「わ、私!もう部屋に行くから!!」

 

これ以上話しているとボロを出しそうになるので、真姫は早々に自室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「あらあら…………真姫にも遂に春が来たのね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の部屋に入ると真姫はすぐにベッドに横たわる。普段であれば、まずは制服を着替えるだろうが、それを忘れるほど彼女の頭には先ほどの白羽の言葉でいっぱいになっていた。

 

 

(なんなのよ……………あの子は)

 

 

不思議な少年……………それが、真姫が白羽に対して抱いている印象だった。あの少年の言葉を聞くと、いつも心が乱される。

 

 

 

 

 

 

 

―――終わっていませんよ。人の中で何かが終わる時は、それを辞めた時じゃありません。それを嫌いになった時です

 

 

(私は……………)

 

 

―――もし、そうじゃないなら……………貴女がまだ歌いたいと思っているなら、例え貴女が音楽をやめても、貴女の音楽は終わりません

 

 

(私は……………)

 

 

―――僕は……………いえ、μ'sはいつでも貴女を歓迎します!!

 

 

(わた、し……………は………)

 

 

 

 

 

 

白羽の言葉を頭の中で何度も何度も思い出していると、次第に真姫は疲労によって海に沈んでいくように眠ってしまった。

 

 

 

 

 

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